freee開業 開発秘話

開発ストーリー -自分で事業をやりたい方を後押しするようなプロダクトを作りたい -

個人事業の開業に必要な「開業届」や「青色申告承認申請書」を、簡単に作成することができるfreee開業
申請書の書き方を説明する書籍やインターネット上の記事はあっても、届けを自動で作成してくれるサービスは他にはありません。
freee開業を開発した2人に、開発時に苦労したことや、おすすめの機能についてインタビューしました。

左から、プロダクト開発担当の轡田さん、企画・マーケティング担当の前村さん、デザイナーの黒田さん

左から、プロダクト開発担当の轡田さん、企画・マーケティング担当の前村さん、
デザイナーの黒田さん

インタビュイー
轡田哲郎(くつわだてつろう):
2014年より株式会社freeeにジョイン。freee会計の開発、グロースチームのリーダーを経て、個人事業主向けサービスのProduct Manager兼エンジニアを担当。サッカーは自転車でやる派。2007年東京工業大学大学院卒。専門は情報工学。
前村菜緒(まえむらなお):
個人モバイル事業本部マネージャー兼マーケティング統括。学生時代、freee創業期からエンジニアインターンとして参画。広報、マーケティング、事業戦略など幅広く担当。ゴルフ、ピアノ、ワイン、歌って踊るのが好き。2013年東京工業大学大学院卒。専門は経営工学。
インタビュアー
佐藤まり子(さとうまりこ):
日本とオランダで活動するフリーライター。旅行と剣道と猫が好き。

超少数でプロダクトを開発

ー まず、freee開業を作るのにどれくらいのメンバーが関わったんですか?

前村:3人ですね。私が企画・マーケティングを担当し、全体のデザイン、UXはデザイナーの黒田さん、実際のプロダクト開発は轡田さんがお一人で担当されました。

ーこんなに便利なサービスを3人だけで作ったんですか!
お二人の簡単なプロフィールや、これまでのキャリアについて教えていただけますか?



轡田:私はメーカーの株式会社リコーに新卒で入って、7年ほど開発と新規事業企画を担当しました。
リコーの主な事業は複合機ですが、事業領域としては働き方全般です。新しい働き方をするため必要なサービスを考えたりしていました。

また、シリコンバレーに2ヶ月ぐらい行かせてもらったこともあります。モバイルのアプリのプロトタイプを開発して向こうの人に使ってもらい、本質的な価値は何かを探りました。ハードでしたが、なかなか楽しかったです(笑)
freee歴は、今年(2017年)の8月でちょうど3年になります。

シリコンバレーで仕事していたときの写真

シリコンバレーで仕事をしていたときの写真

ー freee開業のほかに普段はどういうことをやっていらっしゃるんですか?

轡田:もともとはfreee会計のWebエンジニアです。その後、グロースチームに異動しました。グロースチームとは、freeeを継続して利用するユーザーを増やすための、グロースハックを専門としたチームです。
昨年の4・5月くらいに、個人事業主向けのプロダクトのプロダクトマネージャー兼エンジニアになりました。事業とプロダクトの成長を両立していくための戦略を立てています。


ー 前村さんは、学生時代からfreeeにいらっしゃるんですか?

前村:はい、freeeが社員3人くらいのときからいますね。
学生時代に創業間もないfreeeでインターンをして、2013年に新卒としてゲーム会社に就職し、データ分析ツールの開発などをしていました。

2014年はじめにfreeeに戻ってきて、広報を1年半ほど担当しました。ただ、まだ会社が小さかったので、マーケティングも兼任しつつ、必要ならサポートに入ることもありました。

2016年ごろからマーケティングに専念し始めて、個人事業主向けのマーケティングがメインなりました。今年の1月からは事業戦略を担当していて、現在はマネージャーをやっています。


ー freeeは、人も、仕事も、オフィス環境もすごく心地いいですよね。戻ってきたくなる気持ちわかるかも。

確定申告�期

確定申告前はチームでカウントダウン写真を撮影


freee開業の開発に込めた想い

ー freee開業を私も使ってみたのですが、ものすごく分かりやすくてびっくりしました。

前村:ありがとうございます(笑)私もfreee開業で開業届を作りました。freeeは副業OKなので。本当に一瞬で申請書作成が終わります

ありがたいことに利用者数も順調に増えています。
正確な数はお伝えできないのですが…かなりの方々にご利用いただいています

前村さんも実際に開業届を提出

前村さんも実際に開業届を提出

ー freee開業の開発はいつ頃始まったんですか?

轡田:本格的に始めたのは2016年7月くらいですね。

前村:やろうって決めたのが2016年の4月〜6月。それから調査を始めました。

轡田:最初、中身は全くなかったです(笑)「個人事業主向けの開業をとにかくもっと簡単・ラクにしたい」っていう想いだけ。7月〜9月で開発しました。


ー かなり短期間で作ったんですね。リリースしてから修正作業はありましたか?

轡田:ほぼしてないです。

前村:パートナー企業さんの連携はどんどん増えていますが、機能自体はほぼほぼリリース時のままです。


ー freee開業を作ろうと思ったきっかけを教えていただいてもいいでしょうか?

轡田:これから、個人事業を始めるハードルはどんどん下がっていくと思います。
副業の解禁や新しい働き方などのムーブメントが、いま世の中では起きていますよね。

そういう流れが出来る中で、自分で事業をやりたい方を後押しするようなプロダクトを作りたかった。そして、日本の開業率アップにつなげていきたいです。

もう一つ、個人事業主の方にスムーズに青色申告を選択してほしいという想いがあります。開業した時に開業届を税務署に提出しますよね。そもそも何のために出すのかご存知でしょうか?


ー 開業した個人事業主を管理するため…とかでしょうか?

轡田:実は出さなくて良いと言えば、良いんです。
ただ、「開業届」を出さないと青色申告で確定申告ができません。青色申告をするためには「開業届」「青色申告承認申請書」する必要があるのです。

提出し忘れた場合、3月15日までに提出しないと来年度の青色申告ができなくなります。


轡田:青色申告って一般的に難しいイメージがありますけど、会計ソフトを使ってる限り、青色申告も白色申告もやること自体は同じです。

「開業届」を出さないと、青色申告の大きなメリットを受けられません。freee開業を使えば必要な書類が自動で作れるので、そこで役立ちたいと思っていました。


ー 私も個人事業主ですが、青色申告の話に関してはいま初めて知りました。

轡田:佐藤さんのように知らずに開業し、本来得られるはずのメリットを得られていない方がいらっしゃいます。どうにかしたいという想いがありました。

前村:情報が一元化されていないですよね。本当に意欲がある人だけしか情報を得られない状況かも。
だから、開業届と青色申告の関係について記事情報を載せたり、まとめたりするだけでも価値があると思います。




開業に必要な届出を無料で作成できる「freee開業

前村:開業の時に知ってもらいたいことを、きちんと織り込むプロダクトにしたいという想いがあります。
オンラインで開業届けが出せるソフトというよりも、開業の時にこれを見ておけば安心して開業できるプロダクトにしたいです。
だから、リリース時に含める機能としては大変でしたが、青色申告65万円控除、10万円控除、白色申告のどれが最適化わかる「税額シュミレーション」は絶対に削れませんでした。


おすすめポイント1:青色申告?白色申告?どちらがお得かシュミレーションできる

ー 税額シュミレーションがあると安心します、すごく

轡田:ありがとうございます。
青色申告の65万円控除って、どれくらいメリットがあるか、開業するときはよくわからないと思うんです。


ー そうですね、「65万円」てなんとなくインパクトがあるような感じはするけど…

轡田:自分で調べてみて、「こんなに違うんだ」と、とても驚きました。
ただ、それを字面で言われてもピンと来ないので、きちんと数字で比較して見せ、その上で青色申告か白色申告か選んでほしいんです。

freee開業の「開業に必要な書類を自動で出せる」という機能と同じくらい、実は大事にしている機能です。

前村:そうですね。freee開業のおすすめポイントにも結びつきます。
自分で数字を入力することで、自分ごとになると思うんです。本当に必要な人に、青色申告を後押しすることができます。

轡田:実は、freee開業を使った人の青色申告選択率、9割を超えているんです。


ー それすごいですね。みんな納得して青色申告を選択してるんだ。

前村青色申告ってイメージ先行というか…「1000万円ぐらい売り上げてる人がやるもんだよね?」って友人にも言われました。友人の奥さんは個人事業主で、「うちの嫁さん稼ぎないから青じゃなくていいと思うんだよね」みたいな。


ー 実際、売上月20万とかいかなくても青の方がいい?

轡田:メリットはあります。

月収10万円で税額シュミレーションをしてみると、青色申告のほうがお得であることがわかると思います。

税額シュミレーション


おすすめポイント2:何も調べなくても、最適な書類を作成できる

ー 他におすすめのポイントはありますか?

轡田:開発前の企画段階で、知り合いの個人事業主さんに開業時の何が大変だったって話を聞いたんです。

開業届を税務署に出しに行く手続き自体には不安や大変さはなかったのですが、実はみなさん書類の中身にすごく自信がなかったそう
だから、すごく簡単に、入力していくだけで自分に合った必要十分な書類が出てくるものを作りたかった。開業に関する知識がなくても、何も調べなくても、最適な書類が出てくるようにしたかったんです。

前村:個人的なおすすめポイントは、職業がプルダウンで選べるようなっているところ。
何て書いたら正解か、誰も答えを持ってなくて。これで大丈夫だよって選択肢を与えてあげることは、マジ価値(freee社の価値基準の一つ「マジで価値ある」の通称)だと思います。


ー 分かりやすいマジ価値は、簡単に届けを作れる点。みんなが気づいていない、潜在的なマジ価値は青色申告にスムーズに入れることですね。

前村:そうですね。当初は、開業する人に使って欲しいと思っていましたが、途中から白色申告の人が青色申告にスムーズに移行するために使うプロダクトとしての発想もでてきています。


「分かりやすさ」と「正確さ」はトレードオフ

轡田:苦労したこともあります。話していいですか(笑)

ー ぜひお願いします(笑)

轡田:「分かりやすさ」と「正確さ」ってトレードオフだと思うんです。バランスが難しい。

正確なものを作ろうと思ったら、届出書をフォーマットでユーザーが入力するのが一番良いんです。でも、やっぱり「記入項目がよくわからない。何て書いたらいいか分からない」という点を解消したかったので、極力、必要最低限の簡単な質問で完成するように作りました。

わかりやすく、その上で正確さが担保されているのかどうかがすごく大事で…。特に、税金に関することなので。用語を調べたり、税務署に何度も連絡して調べました。


轡田:届けを見てみると、分からない用語って何気にいっぱいあるんです。例えば、「使用人」。使用人の給料の記載が、青色先従者の届出には必要なんですよ。家族と使用人て何が違うとか?「給与額」っていうのはそれが今後なににつながるのか? 実は給与額には上限があって、それを超える場合には再度届けを出し直さないといけないんですよ。

だから、正確な書類に仕上げることが一番大変でしたね。もし間違っていて、多くの方の開業届が受理されないなんてことになったら、社会的な問題になります。freee開業が完成したときは、一番最初に自分がユーザーになって、開業して、問題ないことを確認しました。


ー freee開業の入力項目の横に、はてなマークがついてるじゃないですか。あれすごいいいなって思ってて。

轡田:そうそう、あの文言も…

前村:調べましたね。
情報が多すぎると余計迷うので、最低限必要な情報を絞り込みました。

轡田:正確さを求めるなら、税務署の開業届出書の書き方のページにリンクを貼って紹介するのが、私達としては一番楽なんですけどね。でも、イチからユーザーに紐解いてもらうのは、良くないと思うんです。freee開業を使うことで、疑問を持たず、迷わないようにしてあげたかった。


ー 前村さんは大変だった思い出とかはありますか?

前村:あんまりないかな?

リリース後、メディアに取り上げてもらい、開業は世の中のトレンドになってるんだと感じました。開業届けをオンラインで作るサービスを作ったのは、うちが初ですよね?

轡田:初ですね。

前村:自信を持って世に出したサービスなので、特に困ったこととかはないです。
願わくばほぼ全員、freee開業で開業する世界にしたい(笑)
そして、「開業って簡単なんだ」と、もっとみんなに発信してもらいたいですね。意気込んで開業するっていうよりは、ぱぱっと5分でできたよ、みたいな。カジュアルさ発信して欲しい。


夢や挑戦の実現を応援したい

ー 今後、freee開業をどう成長させていきたいか、どんなサービスにしていきたいかなどありますか?

前村:「新しいチャレンジする人を応援する」気持ちをずっと持ち続けて、仕事がしたいですね。
開業関連でいうと、理想は、スマホだけで開業が終わった!という人が続々でてくること。freee会計のユーザーさんでアプリで会計やって、確定申告もできたという方がいらっしゃるくらいなので。開業に関してもそういう未来は全然あると思います。

轡田:個人事業主、フリーランスの方々は、何かしら想いというか…ただお金を稼ぐだけじゃない何かを求めている人が多いように感じます。

実現できるように少しでもサポートをしていけるプロダクトを作っていければと思いますね。


freee開業について話し合う三人


ー 個人事業主の方のお話を聞いてみて、こんなこと求めてるんだとか、話してみて驚きとかありました?

轡田:色々ありますね。やっぱり孤独感を感じる人が多い。

前村:新しいスキルの取得とかも1人だと大変。

轡田:そうそう!自分のスキルを活かして起業したけど、スキルにあった仕事だけをやっているとか。会社で働いてると、全然違うスキルを持った人、違う考え方の人から新しい刺激を受けて新しい学びがあったりするんですが、自分の中のものしかなくて、なかなか成長の実感を得られない方もいるようです。

前村さん:でも、やっぱり全体的には楽しそうな人が多いのが印象的でしたね。自分のやりたいことやってる方はとても輝いています。そんな人がもっと増えるような未来を作っていきたいです。


色々なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!