飲食業界に携わって25年
――遠⼭様のこれまでのキャリアについて教えてください。
⾼校時代から⼈前で表現することに興味を持ち、大学卒業後小劇団へ入り、舞台に⽴つことからスタートしました。 その後デザイナーのアシスタントの契約社員として、ソニークリエイティブプロダクツに入社し、スポーツ関連の公式グッズの企画や販売に携わっておりました。
2000年にグローバルダイニングに⼊社。13年間にわたり、多様な飲⾷業態・価格帯やレストランウェディングでの経験を積みました。店舗運営を通じて、顧客視点の重要性を学びました。その後、プレジャーカンパニーにおいて教育システムの再構築や、日本外食新聞での接客についてのコラム執筆を⼿掛けていました。
2020年には、飲食企業向けコンサルティングを⾏う「リードライブカンパニー」をプレジャーカンパニーに所属していた3名で設⽴し、現在は飲⾷業界へ恩返しを果たすことを決め「WARA-L」という会社を設立。サービス 研修やセミナーを実施することで飲⾷業界の発展に尽力しています。最近では特にテクノロジーを活⽤した接客は、新たなイノベーションのタイミングと捉え、飲食業界の可能性を発信しています。
起業して1年
――freeeで開業してくださり、本⽇(インタビューの日)は1年記念⽇ですね。改めておめでとうございます。 1年前どのような想いを持って株式会社WARA-Lを設⽴されたのですか?
「WARA-L」を起業した背景には、「自分自身を育ててくれた飲⾷業界やお世話になった方々やその未来への恩返しをしたい」という想いがあります。飲⾷業界は、社会に出る多くの⼈が初めての働く場を提供することが非常に多い重要な場所です。そこでの接客や料理を通じて得た嬉しい体験が、この業界に⼈を引きつけると感じています。しかし、現在は⼈⼿不⾜などの課題があり、嬉しい体験への接点が減少しています。そこで最近では、テクノロジー活⽤が、業界の課題解決とその先の未来を作り、関わる皆様が笑顔になれる環境を創造すると考えています。株式会社WARA-Lは、そのような理念のもとで多様な取り組みを⾏っています。
――freeeを導⼊し、現在まで利⽤してくださっている理由を教えてください。
freeeは個⼈事業主登録時から利⽤しており、株式会社WARA-Lの起業にも活⽤しました。
事業を開始する際に、業務を効率化するシステムとしてインターネットで検索。⾃分⼀⼈でも円滑に経営管理ができ使いやすいと感じ選びました。現在はfreeeを使って、請求書を作成し、領収書の写真撮影や⼊⾦チェックは携帯で⾏っています。使用してみるとfreeeひとつで請求書の作成や⼊⾦のチェック、給与計算もできるため、私だけではなく特に複数店舗を管理している会社にとって便利な製品ではないか?と感じています。
――freee製品は飲⾷業界の皆さまにもご活⽤いただけると思いますか?
飲⾷業界では、⽀出のコントロールが課題で、特に店舗の現場では⼩⼝精算が煩雑になっています。多くの飲⾷企業では、⽇々の会計や経費管理が⼿作業で行なわれており、これが店⻑の負担になっている場合も多くあります。⽉末に本部へ領収書をまとめて郵送したり、直接渡しているという話も聞きます。⽉末の仕事は、領収書管理だけが業務ではないのに、それがかなりの負担になっています。そのため、特に複数店舗を管理する際には、⼩⼝現⾦のやり取りや煩雑な紙での管理がなくなるfreeeはオススメです。起業したばかりのオーナーは現場や事務作業に追われ、寝る時間もありません。この部分を効率化できれば、より重要な部分に時間を割けるようになるのではないでしょうか。
――飲⾷業界のテクノロジーの利⽤は進んでいるのでしょうか?
ご存じのように日本の⼈⼿不⾜は深刻で、コロナ禍でその傾向が強まりました。バックオフィスを中心にテクノロジーを活⽤した業務の効率化や、AIによる窓⼝対応が進んでいます。コロナ禍では接客領域にモバイルオーダーや配膳ロボット導入するなど広がりを見せています。 テクノロジーが進むほど、⼈間らしさが希少価値であり、差別化になると考えています。アナログな部分である「⼈間味」をいかに活かすかが今後重要になります。
例えば、配膳ロボットの導⼊で、顧客満⾜度は⾼まっているというアンケート結果もありますが、どちらかというと不満が減っていることが大きいです。そこに⼈との関わりでプラスの体験を提供することがファン獲得につながります。飲⾷店は、⼈々が楽しく過ごし、癒され、元気になる場所であり、その経験を通じてプラスの気持ちを持ち帰っていただくことが不可⽋です。 これからの時代では、⼈と接客する価値としてプラスの影響を与えることができる⼈材を育むことが、飲⾷業界においてますます重要度を増していきます。料理や⾷材にこだわると同時に、接客にも⼒を⼊れてほしいと思っています。
コロナ前は、接客や教育に⼒を⼊れていない企業が多く、新しい業態や⽬⽴つ外観に注⼒する傾向がありました。しかし、⾒えるもの(形あるもの)は真似されやすく、売上を上げたりV字回復させたり するための仮説に過ぎないので、本当に売れるかはわかりません。接客に関して⾔えば、正しい努⼒をすればマイナスにはなることはありません。ここ数年は、コロナの影響で⼈材が離れやすくなり、⼈の重要性に気づく企業が増えてきました。最初は⼈の退職を防ぐ⽅法の相談が多かったですが、今では接客⽅法や店⻑教育の⾒直し、企業理念や評価制度の再構築への相談が増えています。
――飲⾷業界へのIT企業の参⼊は多いですか?
飲⾷業界は市場規模も大きくIT企業からすると、一見戦いやすいかもしれません。2019年〜2020年頃、ITリテラシーの低い企業に対して、業務効率化や売上向上を謳うシステムを簡単に販売できると考える⼈が多くいました。しかし、そういった企業と関わることで飲⾷企業が不利になる可能性があるため、何らかの対策を講じたいと考えていたところ、レストランテック協会と出会いました。レストランテック協会が音頭を取り、この数年で、貢献的な視点を持つベンダーと、質の⾼い企業が増えました。
現在、レストランテック協会の顧問として、セミナーや会合でこのような話をすることで、飲⾷企業が⽬指す⽅向に賛同し、実現を加速できるパートナーを少しでも多く⾒つけられるように活動しております。また、2010年頃から地域ごとに、今までのライバル関係ではなく飲⾷企業がコミュニティを作り、情報をシェアす る動きが高まりました。2020年コロナ禍以降、徐々にテクノロジー企業間の情報のシェアや協働することが増えてきました。それにより飲⾷企業が助かり、顧客が楽しめる場所を作るための取り組みが増えています。IT企業も⼀緒に作り上げていこうという姿勢になってきたことは⼤きな変化です。
――freeeは、どのようにすれば飲⾷業界の皆さまに利⽤いただけると思いますか?
POSレジとの連携を広めることが⼤切だと思います。POSレジと連携することで、データをリアルタイムに取り込み、⽇々の経営を円滑化できます。飲⾷業界の皆さまは、バックオフィスの効率化を求めており、スムーズに⽇々の業務を完了する仕組みを望んでいます。損益計算書と連動することも重要ですので、連携がどれだけ業務を効率化と早くて正しい経営判断を支えることをお客様に伝えることがポイントだと思います。
――飲⾷業界で、⽇々の売上などのデータ管理に課題はありますか?
お店は毎⽇ 営業しているため、⽇々の管理がとても重要ですが、しっかりできているところは少ないです。リアルタイムの管理・コントロールはダイエットに似ていると思います。毎⽇管理し、⼀週間で調整するようなイメージです。
⽉ごとに⾒ると経営判断は遅くなりがちです。場合によっては、⼆ヶ⽉後の⽉初に経営判断が正しかったかを検証することにもなり、⾮常に遅れてしまいます。
飲⾷店は、取引先も多く、実績を締めるのに時間がかかり、なかなか完了しないことが多々あります。仮にでも締めておけば、すぐに検証ができるのですが、⼆ヶ⽉後に過去の検証をしても意味がないことはわかりますよね。それでもまだ多くの会社がアナログで管理をし、ルーティーンになっているため抜け出せなくなっているのです。
そのため、⽇々の管理を元に修正を繰り返し、⽉初に⼤体の数字で締めて、会議でレポートを出せるようにするだけでも違ってきます。そうすることで、今後の⽅針をすぐに検討できます。ただ会計ソフトを使うだけでなく、飲⾷店オーナーにとっては売上と利益の⾒える化や推移の把握が重要だと考えます。
数字管理に関しては税理⼠に任せている経営者も多いようですが、経営者は利益が出ていないと常に不安です。特に中⼩企業では⽇々の管理が重要で、誰よりも早くチェックする飲⾷店オーナーも多いと聞きます。
しかし、freeeは誰でも使いやすいような仕様になっており、レポート機能も充実しているため、経営管理もやりやすくなると思うのでオススメしています。
⼩⼝現⾦の管理を簡略化し、経営のデータ分析にかかる時間を短縮することで、接客⽅法や店⻑教育の⾒直し、企業理念や評価制度の再構築に時間を割いていただきたいと思います。 それによって、お客様や従業員に対する時間をより多く取れるようになり、飲食業界の発展につながることを期待しています。