借地権とは、建物の所有を目的として他人の土地を借りる権利のことです。
自費で土地を購入して建物を建てるのと比べると、初期費用を抑えられるため、好立地での建物所有を実現する有効な選択肢です。しかし、所有権との違いや、借地権の種類を正しく理解しておかなければ、予期せぬトラブルにつながるかもしれません。
本記事では、借地権の仕組みや地代の相場、メリット・デメリットについて解説します。
目次
- 借地権とは?仕組みと地上権・賃借権の違い
- 借地権は「建物の所有」を目的として土地を借りる権利
- 借地権には「賃借権」と「地上権」の2種類がある
- 土地の資産価値における「借地権割合」の考え方
- 旧法・新法|定期借地権の3つの種類と特徴
- 借りる側の権利が強い「旧借地権(旧法)」
- 契約期間と更新ルールが決まっている「普通借地権(新法)」
- 契約更新がなく期間満了で返還する「定期借地権」
- 借地権付き建物を購入するメリット
- 1.土地購入費や固定資産税がかからない
- 2.好立地な物件を相場より安くもてる
- 借地権付き建物を購入するデメリット
- 1.地代・更新料などの維持費がかかり続ける
- 2.売却やリフォームに「地主の承諾」が必要
- 借地権にかかる主な費用と相場
- 毎月支払う「地代」の相場と計算方法
- 契約更新時にかかる「更新料」の目安
- 売却・増改築時に必要な「承諾料」
- 借地権の相続・売却で押さえるべき重要ポイント
- 借地権は遺産として「相続」可能
- 第三者への「売却」には地主の承諾が必須
- 借地権付き建物は住宅ローン審査が厳しくなる傾向
- まとめ
- よくある質問
借地権とは?仕組みと地上権・賃借権の違い
借地権とは、建物の所有を目的として他人の土地を借りる権利のことです。土地を購入するわけではないため、土地に対する固定資産税などの負担がありません。
借地権の定義や権利の種類、資産価値の考え方について解説します。
借地権は「建物の所有」を目的として土地を借りる権利
借地権の大きな特徴は、利用目的が「建物の所有」に限定されている点です。
資材置き場や駐車場としての利用とは異なり、借地借家法によって権利が強力に保護されています。そのため、一般的な普通借地権であれば、地主に正当事由がない限り契約更新が認められ、長期にわたる安定した利用が可能です。
土地を購入して建物を所有する場合と、土地を借りる場合での費用の違いは以下のとおりです。
| 項目 | 借地権 | 所有権(土地を購入) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 権利金・保証金など ※購入するよりも抑えられる傾向 | 土地の購入代金 |
| 税金 | 建物分のみ発生 | 土地・建物ともに発生 |
| 維持費 | 毎月の地代 | なし |
土地の所有者はあくまで地主であるため、土地にかかる固定資産税や都市計画税は地主が負担します。借地人は土地の税金を負担しない代わりに、地主に対し毎月の地代(賃料)を支払います。
ただし、定期借地権のように更新がなく期間満了で終了する契約もあるため、契約形態ごとのルールの違いを把握しておくことが重要です。
借地権には「賃借権」と「地上権」の2種類がある
借地権には「地上権」と「賃借権」の2種類があり、市場に流通する物件の多くは賃借権です。両者の大きな違いは以下のとおりです。
「賃借権」と「地上権」の違い
- 地上権(物権):売却や転貸(第三者への貸し出し)が自由にできる
- 借地権(債権):借地権付き建物の売却や建て替えなどの重要な行為には、原則として地主の承諾が必要である
賃借権の場合、承諾を得るために承諾料(名義書き換え料など)の支払いが発生するのが一般的です。権利の性質によって自由度や将来的なコストが異なるため、物件選びの際は権利形態の確認が欠かせません。
土地の資産価値における「借地権割合」の考え方
借地権割合とは、土地全体の評価額に対する借地権の価値の割合を示す指標です。
借地権は土地の所有権ではありませんが、相続税評価などの対象となる財産的価値のある資産として扱われます。割合は地域ごとに国税庁が定めており、商業地や都心部など利用価値が高い場所ほど、高く設定される傾向にあります。
具体的な割合は、国税庁の路線価図にあるアルファベット(A〜G)の記号により確認可能です。
たとえば、借地権割合が60%(D)の地域であれば、土地評価額の60%が借地権の価値とみなされます。相続税評価額や借地権の売却時の目安となる適正価格を算出する際は、この借地権割合を用いて計算を行います。
出典:国税庁「路線価図の説明」
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旧法・新法|定期借地権の3つの種類と特徴
借地権は、適用される法律や更新の有無によって「旧法借地権」「普通借地権」「定期借地権」の3つに分類されます。1992年8月の法改正を境に適用される法律が異なるため、契約時期の確認が重要です。
各借地権の主な特徴は、以下のとおりです。
| 種類 | 旧法借地権 | 普通借地権 | 定期借地権 |
|---|---|---|---|
| 適用法律 | 旧借地法 | 借地借家法(新法) | 借地借家法(新法) |
| 契約時期 | 1992年7月31日以前 | 1992年8月1日以降 | 1992年8月1日以降 |
| 契約更新 | あり | あり | 原則なし |
| 契約終了後 | 建物がある限り継続可 | 正当事由がなければ更新 | 更地にして返還 |
借りる側の権利が強い「旧借地権(旧法)」
旧法借地権は、1992年7月31日以前に契約された借地権であり、借地権者の権利が強力に保護されているのが特徴です。
契約期間満了後も、地主に「正当事由」がない限り更新拒絶は認められません。正当事由の認定ハードルは極めて高く、立退料の支払いや地主の自己使用の必要性などが厳格に判断されます。
存続期間は、建物の構造により以下のように異なります。
建物の構造による存続期間
- 木造などの非堅固建物:更新後20年以上
- 鉄筋コンクリート造などの堅固建物:更新後30年以上
建物が存在する限り法定更新が認められるため、正当事由がない限りは実質的に長期の利用が可能です。
契約期間と更新ルールが決まっている「普通借地権(新法)」
普通借地権は、1992年8月1日以降に契約された借地権で、新法(借地借家法)が適用されます。
旧法との主な違いは、建物の構造に関わらず、当初の存続期間が一律30年と定められている点です。契約更新を前提としており、地主が更新を拒絶するには旧法同様に正当事由が必要です。更新後の期間は、1回目が20年以上で、2回目以降は10年以上となります。
期間の設定は旧法と異なりますが、利用し続ける権利自体は手厚く守られています。更新時期やコストが明確であるため、長期的な資金計画を立てやすい点がメリットです。
出典:e-Gov法令検索「借地借家法(平成三年法律第九十号)」
契約更新がなく期間満了で返還する「定期借地権」
定期借地権は、あらかじめ定められた契約期間(一般定期借地権は50年以上)で借地関係が終了する権利です。
原則として契約の更新がなく、期間満了後は建物を解体して更地返還する義務があります。地主にとっては、期間満了すれば土地が確実に返還される安心感があるため、土地供給の促進を目的に新設されました。
一方で借地権者にとっては永続使用できない点がデメリットですが、所有権付きと比べて割安な価格で取得できる経済的なメリットがあります。相続を前提とせず、自身の一代限りで好立地に住居や店舗などを設けたい場合に適した選択肢です。
借地権付き建物を購入するメリット
借地権付きの建物を購入するメリットは、土地を購入しない分、初期費用を大幅に抑えられる点です。
所有権付きの物件と比較して、購入価格が土地代の分だけ安くなるため、相場よりも安価に購入できるケースも珍しくありません。また、土地の固定資産税や都市計画税の納税義務がないため、毎年の税負担も軽減されます。
借地権付き建物は、どのようにコスト面で優れているのかや、好立地を取得できる可能性について解説します。
1.土地購入費や固定資産税がかからない
借地権付き建物は、土地を購入しないため初期費用を大幅に抑えられる点が大きなメリットです。
土地と建物をセットで購入する一般的な物件とは異なり、支払うのは「建物価格」と「借地権の対価」のみです。借地権価格(権利金など)は、地域や条件によっても異なりますが、更地価格の60〜70%ほどで取引されるケースが一般的。定期借地権であれば、さらに安価に設定される傾向があります。
なお、「借地権価格」とは、契約時に一括で支払う初期費用のことであり、毎月支払う「地代」とは異なるため注意が必要です。購入時の総額を安く抑えられる分、ローンの借入額も減らせるため、月々の返済負担の軽減が可能です。
浮いた資金を建物のグレードアップや教育費、老後資金などに充てられるため、手元の資金を多く残しておきたい人にとって合理的な選択肢となります。
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2.好立地な物件を相場より安くもてる
借地権付き物件は、都心の一等地や駅近といった好立地なエリアでも、周辺の所有権物件の相場よりも割安で手に入りやすくなります。
これは、寺社仏閣や旧家などが地主である場合、土地を手放さずに有効活用する手段として、借地権が設定されるケースが多いためです。
借地権付きであれば比較的安価なため、開発が進んだ人気エリアであっても、予算内で検討できる物件の幅が広がります。所有権(底地)は地主に残りますが、法律で保護された居住権を得ることで、利便性の高い生活を享受できます。
土地の資産性を重視するよりも、現役世代のうちに環境の良い場所に住むことを優先したいのであれば、非常にコストパフォーマンスの高い選択肢といえるでしょう。
借地権付き建物を購入するデメリット
借地権付き建物を購入するデメリットとして、所有権にはない金銭的な負担や、権利行使における手続き上の制約が挙げられます。
購入後のトラブルを防ぐには、地代や承諾料といった特有のコストやルールを事前に把握しておく必要があります。
1.地代・更新料などの維持費がかかり続ける
借地権付き建物を所有するには、土地の固定資産税はかかりませんが、代わりに地主へ毎月の「地代」を支払う義務が生じます。
地代の相場は、土地の固定資産税・都市計画税の3~5倍ほどが住宅地では一般的で、長期的に見ると税金負担よりも高額になる可能性があります。
また、契約期間満了時には「更新料」の支払いが慣習となっており、借地権価格の5%前後(地域や条件によっては5~10%ほど)のまとまった資金が必要です。将来的に地価が上昇すれば、地代の増額を請求されるリスクもあります。
物件価格の安さだけでなく、数十年単位での総支払額や更新時のコストをシミュレーションし、計画的な資金準備が可能か検討することが大切です。
2.売却やリフォームに「地主の承諾」が必要
借地権(賃借権)は、建物の売却や大規模な増改築を行う際に、原則として地主の承諾が必要です。
賃借権は地主との信頼関係に基づく契約であるため、無断での権利譲渡や建て替えは契約解除の事由となり得ます。これは土地を借りるにあたって、大きな制約だといえるでしょう。
承諾を得るには「承諾料(ハンコ代)」の支払いが一般的で、売却時は借地権価格の10%ほど、建て替え時は更地価格の3~5%ほどが相場です。地主との関係性が悪化すると、スムーズな売却やリフォームが困難になるおそれがあります。
購入を検討する際は、契約書の内容確認に加え、地主の属性や人柄についても不動産会社を通じて情報を収集しておきましょう。
借地権にかかる主な費用と相場
借地権にかかる主な費用として、物件購入費以外に発生する毎月の地代や、契約更新時・変更時に地主へ支払う一時金などがあります。借地権は所有権よりも初期費用が安価なものの、ランニングコストが発生するため長期的な視点で検討しなければなりません。
地代の計算方法や更新料、承諾料の相場について解説します。
毎月支払う「地代」の相場と計算方法
一般的な地代の相場は、「公租公課(その土地にかかる固定資産税と都市計画税の合計額)」の3倍から5倍ほどを用いて算出されます。
たとえば、土地の公租公課が年間15万円とすると、年間地代は45万〜75万円が目安となり、これを12ヶ月で割った金額を毎月支払います。ただし、商業地など収益性の高いエリアでは、公租公課の5~8倍といった高めの設定になることも珍しくありません。
また、地価上昇に伴い、将来的に地代の増額請求が行われる可能性もあるため、契約書における改定ルールの確認が不可欠です。
契約更新時にかかる「更新料」の目安
更新料の相場は、借地権価格の5~10%、あるいは更地価格(実勢価格)の3~5%ほどとされています。
更新料とは、契約期間満了後に借地契約を継続する際、地主に対して支払う一時金のこと。法律上、更新料の支払い義務は明記されていませんが、多くの契約書には特約として記載されており、慣習として支払うケースが一般的です。
仮に更地価格が4,000万円の土地であれば、120万〜200万円ほどの更新料が必要です。
更新時期は数十年ごとに訪れるため、将来の高額出費に備えて計画的な資金の積み立てが推奨されます。
売却・増改築時に必要な「承諾料」
売却・増改築時には、承諾料が必要です。承諾料とは、借地権の譲渡や建物の増改築などを行う際に、地主の許可を得る対価として支払う費用のことです。
賃借権は地主との信頼関係に基づく契約であるため、借地権者の判断だけで、自由に権利移動や現状変更を行うことはできません。
主な種類として、以下の2パターンがあります。
承諾料の種類
- 譲渡承諾料(名義書換料):第三者へ売却する際に支払う。借地権価格の10%ほどが相場
- 建て替え承諾料:建て替え時に支払う。更地価格の3〜5%ほどが相場
住宅ローン利用時に、金融機関が地主の承諾書の提出を求めるケースもあるため、リフォームや売却を検討する際は、これらの費用を予算にあらかじめ組み込んでおく必要があります。
借地権の相続・売却で押さえるべき重要ポイント
借地権の相続・売却における重要ポイントとして、地主の承諾が必要となる場面の区別や、資金調達における特有の制約が挙げられます。所有権とは異なり、ライフステージの変化による権利移動の際には、地主との関係性が手続きに大きく影響しがちです。
相続と売却で異なるルールの違いや、住宅ローン審査の傾向について解説します。
借地権は遺産として「相続」可能
借地権は、現金や土地建物と同じく「財産」として扱われるため、契約期間中に借地人が亡くなった場合でも、配偶者や子どもなどの法定相続人に引き継ぐことが可能です。
通常の相続であれば、地主の承諾は原則として不要であり、更新料や名義書換料などの費用も発生しません。借地契約は相続の対象となる財産権であり、地主はこれを拒否できないためです。ただし、契約上の地位変更を明確にするため、速やかな名義変更の連絡が推奨されます。
注意点として、遺言によって法定相続人以外に権利を譲る「遺贈」の場合は、第三者への譲渡と同様に扱われます。このケースでは地主の承諾および承諾料が必要となるため、誰に引き継ぐかによって、手続きやコストが異なるので注意しましょう。
第三者への「売却」には地主の承諾が必須
第三者への「売却」には、地主の承諾が必須のため、勝手に売ることはできません。
民法上、賃借権の無断譲渡は禁止されており、地主との信頼関係が重視されるためです。承諾を得る対価として、借地権価格の10%ほどを「譲渡承諾料(名義書換料)」として支払うのが一般的です。
地主が不合理に承諾を拒否した場合は、裁判所の許可(借地非訟手続)を得て売却する方法もあります。
しかし、法的手続きは時間と費用を要し、売却活動に支障をきたすリスクがあるため要注意です。そのため専門の不動産会社を介して、円滑に交渉を進めるのが確実な売却への近道です。
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借地権付き建物は住宅ローン審査が厳しくなる傾向
借地権付き建物の購入で住宅ローンを利用する場合、土地と建物をセットで購入する一般的な物件に比べて、審査のハードルが高くなる傾向にあります。
理由は、金融機関にとってのリスクが高いためです。借地権は土地を借りる権利にすぎないため、土地そのものを担保できません。また、万が一返済が滞って競売にかける際、地主の承諾が必要になるなど権利関係が複雑な点も、審査を慎重にさせる要因です。
そのため、利用できる金融機関は「フラット35」や一部の銀行などに限定されます。多くの銀行から選べる所有権物件と異なり、自身の希望する金利や条件で借りられない可能性がある点はデメリットです。
また、融資の条件として、地主による「承諾書(抵当権設定承諾書)」への署名捺印を求められるのが一般的です。住宅ローンの利用を検討する際は、早めに取り扱い可能な金融機関を探すとともに、地主の協力が得られるかどうかを事前に確認しておきましょう。
まとめ
借地権とは、土地を借りることで、土地を購入せずに建物を所有できる権利です。土地代を支払わない分、初期費用を抑えつつ、同じ予算でより好立地の土地・物件を選びやすい点がメリットです。
一方、地代や更新料などのランニングコストがかかり、売却や増改築には地主の承諾が必要になるなど、所有権にはない制約も存在します。
法的な保護は手厚いものの、権利の種類や契約内容によって将来の負担は大きく異なるため、検討の際は目先の価格だけでなく、将来的なコストや契約条件を含め総合的な判断が求められます。不明点があれば、専門家に相談しながら慎重に選択することが重要です。
よくある質問
借地権の契約期間が満了したら立ち退きが必要ですか?
借地権の種類によって結論が異なります。「定期借地権」の場合、契約更新がないため期間満了時に更地返還する義務があります。
一方、「普通借地権」や「旧法借地権」であれば、原則として立ち退きの必要はありません。借地借家法により、地主に正当事由がない限り契約更新が認められるためです。
まずは契約書を確認し、自身が契約している権利の種類を把握する必要があります。
詳しくは「旧法・新法|定期借地権の3つの種類と特徴」をご覧ください。
地主から地代の値上げを要求されたら拒否できますか?
増額の根拠に納得できないのであれば、合意するまで拒否できます。
地代の増減請求は公租公課の上昇などを理由に行われますが、一方的に決定されるものではなく、双方の合意が必要です。話し合いがつかない間は、自身が相当と考える額(従来の地代など)を支払い続ければ滞納にはなりません。
万が一、地主が受領を拒否しても、法務局への供託手続きを行えば契約解除のリスクを回避できます。
地主が土地を第三者に売却したらどうなりますか?
地主が代わっても借地権は消滅せず、そのまま住み続けることが可能です。
建物登記を行っていれば借地権の第三者対抗要件を備えているため、新所有者に対しても権利を主張できます。立ち退く必要はありませんが、地代の振込先変更などの事務手続きは発生します。
なお、新地主によって管理体制が変わる可能性があるため、過去の契約書や承諾に関する書類は大切に保管しておきましょう。
★詳しくは「借地権とは?仕組みと地上権・賃借権の違い」をご覧ください。
