他社ERPからfreeeに一本化 IPO準備を加速させる統合的なバックオフィス体制を構築

株式会社LIG 取締役/管理本部長/海外事業部部長 岩田憲昭さん、人事部長 齊藤麻子さん、労務担当 佐藤さん、業務推進担当 成田晴奈さん

課題
バックオフィスの体制構築・効率化内部統制・IPO準備の効率化

Web制作の実績を基盤にオフショア開発で躍進し、DX推進を強みとする企業へと変貌を遂げた、株式会社LIG。2025年4月にバックオフィスシステムを他社ERPからfreeeプロダクトに一本化し、IPO準備に向けても動き出しています。


リプレイスの理由や社内環境の変化について、バックオフィスを統括する岩田憲昭さん(取締役/管理本部長/海外事業部部長)、現場で活躍する齊藤麻子さん(人事部長)、佐藤さん(労務担当)、成田晴奈さん(業務推進担当)にお話を伺いました。


複数ツールの併存による非効率な環境を一新したい

――貴社の事業内容を教えてください。


岩田憲昭さん(以下、岩田): フィリピンにある開発拠点と連携したシステム開発、アプリ開発を主軸に、Web制作、Webマーケティング支援、Webクリエイタースクールの運営などを行っています。


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――IPO準備はどのような段階ですか?

岩田: IPOに向けた準備は、実は2回目なんです。1回目は、2022年の初頭。当時の私は海外事業部の責任者という現場サイドの立場だったため直接携わってはいないのですが、途中まで準備を進めた段階で、まだ企業としての業績が安定せず、上場はリスクが大きいと当時の経営陣が判断し、いったん見送られました。


現在、経営の安定化が見通せるようになってきたことで、2回目のIPOを目指す方針になっています。私は2024年6月から管理本部長に就いているため、今回はコーポレート基盤を構築する立場としてIPO準備に関わることになります。


先日、監査法人にお願いして、1回目当時のショートレビューの結果を再度伺いました。バックオフィス業務の規定、規約が不十分であったなど、経営全体の健全性、透明性の底上げが必要な状況です。


――これまでfreeeはどのようにご活用いただいていたのでしょうか?

岩田: 会計業務には「freee会計」を使用していたのですが、業務支援の基幹となるシステムは他社のERPでした。そのERPに加えて、「freee人事労務」「freee業務委託管理」を補助的に使っていたのが、2024年までの状況です。


管理本部長になり、複数社のツールを並行して使用する効率の悪さや、ストレスを従業員が感じている事態を見て、プロダクトの統一を提案しました。同年秋からfreeeに相談をし始めて、いくつかの導入形態をご提案いただき、年末に正式契約。2025年4月にリプレイスが完了し、新システムが稼働し始めています。


「freee販売」「freee工数管理」を新たに導入したほか、「freee人事労務」「freee業務委託管理」も全面的に使用する形になりました。これから始まるIPOの準備にも効果が発揮されるとは思いますが、IPOありきでリプレイスしたわけではなく、主目的はあくまで業務効率化です。


――以前の状況とリプレイス理由について、もう少し詳しく伺いたいです。

岩田: 他社ERPで売上、発注を管理しつつ、会計には「freee会計」を使用していたため、売上、発注等のデータをfreee会計に入力するマニュアル作業が発生。工数がかかるばかりでなく、ヒューマンエラーも発生していました。


工数管理についても、前システムには権限設定の制約によって各従業員の労務費(時間単価)データが入れられませんでした。そのため、誰が何時間どの案件で稼働したという情報は存在しているものの、各案件にいくら人件費がかかったのか粗利が把握できない。つまり、社内のデータが一元化されていないせいで、データの価値を発揮できていない点が問題でした。


バックオフィス業務を中心に幅広くプロダクト展開しているfreeeには、ツール間の連携によってエラーを減らし、効率を高めるプロダクト思想が感じられます。この考え方に乗っかってしまうのが、早いし賢いだろうと考えました。「freee会計」を核に、他のツールもfreeeのプラットフォームに乗せ換えるというfreee社の戦略にまんまと乗った形です(笑)。


――人事や業務推進の現場にはどんな課題がありましたか?

齊藤麻子さん(以下、齊藤): 2024年から人事部長を務めています。他社ERPの勤怠管理は打刻機能がなく手入力で、従業員が正しく報告してくれていると信じるほかなく、就労状況の精緻な把握に課題がありました。


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成田晴奈さん(以下、成田): 業務推進担当として、事業部の案件管理を中心とした業務全般を行っています。これまでは、他社ERPや導入済みのfreeeプロダクトを併用しながら、売上データ・工数・外注費などを管理していましたが、弊社の会計部門がそれらを手作業でとりまとめる過程で、意図しないデータに変換してしまったり、ミスが後々になって発覚したりと、工数が肥大する一方、データ連携の不備も増えて、会計作業の精度低下につながっていました。


リプレイス直後から、毎月の締め作業が3営業日短縮の効果

――リプレイス後2か月間、使用感はいかがですか?

岩田: 狙いとしていた手作業から自動連携への切り替えは、概ね計画通りに進んでいます。今年の4月、5月の締め作業は、手作業で行っていた時と比べて約3営業日分、前倒しで作業を進められました。経理部のメンバーもそのポテンシャルを感じていて、もっと習熟してくれば、さらに3、4営業日程度早く締められるのではと見込んでいます。


成田: 前システムは売上データをアップロードしても、バッチ処理などの関係で結果がすぐに出てこなかったため、データに齟齬があった際、会計担当に修正をリアルタイムに依頼するのが難しかったのですが、「freee販売」では売上がリアルタイムに反映されます。間違いが発生しても、すぐに直して正確な数字を反映させることができるため、メリットを感じています。


また「freee業務委託管理」と「freee会計」を自動連携させたことで、会計側に情報連携する請求データなどの加工に要していた工数が無くなり、恩恵を感じています。業務の流れを理解している設計になっていて、既存の運用フローを大きく変更することなく運用を浸透させられたことも大きかったです。


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佐藤さん(以下、佐藤): 人事労務を担当しています。リプレイスを機に、出退勤を手入力から「freee人事労務」上で打刻する形式に変更したことで、勤務時間を1分単位で把握しやすくなりました。また、freeeの仕様へあわせることを機に、時間単位での有給休暇の取得を可能にしました。以前のシステムでは2時間単位での有給休暇しか取得できなかったので、従業員にとって、より健全な状況になっている事を嬉しく思っています。


一方で、打刻がまだ従業員に定着しておらず、打刻忘れも少なくありません。全社的な勤怠管理の意識を改める必要がありますね。


――UI・UXは貴社の業務上、重要視されていると思いますが、freeeのUI・UXはどうお感じでしょうか。

佐藤: 社内コミュニケーションにSlackを使用しているため、「freee人事労務」がSlackと連携できる点はとても助かっています。前システム時代は、人事が残業時間の自動通知メールをSlackに転送して担当者をつついていたのですが、freeeでは従業員のSlackに直接通知が届き、確認してもらいやすい環境が作れています。


齊藤: 従業員からは、freeeプロダクトに触れること自体がUI・UXの参考になるという声があがっています。


私自身も、従業員の経費精算などで逐一証票をダウンロードして確認し、承認する必要があった前システムと比べ、freeeでは証票と申請が紐付いていて、プレビューを見ながらその場でミスがないか1画面で確認し、承認できること、そして次のタスクへシームレスに移行できる点が非常に使いやすいと感じています。


齊藤: プロダクトのアップデートが頻繁に行われる点は非常に頼もしく、ポジティブに捉えています。「フィードバックをすれば改善される可能性がある」という期待感はシステムを運用するうえで非常に重要です。前システムでは、何か変更しようとすると高額な改修の見積もりが出てきて、改善を諦めてしまうことが多かったので…。


もちろん、全ての要望が実現するわけではないので、そこに期待しすぎないようにとは思っていますが、現場の声を拾ってくださるfreeeの姿勢には感謝しています。


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リアルタイムでの粗利可視化で経営判断を加速

――IPOを含めた今後の展望、freeeへの期待をお聞かせください。

岩田: 最も期待しているのは、前システムでは難しかった、案件単位の粗利の可視化です。「freee工数管理」から各従業員の労務費を、「freee業務委託管理」から外注費を「freee販売」に取り込めば、案件進行中でもリアルタイムで収益がわかります。


例えば半年間のプロジェクトが3か月経過した時点で、想定粗利が受注時から何%上下しているのかモニタリングを行い、追加のリソースを割く、割かないの意思決定に役立てる、といった使い方を想定しています。


前システムでは、従業員の労務費・時間単価データを持つことができなかったので、プロジェクト単位で粗利の可視化を実現することが難しい状況でした。月次決算を早められた事で生まれたリソースを使って、この部分を可視化できるようにしていきたいです。


――案件ごとの正確な支出や利益の把握は、監査を受けるにあたっても重要ですね。

岩田: はい。監査に向けて透明性を高めるには、単月の財務三表(PL・BS・CF)の作成も課題です。弊社の業務の性格上、案件ごとに支払いや入金のタイミング、スパン等が異なるため、月次の営業利益や純利益が必ずしも翌月のキャッシュには直結しません。


freeeを活用し、案件単位の入金状況を把握することで、来月、3か月後、半年後のキャッシュ状況を予測し、根拠に基づく経営判断を推し進めます。


――人事や営業事務の視点からはいかがでしょうか?

齊藤: 打刻によって、より正確な勤務実態を把握できるようになりました。freeeへのリプレイスで新たに得られた情報に向き合い、社内の労働環境にどのような課題があり、どのような順番で改善していく必要があるのかを検討することが、私たち人事の使命だと考えています。


佐藤: 管理職が、部下の勤務状況をfreeeの画面上で横断的に見られるようになったのは大きな変化です。超過残業などの働きすぎにも早く気づけるので、労働環境の改善にもつながり、結果的にIPO準備にもプラスに働くのではないでしょうか。


成田: 業務推進の仕事は比較的自由度が高いので、従業員の状況に合わせた柔軟なフローを設けることを日々意識しています。使いこなせていない機能を学び、弊社に合う使い方を模索しながら、業務を進めやすくするフローを今後も追求していきます。


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齊藤: バックオフィスシステムの使いやすさは、働きやすさの土台となる部分。freeeプロダクトを中心に、従業員の生産性を最大限に引き出す「イケてるバックオフィス」を作っていけたらと思っています。


岩田: 上場を成功させるためには、人材とシステムの両面で強固なバックオフィス体制が不可欠です。しかし、現状は上場企業水準のオペレーションを知るメンバーは限られています。


そして上場準備を経験しているバックオフィス人材の採用は非常に困難なのが現状です。


freeeのシステムを活用することで、上場準備が未経験のメンバーでも育成しながら効率的に業務を進めることが可能なのでは?とも感じています。


freeeはIPO準備の支援実績も豊富なので、適宜、情報やアドバイスをいただきながら、社内体制を強化してスキルを高めていければ理想的です。


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