個人事業主がインボイスに登録するメリット・デメリットは?登録しない影響も紹介
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個人事業主もインボイスに登録すると、適格請求書を発行できるようになり、課税事業者との取引を継続しやすくなります。
一方で、免税事業者が登録した場合は消費税の申告・納税が必要になり、登録を取りやめても一定期間は免税事業者に戻れない場合があります。
登録するかどうかは、取引先の構成や売上規模、事務負担を踏まえて判断することが重要です。
本記事では、個人事業主がインボイス制度に登録するメリット・デメリット、登録しない場合の影響、開業届との関係を解説します。
そもそもインボイス制度とは?
インボイス制度とは、売手が買手に対して、取引に適用される税率や消費税額などを正確に伝えるための制度です。正式名称は「適格請求書等保存方式」といい、事業者は取引状況などを踏まえて登録するかどうかを任意で判断できます。
インボイス制度に登録した事業者は、取引にかかる消費税の詳細が記載された適格請求書(インボイス)を発行できるようになります。適格請求書は、買手が仕入税額控除を適用するために必要な書類です。
仕入税額控除とは、売上にかかる消費税額から、仕入にかかった消費税額を差し引いて納付税額を計算する仕組みです。買手は、売手から受け取った適格請求書を保存することで、原則として仕入税額控除を適用できます。
なお、インボイス制度に登録すると課税事業者として扱われ、消費税の申告・納税が必要になります。
インボイス制度の詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。
個人事業主がインボイス制度に登録するメリット
個人事業主がインボイス制度に登録するメリットは、以下のとおりです。
個人事業主がインボイス制度に登録するメリット
- 取引先との関係を維持・拡大できる
- 事業者としての信用が高まる
- 消費税の負担が軽減される特例措置がある
取引先との関係を維持・拡大できる
インボイス制度に登録すると、取引先との関係を維持・拡大しやすくなります。
売手である個人事業主がインボイス発行事業者に登録していない場合、課税事業者である取引先は、原則として仕入税額控除を受けられません。
2031年9月30日までは経過措置により、一定の要件のもと、インボイスの保存がなくても仕入税額相当額の一部を控除できますが、控除できる割合は段階的に縮小されます。
そのため、取引先にとっては、インボイスを発行できない事業者との取引が負担になる可能性があります。その結果、取引先がインボイスを発行できる別の事業者へ取引を切り替えるケースも考えられるでしょう。
インボイス発行事業者として登録しておけば、取引先側の税務上の負担を軽減しやすくなり、既存の取引を継続しやすくなります。
また、新規取引先から「インボイスを発行できるか」を確認される場面でも、取引先の候補に入りやすくなる点がメリットです。
事業者としての信用が高まる
インボイスに登録すると、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」に登録番号などの情報が公表されます。取引先は登録番号を検索することで、相手が正規に登録された事業者であるか確認が可能です。
登録番号は、適格請求書を発行できる事業者であることを示す情報です。特に新規取引や法人との取引では、登録番号の有無が取引先の確認項目のひとつになる場合があります。
消費税の負担が軽減される特例措置がある
免税事業者とは、消費税の納税義務を免除された事業者です。課税期間の基準期間中の課税売上高が1,000万円以下の場合は免税事業者として扱われます。
なお、前年の1月1日から6月30日の期間(特定期間)の課税売上高が1,000万円を超える場合は、基準期間の売上高にかかわらず課税事業者となります。特定期間の判定では、課税売上高に代えて同期間の給与等支払額の合計額を用いることも可能です。
免税事業者からインボイス発行事業者になった個人事業主は、消費税の負担を軽減できる特例措置を適用できます。
具体的には、2026年分までは、売上にかかる消費税額の2割を納付税額とする2割特例の対象です。また、2027年分・2028年分は、個人事業主の場合、売上にかかる消費税額の3割を納付税額とする3割特例の対象です。
特例の対象期間中に登録すれば、通常の計算方法よりも納税負担を抑えて、インボイス制度への対応を始められる可能性があります。
なお、2割特例・3割特例の適用には一定の要件があり、もともと課税事業者であった人は対象外です。適用できるかどうかは個別の状況によって異なるため、税務署または税理士に確認しましょう。
出典:国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」
個人事業主がインボイス制度に登録するデメリット
個人事業主がインボイス制度に登録する主なデメリットは、以下のとおりです。
個人事業主がインボイス制度に登録するデメリット
- 消費税の申告・納税が必要になる
- 経理・事務の負担が増える
- 一度登録すると簡単に取りやめできない
消費税の申告・納税が必要になる
インボイス発行事業者として登録を受けると、課税事業者として消費税の申告・納税が必要です。
インボイス登録がない場合は、基準期間(個人事業主は前々年)の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として消費税の納税は免除されます。
ただし、免税事業者もインボイス登録を受けると、課税売上高の金額にかかわらず課税事業者となり、消費税の申告・納税が必要です。
経理・事務の負担が増える
インボイス発行事業者になると、定められた記載事項を満たす「適格請求書」を発行する必要があります。適格請求書には、登録番号・適用税率・税率ごとに区分した消費税額などの記載が必要です。
そのほか、特に免税事業者が課税事業者になると、消費税の申告・納税の事務負担も新たに発生します。会計ソフトの活用などで効率化を図り、負担を抑える工夫が重要です。
一度登録すると簡単に取りやめできない
インボイス登録を取りやめるには、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出する手続きが必要です。書面で提出する場合は、管轄のインボイス登録センターへ送付します。
翌課税期間の初日から登録の効力を失わせるには、その初日から起算して15日前の日までに提出しなければなりません。
また、免税事業者からインボイス発行事業者になった個人事業主は、登録を取りやめてもすぐに免税事業者へ戻れるとは限りません。原則として、登録開始日以後2年を経過する日の属する課税期間までは、課税事業者として扱われます。
たとえば、2026年中に登録した個人事業主は、2028年12月31日まで消費税の申告・納税が必要です。登録後も課税事業者として扱われる期間が続くため、登録前に取引先との関係や納税負担を確認しておきましょう。
個人事業主がインボイス制度の登録申請書を提出する方法
インボイス制度に登録するための登録申請書は、郵送またはe-Taxで提出します。
郵送の場合
郵送の場合は、必要事項を記入した「適格請求書発行事業者の登録申請書」を管轄のインボイス登録センターに送付します。登録申請書は、国税庁Webサイトからダウンロード可能です。
また、管轄のインボイス登録センターの所在地は、国税庁Webサイトで確認できます。
e-Taxの場合
e-Taxとは、国税に関する各種手続きをインターネット上で行えるシステムです。インボイス制度の登録申請にも対応しており、e-Taxソフトまたはe-Taxソフト(Web版)から申請できます。
e-Taxには、ダウンロードして利用する「e-Taxソフト」と、ブラウザ上で利用できる「e-Taxソフト(Web版)」があります。e-Taxソフト(Web版)では、画面の案内に沿って入力することで、申請書の作成から登録申請が可能です。
なお、e-Taxを利用するには、マイナンバーカードなどの電子証明書や利用者識別番号の準備が必要です。
利用者識別番号の取得方法を確認したい場合は、別記事をご覧ください。
これから事業を始めるなら開業届を提出しておく
開業のタイミングでインボイス登録を検討している場合は、開業届もあわせて準備しておくと、手続きの抜け漏れを防ぎやすくなります。
開業届は、個人事業を始めたことを税務署へ届け出るための書類です。原則として、事業を開始した日の属する年分の確定申告期限までに提出します。提出が遅れても罰則はありませんが、青色申告の承認申請書など、ほかの届出との兼ね合いもあるため、早めに提出することが望ましいです。
インボイスの登録申請は、開業届の提出有無にかかわらず行えます。ただし、これから開業する場合は、開業届とインボイスの登録申請書を同じタイミングで準備することで、関連する手続きをまとめて進めやすくなるでしょう。
インボイスに登録しないと個人事業主はどうなる?
インボイス制度への登録は任意です。ただし、インボイス制度に登録していない事業者との取引では、買手である課税事業者が原則として仕入税額控除を適用できません。
仕入税額控除を適用できない場合、取引先の消費税負担が増える可能性があります。
インボイス未登録による影響は、取引先に課税事業者と免税事業者のどちらが多いかによって異なります。登録すべきかどうかは、取引先の構成・自身の売上規模・取引先からの要請の有無などを踏まえて判断することが重要です。
取引先や見込み顧客に課税事業者が多い場合、インボイスを発行できないことが取引継続や新規取引の判断に影響する可能性があるため、該当する個人事業主は、インボイス制度への登録を検討する必要があります。
一方で、取引先に免税事業者が多い場合や、取引上インボイスの発行を求められる場面が少ない場合は、免税事業者のまま活動することも選択肢のひとつです。
インボイス制度の登録有無で個人事業主の開業届の記入内容は変わる?
インボイス制度に登録しても、個人事業主の開業届の記入内容は変わりません。開業届にはインボイス制度に関する記入項目がないため、登録の有無にかかわらず同じ内容を記入します。
なお、開業届の主な記入項目は以下のとおりです。
個人事業主の開業届の主な記入項目
- 提出先・提出日
- 納税地・上記以外の住所地・事業所等
- 氏名・生年月日・個人番号
- 職業・屋号
- 届出の区分・所得の種類
- 開業日
- 事務所等を新設した日
- 開業に伴う届出書の提出の有無
- 事業の概要
- 給与等の支払いの状況
各項目の記入内容を確認したい場合は、別記事をご覧ください。
まとめ
インボイス発行事業者として登録すると、適格請求書を発行できるようになり、取引先との関係を維持・拡大しやすくなるメリットがあります。
一方で、免税事業者が登録した場合は、消費税の申告・納税が必要になり、経理・事務の負担も増えます。
インボイス制度に登録するかどうかは、取引先に課税事業者が多いか、自身の売上規模・事務負担を許容できるかなどを踏まえて判断することが重要です。
また、これから開業する場合は、開業届とインボイス登録申請書をあわせて準備すると、必要な手続きの抜け漏れを防ぎやすくなるでしょう。
参考文献
▶︎国税庁「インボイス制度について」
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よくある質問
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個人事業主がインボイス制度に登録するデメリットは?
個人事業主がインボイス制度に登録する主なデメリットは、消費税の申告・納税が必要になることや、経理・事務の負担が増えること、登録を取りやめてもすぐに免税事業者へ戻れない場合があることなどです。
詳しくは「個人事業主がインボイス制度に登録するデメリット」をご覧ください。
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個人事業主がインボイス制度に登録する方法は?
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詳しくは「個人事業主がインボイス制度の登録申請書を提出する方法」をご覧ください。
監修

松浦 絢子
松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

北田 悠策
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。