完全テレワーク型の居宅介護支援事業を実現する、株式会社279によるDX化の取り組み

株式会社279(つなぐ)代表取締役 次田芳尚さん、共同代表 小谷修一さん

課題
自由な時間・場所で経理作業したい経費精算、ワークフローを利用し全社効率化とリモートワークを実現

「よく遊び よく働く」というミッションを掲げ、完全テレワーク型の居宅介護支援事業所を展開する、株式会社279(つなぐ)。代表取締役の次田(つくだ)芳尚さんと共同代表の小谷修一さんのもと、独自の組織体制や、IT・ICTを活用した会社の仕組みにより、介護業界において異端児ともいえる働き方を実現し、そのなかで創業当初からfreee人事労務・freee会計をご利用いただいています。


同社はまた、居宅介護支援事業以外にも、自社でのアプリ開発や仕事と介護の両立を支援するコンサルティングも手掛け、自社だけでなく介護業界全体でIT・ICT活用を推進する活動を行っています。そのなかでfreeeの製品をどのようにご活用いただいているのか、代表取締役の次田さん、バックオフィス部門の田甫さん、紺井さん、阿佐野さん、小谷さんにお話しを伺いました。


導入の決め手

・テレワーク主体の働き方に対応できるクラウドシステム
・プロダクトが積み上げ式ではなく、パッケージ化された使いやすさ
・簿記を学んでいない人でも、簡単で使いやすい

導入後の効果

・ケアマネジャー業務とバックオフィスを切り離した組織体制を確立
・スタッフのほぼ全員がテレワークで成り立つ働き方を実現
・freee製品をはじめて使うスタッフでも問題なく活用できている
・経費精算や年末調整が簡単なボタン操作でできるように

ケアマネージャーからバックオフィスを切り離し、freee製品を活用

――「完全テレワーク型」の居宅介護支援事務所は、どのような組織体制で実現しているのでしょうか?

次田さん(以下、次田): 弊社には4つの部門があります。そのひとつが「居宅介護支援事業」の部門で、現在、20数名のケアマネージャーがいます。


介護業界でよくあるのが、ケアマネージャーの仕事が、バックオフィス業務など本来行うはずのケアマネージャーとしての業務以外で占められている状況です。ケアマネージャーという資格は、国家資格等と5年間実務経験が必要で、簡単に取れるものではないんですね。それなのに、そのステータスを活かした仕事ができない状況があります。


弊社の場合、「居宅介護支援事業」から「バックオフィス」を別部門として切り離し、事務員がバックオフィス業務を引き受けることで、ケアマネージャーが本来の能力を活かしてより多くのサービスを提供できる体制にしています。


「居宅介護支援事業」と「バックオフィス」の他には、社内外で使うアプリの開発を行っている「DX支援」と、一般企業向けにケアマネージャーの立場から仕事と介護の両立についてコンサルティングを行う「仕事と介護の両立支援」という部門もあります。


弊社は、DX化を前提として作った会社で、設立当初からテレワークが主体です。また、みなし労働時間制を採用することで、出勤時間と退勤時間を選択するこがとができ、当番制の仕事以外は各自の裁量で仕事をこなすという働き方になっています。


本社は札幌にありますが、スタッフが出社することは稀です。郵送物の管理などどうしても出社が必要な業務について、小谷に担当してもらっています。ケアマネージャーという職業柄、業務に集中してもらうためにも事務所に出社することはせずに、直接支援先を訪れる形をとっています。


完全テレワーク型に対応できるクラウドシステムがfreeeだった

――御社の場合はfreee人事労務・会計を設立時からご利用いただいていますが、そもそもfreee製品のことを知ったきっかけは何だったのでしょうか?

次田: まず、テレワーク主体の働き方に対応できる、クラウドのシステムを選ぶという前提がありました。会社を設立した2021年当時にそれが当てはまるサービスは、freeeともう1社くらいだったんですね。両サービスを比較検討するなかで、freeeのほうがある程度パッケージ化されていて、オプションでいろいろと積み上げるより良いなと選んだ感じです。


――freee製品の第一印象はどんな感じでしたか?

次田: freee会計については、いわゆる複式簿記をきちんと学んだ人にとっては、最初は戸惑いがあるだろうなと思いました。逆に専門知識がない人にとってはわかりやすいシステムですね。


田甫さん(以下、田甫):: 私は前職が会計事務所だったのですが、当時使っていたシステムはたしかに専門知識がないと進めにくいところがありました。freee会計は基本の考え方が違うので、最初は少し戸惑いましたが、慣れてくるとfreee会計のほうが使いやすいですね。人事労務では算定基礎届出や社会保険届出など必要な届出のアナウンスも事前にしてくれて、ボタンひとつで計算と出力までできるので、1人で仕事をするなかでも安心感をくれます。


2024年に行われた処遇改善加算に関する大幅な制度変更にも対応している点も高評価でした。


freeeによって実現できた業務効率化

――freee人事労務・会計を、どのような業務フローでご活用いただいているのでしょうか?

株式会社279

次田: 人事労務に関しては、入職時にfreeeのアカウントを作って、入社処理からfreeeを利用して必要な情報の入力をしてもらっています。直接スタッフと会わなくてもやり取りができるよう、チャットツールやクラウド型グループウェアを活用して、入職前の説明後から入職後のオンボーディングまで進めています。


田甫: 給与に関する届出や給与計算、社会保険に関する届出などは、すべてバックオフィス部門で管理して、freee人事労務で出力および提出を行っています。


会計に関しては、freee会計を使ってバックオフィス部門で毎月会計資料を取りまとめ、それを入力代行会社に渡して記帳してもらっています。弊社では確認のみをする形です。


――設立時からfreee製品をご利用いただくなかで、freee製品の利用で楽になっていると感じることはありますか?

田甫: たとえばfreee会計を使った経費精算は、ICTが苦手な方でも、一度説明をして使ってもらうときちんと必要な情報を入力できるようになり、チェックの手間が減っていると実感しています。


年末調整などもとどこおりなく済むのも、評価しています。freee人事労務でリマインドが来ますし、次にやることが明確に決まっていて、ボタンを押せば進むという流れなのでとても楽ですね。


――ICTが苦手な方に説明する際、工夫されていることはありますか?

ICTが苦手な方のために、操作の流れをひとつひとつマニュアル化して、社内のポータルサイトで確認できるようにしています。また、freeeの操作画面に説明を入れるなどして、皆さんに該当するボタンを選んでもらえるように工夫しています。


――バックオフィスでfreeeの製品などのDX化ツールを使うことで、工数や人員の増加を抑えられているところはあるのでしょうか?

次田: 一般的な居宅介護支援事業所と比べると、弊社の事務スタッフの数は多く見えるかもしれません。しかし実際には、ケアマネージャーが担う事務作業の大部分をバックオフィスが引き受けており、それを踏まえると、今の事務員の数が決して過剰というわけではありません。


現場では、「バックオフィスのメンバーがいなければ、業務が回らない」という声も聞かれます。

自社だけでなく業界全体のDX化を進めることが重要

――DX化を進められている御社から見て、介護業界のDX化について特に問題だと感じられるのはどのあたりですか?

小谷さん(以下、小谷): 事務所で仕事をしていると、郵送での書類提出もまだまだ多いですし、業界全体で取り組むことがやはり大事なんだなとすごく思います。


阿佐野さん(以下、阿佐野): DX化に抵抗感がある、敷居が高くて踏みだせないという方が多いですよね。そういった方々を引っ張れるような、きっかけを作る支援をしていきたいです。


私は、NPO法人タダカヨという非営利活動法人にも参加していて、全国の介護事業所に、無料または定額のICTを届けるという活動をしています。ICTに触れる機会を設け、業務効率化の効果を体感することで、DX化に積極的になっていただけたら嬉しいです。


freee製品を使うと「知らなくてもできる」ようになるから、コスト削減につながる

――次田さんが株式会社279を立ち上げたときに思い描いていた未来像に対して、今はどれくらい達成できていますか。

次田: 正直、まだ全然計画に追い付いていません。介護業界には、あるべき形を定めた指定基準というものがあり、計画に取り組んでいるところです。そのなかで、拠点の数を抑えながら、全国にケアマネージャーの数を増やしていきたいです。


また、DX化をしっかり支援できる業界のリーダー的役割を担っていきたいです。阿佐野もそうですが、弊社のスタッフの半分以上がNPO法人タダカヨにも参加していているので、そこにも注力してもらって、双方のシナジーが良くなってほしいと思っています。


25年後の2050年には、全国のほとんどの自治体で、ケアマネージャー1人で現状40人に対応しているところを80~100人受け持たないと要介護者があぶれる時代になります。それに対応するには、生産性を倍にするか、倍働くかどちらかしかない。それを言うと、皆さんDXをやりたいと言い出しますね。これは100%ではありませんが、売上が倍になれば、給料も倍になりますし……。


――介護業界でIT・ICT活用を進めるにあたり、freeeの製品を他の介護事業者さんに使っていただくとしたら、どういう点がおすすめできますか?

次田: freeeの製品を使うことで、自分たちでできることが増え、会計事務所などに外注するコストが減るというのは、ひとつのポイントではないでしょうか。専門知識がない、つまり知らないからお金を払わないといけない状態を「知らなくてもできる」に変えられるのが、freeeの製品だと思います。


また、属人化の防止にもなりますし、引き継ぎもスムーズですね。繁忙期などに臨時で人員を雇うことも簡単です。事務員が事務所にいる必要もありません。そういった感覚があれば、規模の小さいところほど楽になるはずです。逆に規模の大きな法人の場合、freeeの製品を使うことで、専用回線を使わずにどの拠点のデータも持ってくることができるという点が、非常に良いのではないでしょうか。