受け身ではなく「攻めのバックオフィス」へ freee導入で1カ月以上も早く月次報告ができるようになった理由

リンクタイズ株式会社 花岡 裕子 氏

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ライターやカメラマンなど、外部のフリーランサーに業務を委託する機会が多く、「以前は入力作業に追われ、思うように早く締められず、月次報告を上げるのにかなりの時間がかかってしまいました」と、ファイナンスチームの花岡裕子さんは話します。


以前勤めていた会社で、freee会計を利用していたという花岡さん。リンクタイズに転職後、スタンドアロンの会計システムから他社のクラウド会計システムに移行し、その半年後にfreeeへの移行を決めたそうです。短期間で会計システムの入れ替えに踏み切った背景と、導入後の効果についてお伺いしました。

攻めのバックオフィスにシフトするため、freee導入を決断

【画像】花岡 裕子

――花岡さんは、数社で経理を経験されたそうですね。これまで勤めていた会社では、どんな会計ソフトを使用していましたか?

freeeを含め、これまで5種類ほどの会計システムを使ってきました。「経理を戦略的にしたい」と考えている経営者は非常に多く、転職するたびに「会計システムを変えたい」と相談されてきましたね。リンクタイズに転職する前の会社でも、ほかの会計システムからfreeeへの変更を経験しました。

――御社では、花岡さんの入社前に、freeeの導入が決まっていたのでしょうか?

freee導入を決めたのは、私が入社した後です。実際に入社したのは2018年12月ですが、その前から取締役社長の角田(勇太郎氏)に「経理しか確認できない会計システムから、クラウド会計システムに移行したい」と提案されていたんです。


そのときは結局、freeeより月額費用の安い他社のクラウド会計システムを導入しました。当時、クラウド会計システムの機能はどれも似たようなものだと思っていたのですが、実際には大きく違いました。

――導入後、思い描いていたような業務改善ができなかったのでしょうか?

そうですね。そのシステムは、支払い管理と仕訳管理のプロダクトが分かれていて、それぞれ打ち込みをしなければならない仕様でした。当社は、毎月多数の支払い+海外送金もあるんです。


なので、支払い処理が終わると、次も同数分の仕訳処理を行い、その後に決済仕訳を入力する、というルーティンに毎月追われることになってしまって……。その作業だけで1カ月丸々かかるため、クラウド会計システムを入れたメリットを感じられませんでした。


【画像】花岡 裕子

――その業務量を1人でこなしていたんですか?

導入した当初は私1人で行う予定でしたが、業務量が想定以上だったため、人事総務を担当しているメンバーにも手伝ってもらっていました。それでも人手が足りなかったので、途中からはアルバイトを雇いましたね。その体制のまま数カ月を過ごしたんですが、私が本来やりたかった経理のデジタル化に手がつけられず、それによる日常業務の効率化、予実管理の早期化もできていなかった。


このままでは、チームミッションである「攻めのバックオフィス」にはほど遠いと感じて、取締役にfreee導入を提案したんです。

――クラウド会計システムの入れ替えに関して、取締役はどのような反応でしたか?

「面白いこと言うね」と。会計ソフトの載せ替えが経理にとって一大事だと把握しながらも、導入後のメリットを即座に理解してくれ、「やってみよう」と快諾でした。


当社の取締役は、会計業務に精通しているだけでなく、最新のシステムにも詳しく、技術的な理解があったので判断は早かったです。

――システムを入れ替えることに対して、社員の方から不満の声は上がりませんでしたか?

ほとんどありませんでした。当社はもともと出版業界には珍しく、ペーパーレスを推進し、クラウド中心で業務を徹底的にスピード化・見える化しようという方針でしたから、新しいシステムを入れることには抵抗が少なかったです。「また変わるのね。で、いつから?」くらいのものでした。ありがたかったですね。社員全員の理解を得て、2019年7月末頃からfreeeに移行しました。

――移行作業はどのように行いましたか?

「現在のシステムでの経費精算は今月が最後で、来月からはfreeeに移行します」と周知し、誰も出社しない土曜日に、8時間ほどかけて移行作業を行いました。その後、社員にメールで移行を通知し、説明会を開きましたね。


freeeの経費精算は、1つの画面に領収書を増やしていけますが、以前のシステムでは領収書1枚ごとに申請を行う仕様でした。経費精算の方法が変わるので、それを理解してもらうために説明会が必要だったんです。

月次報告にかかる日数を大幅に繰り上げ、無駄な残業もなくなった

【画像】花岡 裕子

――以前使用されていたクラウド会計システムとfreeeでは、どのような点が大きく違うと感じますか?

まず挙げられるのが、APIの公開ですね。当社では、外部のクラウドシステムに頼っています。クラウド会計システムにそれらを全て連携させて、入力作業を減らしたいと考えていたのですが、以前はAPIが公開されていなかったため、実現できませんでした。


また、インポート・エクスポート機能の有無も大きな違いだと感じます。以前までのシステムではインポート機能がなかったため、口座情報や原価管理のデータをいちいち入力し直さなければなりませんでした。入力作業は時間がかかりますし、手入力だとミスが起こりやすい。データ連携ができないことで、人件費も余計にかかっていました。

――freee導入によって、どのような効果がありましたか?

月次報告を大幅に短縮できたことが非常に大きいですね。経理に求められる役割は、経営陣に対し、いかにリアルタイムに近い会計情報を報告できるかにかかっています。1カ月以上も早く月次報告ができるようになったので、私が用意する予実管理も資金繰りの提言も、圧倒的に早くなった。経理として、経営に貢献できるようになったと感じています。
実際に、経営陣から「わかりやすくなったし、早くなった」という評価をもらいました。数字が把握できると、決算時期の着地の予想がしやすくなりますからね。


また、他部署の社員とのコミュニケーションが取りやすくなった点も、freee導入の効果といえます。先ほどもお話しした通り、当社では、別の発注・請求管理システムを導入して原価管理を行っています。


営業職や編集職の社員が、発注・請求管理システム上で取引先と請求書のやりとりを行うと、原価情報がデータになった状態で経理に集まります。会計に続いてfreee人事労務を導入したので、経費の振り込みと給与の仕訳も全て連携し一括管理が可能になりました。


いまは、取締役に経営ナビゲーションを見てもらえば、実績の数字がリアルタイムでわかります。私のほうでも、数字を報告するための資料を作らなくて済むようになり、業務の削減につながっています。

経理業務に割く時間は6割、残り4割で新しい取り組みを進めたい

【画像】花岡 裕子

――freee導入を検討している企業にアドバイスをお願いします。

どれほどベテランの経理担当者でも、手入力の場合は必ず打ち間違いを犯します。freeeの導入によって、そういったミスを減らすことで、思っている以上に作業時間が削減できます。また、現在、補助科目がある会計システムを使っている方は、そこから早く脱却していただきたいですね。

――それはなぜでしょうか?

補助科目は勘定科目それぞれに紐づくので、勘定科目の数だけ登録する手間が必要になります。一方、freeeでは、補助科目の代わりに、勘定科目に「取引先」「部門」「品目」が紐づきます。一つひとつ登録する手間がかかりませんし、取引先に口座情報が登録されているため、仕訳を入力するだけで支払いデータが自動的に作成されます。


長年、経理職として勤めている方は、補助科目に慣れていると思います。そのため、補助科目のないfreeeに抵抗を感じる方が少なからずいらっしゃるはずです。どちらも経験した私から見れば、補助科目がないほうが時間短縮になりますし、むしろデータが美しいですよと伝えたいですね。

――会計システム選びに失敗しないために、事前に確認すべきことがあれば教えてください。

2つありますが、1つはインポート・エクスポート機能の有無です。システムによっては、インポート・エクスポート機能を付けることで月額費用が上がってしまう場合もあります。


もう1つは、支払いシステムが同じプロダクト内にあるかどうか。freeeの前に使っていたシステムでは、経費精算プロダクト、会計プロダクト、支払い管理プロダクトと、プロダクトがそれぞれ分かれていました。


それらを連携させるためのひと手間が、すごいストレスだったんです。freeeでは、同じプロダクト内でデータ連携できるため、経費精算も支払いもあっという間にデータ化が可能です。

――経営者の中には、新しい会計システムの導入に躊躇する方もいらっしゃると思います。どのように説明すれば承諾してもらえるでしょうか。

経営者の方は、経理職出身でもない限り、経理業務の実情を知りません。「定型業務なのに、なんで毎月そんなに大変なの?」と考えている経営者の方も少なくないと思います。


なので、いま使っている会計システムのコストパフォーマンスと、業務全体にかかる人件費を可視化して「新しいソフトを導入することによって、コストパフォーマンスがこれだけ上がります。1人でも回せるようになるので、人件費も抑えられます」と説明するといいでしょう。費用対効果が明確になれば、経営者にも納得してもらいやすくなると思います。

――最後に、より良いバックオフィスとなるための、今後の展望をお聞かせください。

私が所属するコーポレートプランニングチームでは、「攻めのバックオフィス」を目指しています。多くの企業では、管理部門はルーティンを正確に忠実に行う、どちらかと言えば、受け身の姿勢のところが多いと思います。当社は全く逆で、会社を良くして、社員が働きやすい環境を作るために、どんどん新しいシステムや制度を試しています。


freee導入によって作業を圧縮できた今、チームメイトと協力して、さらに超効率化できる工夫やツールの検討を積極的に仕掛けていきたいです。


今回のような取材やセミナーなど、表に出る機会も増やしていけるといいですね。業務全体のうち、経理業務は6割、残りの4割で新しい取り組みを推進していくのが理想です。


(執筆:東谷好依 編集:杉山大祐/ノオト)

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