健康管理の基礎知識

2025年1月から定期健康診断結果報告書は電子申請義務化!対象や手続きについて解説

監修 涌井 好文 社会保険労務士

2025年1月から定期健康診断結果報告書は電子申請義務化!対象や手続きについて解説

2025年1月1日から、労働安全衛生法に基づく健康診断結果報告書などの提出が原則として電子申請で義務化されました。

これまで健康診断結果報告書などの提出を紙での郵送や持参で対応していた事業者は、e-Govシステムを通じたオンライン申請に移行する必要があります。

本記事では、健康診断の電子申請義務化の概要や対象となる事業場の条件、必要な手続きや報告義務までをわかりやすく解説します。

目次

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2025年1月から定期健康診断報告書等の電子申請が義務化に

事業者には、すべての労働者を対象にした一般健康診断と、有害業務に従事する労働者を対象にした特殊健康診断の実施が義務付けられています。

そして、一般健康診断は常時50人以上の事業場のみ、特殊健康診断は事業場規模にかかわらず報告義務があります。

2025年1月1日から、労働安全衛生規則やじん肺法施行規則の改正により、定期健康診断結果報告書等の届出が電子申請での提出が原則として義務化されました。

電子申請の義務化によって、行政・企業双方の業務負担を軽減するとともに、提出データの一元管理と迅速な処理が効率的になります。

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定期健康診断報告書等の電子申請義務化の背景と目的

定期健康診断結果報告などの電子申請義務化は、政府のデジタル・ガバメント方針に沿って、労働安全衛生分野の各種届出をオンラインで完結させることを狙いとしています。

従来は健診機関の結果を手作業で集計・転記する場面が多く、入力漏れや転記ミスが発生しやすい状況でした。

電子申請に移行することで、紙の印刷・押印・郵送や窓口持参といった手続き負担を削減し、行政・企業双方の事務効率化・ペーパーレス化・データの正確性向上につながります。

また電子申請に統一することで、標準化されたフォーマットでデータを提出でき、処理の迅速化とエラー低減も期待できるでしょう。

ほかにも、集約されたデータを公衆衛生上の分析に活用し、地域・業種ごとの健康課題の把握や予防施策の精緻化にも役立てることができます。

定期健康診断結果報告書等の電子申請義務化される事業場の条件

定期健康診断結果報告書等の電子申請が義務化されるのは、常時使用する労働者が50人以上在籍する事業場です。判定の単位が「事業者全体」ではなく「事業場ごと」となっている点に注意です。

労働安全衛生法における事業場とは、本社・支店・工場・営業所といった拠点単位のことを指します。

たとえば、100名の従業員がいる会社で、本社に60名・支店に40名が在籍する場合、定期健康診断報告書等の電子申請が義務化されるのは60名が在籍する本社のみです。

また常時使用する労働者には正社員だけでなく、一定条件を満たす契約社員やパート・アルバイトも含まれます。

そのため、各拠点での雇用形態を問わず、正確に労働者数をカウントしなければなりません。

また、50人未満の事業場については電子申請の義務はありませんが、健康診断そのものの実施義務や、健診個人票の5年間保存義務は従来どおり課されています。

出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく 安全衛生管理体制を整備しましょう」

電子申請義務化の対象となる手続き

今回の改正で、電子申請義務化の対象となる手続きは以下のとおりです。

労働者死傷病報告

労働者死傷病報告とは、業務中に労働災害が発生した場合(死亡、休業を要する怪我・疾病など)、事業者がその状況を所轄の労働基準監督署に届け出る報告書のことです。

被災者の状況・休業日数・発生原因等を記録することで、同様の事故防止や行政による監督・統計のために用いられます。

出典:厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されます(令和7年1月1日施行)」

総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告

総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告とは、事業場が安全衛生体制を担う役職を選んだり変更したりしたとき、所轄の労働基準監督署に通知する手続きのことです。

氏名・所属・選任日など必要な情報を報告し、安全衛生体制の整備・維持を目的としています。

【関連記事】
産業医の選任義務が発生する条件とは?選任期限や注意点・手順について解説

定期健康診断結果報告書

定期健康診断結果報告書とは、事業場が法律で定められた定期健康診断を実施した後、その診断結果をまとめて所轄の労働基準監督署へ報告する書類のことです。

常時50人以上の労働者を使用する事業場で提出が義務付けられており、診断実施日や受診者数、所見のあった者数、医師の指示を受けた者数などを「定期健康診断結果報告書様式」に記載します。

電子申請は厚生労働省の入力支援サービスやe-Govを通じて行えます。

心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告

心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書は、従業員のストレス状態を把握するための検査(ストレスチェック)を実施した事業場が、その結果や実施状況を所轄の労働基準監督署に報告するための書類です。

対象となるのは常時50人以上の労働者を使用する事業場で、ストレスチェックの実施率、高ストレス者数、面接指導を実施した人数などが報告されます。

心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告様式」を用いて提出します。

有害な業務に係る歯科健康診断結果報告

有害な業務に係る歯科健康診断結果報告とは、労働者を対象にした歯科健診を実施し、その結果を所轄の労働基準監督署へ報告するもので、口腔健康を含む職業上の健康管理向上が目的です。

対象となるのは、化学物質や粉じんなどで歯やその支持組織に悪影響を及ぼす可能性のある業務に従事する労働者です。

たとえば、塗装業やメッキ業、金属加工業などで、塩酸・硝酸・硫酸・亜硫酸・フッ化水素・黄リン・その他歯またはその支持組織に有害な物のガス、蒸気または粉じんを発散する場所で業務を行う労働者を指します。

事業者は診断後、「有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書」(歯科健診様式)を作成し、所轄の労働基準監督署へ電子申請で提出する必要があります。

有機溶剤等健康診断結果報告

有機溶剤等健康診断結果報告とは、有機溶剤による健康障害の有無を調べる特殊健康診断を実施した後、その結果を所轄の労働基準監督署へ報告する書類のことです。

対象者は、有機溶剤を取り扱う業務に従事する労働者です。たとえば、塗装業務や印刷業務、接着・接着剤塗布作業を行う労働者を指します。

受診者数や有機溶剤の取り扱い状況、健診項目(尿中代謝物検査など)などを

有機溶剤等健康診断結果報告書(有機則様式3号の2)」にまとめ、労働基準監督署へ電子申請で報告します。

じん肺健康管理実施状況報告

じん肺健康管理実施状況報告とは、じん肺法に基づき健康診断を実施しているかどうか、その結果や管理区分の状況を所轄の労働基準監督署へ報告する書類のことです。

対象事業場は、粉じん作業などじん肺のリスクがある業務を行う事業場です。たとえば、トンネル掘削や鉱山採掘、セメントや鋳物などの粉体製造・研磨、金属の切断・溶接・研磨作業などが該当します。

事業者は診断結果をもとに、「じん肺健康管理実施状況報告書(じん肺則様式8号)」を作成し、毎年12月31日時点の状況を翌年2月末までに電子申請での提出が必要です。

報告内容には、対象労働者数や健診受診状況、所見の有無、管理区分(じん肺健診区分)の分布などが含まれます。

健康診断等を電子申請する手順(定期・特殊健診共通)

健康診断等を電子申請する手順


事業者による健康診断等の電子申請はe-Govシステムを通じて行います。ここからは登録から申請までの手順を具体的に解説します。

STEP1. e-Gov電子システムへの登録

まず、電子申請を行うためにe-Govシステムの準備をします。

登録可能なアカウントにはe-Govアカウント・GビズID(法人・個人事業主向け認証)・Microsoftアカウントがあります。

審査を要するGビズIDプライムの取得にはおおよそ 2週間前後かかり、ウェブサイトから申請書をダウンロードし、印鑑証明書など必要書類を提出する必要があります。ただし、オンライン申請であれば、最短即日で発行可能です。

アカウント取得時は、ブラウザの環境設定(ポップアップブロックの解除など)や、使用する端末・ネットワークのセキュリティ体制を確認しておくようにしましょう。

出典:厚生労働省「電子申請サービス利用方法」

STEP2. 申請書類の作成

登録が済んだら、定期健康診断結果報告書等の提出対象の報告書を作成します。

健康診断結果を集計し、所定の様式に則って以下のような項目を記入する必要があります。

  • 在籍労働者数・受診者数
  • 所見のあった者数
  • 健康診断実施日・健診機関名等
  • 健診項目(血圧・肝機能・尿検査など)や使用業種・業務内容など(特殊健診等の場合)

健康診断結果をデジタル(Excel/CSVなど)で管理できるよう、健診機関や自社システムと調整しておくと手間が省けます。

STEP3. オンライン申請

申請書類が準備できたら、e-Govサイトへログインし、該当する手続きを選びます。必要な情報を入力し、様式データや添付書類をアップロードして「申請」を実行します。

申請完了後には「到達番号」という受付番号が発行されるため、控えておくようにしましょう。

また、提出方法としてfreee人事労務など、クラウド型の労務管理システムを導入して e-Govへ連携する機能を使うと、作業効率が上がる場合があります。

【関連記事】
e-Govとは?できることやメリット・デメリット|利用前に準備しておくことを解説

定期健康診断報告書等の電子申請をしなかった場合のペナルティ

定期健康診断結果報告書等の電子申請が義務化される事業場が、報告書自体を提出しなかったり、電子申請をしなかったりした場合でも、直接的な罰則は設けられていません。

しかし、健康診断を実施しなかった場合には、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、提出義務を怠る・電子申請の義務化された手続きでオンラインでの提出をしないなどで行政指導を受ける可能性もあるため、対象の事業者は健康診断の実施・報告書の電子申請は必ず行うようにしましょう。

出典:e-Gov 法令検索「労働安全衛生法」

定期健康診断報告書等の電子申請義務化で事業者が準備すること

定期健康診断報告書等の電子申請が義務化される事業者は、スムーズに申請が行えるように事前にフローを整えておきましょう。

担当者の選定と業務フローの見直し

定期健康診断結果報告書等の電子申請が義務化されるにあたり、まずは社内で担当者を明確に決めておくのが大切です。

たとえば、報告書作成・データ集計・電子申請周りの管理ごとに担当者を割り振っておくと、業務の負荷が分担されます。

さらに、現在の業務フローを整理して、どこに紙ベースの作業が残っているか、どの部分が重複・非効率かを洗い出し、電子申請対応に向けて最適化を図りましょう。

「誰がいつ何をどの様式で提出するか」のルールを文書化し、すべての関係者がその内容を理解しておくためにも不可欠です。

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業務フローの書き方とは?ワークフローとの違いやわかりやすい図を作るポイントを解説

健康診断結果のデータ化と管理体制構築

電子申請では、報告書のデータをすぐに入力できる状態で準備しておくことも大切です。

健診結果を紙で受け取っていた場合、受診者数や有所見者数、検査項目ごとの数値などをデジタルデータ(Excel/CSVなど)に整理・保存する仕組みを整えましょう。

さらに、個人情報保護の観点から、アクセス権限の設定やデータ暗号化、ログ管理などのセキュリティ対策も必須です。

社内サーバーやクラウドストレージを使う場合にはその運用ルールを定め、漏えい・紛失リスクを最小限に抑える体制を作るのを意識しましょう。

外部システム導入の検討

大量の健診データを手入力で処理するのは工数もミスも増えやすいため、人事・労務管理システムや健康管理システムの導入を検討することが効果的です。

外部システムの中には健診予約・結果受取・集計などの機能をもつツールがあります。

たとえば、freee人事労務と連携することで、健康診断やストレスチェックの管理を効率化できます。定期健康診断結果報告書等の電子申請を行え、システム上でまとめて管理可能です。

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よくある質問

定期健康診断報告書等の電子申請義務化はいつから?

2025年1月1日から、労働安全衛生法関係の手続きのうち、定期健康診断結果報告書等を含む一部の帳票について、電子申請が原則義務化されました。

義務化対象は以下のとおりです。

  • 定期健康診断報告書
  • 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告
  • 有害な業務に係る歯科健診報告
  • 有機溶剤等健康診断報告
  • じん肺健康管理実施状況報告
  • 労働者死傷病報告
  • 総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告

ただし、電子申請が技術的・運用的に困難な事業場には、当面の間、紙様式での申請も認められるという経過措置があります。

健康診断の結果の提出期限はいつまで?

実務的には、結果を受け取るまでの時間を考慮して、約1ヶ月、遅くとも3ヶ月以内を目安とするのがよいでしょう。

法律上は「遅滞なく提出すること」が求められており、一定の期日が法律で定められているわけではありません。提出漏れや遅延を防ぐため、社内で報告時期をあらかじめ定め、「年度末」「◯月までに提出」など期限を固定化しておくのがよいです。

事業者はまとめて一括申請することは可能?

事業者が申請を行う場合、基本的には、申請は「事業場ごと」に行う必要があります。

複数の支店・工場などがある場合、各拠点で所轄の労働基準監督署が異なる可能性があるため、本社でまとめて一括申請できない場合もあります。

帳票入力支援サービスやe-Govの機能で、複数事業場分をひとつのCSV・データファイルで準備しておくと、それぞれの申請先へ順番に申請する効率化にもつなげられるでしょう。

定期健康診断結果報告書の記入例は?

以下のような項目が記入対象になります。

  • 事業場名・所在地・事業の種類など基本情報
  • 在籍する常時使用する労働者数およびそのうち定期健診を受診した者数
  • 健診実施年月日・健診実施機関名
  • 健診項目ごとの有所見者数
  • 医師による指示があった従業員数

様式や記入する情報は変更されることがあるので、最新の厚生労働省の記入例や所轄労働基準監督署の指導資料を確認してください。

まとめ

健康診断の電子申請義務化は単なる法令遵守の問題だけではなく、事業者のバックオフィス効率化と従業員の健康管理強化の両面にメリットがあります。

電子申請義務化に向けて整備すべき社内体制としては、次のような点が挙げられます。

  • 健康診断データを一元管理
  • データの安全な保存・運用のルール・ポリシーの策定
  • 電子申請の操作手順・申請書類の作成方法などを含むマニュアル整備と担当者教育
  • 定期的な見直しと改善

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参考文献

監修 涌井好文(わくい よしふみ) 社会保険労務士

平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。退職時におけるトラブル相談や、転職時のアドバイスなど、労働者側からの相談にも対応し、労使双方が円滑に働ける環境作りに努めている。また、近時は活動の場をWeb上にも広げ、記事執筆や監修などを通し、精力的に情報発信を行っている。

監修者 涌井好文

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