「アナログな業界だから」で諦めない。西多摩で4つの老人ホームをまとめる社会福祉連携推進法人の挑戦

社会福祉連携推進法人WTBASE

業務執行理事・事務局長 五箇 忠司 さん

「アナログな業界だから」で諦めない。西多摩で4つの老人ホームをまとめる社会福祉連携推進法人の挑戦

導入前の課題

  • 給与明細の紙交付や手渡しなど、数字には表れない「煩わしさ」による生産性低下
  • 特定人材に業務が依存し、欠員や異動が発生した際に安定して業務を継続できる仕組みが未整備
  • 各法人でシステムが異なり、共通の課題解決策やノウハウのシェアが進まず、法人間のリソース共有が困難

導入の目的

  • バックオフィスシステムを統一による法人間のオペレーション標準化による連携の円滑化
  • ペーパーレス化による職員の負担と非効率な「見えない工数」解消による業務効率化
  • 特定のハイスキル人材に依存しない人が変わっても安定して回る持続可能な組織体制の確立

導入後の効果

  • 大量の請求書・領収書を画像でAI-OCR(文字読み取り機能)による会計書類管理の効率化
  • 初めての決算書作成もストレスなく完遂、毎月の会計処理が15分程度で完了するように
  • 使いやすいUI/UXで、労務未経験でもわずか3カ月で人事労務を1人で担当

目次

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東京都西多摩地域で4つの社会福祉法人の連携推進を担う社会福祉連携推進法人 WTBASE(ワットベース)。1法人1施設の小規模法人が抱える、人材不足や施設の老朽化といった経営課題を解決し持続的なサービスを届けるため、2024年に設立されました。

業務執行理事・事務局長として法人の実務を統括する五箇忠司さんは、老人ホームの労務担当時代からfreee人事労務を活用し、現在は参画法人間でのシステム統一を構想して各法人と協議を重ねています。

今回は、五箇さんに、freee会計・freee人事労務導入の経緯や成果、および今後の展望についてお聞きしました。

法人間のリソース共有で経営効率改善を目指す。4つの社会福祉法人が参画するWTBASEの役割

はじめに、WTBASEおよび「社会福祉連携推進法人」について簡単にご説明いただけますか?

五箇忠司さん(以下、五箇): 社会福祉連携推進法人は、社会福祉法改正で2022年施行された、社会福祉法人等の連携を促進し、各法人の経営基盤の強化を図る組織です。特に小規模法人では経営基盤が脆弱になりやすいため、地域福祉、災害、経営、人材、物資等の分野で同様な課題を持つ複数の法人がリソースを共有し、経営効率の向上を図ります。

たとえば、設備の協働購入によるコスト抑制や、人材の流動的な配置によるノウハウ共有などの取り組みがあります。社会福祉連携推進法人は、その調整業務を担っています。

WTBASEは2024年設立の社会福祉連携推進法人で、東京の西多摩地域の4つの老人ホームの連携促進に取り組んでいます。

WTBASE立ち上げ前後の五箇様のお仕事についてお聞かせください。

五箇: 私自身は介護施設の生活相談員や施設長、保育園の園長を経験し、2022年に現在のWTBASE参画法人の1つである福信会に事務局長として入職し、人事労務も担当していました。

その後、WTBASEの立ち上げに関わり、業務執行理事・事務局長に就任しました。立ち上げ後しばらくは私1人で実務を担当していましたが、2025年秋に職員を1人採用し、調整業務などを任せています。

業務知識がなくても使えるインターフェース。文字読み取り機能で領収書の管理がスムーズに

前職の福信会時代からfreee人事労務を活用されているとのことですが、運用開始した経緯をお聞かせください。

五箇: 実は、福信会では私が入職する8カ月ほど前にfreee人事労務を契約していたものの、当時の担当の都合もあって使われず放置されていたのです。そのため、はじめは解約を考えてカスタマーサポートに連絡を取ったのですが、説明を受けるうちにfreeeの利便性を理解して、運用を継続した次第です

freee人事労務を使い始めて、どのような印象を持ちましたか?

五箇: 当時、私は労務未経験で業務知識がほとんどなかったのですが、freeeを触っているうちに流れがわかって、3カ月くらいで大抵の業務はこなせるようになりました。

毎月の給与計算はもちろん、人事データの更新といったイレギュラーな作業も「なんとなくここを触ればいいんだな」という感じで、直感的な操作がしやすいソフトだと感じます。わからないことがあったときも、ヘルプが充実しているのでありがたいですね。

カスタマーサポートの印象はいかがでしたか?

五箇: 対応がすごく丁寧で、特に導入時は大変お世話になりました。労働法関係の込み入った内容など、迷う部分があれば一緒に調べてくださり、おかげで労務未経験の状態からでも1人で仕事を回せるようになりました。

WTBASE設立後のfreee会計導入の背景や経緯を教えてください。

五箇: freee人事労務が便利だったので、将来的に参画法人のバックオフィス業務全般をfreeeで統一することを構想して、まずはWTBASEでfreee会計を導入しました。WTBASE設立の2カ月後には導入して、2024年の決算書は早速freee会計で作成しました。

freee会計を導入して感じたメリットをお聞かせください。

五箇: 決算書の作成自体が初めての経験でしたが、freeeのおかげでそれほど時間を取られることなく終えられました。参画法人との打ち合わせの合間などに作業を進めることができ、あまりストレスも感じませんでした。

今は、会計処理は経験のある職員に任せています。まだ法人の規模が小さいこともありますが、毎月の会計処理は15分ほどで終えていますね。

freee会計のなかで、特に便利だと感じる機能を教えてください。

五箇: 請求書などの文字を画像から読み取るAI-OCRが特に便利です。法人設立の際に大量の請求書を1枚ずつクラウド保存する必要があったのですが、手入力だと面倒な作業も、撮影してボタンを押すだけの作業は少し楽しく感じたほどです。

どの施設にも潜む“見えない工数”。オペレーションの統一で、共通課題の解決へ

参画法人でのfreee活用を推進していく構想をお持ちとのことですが、現状、各法人には具体的にどのような課題があるのでしょうか?

五箇: どの法人も、今の仕組みで回ってはいるのですが、潜在的な課題が多いと感じています。

例えばある法人では給与明細を紙で渡しています。この場合、明細を印刷して封筒に入れる工数はもちろん、業務中の職員の手を止めて明細を渡す手間もd、数字に表れないコストになっています。時間だけでなく、「煩わしさ」といった感情面でのコストも、見えないところで生産性に影響しているはずです。

各法人には、freeeのメリットをどのように説明していますか?

五箇: 一例として、行政書類の電子申請により、社労士の顧問料を見直せることなどを話しています。また、社会保険料増減の自動反映もわかりやすいメリットです。人の確認だけだと見落としのリスクがありますが、freeeを使えば自動で社会保険料増減の把握と控除額の調整が行われるので、労務担当はかなり楽になると思います。

将来的には、各法人のシステムをfreeeで統一して、法人内での業務を効率化するとともに、法人間での連携が取りやすい形を作っていきたいです。業務上似たような課題を抱えていても、システムが違うと解決策のシェアができなくてもったいないんですよね。

今は各法人に会計担当がいますが、今後のオペレーション次第では、WTBASEに会計担当を置いて一元管理ができるようになるかもしれません。バックオフィスのスリム化を進め、現場の設備や人員に予算を使えるようにしていきたいですね。

「アナログな業界だから」で諦めない。属人化しない仕組み作りで安定した施設運営を目指す

今後の福祉業界におけるDX化について、五箇様のお考えをお聞かせください。

五箇: 経営に苦しむ福祉施設が増えるなか、国は福祉施設の大規模化・統合を推進しています。しかし、統合という形でなくても、システムの導入による業務工数削減やオペレーションの標準化によって解決できることは多いと思います。

施設ごとに重視したいポイントなどは考慮しつつ、施設を安定して運営するためには、システムはなるべく統一したほうがいいですね。そのほうが人も異動しやすいですし、属人化を防ぎ、事故や病気などによる欠員のリスクにも対応できます。

経営視点でも、Aさんは会計しか知らない、Bさんは勤怠しか知らない、といった縦割りの形より、バックオフィスメンバーがお互いの領域を立体的に見られるほうが健全だと思います。勤怠管理・給与・会計とデータが連動することで、施設運営全体のお金の流れを把握し、改善に向けた施策を考えることができます。

最後に、バックオフィス業務の効率化を検討している社会福祉法人へのメッセージをお聞かせください。

五箇: 「アナログな業界だから」というような枠に縛られず、時代に合わせて変化していくことが重要だと思います。

これから福祉施設が生き残っていくためには、採用の間口を広げていく必要があります。特にバックオフィスは、業務経験の豊富な人ばかりが入ってくるわけではありません。不慣れな人でも業務を覚えやすい仕組みを整えることで、人が変わっても安定する組織を作ることができます。

freeeのようなクラウドサービスは、特定の人材のスキルに依存しない組織づくりの大きな味方となるはずです。「今の仕組みで成り立っているからいい」ではなく、施設の未来のことを考えて、改革を進めていけるとよいのではないでしょうか。

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