クラウド化により属人的な経理体制から脱却!入金消込時間を4割減させ、人の入れ替わりにも耐えられる経理部に

株式会社トムス ソリューション営業部部長 海野貴之 氏

課題
バックオフィスの体制構築・効率化

静岡県にある企業のマーケティングを支援する、株式会社トムス様。静岡放送(SBS)や静岡新聞のグループ会社として、地元の企業を支えてきました。


近年、マーケティングだけでなく、クライアント企業の業務改善をサポートする事業をスタート。そこで、目をつけたのがクラウドツール導入支援でした。さまざまなクラウドツールを調べる中で、偶然出会ったのがfreee会計。


同社で20年にわたり経理を担当してきたソリューション営業部部長の海野貴之氏は、freeeの営業担当者から話を聞くうちに、クラウドツールとしての魅力に惹かれていったそう。


現在は、経理担当者が入金消込をしていた作業時間は4割減り、経営会議の資料作成が迅速化するなど目に見えた変化も出ているそう。さらに振込作業もfreee会計への対応を準備しており、こちらは作業時間が7割減ると見込んでいます。同社で起きた変化や導入までの苦労、そしてこれらの展望を海野氏に伺います。

顧客に勧めるはずが自社で導入 「freee会計」との出会い

―― 会社のサービス内容を教えてください

私たちは、地元・静岡にある企業を、マーケティングリサーチや販促、WEB関連サービスで広くサポートする会社です。現在、従業員は25名になりました。


もともとは静岡放送(SBS)や静岡新聞のグループ会社として、新聞やテレビ放送のマーケティングを補完する役割を担っていましたが、現在はさまざまな地元企業のマーケティング活動をサポートしています。



―― 海野さんご自身は、どういう役割を担われているのでしょうか。

20数年前に入社をし、最初は外回りの営業やマーケティングリサーチ、かつて当社の一事業として取り組んできた人材派遣業まで幅広く関わってきました。


その中でも、20年前から業務の中心は経理・総務です。現在は、ソリューション営業部の部長として、営業の進捗把握から財務管理までを担当しています。



―― freee会計を導入したきっかけについて教えてください。

近年、クライアントである静岡の企業のマーケティング領域支援にとどまらず、業務全体を改善していくためのサポートもするようになりました。その一環として、目をつけたのがクラウドツールの活用です。


2019年に、我々自身がさまざまなクラウドサービスを活用し効果や変化を体感するため、「静岡クラウドラボ」というチームを立ち上げました。溜めた知見を生かし、クライアントに最適なツールを選び、導入を支援しています。


そこで多数のクラウドツールを調査する中で見つけたのが、「freee会計」です。



―― はじめは、自社のために探されたわけではなかったんですね。

はい。その頃はまだfreee会計がどういうサービスなのかすら、ちゃんと分かっていませんでしたね。


当時は、親会社と同じスタンドアロン型の会計システム(※ 以下、既存システム)を導入して約5年が経ち、社内の経理業務が落ち着いてきたタイミングでした。だから、わざわざ焦って当社の経理部に導入する必要はないだろうと思っていたんです。


※パソコンに会計ソフトを直接インストールするタイプ。基本的に、ソフトをインストールしたPCでのみ利用可能



―― そこで、freee会計の導入へ意識が変わったのはどうしてですか?

freeeの営業担当者さんからサービスについていろいろな話を聞くうちに、ここまで経理業務がクラウド化できるfreee会計に強い興味が湧いたんです。それに、自社でfreee会計を使っておけば、顧客に紹介するための大きな知見も得られ、説得力も増します。


また、将来的な業務の引き継ぎの必要性を感じていたことも一因です。お伝えしたように、この会社で20年も経理をやってきた私は、会社の伝票はほとんど見ています。だから、いつ税務署が来ても、すべて説明ができるんです。とはいえ、本来こうした業務は若い後任にどんどん継承していかないといけない。その意識が、経営陣にも私の中にもありました。


一方で、私自身が使いやすいようにExcelなどを組んでいた部分もあったので、既存システムに切り替えてもなお、業務の引き継ぎが思い通りに進んでいませんでした。


親会社と同じ会計システムを入れて約5年。後任はやっと慣れてきましたが、完璧に使いこなせているわけではありません。「ちゃんと引き継ぐために、大きな切り替えをするなら今しかない」と考え、思い切ってfreee会計の導入へ踏み切りました。


現在は、切り替えの都合もあり既存システムと同時並行で動かしていますが、将来的にはfreee会計に統一させる予定です。

入金消込では負担が4割減、経営会議の資料作成が迅速化

―― 実際、freee会計を導入してみて、いかがでしょうか?


“株式会社トムス


まず何よりも、どこでも作業ができるクラウドツールの良さを感じました。


既存システムは、経理担当者のパソコンをネットワークに繋がず独立した状態でで動かしていたので、作業するときに席を移動しないといけないし、別のパソコンにあるデータを入れるのもひと手間。


しかし、freee会計はアカウントを持っていればどのパソコンからでも利用できるし、私だけではなく他の担当者も同時に会計システムを動かせる。もちろん席を移動したり、データを運んだりする必要もなくなりました。また、閲覧権限もそれぞれのアカウントで細かく設定できるため、見せたくない情報が他の担当者に見えてしまうことはありません。これは大きな変化ですね。



―― 現在は、消込や経費精算、タグなどさまざまな機能を活用いただいています。経理業務にかかる時間に何か変化はありましたか?

freee会計の大きな特徴である銀行口座のデータとの連携は便利ですね。今までは経理担当者が、経理システムと連動していない独自の販売管理システムと銀行のデータをそれぞれ照らし合わせながら、消込をしていました。


その点、freee会計は銀行データと自動で連携するので、消込にかかる時間が4割は削減されましたね。今後は、freee会計と連携できるkintone上で販売管理をすれば、さらに短縮できるでしょう。


※サイボウズ株式会社が提供する、販売管理や情報の見える化などができるクラウドツール


また、月末の振込業務もfreee会計へ切り替える目処がようやく立ちました。今は、紙で届いた請求書を見て、銀行のソフトに打ち込んで、もう一度プリントアウトしてチェックして……という作業が必要で、かなり時間がかかっているんですね。これからきっちり準備をすれば、振込にかかる時間は7割減らせるのではないかと期待しています。



―― 銀行との連携は重要ですよね。データはリアルタイムで確認できるようになりましたか?

はい。既存システムでは、預金の状況の反映に少なくとも2〜3日程度のタイムラグがありました。しかし、freee会計を導入してからは、自動で情報が更新されるので、最新の財務状況を把握しやすくなりました。


また、各案件に「タグ」を付けたことで、各案件の収支がリアルタイムに分析でき、レポーティングも簡単にできています。


経営会議の資料作りも、販売管理ソフトやExcel、紙資料からさまざまなデータを引っぱってきてまとめる作業も必要でしたが、freee会計に集約できればかなり楽になるでしょう。


※freeeには「取引先」「品目」「部門」などの情報を付加できる「タグ」という概念があります。「タグ」は従来の補助科目と同じように使うことも可能ですし、多角的分析に用いるなど補助科目を上回るメリットもあります



―― freee人事労務も導入を決めたと伺いました。どのように活用していますか?

「経費精算のデータと給与計算が紐付けられたら、よりスマートな運用ができるな」と考えてfreee人事労務の導入を決めました。もともと使っていた給与計算システムと併用しつつ、まずは一部社員の給与計算で試しに使いはじめたところです。


実は毎月の給与明細を紙で出して、封筒に入れて渡していたので、単純にその作業がなくなっただけでも楽になると感じましたね。最初は、WEBで給与明細を受け取るのに違和感のある社員もいたようですが、だんだん慣れてきてくれたようです。


また、今年度の年末調整の情報回収はfreee人事労務ですべて行いました。それぞれのスマホから情報を提出してもらいましたが、操作が簡単なので問題なく登録できています。


今はまだ少しずつ導入している段階ですが、もう少しすれば給与計算や勤怠管理、給与明細の発行もすべてfreee人事労務に切り替えられるでしょう。

業務改革には社員への“目的共有”が不可欠


“株式会社トムス


―― freee会計、freee人事労務ともに導入はスムーズに進みましたか?

最初は、経理担当者が「もし余計な機能を触って数字が壊れたらどうしよう……」と怖がって、freee会計をあまり使ってくれませんでした。経理担当者は何よりもデータが壊れるのを嫌うので、二の足を踏む気持ちも分かるのですが……。


しかし、使ってみなければ分からないことは沢山あります。だから、不安を乗り越えて使いこなせるよう、freeeの使い方をサポートしてもらえる「freeeの導入支援プラン」をお願いしました。やりとりのほとんどはリモートでしたが、担当コンサルタントさんは現行業務をただfreeeに置き換えるのではなく、会社の状況をよく理解した上で使い方を提案してくれました。



―― その後、経理担当者さんはfreee会計に慣れてくださいましたか?

少しずつ慣れてくれました。今は特に、現金・預金担当のスタッフがよく使っていますね。


最近、とても嬉しいことがありました。業務で使うETCカードの利用履歴管理を割愛する提案が経理担当者から出てきたんですね。「必要なものは仕入に入れる分だけだから、この部分はやめて、ここまでの情報を集めればいいのではないか」と。


これまでは、どの部門の誰がいつ、いくらETCカードを利用したのかをかなり細かく把握していましたが、実はそれほど重要ではないのに手間がかかる作業だったんです。


既存システムでは当たり前のようにやっていた作業でしたが、freee会計をきっかけに作業全体を冷静に見直し、どこまで必要なのかをきちんと気がついてくれるようになったのは大きな変化だなと感じています。



―― バックオフィス以外の社員さんはどうでしょうか?

まずは一部の社員から、経費を紙の伝票ではなく、freee会計へ直接入力してもらうやり方へ変更しました。最初はこの変化を面倒に感じた社員もいましたが、徐々に慣れてきて、現状ははスムーズに作業ができています。


仮に既存のシステムが使いにくくて不満があっても、新しいやり方を導入する時には多かれ少なかれ抵抗があるものです。それに、業務改革、働き方改革をしていくのは大変なことだとよく分かっています。だからこそ、なぜその変化が必要なのかという「目的」を、バックオフィスが旗振り役となって社員にしっかり伝えないといけません。



―― 働き方改革のお話がありましたが、freeeの導入後、社員の皆さんの働き方に変化はありましたか?

完全なリモートワークの社員はまだいません。ただ、「外でも作業ができるから、出先から無理に帰るのは無駄ではないか?」という雰囲気が生まれています。営業先に行ったあと、近くの喫茶店で作業をしてもいいじゃないですか。そういう柔軟な働き方の選択肢があることは、社員のモチベーションの面でもいい影響を与えています。


これまでも、名刺管理やkintoneをはじめさまざまなクラウドサービスは導入してきましたが、当社の業務をもっとも革新的に変えたのはfreeeです。



―― 社内の雰囲気はどうでしょうか?

経理の業務は、どうしても地味な印象があるんです。けれど、freeeで業務のデジタル化を進めたことによって、地味なイメージが少し変わりはじめました。


だから、経理担当者には「自分たちの会社が先進的な取り組みをしている」という自信を持って、これからもどんどん積極的に提案をしてほしいですね。

作業負担を軽くし、より経営までより深く関われる経理担当者を


“株式会社トムス


―― 今後の展望について教えてください。

現在は、freeeと既存システムを同時に稼働させていますが、将来的にはfreeeに統一したいですね。その際は、経理担当者だけでなく現場の営業にもfreeeのアカウントを用意するつもりです。


実は、アカウントを増やす分、既存システムよりもランニングコストが高くつく可能性もあるなと予想しています。しかし、営業がアカウントを持つことで入力作業がスムーズにできれば、経理担当者の仕事はデータの入力ではなく、入力されたデータの確認だけになる。そうして経理担当者の業務量が半分に減れば、その空いた時間を使って経営への提案などの生産的な作業ができるようになると期待しています。



―― freeeの導入を迷っている企業へのアドバイスはありますか?

経理の業務の性質上、今までのやり方を変えたくないという保守的な意見も強い業界です。だから、「クラウドツールを使ったバックオフィスの業務改革」にはなんとなく興味はあるものの自分たちには関係ない、と捉えてしまうことも多いようですね。


実際、他社の経理担当者と話したとき、「freeeを使った経理業務なんて“未来の世界”だ」と言われたことがありました。


けれど、その「未来」は今、当たり前の現実になってきているんです。だから、自分の会社には難しいと諦めるのではなく、まず一度は検討してみることをおすすめします。


私は経理の仕事はパズルのような面白さがあると感じています。けれど、世の中の経理担当者の中には、経理の業務はつまらないと感じている人もいるでしょう。だったら、そのつまらない作業を簡単にして、経営に関わる提案などに時間を割くほうが楽しいし、学びがあるのではないでしょうか。


導入に迷ったときは、「将来的には、こんなふうに会社が良くなる」というバラ色の未来を想像してみてください。導入は茨の道ですが、既存の業務が徐々に減ったり、改善されていったりするのを見るのは、本当に楽しいものですよ。


(執筆:加藤学宏 編集:鬼頭佳代/ノオト)

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