一人情シスの現状とは?課題や解決策などを解説
最終更新日:2025年09月01日
情シスとは「情報システム部門」の略称で、企業活動に不可欠なITシステム全般の管理・運用を担う部署や担当者を指します。中小企業では、情報システム部門の業務を一人で担当する「一人情シス」が増加傾向にあるとされており、近年リスクや課題が指摘されています。
本記事では、情シスとは何か、一人情シスが増加する背景、一人情シスが抱える課題と解決策について解説します。
目次
情シスとは
情シスとは「情報システム部門」の略称で、企業活動に不可欠なITシステム全般の管理・運用を担う部署や担当者を指します。
情シスは、専任の部門があるのが一般的ですが、中小企業においては、専任の部署が存在せず、総務部門などが兼務しているケースもあります。
情シスの主な業務
情シスの業務範囲は幅広く、主な内容は下表のとおりです。
業務範囲 | 内容 |
---|---|
ITインフラの構築・運用・保守 | 社内ネットワーク、サーバー、パソコン、複合機などのハードウェアや、OS、ミドルウェアといったソフトウェア基盤の管理を行う |
社内システムの企画・開発・導入・運用 | 基幹システム、業務アプリケーションなどの企画・開発・導入から、導入後の運用までを担当する |
ヘルプデスク | 社員からのITに関する問い合わせ対応やトラブルシューティングを行う |
情報セキュリティ対策 | 不正アクセス、マルウェア感染、情報漏えいといった脅威から企業の重要な情報資産を守るため、セキュリティポリシーの策定、対策ツールの導入・運用、社員への啓発活動などを行う |
IT資産管理 | パソコンやソフトウェアライセンスなどのIT資産を管理し、適切な利用状況を把握する |
IT戦略の立案・推進 | 経営戦略に 基づき、中長期的なIT戦略を立案・実行する |
一人情シスが増加する背景
近年、とくに中小企業においては、情報システム部門の業務を一人で担当する「一人情シス」が増加傾向にあります。
その背景には、以下のような複合的な要因が存在します。
コスト削減の対象になりやすい
多くの中小企業にとって、IT部門は直接的な利益を生み出すプロフィットセンターではなく、コストセンターとみなされる傾向にあります。
そのため、経営状況によっては人員削減の対象となりやすく、結果的に最小限の人数、つまり、一人で情シス業務を回さざるを得ない状況が生じるケースがあります。
IT人材不足により採用が難しい
IT人材の需要は高まっている一方で社会全体で適切な人材が不足しており、とくに専門性の高いスキルを持つ人材の獲得競争は激化しています。
中小企業の場合、給与水準やキャリアパスの面で大企業に見劣りすることが多く、優秀なIT人材を採用・維持することが難しい 傾向にあります。その結果、担当者が退職した場合に後任が見つからず、残った一人に業務が集中してしまうケースや、そもそもITに詳しい社員が一人しかいないという状況が起こりやすくなります。
クラウドサービスが普及している
クラウドサービスの普及によって、サーバーなどのインフラを自社で保有・管理する必要がなくなり、情シスの業務負担が軽減された結果、人的コストをかけなくてもよくなったというケースもあるでしょう。少人数でもIT環境を維持しやすくなったことが、一人情シス体制を可能にする一因になっているともいえます。
一方で、多様なクラウドサービスを適切に選定・導入・管理・連携させるための新たなスキルや知識が求められるようになり、必ずしも業務負荷が軽減されるとは限らない側面もあります。
一人情シスが抱える課題
一人情シスの状態は、担当者本人にとっても企業全体にとってもリスクが大きくなりがちです。具体的には、以下のような課題が挙げられます。
業務過多になりがち
前述のとおり、情シスの業務範囲は非常に広範です。インフラ管理、システム運用、ヘルプデスク、セキュリティ対策、IT資産管理、新規システム導入検討など、多岐にわたる業務を一人でこなすため、慢性的な業務過多に陥りやすくなり ます。
また、突発的なシステム障害やトラブル対応が加わると、長時間労働が常態化し、心身ともに疲弊してしまうケースが少なくありません。
さらに、情シス担当者には、サーバー、ネットワーク、セキュリティ、各種OS、アプリケーション、クラウドサービスといった幅広い分野の知識とスキルが求められますが、一人ですべてにおいて高い専門性を維持・向上させることは困難です。
日々の業務に追われて、新しい技術や知識を学ぶための時間や機会を確保することが難しくなると、スキルが陳腐化してしまうリスクもあるでしょう。
属人化しやすい
業務のノウハウや情報が特定の担当者一人に集中してしまう「属人化」は、一人情シスの最も大きな課題です。
一人情シスの状態だと、マニュアル作成や情報共有にまで手が回らないことが多く、担当者が休暇を取得したり、急な病気や怪我で不在になったりした場合、業務が完全に停止してしまうリスクがあります。
最悪の場合、担当者の退職によって、社内のITシステム全体がブラックボックス化し、誰も状況を把握できなくなる可能性も否定できません。
セキュリティリスクが高まる
サイバー攻撃の手法は日々高度化・巧妙化しており、企業のセキュリティ対策は常に最新の状態を維持する必要があります。しかし、一人情シスでは、最新の脅威情報の収集や対策の検討・導入に十分な時間を割けないことが多く、セキュリティインシデント発生のリスクが高くなります。
万が一、情報漏えいなどの重大なインシデントが発生した場合、企業の社会的信用や事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
事業継続計画(BCP)への対応が難しい
自然災害やシステム障害など、不測の事態が発生した場合の事業継続計画(BCP)策定や、具体的な策としてのIT環境整備は重要です。しかし、一人情シス体制では、これらの準備にまで手が回らないことが多いという実情があります。
戦略的なIT投資が停滞する
一人情シスの体制では、日々の運用保守やヘルプデスク対応といった「守りのIT」に忙殺されているために、DX推進や業務改善につながる「攻めのIT」戦略の立案・実行にまで手が回らないケースも多くあります。
経営層からIT活用による改革を期待されても、リソース不足から具体的な行動に移せず、企業の成長機会を損失してしまう可能性があります。
一人情シスの課題を解決するには
一人情シスが抱える多くの課題を解決し、担当者の負担軽減と企業のIT基盤強化を実現するには、多角的なアプローチが必要です。
以下のような方法で一人情シスの課題を克服し、持続可能で安定したIT運用体制を構築しましょう。
業務を可視化する
現在行っている業務内容を洗い出し「見える化」することが、課題解決の第一歩です。そのうえで、定型的な業務は手順を標準化し、誰でも対応できるようにマニュアルを作成しましょう。
これにより、業務の属人化を防ぎ、担当者不在時のリスクを低減できます。業務プロセスを見直すことで、非効率な部分を発見し、改善につなげることも可能になります。
経営層の理解を促す
情シスを取り巻く課題を解決するには、情シスが単なるコストセンターではなく、企業の競争力を支える重要な部門であることを経営層に理解してもらうことが欠かせません。
T投資の重要性や、一人情シス体制のリスクについて説明し、必要な予算や人員、外部リソース活用の承認を得られるよう働きかけることが重要です。定期的な報 告会などを通じて、情シスの活動内容や成果をアピールするのも有効でしょう。
ITツールの導入による効率化を図る
情シスが担う業務のうち、日々の定型業務や繰り返し作業は、RPAやチャットボット、運用監視ツールなどを活用して自動化・効率化を図れる可能性があります。
これらのツールを導入することで、担当者は、より重要度の高い業務に集中できます。
アウトソーシングを活用する
業務の一部またはすべてを、外部の専門業者に委託するアウトソーシングを活用するのも効果的です。
アウトソーシングでは、ヘルプデスク、サーバー監視・運用保守、セキュリティ対策など、特定の業務領域を切り出して委託することも可能です。自社の状況や予算に合わせて柔軟に委託できるため、導入しやすいというメリットもあります。
アウトソーシングを活用すれば、属人化のリスクを低減し、専門性の高いサービスを受けられます。
SaaS管理ツールを導入する
複数のSaaSを利用している企業では、アカウント管理や利用状況の把握に多くのリソースが必要になります。たとえば、不正利用や情報漏えいが起きないよう、従業員のSaaSアカウントの管理や、退職に伴う不要アカウントの定期的な整理といった作業が必要です。
SaaS管理ツールを 導入すれば、これらの作業を効率化し情シスの業務負担を軽減できます。従業員の入退社に伴うアカウント作成や削除を自動化すれば、人的ミスを防ぎ、セキュリティリスクも軽減できます。
まとめ
情シスは企業活動に欠かせないIT基盤を支える部門ですが、とくに中小企業においては人材不足による一人情シスの課題が生じています。根本的な課題解決には、経営層が情シスの重要性を理解する必要があります。
情シスの業務効率化を促進するSaaS管理ツールなどを積極的に活用することで、担当者にとっても企業にとっても重大なリスクを回避できるようになります。自社の状況や予算に合わせて適切なツールなどを検討してみるとよいでしょう。
よくある質問
一人情シスが増えている理由は?
一人情シスの増加には複合的な要因があるとされますが、主にコスト削減の対象になりやすい、IT人材不足により採用が難しい、クラウドサービスが普及しているといったことが挙げられます。
詳細は「一人情シスが増加する背景」をご覧ください。
一人情シスの課題は?
一人情シスの主な課題として、業務過多になりがち、属人化しやすい、セキュリティリスクが高まる、事業継続計画(BCP)への対応が 難しい、戦略的なIT投資が停滞するといったことが挙げられます。
詳細は「一人情シスが抱える課題」をご覧ください。
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