千葉県に本社を置くEMオノエ株式会社は、鉄鋼や化学系など各種プラントの運転受託やメンテナンス事業などを手がける企業です。1952年に創業し、現在は本社に加えて千葉事業所、倉敷事業所、笠岡事業所を設けています。
同社のバックオフィス業務は、アナログな作業が多く、限られた人員で行うことによる属人化に悩まされていました。特に給与計算業務は、担当者の退職が相次ぎ、事業所長が実務を兼任せざるを得ない状況に陥り、業務効率化と属人化からの脱却が大きな課題でした。
これらを解決するために導入したのが、freee人事労務アウトソースです。導入のきっかけや導入プロセス、その後の効果などについて、倉敷事業所長の竹林征洋さん、総務部の小池美寿々さんに話を伺いました。
ベテラン人材の退職で「脱・属人化」が喫緊の課題に
freee人事労務アウトソースを導入する前の、バックオフィスの体制と業務状況について教えてください。
竹林征洋さん(以下、竹林): 当社では、給与計算などのバックオフィス業務を3人のメンバーで行っていたのですが、2年ほど前、シニア社員が退職した直後に、長年勤めていたベテラン社員も急に辞めてしまったのです。実務を担える社員が、小池だけという状況に陥ってしまいました。
そのため、私も事業所長でありながら、バックオフィスを兼任せざるを得なくなりました。事業所を運営するための苦渋の選択でしたが、私や小池が体調を崩すなど万が一のことがあれば、給与の支払いや月次決算業務が滞ってしまいます。「自分たちがいないと業務が回らない」という脆弱な体制から脱し、属人的ではない仕組みづくりが待ったなしの状況になりました。
EMオノエ株式会社 倉敷事業所長 竹林征洋さん
当時、給与計算業務はどのように行っていましたか?
小池美寿々さん(以下、小池): 社員200人分のタイムカードを目検チェックし、遅刻早退や欠勤があれば、紙の実績表や業務日報と照らし合わせて確認。その後、月次の勤怠集計を行い、給与計算システムに手入力をするという流れです。給与支給日が毎月15日なので、月末に勤怠が締まった後、翌月初めの2〜3日でデータ集計と入力、チェックを行っていました。
データはすべて手入力で、竹林と私の2人だけで作業をしており、相当な負担でした。非効率な作業も多く、「何のためにこんな無駄なことをしているのだろう」と、もどかしい思いを抱いていました。
EMオノエ株式会社 総務部 小池美寿々さん
竹林: アナログ作業が多く、まさに「昭和の仕事」の進め方でしたね。さらには、働き方の多様化に伴い、何種類ものパターンの計算式があり、給与計算が複雑化していました。こうした状況が重なり、残業時間もかなり多くなっていました。
付き合いのある地方銀行の紹介で導入へ 経営者との課題の共有化も後押しに
属人化とマンパワー不足という課題を抱えるなか、freee人事労務アウトソースを導入したきっかけは何だったのでしょうか?
竹林: きっかけは、お付き合いのある百十四銀行さんからの紹介でした。日頃からさまざまなご相談をしているのですが、当社のリソース不足の悩みを知り、業務効率化のために紹介してくれたのです。freee人事労務アウトソースは「システムがシンプルで運用しやすそう」というのが第一印象でした。
私は現在、57歳です。自分の引退までに残された時間を考えると、これから社員を採用し、一人前になるまで育成するのは間に合わないと感じていました。それに、社員がいつ転職するかもわかりません。これらの状況を踏まえ、単にツールを導入するだけでなく、アウトソースも含めた選択肢が最適だと判断しました。
導入検討時には、既存システムのクラウド化や、顧問会計事務所に給与計算を委託する案も考えたのですが、データ授受の手間やコスト面を考えて見送ることにしました。
freee人事労務アウトソースの導入を実現できたのは、属人化された業務の解消が急務であるという課題を、社長と共有していたことが導入を後押ししました。
freee人事労務アウトソースを導入した時期は、繁忙期と重なったそうですね。
竹林: そうなんです。導入にあたって、最初にfreeeと打ち合わせを行ったのが年末の時期でした。当社は12月決算で、年末から翌春にかけてがバックオフィスの繁忙期になります。
それでも運用をスタートできたのは、freeeの導入支援担当者によるサポートのおかげです。相談を持ちかけた際も、一貫してポジティブな姿勢で返信してくれました。そのメッセージを見て、「我々もがんばろう」と思えたことを覚えています。いわゆるモチベーターが導入サポートについてくれたことは、非常に心強かったです。
小池: 導入における過程は、まずデータ移行を行い、その後に現給与システムとfreee人事労務で計算したデータを比較しながら並行運用を行い、計算式のズレや根拠を一つずつ確認していきました。
こうして問題なく運用できることを確認し、完全移行しました。システムがシンプルで、各手順がステップ表記になっており、ワークフローを進めるだけで完了するので、これなら属人化を解消できそうだという手応えを感じました。
作業工数は50%減 シンプルな作業工程で「脱・属人化」も実現
導入後の効果についてお伺いします。課題となっていた業務効率について改善しましたか?
竹林: 大きく改善できました。勤怠実績の集計作業は変わっていませんが、その後の給与計算にまつわる入力作業は完全にゼロになりました。
以前は、集計、入力、入力後の確認……と、いくつものタイミングでミスが発生する可能性がありましたが、今では最初のデータ作成をしたら、アップロードするだけで計算結果が出ます。
トータルで考えると、工数が50%減になりました。freee人事労務アウトソースのおかげで、長時間残業してなんとか乗り切る状態を抜け出すことができました。次は勤怠の課題解決に向けて、百十四銀行さんとfreeeさんの協力のもと、取り組む予定です。
属人化の課題についてはいかがでしょうか?
竹林:はい、解決できました。以前は、小池や私がシステム入力する必要がありましたが、今では、実績データの確認を他のメンバーも担えるようになりました。数字を入力し、それをチェックしてもらってアップロードすれば作業が完結します。誰が抜けても回せる体制になり、「脱・属人化」が達成できました。
そのほか、導入後に実感した効果はございますでしょうか?
小池: 年末調整業務が劇的に早くなったことが大きいです。昨年までは、10月下旬から紙の資料を全社員に配布し、11月に回収するスケジュールで動いていました。ただし、社員が記入方法に迷ったり、書類を忘れたりもすることがあるので、私たちが保険料や住宅ローンの金額などを確認しながら、修正するケースが大半でした。
年末調整も年々複雑になるなかで、記載方法が分からないという社員からの問い合わせ対応も大変でした。すべての確認と入力が終わるのが11月末で、そこからさらに半月かけてシステム入力していました。
導入後は、すべての作業が効率化できました。社員がモバイル端末から書類をアップロードすれば、システム側でAI機能を利用して読み取ってくれるので、作業時間は10分の1ほどに効率化されました。
新しいシステムに対して、社員の皆さまからの抵抗感はありませんでしたか?
竹林: 最初は高齢の従業員が「操作できるのだろうか」と不安そうにしていました。なので、導入後、従業員からの問い合わせが殺到し苦労しそうだなと思っていたのですが、いざ運用をスタートしてみると多くの社員が使いこなせていて、「案ずるより産むが易し」でした。
この大きな要因は、freeeのUIが優れていることにあると思います。親しみやすいデザインで、リテラシーに関わらず、誰でも理解できるシステムなのがありがたいです。
導入前の社内説明会も、当初は時間をかけて実施する予定でしたが、1週間で終えられました。若い世代が中心になって、社員が自ら動画などを見ながら使いこなしてくれたんです。これはうれしい誤算でした。
freeeによる成功事例が生まれ、次なるDXへの機運も高まった
業務効率化によって生まれた時間を、今後どのように活用していきたいですか?
竹林: 採用活動に時間を割きたいと考えています。当社の知名度をアップするために、SNSの運用や企業説明会への参加など新たな試みも始めています。
周辺の会社はまだまだ紙で勤怠管理や給与明細を出しているところも多いので、freeeによるDXは、採用面でもアピール材料になっています。
小池: freeeを導入したことで、次のDXへの意欲も高まっています。まずはクラウド化を検討しており、どこからでも仕事ができる環境を整えようとしているところです。
勤怠管理もfreeeでのシステム導入を検討中です。勤怠をシステム化すれば、日々の打刻と承認だけで済み、給与計算の集計作業も不要になります。データのアップロード作業もなくなるはずなので、来年度中には実現したいですね。
竹林: ワークフローも、まだ改善余地があります。現在は、社内の車両登録などの申請を紙ベースで行っています。従業員が事務所に紙を持参し、総務スタッフがその都度対応しなければならないため、少なからず負担が生じています。これらの作業も、freeeに移行していき、デジタル化を進めていこうと考えています。
最後に、中小企業におけるDX推進についてアドバイスをお願いします。
竹林: 中小企業では、DX人材の採用はハードルが高いと思います。また、一人で何役もこなせるマルチな人材を求めており、DXを推進する専門スタッフを採用する余地がありません。また、法改正などで労務業務が高度化・複雑化するなか、少人数ですべての業務を担うのは無理があります。
だからこそ、freeeのようにパッケージングされたシステム導入とアウトソースの組み合わせ、手厚い導入支援サポートを利用すべきです。これによって手間や労力、属人化のリスクを回避できます。私たちのような地方の中小企業こそ、外部のリソースを活用してDXを進めるべきだと考えています。
(執筆:御代貴子 撮影:水子貴皓 編集:ノオト)
