社会福祉法人善光会は、東京都大田区を中心に特別養護老人ホームや介護老人保健施設、障害者支援施設など、合計8拠点の施設運営を手がけています。
2005年の設立以来、複合福祉施設としてサービス向上を図り、現在の従業員数は約478名。その成長を支えてきたひとつが経理部門です。
しかし、2023年の経理部長の退職を機に、会計業務の担当は2名から1名に。通常であれば経理業務の遂行に支障をきたしかねない事態ですが、同法人は業務の停滞を最小限に抑え、効率的な体制づくりへと転換しました。その鍵を握ったのが、freee会計と社会福祉法人 with freeeの活用です。
今回はfreeeシステムの活用方法から、経理・会計以外でもポジティブな影響を与えるfreeeの効果に至るまで、法務部 兼 経理部の部長である大澤貫希様、経理部で会計を担当する鶴巻幹弘様にお話を伺いました。
課題
・従来システムの使いづらさによる、学習コストの高さと人材定着率の低下
・社会福祉法人特有の複雑な会計基準への対応負担と法令改正対応の煩雑さ
freeeのメリット
・「自動で経理」や「配賦仕訳」など、会計業務を効率化する機能が充実
・法改正や電子開示における迅速なサポート体制
導入後の効果
・少人数でも正確な会計処理が可能となり、人手不足への柔軟な対応が実現
・法務部門や他部署の業務負担軽減など、経理以外の部門へのポジティブな影響
突然の退職で1人体制に。freeeがあったから乗り越られた
――社会福祉法人善光会の事業についてお聞かせください。
大澤さん(以下、大澤): 善光会は2005年の設立以来、複合福祉施設として特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、障害者支援施設の3つのサービスを1つの建物で展開しています。短期入所や通所事業サービスも同施設内にて提供しており、1つ の建物内でさまざまなサービスを受けられることが、当法人の大きな特徴です。
また、介護業界全体の業務効率化を目指す経営支援事業、介護福祉の人材事業も手がけています。「オペレーションの模範となる、業界の行く末を担う先導者になる」というミッションのもと、介護ロボットの実証実験や導入支援、介護現場のDX化を推進できる人材を養成する「スマート介護士資格」の創設など、介護業界全体の効率化に向けた取り組みを続けています。
――「freee会計」や「社会福祉法人 with freee(以下、福祉freee)」を長くご愛用いただくなかで、freeeシステムがあってよかったと感じたエピソードはありますか?
大澤: 前任の経理部長が退職したときですね。当法人の経理部門は経理と会計にわかれていて、会計は前任の経理部長と、現在も会計業務を担当している鶴巻の2名体制で行っていました。法人規模に対して決して多くはない人数構成のなか、前任者の退職を機に1名体制となりまして……。
freeeを導入していなかったら、会計処理や決算など到底1人では手がまわらず、早急に人材の確保を行う必要があったと思います。それに今の時代、社会福祉法人の会計基準に精通した即戦力ある人材の確保は簡単ではありません。通帳の明細の転記や仕訳入力などの作業を自動化できるfreee会計があったからこそ、そして社会福祉法人特有の勘定科目や決算書に対応している福祉freeeがあったからこそ、会計部門を鶴巻のみで担える体制を整えられました。
電子開示対応、複雑な法令に準拠した資料作成。決算期の業務工数も福祉freeeで大幅改善
――現在の会計業務のフローについて教えて教えてください。
鶴巻さん(以下、鶴巻): 会計処理のフローは、freee会計から福祉freeeと2つのステップにわかれます。
まず取引先からの請求書は、別システムで作成した仕訳データをfreee会計へ取り込み、入出金については、銀行と自動連携できる「自動で経理」 機能で処理をします。また売上データや給与データは、各担当部署からExcelで受け取ったものを、「Excelインポート」機能を利用して、freeeに集約しています。バラバラな情報をひとつのシステムで管理できるのがありがたいですね。
freee会計での仕訳が完了し、税理士のチェックを受けた後は、福祉freeeに連携します。ここでは、社会福祉法人特有の会計基準に準拠した月次計算書を作成し、理事長や各拠点の長に提出し承認を得るという流れです。
――freee会計ではどのような機能が特に役立っていますか?
鶴巻: 「自動で経理」機能は非常に便利です。お客様からの入金は個人名で表示されることが多いのですが、AIの予測機能によって約7割が自動で紐付けられます。従来は1件あたり5分かかっていたであろう確認作業が、今ではたったの2分で完了しています。
「自動で経理」で処理が済んだあとは、銀行残高と帳簿残高が自動的に一致するため、照合作業の手間もほとんど必要なくなりました。人的ミスで数値が合わない心配が軽減され、大きな安心感につながっています。
また、「配賦仕訳」機能も大変重宝しています。例えば、本部の経費を20の拠点に按分して計上する場合、手作業であれば各拠点ごとに仕訳を作成する必要がありました。しかし、「配賦仕訳」機能を使えば、1回の入力で自動的に20件分の仕訳が作成されるため、作業が数秒で終えられます。
大澤: 鶴巻のみで会計の対応ができているのは、こうした機能があってこそです。正直、freee会計がなければ仕訳作業だけでも1週間はかかっているでしょう。現在は約3日で完了できています。
――福祉freeeの機能についてはいかがでしょうか?
鶴巻: まず、freee会計から福祉freeeへ簡単に連携できるのがストレスフリーでうれしいですね。月次決算に必要な計算書類もワンクリックで出力できるため、本来なら多くの時間を要する作業も、約1営業日に短縮できています。
大澤: 社会福祉法で定められている資料を迅速に作成できる点も魅力です。私自身、法務部も兼務しているので、最新の法令に沿った資料の作成には多大な労力を要することを重々理解しています。その点において、福祉freeeは法改正のアップデートが自動で行われるのは心強いですね。
例えば、社会福祉法人は財務情報等を電子開示システムを利用して届け出ることが義務付けられていますが、社福freeeは「電子開示」に対応しているため、必要書類を簡単に作成できます。一から手作業で作成していると、決算期は業務がかなり逼迫するんです。電子開示機能があることで、業務効率が大幅に改善されたので感動しましたね。これは私たちだけでなく、どの社会福祉法人にとっても大きな助けになると感じています。
人材定着率アップや法人全体の業務改善にも。freeeがもたらした副次的効果とは?
――freeeを導入して、経理や会計業務以外にも役立ったと感じる点はありますか?
大澤: 「人材の定着」や「学習コストの低減」にも大きく寄与していると感じています。以前使用していたシステムはUIが複雑で、経験者でも操作に戸惑うことが多くありました。その積み重ねが、業務へのストレスにつながり、離職の一因になることもあったんです。
一方で、freeeは直感的に操作しやすいUI設計になっています。新しく入社した方でも短期間で操作方法を習得し、人材の入れ替わりに伴う業務の滞りを防げるため、組織としての安定性も向上しています。
鶴巻: 私が入社した際も、freeeの画面設計が優れているおかげで、詳しい引き継ぎを受けずとも操作に困ることはありませんでしたね。
――副次的な効果も生まれているんですね。
大澤: ほかにも、経理以外の部門にもポジティブな影響があります。先ほどもお伝えした通り、社会福祉法の改正に伴う対応をシステムが自動的にサポートしてくれるので、法務部門の負担が軽減されます。会計ソフトでありながらも、法人全体の業務効率化に貢献している点は、想定以上の効果でした。
特に最近印象的だったのは、経営情報の開示義務化への対応です。「準備が必要だな」と思っていたところで、すでに必要な機能が実装されていることを発見し、大変驚きました。アップデートに迅速に対応いただける点もfreeeの魅力ですね。
人手不足に悩む介護現場を救う、採用“以外”の新たな選択肢
――介護現場のDXの先駆者として、今後も業務効率化を推進していくなかで特にどんな点にアプローチしていかれる予定ですか?
大澤: 指標としていることの一つが、ワークライフバランスのさらなる実現です。システムの活用により業務効率は確実に向上していますが、まだまだ改善の余地があると感じています。今後もより良い環境を整える方法を模索し、実行していきたいと考えています。
――最後に同じように会計業務に対して課題を抱える社会福祉法人に向けて、メッセージをお願いします。
大澤: 経理部門の人材不足は、どの業界においても大きな課題になっているのではないでしょうか。さらには、社会福祉法人の会計基準に精通した人材の確保に苦戦している法人様も多いと思います。
< そんな現状において、「freee会計」と「社会福祉法人 with freee」の導入により、少人数でも正確な会計処理を実現した私たちの経験から言えることは、人材不足を解決するのは「採用だけではない」ということです。人材採用に苦心されている法人様は、ぜひシステムによる解決策も検討してみてください。