2025年の大阪・関西万博で、開幕初日に2,500機のドローンショーを成功させ、ギネス世界記録™に認定された株式会社レッドクリフ。同社はドローンショー国内シェアNo.1を誇る空のクリエイティブ集団です。
2019年の設立以来、次世代エンターテイメントを牽引し、国内外で急速な成長を遂げてきたレッドクリフですが、その急成長ゆえの「成長痛」に直面していました。 IPOを目指す中の多岐にわたる課題を同時に解決する必要がある状況下で、なぜこのタイミングでfreeeの導入を決断したのか。今回は、取締役CFOを務め、公認会計士でもある蛇谷光生さん、営業サポートの岡本千穂さん、経理担当の天野留菜さんに、freee導入の経緯と選定理由について詳しく伺いました。
「夜空に『驚き』と『感動』を」のミッションを掲げ、人々を魅了するドロ ーンショーを世界に発信
大阪・関西万博の初日に実施した2,500機のドローンショー
――はじめに、貴社の事業についてお教えください。
蛇谷さん(以下、蛇谷): 2019年の設立当初は全国のゴルフ場やテレビ番組などでの空撮から始まった会社で、2021年からドローンショーの事業をスタートしました。お客さまは大手企業や自治体など幅広く、特に昨年は全国各地の花火大会でのドローンショーを数多く行いました。直近では大阪・関西万博でのドローンショーも手がけています。
弊社は、「夜空に『驚き』と『感動』を」というミッションの下、「感動は『日本』から『世界』へ」をビジョンに掲げ、ドローンショーを通じて世界に誇る日本の文化やコンテンツを発信していきたいと考えています。
一般的に、ドローンショーはイベント演出の一種として見られる側面が強いのですが、実のところ「広告」としても優れた機能を持っています。見た人の“思い出“に刻まれるような、新時代の能動型広告として新たなポジショニングを確立できているのが、弊社の強みかもしれません。
また、弊社にはとことんまでクオリティにこだわる「作り込み」の文化があります。ドローン機体そのものの性能を追求するのはもちろん、人材についても歴戦のアニメーターを抱えており、質で勝負することを大事にしています。
――そういった事業を運営する、貴社の経営体制についても教えてください。
蛇谷: 現在の従業員は54名です。そのうち約8割はドローンショーの制作を担うメンバーで、機体のメンテナンスからフライトを担うオペレーター、アニメーション制作を担うアニメーター、ショー全体の企画を担うプロデューサーの計3チームで構成されています。そして残りが、広報や営業サポート・バックオフィスを担うメンバーです。
成長と共に見えてきた、内部統制への課題。設立から支えてきたfreeeで「成長の壁」を乗り越える
――freee販売の導入前には、どのような課題がありましたか?
蛇谷: 事業の拡大に伴って、従業員数が10名ほどから増加していく中で、受注の手続きがあいまいなまま業務が進んでしまうケースが見受けられるようになりました。たとえば、注文書を受け取らないまま案件を開始してしまうといった、いわゆる「ヒヤリハット」につながる事例も発生していたんです。
当社のドローンショーは、天候に左右されるため、注文書にキャンセルポリシーを明記し、リスクに備えることが不可欠です。こうした書面のやりとりが不十分だと、取引先との認識のズレが生じ、大きなトラブルを招く可能性もあります。受注から業務開始までのプロセスを、正確かつルール通りに運用できているかどうかは、経営上のリスクマネジメントとして非常に重要だと感じていました。
また、もともとは少人数体制だったこともあり 、社内のやりとりはチャット中心で、データ共有も個人の裁量に任せていた状況でした。しかし、上場を目指す企業として、業務フローの透明性や一貫性、内部統制の強度が問われるようになります。その点で、当時の運用は、上場企業にふさわしい体制とは言えず、早急に見直す必要があると感じていたんです。
――上場を目指すにあたっての課題を受けて、freee販売を導入することになった経緯を教えてください。
蛇谷: 顧問税理士がfreee会計を使っていた関係で、創業からfreee会社設立で会社の設立を行い、freee会計を利用していました。上場を目指すにあたっても、freee会計ではプラン変更のみで問題ないとなったので、受発注や内部統制の議題に関しても、同じfreeeで対応できると聞き、freee販売が検討対象となりました。
お話を聞いてfreee販売なら、販売フローにおける内部統制強化の課題を解決できる上に、案件ごとにデータ管理や原価計算ができると知り、導入を決定しました。
業務フローの標準化が、内部統制強化とコア業務への集中を実現
――freee販売の導入はスムーズに進みましたか?
蛇谷: 自社の業務フローが未整備な状況でしたが、freee販売の担当者の方が業務フロー構築を支援してくださったため、「何かあったら相談できる」という安心感のもと、システム構築をスムーズに進めることができました。
――導入後はどのような変化がありましたか?
蛇谷:
まず、業務フローの見直しにより、見積もり申請のタイミングで反社チェック・与信チェックを行うようになりました。一連のプロセスにきちんと与信管理が組み込まれたことで、不要なリスクを避けやすくなりました。販売フローにおいて、上長承認の証跡も残せるようになっています。
また、各チームが自分の役割に専念できるようになり、現場の負担が軽減されたのが大きな変化です。
受注から請求までの販売フローが管理部門主導になり、営業部門は営業、制作部門は制作に専念できるようになりました。たとえば、以前は請求書の発行をプロデューサーが行っていましたが、現在は売上申請を営業事務が行い、財務経理チームで確認し承認。請求書発行は営業事務が行うようになりました。
案件別収支を手間なく可視化、利益構造が明らかに。価格戦略の“型化”を実現
――案件管理の面での変化について教えてください。
蛇谷 これまでは、各営業担当がスプレッドシート上で案件ごとの収支を個別に管理しており、全社的に利益状況を把握するには、担当者に都度確認・集計を依頼する必要がありました。そのため、タイムリーな案件別の利益管 理ができず、経営判断にも遅れが生じていました。
freee販売を導入したことで、受発注データ・原価情報が1つのシステムに集約され、案件ごとの利益状況をリアルタイムに把握できるようになりました。部門をまたいでデータが共有されるようになり、粗利構造が“見える化”されたことで、たとえば「粗利率目標を5%引き上げるべきか」といった具体的な議論も進むようになりました。
さらに、これまでは現場で見えにくかった人件費などの固定費や立替経費、ドローンの使用機体の減価償却費なども案件単位で管理できるようになり、より正確な原価管理と利益把握が可能になりました。
また、案件ごとの収支データが蓄積されたことで、過去の実績をもとに「この規模・内容のショーなら、最低いくらで受注すべきか」が見えてきました。結果として、機体数ごとの目安となる価格早見表も整備され、受注時の価格交渉に繋がっています。
IPOを見据えた予実管理の基盤に
――IPO準備において、どういったことが重要だとお考えですか?
蛇谷:
IPO準備を進める上では、信頼性ある事業計画とその実行精度が問われます。予算を一度外すと市場からの信頼を失う可能性があるため、受注状況と着地見込みを高精度で把握する仕組みは不可欠です。
freee販売の導入により、「事業計画の妥当性」や「来期の成長性の蓋然性」を、データに基づいて説明できる体制が整ってきています。
工数を“見える化”して、原価と働き方の両方を最適化へ
――freee工数管理の導入後、どのような変化がありましたか?
蛇谷:
今回、初めての工数管理を行うために、freee工数管理を導入しました。勤怠データと連携させることで手間なく入力でき、案件ごとの稼働時間が抜け漏れなく把握できています。
当初は原価計算を行う目的で導入しましたが、「テレワーク時の残業の実態を把握できない」といった課題も浮かび上がり、今後は作業内容の把握や稼働配分の最適化にも活用していきたいと考えています。
「スタートアップにこれ1本」成長を止めない!拡張できる経営管理基盤
――freeeを利用する中で、特に魅力を感じるポイントはどこですか?
岡本さん: 従業員にとっても、管理者にとっても「使いやすい」システムというのが魅力ですね。実は前職でもfreeeを使っていて、営業として経費精算が使いやすいというイメージがありましたが、現職で管理者側になっても使いやすいシステムです。
蛇谷: freeeさえ入れておけば、なんでもできてしまうような「オールインワン」な点が魅力だと思います。弊社ではfreee会社設立から会計、人事労務、サイン、工数管理、そしてfreee販売を利用しており、経費精算や電子帳簿保存法の対応から、上場準備に必要な内部統制強化のためのワークフロー管理まで一元的に行っています。また、カスタマイズしなくてもすぐに使えるので、運用・管理に人手をとられないのも魅力ですね。
――他 の企業にfreeeをおすすめするとしたら、どのようにご紹介いただけますか?
蛇谷: 一言で表現すれば、「スタートアップにこれ1本」です。
freeeさえ導入しておけば、事業フェーズが変わっても、プランを切り替えるだけでそのまま使い続けられたり、後から複雑に他社のシステムを足し引きしなくても、十分に回る。成長に寄り添ってくれる、長く付き合えるサービスだと思います。
――最後に、貴社の今後の事業についての展望をお聞かせください。
蛇谷: これまでは問合せからの受注が中心でしたが、今後の新たな事業の軸として、自社主導のドローンショーにも携わっていきたいと考えています。
アニメやゲームといったIPコンテンツを活かして、これまでに見たことがないようなドローンショーを我々の手で作り上げたい。その結果として、日本のドローンショーの魅力をさらに押し上げられたら素晴らしいですね。
掲載日:2025年7月31日
Company Profile
株式会社レッドクリフ様
従業員数:54名
URL:https://redcliff-inc.co.jp/
事業内容
ドローンショー国内シェアNo.1のリーディングカンパニーとして、「ドローンショー企画・運営」「ドローン機体販売/サブスク」「ドローン空撮」 「ドローンプログラミング教室の企画・運営」などの事業を主軸に運営。