福岡市南区で「屋形原保育園」を運営する社会福祉法人文寿会。0歳から6歳まで約240名の子どもたちが通う同園では、「よく学び、よく遊ぶ」という理念のもと、茶道・バレエなど多種多様な全体プログラムを実施するなど、子どもたち一人ひとりの個性を尊重する保育を行っています。
そんな屋形原保育園では、2023年1月からfreee人事労務を導入しています。実はそれまで、現場では人事労務面に多くの課題を抱えていました。給与計算は紙ベースで管理。手書き・手入力によるミスも懸念されるなか、園長と事務スタッフが二人で時間をかけて行う振込業務は、作業効率化と属人性の解消が求められていたといいます。
今回は、保育スタッフ兼事務担当である山里美帆さんに、freee人事労務導入の背景と効果についてお話を伺いました。
導入法人
・事業内容:第二種社会福祉事業 保育園(屋形原保育園)運営
・従業員数:約50名
・事業社URL: https://www.yakatabaru-nobinobi.org/
課題
・手作業・手計算に給与手渡し、業務の分断からミスが多発
・処遇改善制度や時間外手当など個別に調整すべき項目も多く、重なる担当者負担
導入の決め手
・クラウド管理でき、園長のパソコンだけでなく、管理部門全体で業務ができた
・変形労働制(業務の繁忙期や閑散期に合わせて、労働時間を柔軟に調整できる制度)に対応できる、細かな設定ができた
導入後の効果
・労務管理の効率化・簡略化により、常勤職員の土日休みを実現
・属人化しない事務の仕組み化で、保育業務に集中できるように
いつも振込業務のことを考えていたーー属人化とミス、リスクと隣り合わせのアナログ 管理からの脱却へ
――導入されているfreeeのサービスについて教えてください。
山里美帆さん(以下、山里): 2023年1月から、freee人事労務を導入しました。勤怠管理を一元化したかったのですが、いまでは出退勤管理から有給申請、年末調整までfreee人事労務で運用しています。
――2年ほど導入されていますが、導入前はどのように勤怠や給与を管理されていたのでしょうか?
山里: 実は、ほとんどの作業を紙ベースで行っていました。
導入当時、職員は50名ほど。月給制や時給制など、それぞれに合わせた処理を行う必要があるため、毎月の給与計算が本当に大変だったことを今でもハッキリと覚えています。
たとえば月給職員は、銀行で給与振込依頼をしていました。時間外勤務は主任が計算し、有休日数を確認したうえで園長に報告。園長はそれを給与ソフトに手入力して、さらにフロッピーディスクにデータを移して銀行に持ち込み、給与振込依頼をしていました。
時給の非常勤職員については、さらに時間がかかっていました。まず、職員が打刻した出勤データを私が確認して実働時間を計算し、それをもとに園長が給与ソフトに手入力します。その後、データをもとに銀行に現金を引き出しに行き、園長と2人で各職員分を封筒に入れて、一人ひとりに手渡ししていました。
――振込業務を含めた実務面では、どのような課題があったのでしょうか?
山里: ほとんどが手作業だったので、ミスが多発していました。職員の打刻、私の計算、園長の入力と、誤りが発生しやすいタイミングが多く、どこでズレたのかを確認するのも非常に大変で…
それに保育の現場では、当日の状況により休憩時間の調整がかかったり、お迎えの遅れで退勤時刻が後ろ倒しになったりなど、もともとの予定から勤務時間が変わり、給与も変わることがよくあります。ただ、勤怠管理には「なぜ退勤が遅れたのか、休んだのか」が書かれていないため、給与計算ではまず本人に確認する必要があるんです。職員も常に忙しいうえに、日が経つと記憶があいまいになっていることも多いので、一つひとつの確認にすごく時間がかかっていましたね。
さらに、作業の属人化も大きな問題でした。当時使っていた給与ソフトは園長のパソコンにしか入っておらず、使い方がわかるのも園長だけだったので、園長がどんなに忙しくても任せるしかない状況でした。
本来はもっと別のことに時間を使うべき園長が、給与計算に手間をかけている姿に、やるせなさを感じていましたね。

――実際、勤怠・給与管理にはどれくらいの時間を費やしていたのでしょうか。
山里: 正直なところ、月初から月 末までずっと給与計算のことが頭から離れない感覚でした。
月給か時給かによって締め・支払いのスケジュールが異なっていたこともあり、常に何かしらの作業が発生していたんですよね。
とくに毎月の振り込みの時期は、園児対応の合間に銀行に足を運ぶ必要もあり、かなり慌ただしかった記憶があります。
手書き作業をやめて、チェック体制を強化。freee人事労務の導入で作業を円滑に
――どのようにしてfreee人事労務を知り、導入を検討するようになったのでしょうか?
山里:もともとは会計をクラウド化できるツールを探していて、freee会計を先に知りました。諸事情でfreee会計の導入は見送ったのですが、当時の営業の方から「人事労務関係のサービスもあります」と教えていただいたことが記憶に残っています。
本格的に検討し始めたのはfreee会計の商談の少し後、法定の処遇改善手当を含めた時間外手当の設定が適切にできず、行政からの監査で指摘を受けてしまったことがきっかけです。当時使っていた給与ソフトでは作業フローの改善が難しかったため、新しいソフトの導入を検討し始めました。
そこで改めてfreee人事労務を調べてみたところ、クラウドで管理できる点や、福祉や保育の現場に合った柔軟な設定ができる点に魅力を感じ、導入を決めました。
――freee人事労務を導入して、振込業務にはどのような変化がありました か?
山里:一番大きかったのは、手書き作業が減ったことです。手間が省けただけでなく、ミスの防止にもつながりました。
給与明細の作成を自動化すると、私と園長でダブルチェックができるようになるんですよね。以前から私と園長の二人体制でチェックはしていたのですが、私は明細を作成した本人なので主観が入りやすく、実質園長1人の確認になっていたと思います。
客観的な視点をもって2人体制でチェックができるようになったため、ミスが減り、作業効率も上がりました。

締日である15日から支払い日の25日までに給与計算が終わるため、それ以外の期間は保育や他の事務作業に集中できるようになりました。さらに、導入を機に給与支払いもインターネットバンキングに変更しました。
――他の職員からは、freee人事労務の導入についてどのような声がありましたか?
山里: 給与計算を一緒に行っていた園長は、最初は「私に使いこなせるかな」と心配していました。ただfreee人事労務は操作方法がわかりやすく、使いはじめると不安はなくなっていったようです。今ではすっかり使いこなしていますよ。
また、現場からの反応もさまざまでした。
20代から70代まで幅広い年代の職員がいることもあり、「どんどん効率化を進めましょう!」と前向きな声もあった一方で、内心「また新しいことを覚えるのか」と面倒に感じた方もいたと思います。
不安そうな方や操作が得意ではない方には、私やツールに慣れているスタッフがサポートして、なるべく職員の負担がないように仕組みを変えていきました。スマホで手軽に自分の給与情報が確認できるため、徐々に良さを実感してもらえていると思います。
もう事務は誰がやってもいい。子供たちの『先生』として保育に専念できる園に
――freee人事労務を導入したことで削減できた時間は、どのように活用されていますか?
山里:保育の現場に入る機会がぐっと増えました。慣らし保育の教室でサポートに入ったり、支援が必要な子に個別で対応をしたり。保育の現場では一人ひとりに合った対応をするため、細かな部分までより目を向けられるようになったのはとても嬉しいです。
また、屋形原保育園が大切にする、茶道教室や英語教室といった「挑戦・体験」を後押しするプログラムの準備やカリキュラムの見直しを行えたことで、より良い園の運営ができるようになったと考えています。
――他に、freee人事労務の導入によって現場に生まれた変化はありますか?
山里:ずっと導入 したいと思っていた、土日の週休2日制を実現することができました。 以前は人手不足で現場を回すのがやっとという状況でしたし、採用状況が改善されたあとも職員のシフトの勤務状況を正確に把握するのが難しく、なかなか土日に休める仕組みを整えることができなかったんです。
保育の現場では、職員ごとに異なる勤務形態や手当の管理が求められ、ただでさえ労務管理が複雑になりがちです。それをアナログで管理していた当園では、非常勤の方を増やすのもままならず、余計な混乱を避けるためにも、スポットで働く職員の募集はしていませんでした。

ただfreee人事労務では、柔軟な勤務管理が簡単にできるので、非常勤の職員に手当を出して土曜日に出てもらい、常勤の職員は土日に休ませるという対応が取りやすくなりました。
「もっと働きやすい職場にしたい」という想いはずっと持っていましたが、freee人事労務のように、保育や福祉の現場に寄り添った柔軟な労務管理が可能なツールを導入したことで、少しずつですが職場環境の改善を着実に進められるようになったのは嬉しいです。
――同じような課題を抱える事業所に、freee人事労務をおすすめできる点を教えてください。
山里:一番大きいのは、属人化しない仕組みを整えられる点です。
特に保育の現場では保育職員が事務を兼任する場合もありますが、私は「子どもたちにとって『先生』は代えがきかない存在。でも、事務は誰がやってもいい」と考えています。
freee人事労務は操作が簡単なため、マニュアルを見れば誰でも作業ができる状態になっていますし、自分のパソコン1つあれば管理ができるようになります。
以前は園長のパソコンから紙で給与明細を印刷してチェックし、銀行に振込依頼をする……とアナログな手順も多く、何よりそれらの作業は私か園長にしかできないものとなってしまっていましたが、今なら誰にでもお任せできます。
私もfreee人事労務を導入したことで保育の現場に戻る時間が増えましたし、シフトや手当を柔軟に調整しやすくなったことで、職員一人ひとりが自分の健康も大事にしながら子どもに寄り添えるようになりました。
給与計算を円滑にするだけでなく、労務環境を良くする意味でも、freee人事労務はおすすめです。