長野県志賀高原にあるホテル一乃瀬は、1964年に創業されたリゾートホテルです。毎年冬になると多くのスキー客で賑わい、家族や団体旅行、学生旅行から企業研修まで多くの人々に親しまれています。
2020年に三代目代表取締役社長に就任された西澤寛樹さんは、コロナ禍のなか「若い力で新しいホテルづくりをしよう」と、伝統を守りつつ新しい時代に合わせたリブランディングを積極的に進めています。
事業継承への一歩としてバックオフィス業務の改善を目指し、freee会計、freee人事労務を経て、freee人事労務アウトソースを導入いただきました。「DXを進めるために必要なのは危機意識と覚悟」と語る西澤さんに、freee人事労務アウトソース導入の効果や会計士や社労士との連携、今後の展望について伺います。
母がいないとバックオフィス業務が回らなくなるのが課題だった
freee導入前、バックオフィスはどのような状況だったのでしょうか。
西澤寛樹さん(以下、西澤): 当ホテルは祖父が一代目、父が二代目を務めており、私にとっては家業なのですが、大学卒業後は別会社で働き、2012年から入社した形です。入社後、まず課題に感じたのはバックオフィス業務がアナログ、かつ属人的であること。当時、母がバックオフィス業務を一手に引き受けており、彼女なしでは成り立たない状況が続いてたんです。
ホテル一乃瀬 代表取締役社長 西澤寛樹さん
そのような課題があったなかで、どのような経緯でfreeeを導入する流れになったのでしょうか。
西澤: 入社3年後あたりから会計士の先生方との会議にも同席するようになり、お金の流れが少しずつ把握できるようになりました。経営自体は順調でしたが、バックオフィス業務には依然として危機感を抱いていたので、会計士さんたちと相談しながら、クラウド型の会計ソフトの導入を検討し、2019年にfreee会計を導入しました。
会計や人事労務ソフトを導入する際、士業の方から少なからず抵抗を受けるケースがあるという話を聞きます。freeeの導入に対して、士業の方々はどのような反応だったのでしょうか?
西澤: 熱い想いで語ると、顧問会計士さんに前向きに捉えていただき、ご協力いただきながら導入を進めました。顧問会計事務所の使用している会計ソフトとfreee会計との連携がスムーズだったことが後押しになったのだと思います。会計事務所の計らいで、担当いただいた会計士さんのITリテラシーが高かったことも大きいですね。
また、毎年の決算期には、税理士さんに2〜3日ホテル滞在してもらって経理処理をしていたのですが、freeeを導入してからは確認のために1日だけ来てもらうだけで完了できるようになりました。業務効率化のメリットがあるため、士業の方も協力的だったのでしょう。
なるほどですね。それでは、社内側の反応はどうでしたか?
西澤: 始めは抵抗があった父も母も「会計士さんたちに協力いただけるのなら」と導入に賛成してくれました。2020年6月より三代目として事業継承した後、2021年にfreee人事労務、2024年にfreee人事労務アウトソースを導入し、運用を開始しています。
特に人事労務系の業務では、ホテル業界ならではの難しさがありそうですね。具体的にどんな課題がありましたか。
西澤: リゾートホテルの場合、お客様の利用が朝と夜に集中するので、そのスケジュールに合わせて従業員のシフトを組みます。都度休憩を挟みながら働いてもらう「中抜け勤務」がほとんどで、タイムカードを1日で8回打刻する人も。
また、行楽地にあるホテルの場合、繁忙期と閑散期の差が激しいという特徴があります。繁閑に合わせて短期勤務が前提の人員の出入りが多く、入退社管理が煩雑になり、紙ベースのアナログな管理体制と各手続きの進捗状況がわからないことが課題でした。
freee製品を複数ご利用いただいていますが、ツールの導入含めて業務のやり方を変えるのは難しいと思います。苦労した点と、その乗り越え方を教えてください。
西澤: 2019年にfreee会計を導入した時が、一番難しかったです。新たな会計ソフトの導入は、会社にとって非常に重要な選択です。社内の抵抗もゼロではありませんでした。
そのため、まずは私が当時の会計ソフトとfreeeの両方の操作を把握し、その連携方法などを従業員たちに伝えることに。これまで手作業で管理していた母にもfreeeに触れてもらいました。本格導入までには1年ほどかかりましたね。
そうしたかいもあって、freee人事労務やfreee人事労務アウトソースについては、比較的スムーズに導入ができました。一つひとつ段階を踏みながら導入したのが良かったのかもしれません。
作業工数は20%減 浮いた時間でお客様とより向き合えるように
freee人事労務アウトソースは、担当者だけでなく、他の従業員の方も触れる機会が多いと思います。導入にあたり、どんな反応がありましたか。
西澤: 若手従業員には、変更になった旨を伝えるだけで対応してもらえたのですが、ベテラン従業員の場合は「設定方法がわからない」と一人では対応できないことも……。導入の際に社内説明会を実施し、一緒にアプリをダウンロードするところから周知を徹底しました。
使い慣れてくれば従業員たちの苦労も減っていき、年末調整などの申請も、freee人事労務、freee人事労務アウトソースを導入してからは、とても楽になったなんて声も聞こえています。
導入したかいがありますね。西澤さん自身が実感された効果はありますか。
西澤: バックオフィス業務の見える化が進み、作業時間は20%ほど削減できました。freee人事労務アウトソースの導入で、社会保険や年金など、これまで面倒に感じていた作業をまるっとお任せできるようになったのもうれしい点です。
業務効率化で浮いた時間を使って、地域の会合や経営者コミュニティへの参加、団体旅行の営業など、経営者がやるべき仕事に費やすことができました。お客様や従業員のための時間を増やせたことが、導入したことの一番大きな恩恵といえますね。
経営者の危機意識と覚悟こそがDXを進めるポイント
バックオフィス部門における今後の展望を教えてください。
西澤: リゾートホテルは、都会のビジネスホテルと違って、すべての業務を省人化・簡略化したほうが良いわけではなく、人との関わりが欠かせません。DXによって効率化できる業務と、人間の力が必要不可欠な業務を正確に分けることで、お客様とのコミュニケーションする時間を増やしつつ、豊かな大自然とホッとできる空間を提供していきたいですね。
これからfreee人事労務アウトソースを導入しようと考えている方に、アドバイスをお願いします。
西澤: 周辺の経営者たちには「freeeは最高だよ!」と言って回っているんです(笑)。でも、いくら私が伝えても、実際に導入するかどうかは経営者の危機意識がどれくらいあるかに関わってきます。今までの業務体制のままでもなんとかなる可能性もありますが、「このままではマズい」「やり方を変えなければ」と本気で思った時が、DXに取り組むタイミングでしょう。
導入前に、freeeの担当者の方から言われたことでもありますが、DXを進めるのに必要なのは、経営者の「覚悟」です。業務を変える以上、社内からの抵抗は避けられません。そのため、「DXを進めるぞ」と経営者が腹をくくって積極的にコミットすることがポイントになるのではないでしょうか。また、導入支援中はフリーの方が伴走してご支援いただいたのが、非常に心強く助かりました。
ご自身が苦労してDXを推進し、効果を実感できているからこそのアドバイスですね。
西澤: コロナ禍のなかでの事業継承だったので、「これからどうしよう」と考えるきっかけがあったのが大きかったです。社内に1人か2人ほど熱量をもって推進してくれる人がいるだけで、大きく変えられるはず。少し古臭い言い方かもしれませんが、最終的には気合いと根性が大事です。
特にこれから家業を継ぐ世代の人たちは、日々の業務に追われて、なかなか新しいことに手をつけられない事実もよく理解しています。そんな状況でも「このままじゃマズい」という危機意識が前に進む力を与えてくれるので、ぜひがんばっていただきたいですね。
(執筆:つるたちかこ 撮影:小林直博 編集:ノオト)
