阿部梨園について
親子3代にわたって「大きくておいしい梨作り」にこだわる
佐川様:阿部梨園は1975年に創業した個人農家です。弊園のメインである梨と米の栽培を3代目代表の阿部が、野菜の生産を先代夫婦が、それぞれ運営しています。
阿部梨園の梨としてお客さまに喜んでいただく以上は、生産したすべての梨の品質に責任を持たなければなりませんから、「おいしい梨作り」に強いこだわりを持ってい ます。おかげさまで、生産した梨の99%以上を自園ブランドで完売しています。
私は2014年9月から弊園に加わり、阿部の右腕としてバックオフィス全般とPRを引き受けています。
阿部様:梨は大きいほどおいしくなる果物です。大きく育てるために、他の梨園より果実を多く間引いて一玉に栄養を濃縮させるようにしています。また、きめ細やかな作業を施せるように、他の梨園と比べて従業員を多く雇っています。手間ひまかけた分、果樹が元気に育ち、梨が一層おいしくなるんです。
佐川が入職して、経営や会計、生産、販売、マーケティングなど、3年間で500件の改善活動を実施した結果、当園の経営は着実に良い方向に変わってきました。
freee会計導入前の経理状況
複数のクラウド会計サービスを試し、操作性やレポート機能を評価
佐川様:以前は、阿部自らWindowsインストール型の会計ソフトを使って経理業務をしていました。農作業をしながら定期的に経理業務をする時間を割くのは難しかったため、毎年1月から2月にかけて1年分の取引をまとめて入力していたそうです。冬でも剪定などの畑仕事があるので、夜通し申告作業をする日々が続いて大変だったとも聞きました。
私が経理業務 を預かるにあたり、阿部のパソコンを借りなければ経理業務ができない当時の状況は非常に不便でした。そこで、経理業務をクラウド会計サービスに移行しようと考えました。そうすれば、端末から解放されて、いつでもどこでも経理業務ができるようになるからです。
数社のクラウド会計サービスを実際に使って比較した結果、私にとってベストなサービスがfreee会計でした。Macで利用できることに加え、直感的に利用できる操作性の良さと、多角的な視点で出力できるレポート機能が特に良かったです。阿部の承認を得て、2015年度からfreee会計を導入。同時に、経理業務は阿部から私に引き継がれました。
阿部様:私は経理業務から解放され、現場作業に集中できるようになりました。また、若手に梨栽培のノウハウを教える時間をしっかり取れるようにもなりました。若手に任せられる作業が増えたおかげで、桃の栽培など新しい取り組みを始める余裕も生まれています。以前と比較して休日もしっかり確保できるようになり、4人の子供たちと触れ合える時間が増えてとても嬉しいです。
freee会計導入後の効果
取引量急増にもかかわらず、会計処理時間は6分の1に
佐川様:記帳にかける手間と時間が減りました。自動仕訳や同期といった機能のおかげで、取引全体の9割近くは自動で記帳できているのではないでしょうか。販路拡大などで取引量が急増したにもかかわらず、会計処理時間は従来の6分の1程度で済んでいます。
勘定科目に「取引先」「品目」などのタグをつけているので、経営状況をさまざまな切り口で確認できるようになりました。阿部の事業(梨、米)で発生する取引と、先代の事業(野菜)で発生する取引の判別が簡単になりましたし、双方向での発生した資金のやりくりも楽に管理できるようになりました。
タグやフィルタをかけて細かくレポートを分析していると、改善のヒントを見つけやすいですね。例えば、畑ごとの光熱費レポートを見て1箇所だけ突出していれば、その畑で何かトラブルが起きているのではないかと推察して、対策をとることができます。
レポートは翌年度の計画を立てる際にも活用しています。従来は改善の指標となる数字がない状況でしたが、データと分析結果に基づく意思決定ができるようになりました。わざわざエクセルにエクスポートせず、freee会計内ですぐレポートをつくれるのはありがたいですね。
freee会計導入を機に、弊園における会計の意味合いは大きく変わりました。税額を決めるためだけの会計から、意思決定や業務改善に活かすための会計へ。管理会計っぽさも取り入れながらできていると感じます。日々の行動や改善活動の結果が数値として表れますから、「自分たちの行動が、どれだけ会計に反映されているか」が分かります。良い経営は良い会計に反映されると実感しました。
今後の展望
自らの改善実例を広め、農業生産者の経営基盤強化に貢献したい
佐川様:私も阿部も、引き続き「おいしい梨作り」にこだわっていきたいと考えています。果樹栽培は急激に栽培規模を拡大できる事業ではありません。毎年同じ面積で決められた量を栽培する状況で、お客さまにもっと喜んでいただくためには、量より質を重視した梨作りを追求することが大切です。そうした取り組みの結果として、単位面積当たりの利益を高めていければと思います。
freee会計導入をはじめとするさまざまな改善活動に取り組んでみて、「小規模の農業生産者が事業を継続するためには、バックオフィスが重荷になってはいけない」と痛感しました。また、規模がさほど大きくない農業生産者の方々にとって、弊園の改善実例が役に立つかもしれないとも考えました。そこで、2018年5月に、弊園がこれまで取り組んできた経営改善や業務改善の実例を紹介 するウェブサイト「阿部梨園の知恵袋」をリリースしました。
個人的には、同業の生産者さんが次の世代に残っていくための道筋を作っていきたいという気持ちを持っています。ゆくゆくは、僕のような専任の人間がいなくても、経理業務などのバックオフィスがうまく回るようになってほしいと思っています。そのためにも、さらにバックオフィスを極めていきたい。そして、しっかりした経営基盤のもとで農業ができる環境づくりに貢献していきたいです。
店舗情報
HP:http://abe-nashien.com/
住所:栃木県宇都宮市下荒針町3409
TEL:028-648-9695
営業時間:8:30~17:00(7月下旬〜12月下旬。期間中無休)
栃木県宇都宮市の個人農家。「丁寧な土作り」「量より質」の生産方針に基づき、最高品質の梨を生産・販売する。