ITアウトソーシングとは?メリット・デメリットや導入の注意点を解説


最終更新日:2025年09月01日

ITアウトソーシングとは?メリット・デメリットや導入の注意点を解説

ITアウトソーシングとは、自社のIT業務を外部の専門企業に委託することを指します。システムの運用・保守からヘルプデスク、インフラ管理まで、委託できる業務範囲は広く、ニーズに応じてさまざまな形態で導入されています。

適切に活用すれば、従業員が本来の業務に専念できる環境を整えられるほか、ITコストの削減や業務効率の向上、最新技術の導入によるサービス品質の向上といったメリットが期待できます。

本記事では、ITアウトソーシングの概要から、委託可能な業務内容、導入における利点・注意点までを詳しく解説します。社内IT業務の負担を軽減したい企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

目次

ITアウトソーシングとは

ITアウトソーシングとは、企業が自社のIT関連業務を外部の専門業者に委託することを指します。業務のすべてを包括的に委託する「フルアウトソーシング」のほか、一部の業務だけを切り出して外部に任せるケースもあり、委託の範囲や内容は企業のニーズに応じて柔軟に選択できます。

委託可能な業務の範囲は多岐にわたり、業務効率の向上やコスト削減、専門性の確保といった目的や戦略に応じて活用されています。

ITアウトソーシングとSESの違い

ITアウトソーシングと混同されやすいものに、SES(システムエンジニアリングサービス)があります。どちらも外部リソースを活用する点では共通していますが、その目的や契約形態、責任の所在には明確な違いがあります。

SESは主に、エンジニア人材をクライアントに派遣し、特定のプロジェクト単位などで技術力・労働力を提供するサービスです。主に「準委任契約」に基づき、業務の遂行そのものではなく、稼働時間に対して報酬が支払われます。

一方、ITアウトソーシングは、特定の業務や成果物の完成を目的として業務そのものを外部企業に委託する形態です。「請負契約」または「準委任契約」に基づくことが多く、成果や業務遂行に対して責任を持つ点が特徴です。

ITアウトソーシングが注目される理由

近年、多くの企業がITアウトソーシングの導入を進めています。その背景には、労働力不足やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進への対応といった、社会的課題があります。

労働人口の減少による人手不足

日本では少子高齢化が進み、労働人口の減少が深刻な社会課題となっています。なかでもIT分野は人材不足が顕著で、経済産業省の調査では、2030年には約79万人のIT人材が不足すると予測されています。

企業にとってIT人材の確保は重要な課題となりますが、専門性の高い人材の採用や育成は大きな負担となります。このような背景から、自社で人材を確保するのではなく、専門性の高い業務を外部のプロフェッショナルに委託できるITアウトソーシングに注目が集まっているのです。

出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査 調査報告書」

DX推進の重要性が高まっている

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業の競争力を高めるうえで不可欠な取り組みとして注目されています。経済産業省もその重要性を強く訴えており、対応が遅れると「2025年の崖」と呼ばれる経済的損失が発生する可能性があると指摘されています。

しかし、DXの実現には高度なIT知識と継続的なスキル更新が求められるため、自社だけで対応するのが難しい企業も少なくありません。こうした課題に対し、ITアウトソーシングを活用すれば、専門業者の技術や知見を取り入れながら、業務効率化やサービス品質の向上を図れます。

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ITアウトソーシングの委託形態

委託形態概要
フルアウトソーシングIT業務全体を外部に一括で委託する形態。戦略立案から運用まで対応可能
運用サーバーやネットワークなどITインフラの保守・監視・障害対応などを委託する形態
ホスティング外部事業者が保有するサーバー設備を借り、サービスを提供してもらうアウトソーシング形態
ハウジング自社のサーバー機器を外部のデータセンターに設置し、運用管理を行う形態
ヘルプデスクITに関する問い合わせ対応やトラブルサポートを外部に委託
常駐外部スタッフが自社に常駐し、社内IT業務を支援する形態

ITアウトソーシングには、業務内容や目的に応じてさまざまな委託形態があります。ここでは、企業でよく利用されているITアウトソーシングの主な形態について解説します。

フルアウトソーシング

システムの企画・要件定義から開発、運用、保守まで、IT業務全体を一括して外部に委託する形態です。IT戦略の立案や実行など、中長期的なパートナーシップを前提とするケースも多く、企業の基幹システムに関わる重要な領域で活用されています。

運用

既存のITシステムやインフラの維持・管理業務を外部に委託する形態です。

たとえば、サーバーやOSの保守、ネットワーク機器の監視、クラウド環境の運用、データセンター管理などが含まれます。定型的な運用作業を委託することで、社内リソースを本来割くべきコア業務に集中させることができます。

ホスティング

サービス提供事業者が所有・管理するデータセンター内のサーバーリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)を、インターネット経由で利用する形態です。

自社でサーバーを購入・管理する必要がないため、初期コストを抑えられるのが特徴です。ただし、サービスによっては構成やカスタマイズの自由度に制限がある場合もあります。

ハウジング

自社で所有するサーバーやネットワーク機器の設置スペースを、サービス提供事業者のデータセンター内に借りるサービス形態です。

設置先の回線や電源、空調などのインフラは事業者が提供しますが、機器の運用・保守は基本的に自社で行います。ホスティングと比べて自由な構成が可能な一方で、初期投資や運用の負担は大きくなります。

ヘルプデスク

社内のITサポートや顧客からの問い合わせ対応を外部に委託する形態です。一般的にはコールセンター業務のアウトソーシングも含まれます。

定型的な問い合わせ対応などを外部に委託できるため、社内のIT部門をより専門的な業務に充てることが可能です。

常駐

外部ベンダーのエンジニアが、クライアント企業の社内に常駐してIT支援を行う委託形態です。システム運用のサポートやトラブル対応などを社内で迅速に行えるため、IT部門の人材が不足している企業や、即戦力を求める現場で活用されます。

ITアウトソーシングのメリット

ITアウトソーシングにはさまざまな形態がありますが、それらを理解して適切に活用することで、さまざまなメリットを得られます。ここでは、主に3つのメリットを紹介します。

人材がコア業務に注力できる

ITアウトソーシングの大きなメリットの一つは、社内の人材をコア業務に集中させられることです。

企業のなかには、従業員がシステムの保守・障害対応やヘルプデスク業務といったノンコア業務に多くの時間を割いているケースもあるでしょう。これらの業務を外部に委託することで、社内の人材は戦略的な企画や業績に直結する業務など、より付加価値の高い領域に専念できるようになります。

IT関連のコストを削減できる

ITアウトソーシングは、コスト削減の観点でも有効な手段です。

たとえば、専門性の高いIT人材を自社で雇用・育成する場合にかかる人件費や採用・教育コストを大幅に抑えられる可能性があります。また、必要な業務だけを外部に委託すれば、固定費を変動費化できるため、無駄なコストを抑えることが可能です。

さらに、ホスティングサービスの活用によって、サーバー機器の購入費やデータセンターの維持管理費といったインフラ関連コストも軽減されます。

ただし、アウトソーシングの効果は委託内容や契約条件に左右されるため、十分な計画と事前検討が欠かせません。

IT分野の品質向上が期待できる

ITアウトソーシングを通じて、外部の専門業者が持つ知見やノウハウを活用することで、ITサービスの品質向上が期待できます。

外部のプロフェッショナルによる対応により、自社だけでは難しい迅速で的確な問題解決が可能となり、システムの安定運用にもつながります。

また、日々進化するIT技術やセキュリティの最新動向を常に追うのは企業にとって大きな負担となります。ITアウトソーシングを活用することで、そうした最新知識や高水準のセキュリティ対策を取り入れやすくなり、競争力の強化にも寄与します。

ITアウトソーシングのデメリット

ITアウトソーシングは多くのメリットがある一方で、活用にあたっては注意すべきデメリットも存在します。ここではITアウトソーシング導入の際のリスクや課題について解説します。

ノウハウが蓄積されにくい

業務を外部に委託することで、ITに関する知識やスキル、運用ノウハウが社内に蓄積されにくくなるリスクがあります。

とくに、システムの企画から運用までを包括的に委託するフルアウトソーシングの場合、社内のIT担当者が実務に関わる機会が減少し、技術力の低下や業務内容のブラックボックス化を招く可能性もあります。

将来的に内製化や委託先の変更を検討している場合は、委託業務の内容を定期的に把握し、ベンダーとの密な情報共有やナレッジのドキュメント化など、内部に知見を残す工夫が求められます。

トラブル対応に時間がかかる場合がある

ITアウトソーシングでは、トラブル発生時の初動が遅れたり、対応に時間がかかる場合があります。自社で完結できる体制があれば迅速に対応できた事象でも、外部との連携や確認作業が必要になることで、対応スピードが落ちる懸念点もあります。

サポート体制が不十分な事業者を選定した場合、対応の質が低く、かえって社内業務に負担がかかるケースもあります。契約時には、障害時の対応スピードや連絡体制、責任分担などを明確にしておくことが重要です。

情報漏えいのリスクが高まる

ITアウトソーシングでは、機密情報や顧客データを委託先に提供する必要があるため、情報漏えいのリスクが高まる点にも注意が必要です。

万が一情報漏えいが発生した場合、企業の社会的信用を大きく損ね、損害賠償や顧客離れなど深刻な被害を受けるリスクがあります。

こうしたトラブルを回避するためには、委託先のセキュリティ対策や情報管理体制を事前に確認し、必要に応じて秘密保持契約(NDA)や情報管理に関する規定を契約書に盛り込むといった対策が求められます。

ITアウトソーシング導入の注意点

ITアウトソーシングを有効に活用するためには、導入前の準備と契約段階での取り決めが非常に重要です。ここでは、運用の際にトラブルを防ぎ、委託効果を最大化するための主な注意点を解説します。

責任範囲を明確化する

業務のアウトソーシングでは、自社と委託先の責任範囲をあいまいにしたまま業務を開始すると、後々のトラブルや認識のずれにつながります。

そのため、委託する業務内容や期待される成果、トラブル発生時の対応分担などを、事前に定義しておくことが重要です。「どこまでを委託するのか」「何をもって業務完了とするのか」を合意しておくことで、スムーズな連携と確実な成果につながります。

関連記事業務委託でよくあるトラブル事例を紹介!契約時の注意点と回避するための対策とは

作業手順について決める

業務の進め方についても、事前に手順やルールを取り決めておくことが大切です。作業フローや手順書、課題管理表などのドキュメントを共有することで、業務の標準化と属人化防止が図れます。

また、「誰が」「いつ」「どのように」報告を行うか、問題が発生した場合の対応フローなど、日常的な業務運用に関するルールも明文化しておきましょう。こうした取り決めがあいまいだと、対応の遅れや情報共有の不足が発生しやすくなります。

セキュリティについての取り決めを行う

ITアウトソーシングでは、機密情報や個人情報などの取り扱いが避けられないため、セキュリティに関する取り決めが非常に重要です。

委託先のセキュリティポリシーや管理体制、インシデント発生時の対応方針などを事前に精査し、信頼できる事業者を選定しましょう。

契約書には、秘密保持義務(NDA)やデータの取り扱いに関する規定、セキュリティ対策に関する条項を盛り込み、法的リスクにも備える必要があります。

社内IT業務の負担を軽減する方法

近年、企業のIT業務を担う情報システム部門(情シス)は、クラウドサービスやSaaSの普及、働き方改革への対応などを背景に、従来よりも高度かつ多様な業務を求められるようになっています。一方で、IT人材の不足は深刻化しており、限られたリソースで多岐にわたる業務をこなす必要があるのが現状です。

こうした状況を受け、ITアウトソーシングを活用して負担を軽減する企業も増えていますが、近年ではSaaS管理ツールの導入も有効な手段として注目されています。

SaaSの活用が進むなかで、情シスは自社が契約・利用しているサービスを正確に把握し、適切に管理・運用することが求められます。SaaS管理ツールを導入すれば、利用状況を一元的に可視化でき、ライセンスの最適化やアカウント管理の効率化が可能になります。

結果として、情シスの作業負荷を軽減できるだけでなく、セキュリティやコスト面のリスク軽減にもつながります。ITアウトソーシングと併せてSaaS管理ツールを導入することは、現代のIT業務において業務負担改善に効果的な選択肢といえるでしょう。

関連記事SaaS管理ツール比較12選|メリットや自社に合うツールの選び方を解説

SaaSを一元管理可能な「Bundle by freee」

フリーが提供する「Bundle by freee」は、複数のSaaSアカウントやライセンス情報を一元管理できるSaaS統合管理プラットフォームです。

アカウントの発行・削除・棚卸といった煩雑な作業を効率化でき、情シスや管理部門の業務負担を大きく軽減できます。

また、SaaSの利用状況や契約状況を可視化できるため、無駄なライセンス費用の削減やセキュリティリスクの把握にも役立ちます。とくに多くのSaaSを導入している企業や、情シスのリソースが限られている企業にとって強力な管理支援ツールとなるでしょう。

まとめ

ITアウトソーシングは、自社の人材やコストを最適に活用しながら、専門性の高いIT運用を実現できる有効な手段です。一方で、導入にあたっては明確な業務範囲の定義や、セキュリティ体制の確認といった事前の準備が不可欠です。

自社の課題や目的に応じて、アウトソーシングの活用やSaaS管理ツールの導入を検討し、IT業務の最適化とビジネスの成長につなげていきましょう。

よくある質問

ITアウトソーシングとは何ですか?

ITアウトソーシングとは、企業がIT関連業務の一部または全部を外部に委託することです。

詳細は「ITアウトソーシングとは」をご覧ください。

ITアウトソーシングで委託できる業務は?

ITアウトソーシングでは、システムの企画・要件定義、開発を包括的に委託できるサービスなど、委託可能な業務が多岐にわたります。

詳細は「ITアウトソーシングの委託形態」をご覧ください。

ITアウトソーシングを導入するメリットは?

ITアウトソーシング導入には次のメリットがあります。

  • 人材がコア業務に注力できる
  • IT関連のコストを削減できる
  • IT分野の品質向上が期待できる

詳細は「ITアウトソーシングのメリット」をご覧ください。

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