株式会社ヴォンエルフは、建物や都市の国際認証コンサルティングサービスを提供する企業です。環境へ配慮した建築物や都市、コミュニティなどの計画を支え、「公正でサステナブルかつ豊かで健康な社会の構築」を目指すことを理念として2006年に設立されました。
社会情勢に応じたニーズの拡大により、同社の事業が順調な成長を遂げる一方で、急速に人員が増えたことで、バックオフィスに課題が発生していました。そこで、freeeの導入に踏み切り、その結果、導入後数カ月間で社内の業務フローや意識に変化が見られたそうです。
そんなfreee販売導入の経緯と現在の活用方法、今後の活用の見通しについて、コーポレートを担う池田 浩士さん、石川 玲美さん、法務担当の大竹 杏奈さん、コンサルタントの坂本 桂太朗さんの4名に伺いました。
持続可能な街づくりを目指す「国際的な環境評価基準の認証コンサルティング」
――貴社の社名の由来をお伺いできますか。
坂本 桂太朗さん(以下、坂本): 社名の「ヴォンエルフ(Woonerf)」は、オランダのデルフトで生まれた「ひと」中心の街路(原義:生活の庭)を意味する概念に由来しており、戦後の経済効率優先で作られた車社会を、新たに「ひと」中心のコンパクトな街づくりに転換させたいという想いが込められています。
――貴社の事業の概要をお教えください。
坂本: 建築や都市をグリーンにする支援を通して、緑豊かで持続可能な街づくりに貢献しています。 実は、地球上のCO2排出量の約4割が建物に由来しており、数十年立ち続ける建物が環境に配慮することで、CO2排出量を大幅に削減できる効果が期待できるんです。
設立当初は造園や公園の緑化管理から始まり、現在は建物や都市、企業の取り組みにおける環境や健康への配慮の実現について、第三者機関から認証を受ける際に、専門的なサポートを行う「認証コンサルティング」事業を主軸としています。 最近では、二子玉川ライズや南町田グランペリーパーク、虎ノ門・麻布台ヒルズエリア、金沢駅西口再開発、大阪大学箕面新キャンパス移転、札幌市LEED認証取得など、全国各地の建物や再開発、既存自治体におけるコンサルティング実績を持ちます。
高度経済成長期にビル建設が進んだ日本でも、近年は建物や都市のグリーン化の重要性が認識され始め、マーケットはさらに拡大すると考えています。
属人化とテレワーク「見えない管理」が、成長の足かせに
――freeeを導入するまでにはどのような課題が生じていましたか?
池田 浩士さん(以下、池田) : 数年前までは従業員が10数名だったのですが、この数年で組織が拡大し、2025年7月時点で54名の従業員数がいます。そのうち40名弱はメイン事業のコンサルタントを担うメンバーで、バックオフィスは4~5名で担っています。 急速に人員が増えるなかで、紙やExcelによる属人的な管理と業務量増加によるバックオフィスの負荷が課題になっていました。
坂本: 元々は、週3勤務の方が支えていただいていたのですが、事業成長に伴い追い付かなくなっていきました。そこで急いで採用を進めたのですが、社内の整備ができていないまだったので、業務に負荷がかかり、人材が定着しないという悪循環に陥っていました。
池田: 加えて、テレワークが中心だったこともあり、人的リソースの余剰が見えないという課題も生まれました。リソースがないと言う従業員の声を鵜呑みにして、せっかく仕事が来ても断ってしまうケースもありましたね。
――案件管理はどのように行っていたのでしょうか?
池田: 元々は個人ごとのExcelファイルで管理していたので、担当者に直接聞かなければ案件が何件あるのかも進捗も分からない状態でした。そこから、チームごとで管理してまとめるようになりましたが、チームの数だけExcelファイルが存在していました。データがバラバラで一元的に把握ができておらず、会計を締める段階で初めて「請求発行漏れ」「支払期日を過ぎても入金が確認できない」といった問題が分かるケースもありましたね。
――freeeを導入されたきっかけについて教えてください。
坂本: バックオフィスに課題があったことに加え、データや業務フローの見える化を行う必要があると考えていました。そこに、税理士事務所さんから「freeeなら要件を満たせる」とアドバイスがあったことが直接的なきっかけになりました。
freeeがつなぐ現場と経営「正確な売上見込み」が企業価値に直結
――システム導入時のサポート体制はいかがでしたか?
石川 玲美さん(以下、石川): freeeのサポート体制が充実していたので、システムの導入自体もスムーズでした。チャットで問い合わせると、今知りたいことをすぐに教えてもらえてとても心強かったです。さらに、メールでも回答内容を送ってもらえるので、後から情報を見返したいときにも便利でした。
― ―freee販売を導入されてからはどのような変化が見られましたか?
池田: コンサルティング部門とバックオフィス部門の連携がスムーズになり、見積もりや契約時の承認フローが可視化され、業務効率が向上しています。 これまでは、承認フローがチャットや口頭、メールなど様々な方法で行われていたため、いつ誰が承認したか不明瞭でした。導入後2ヶ月で、freeeのあるべき業務フローに沿うことで、承認フローが可視化されただけでなく、フローを守ることへの社内の意識が大きく変化したと感じています。
大竹 杏奈さん(以下、大竹): 全員が同じデータを確認できるようになったことで、進行中のプロジェクトが何件あるのか、少額案件に至るまで全て把握できるようになりました。
坂本: 導入後数カ月で会議などで共有する数字を出せるスピードが上がっています。また、これまでは期末の3ヶ月前にならないと売上目標と現状の差異が明確になりませんでしたが、売上見込みが可視化されたことで、現在は1年前の期首の段階で着地見込みを把握できるようになりました。これにより、事業目標達成のために必要な売上を共通認識として持てるようになり、会社全体のモチベーション維持にも繋がっています。
池田: 売上見込みは企業価値に直結します。根拠があるデータに基づいた3か年計画の策定が可能になり、株主や金融機関を含む社内外への説明責任を果たすことにも繋がっています。
坂本: 他にも、社内の評価制度も変わり始めました。以前は担当役員による属人的な評価システムだったのですが、今はクラスごとに年間の売上目標を決め、目標と成果を照らし合わせて査定が決まるという仕組みに改善しました。その結果、各従業員へのフィードバックが明確になり、評価に納得感が生まれました。
システム導入は目的ではない。freeeをきっかけに、人事評価を定め組織改革へ
――システム導入にあたって工夫されたことはありますか?
池田: これまでは「電子契約が必要だから電子契約システムを入れよう」というように、必要なシステムをその都度導入してきました。ですがせっかくシステムを入れても、意味を持って活用しなければ価値にはつながりません。本来の目的は、システム導入をそのものではなく、それをきっかけとした「制度設計と意識改革を図ること」だと考えています。そこで、従業員に勤怠や工数などを正しく入力してもらうため、それらが人事評価にもつながる仕組みを整えました。
坂本: 工数管理の入力率が以前のシステムでは4割程度だったのが、今では8割近くになりました。工数入力されたデータを人事評価に紐づけるという制度設計を作ったことに加え、freee工数管理の入力しやすさも重要な理由だと思います。Outlookのカレンダーと手軽に連携できる利便性もあって、自然と使ってもらえるようになりました。
正確な収支データが自然と集まることで実現する「会社を守る正しい値付け」と「攻めの採用戦略」
――freeeを導入されて数カ月ではありますが、今後の活用の見通しなどはありますか?
大竹: 今までは、過去の見積もり実績を参考にした価格設定を行っており、社内外の状況の変化をあまり反映できていませんでした。競合が少ないため本来の提供価値は、より高いものかもしれません。
坂本: 振り返ると、想定以上の工数がかかった案件も少なくありません。人件費も高騰する中、今後は自分達の身を守るために、原価に裏付かれた正しい値付けをしていきたいと考えています。その際、工数管理のデータが交渉材料となると考えています。 また、今はまだデータを蓄積している段階ですが、今後はプロジェクト単位の収支分析に着手していきたいです。これまで不透明だったプロジェクトごとの工数が、freee販売とfreee工数管理の導入により明確になり始めたところなので、今後はリソースの投入量が適切だったのかなどを見極められるようになると考えています。
池田: 弊社では50件以上のプロジェクトが並行稼働し、10年近くの期間がかかるものもあります。必要なリソースがプロジェクトのフェーズによって大きく変動します。そのため、プロジェクトの規模やフェーズごとに必要な標準的なリソースが明らかになれば、採用計画も立てやすくなるはずです。
freeeで始める「ひと」が中心の組織づくり
――freeeを一言で表現するならどのような言葉が当てはまりますか?
大竹: 「土台」「礎」といったイメージで、freeeを導入して初めて会社の根本ができます。
石川: 「始まり」「スタートライン」といったイメージです。freeeの導入により、自分たちの現状や業務のあり方などを客観的に整理し、可視化できるようになったことは、新たな事業展開の土台になり、大きな一歩になっています。
池田: 日頃の業務のなかで、特に意識しないで毎日使う。そのくらい浸透させたいという意味で「日常」ですね。
――貴社の今後の会社の展望をお聞かせください。
坂本: 日本全体が環境に優しく、ウェルビーイングな社会になるように、さらなる取り組みを進めていきたいと考えています。最近では、環境省の「グリーンファイナンスサポーターズ制度」において、コンサルティング部門の支援者に認定されました。環境に配慮した金融を促進する「グリーンファイナンス」の分野にも貢献していきます。
池田: 社内では「優しくあるために強くならなければならない」という点を大事にしていきたいですね。従業員のウェルビーイングを実現するには、「なんでもあり」の単なる自由ではなく、きちんとした評価システムと確かなルールが必要だと思うんです。そのためのシステムだと考えているので、今後もfreeeを活用して「ひと」が中心に好循環していくような社内制度を整えていきたいと思います。
掲載日:2025年8月8日
Company Profile
株式会社ヴォンエルフ様
従業員数:54名
URL:https://woonerf.jp/
事業内容
建物や都市の環境・健康への配慮に関する「LEED」や「WELL」といった米国発祥の国際的な評価基準を取得する「認証コンサルティング」、ライフサイクルアセスメント、エネルギーシミュレーション、コミッショニング、脱炭素戦略策定、ESG評価業務等を提供。