介護・福祉業界のバックオフィスをfreeeで統合!現場を楽にするためのDX戦略

課題
バックオフィスの体制構築・効率化

湘南シニアサービス株式会社は、神奈川県で介護・福祉サービス事業を展開している企業です。人手不足が叫ばれて久しいこの業界では、バックオフィスを効率化し、現場にリソースを割きやすくする必要に迫られています。


湘南シニアサービスは、税理士や社会保険労務士にバックオフィス業務の大半を外注していましたが、「データのやり取りに時間と手間がかかってしまう」「リアルタイムで数字を把握し、対応することができない」などの課題を抱えていました。


そこで導入されたのが、「freee会計」「freee人事労務」「freeeカード」です。複数のfreee製品を連携させるメリットなどについて、代表取締役CEOの山上直人さんにお話を伺いました。

事業が拡大するにしたがって、クラウドシステムの導入は必須でした。

――貴社の事業内容と山上さんのプロフィールを教えてください。

山上直人さん(以下、山上): 弊社は介護・福祉事業を展開しています。介護には、さまざまな種類のサービスがありますが、当社は在宅サービスが中心です。


介護保険制度に基づいて介護士がご自宅にお伺いし、利用者の方々の状態に合わせた支援を提供する訪問介護・障害福祉サービス、介助を必要とする方が安心して外出するための介護タクシー、入浴・機能訓練・レクリエーションを提供するデイサービスなどがあります。デイサービスの拠点は、「且座(さざ)」「茶廊(さろう)」の2箇所があります。それぞれ民家をモダン和風スタイルにリノベーションし、利用者の方々にくつろげる居場所の提供を目指しています。


そのほか、自費サービスがあります。病院内の付き添い、入退院時の準備や送迎、ご家族の食事の調理、買い物など、提供サービスは生活状況に合わせ多岐にわたっています。


続いて、私のプロフィールは、国際会計事務所にて企業会計や税務を中心に職業会計人として長年携わってきました。その後、一般事業会社での勤務を経て、「起業したい」という気持ちより介護業界で当社を立ち上げました。そして、現在は介護福祉士、ケアマネ、公認心理師として高齢者福祉の現場に携わりつつ、より良い介護サービスの提供を目指して法人運営に注力しています。


湘南シニアサービス株式会社


――freeeの導入前、バックオフィス業務にはどのような課題がありましたか? まずは会計からお願いします。

山上: 会計業務は仕訳から税務申告まで税理士に任せていたのですが、領収書を全部渡すだけではマネジメントは成立しないので、Excelで費用サイドの会計データをまとめた資料を作り、売上サイドも手元で月次集計し、簡易的な月次試算表を税理士にデータを渡す前に作成していました。私が元々会計の仕事をしてきたこともあって、一定の取引規模まではこの簡易試算表でマネジメントに必要な会計データは把握できていました。


しかし、事業規模が徐々に大きくなってくるにつれて、視覚的にも整理された、より精緻な会計データが必要となってきました。すると、これまでのように税理士にシステム会計処理を任せているデメリットを感じるようになってきました。具体的には、各会計取引の費目、科目が部門別に適時集計されたデータが必要でした。しかし、それを実現するためのデータを作成して税理士へ渡そうと思うと、もう社内である程度整理された試算表ができあがってしまいます。かと言って、それらのデータを元に自前で仕訳入力から実施できるかと言えば、そこまで時間が取れないのが現状でした。


拠点の経費処理も大変でした。特にデイサービスの拠点では、タオルや衛生用品、洗剤類などの消耗品、食材を含む飲食物など細かな経費が発生します。これらのうち、拠点単位で購入するものは、職員が手入力で購入品を集計していました。これは、入力に時間が掛かる上に、担当者毎の処理内容にばらつきが生じやすく、結果として効果的な集計ができない現状がありました。そして、このようなばらつきのある集計表と領収書を最終的にチェックし処理するのも一仕事でした。


また、そうした拠点購入経費は、拠点の管理者が立替購入し精算する手続きをとっていました。しかしこの手続きでは金額が大きくなるほど管理者の負担になってしまいますし、立替精算手続きも手間のかかる作業となっていました。


――人事労務ではどんな課題がありましたか?

山上: 入退社、社会保険、年金、そして源泉徴収税額計算等の給与計算などのさまざまな業務を社労士に依頼していました。例えば、職員が昇給したときも、Excelでまとめた給与データを社労士に渡して、給与計算システムに反映してもらっていました。ただ、データの受渡しプロセスで行き違いが生じたり、臨時調整や計算結果の受取に手間と時間がかかってしまい、効果的な又は臨機応変な対応は難しい状況にありました。


バックオフィスをfreeeで統合することによって転記を最小化
「税理士・社労士との連携も楽になりました!」

――複数のfreee製品を導入するようになった経緯を教えてください。

山上: 課題を解決するべく、2020年9月にfreee会計、同年10月にfreee人事労務を導入しました。両方を導入することで、大幅に効率化できると思ったからです。


例えば、給与の仕訳データを会計ソフトに入れるとき、預り金を計上した上で、労働保険や社会保険、源泉徴収なども全て反映しなければいけないので、手作業でやるには大変です。その点、freeeを導入すれば、freee人事労務で給与計算をすると自動的にfreee会計で仕訳を切ることができ、さらに振り込みまで連携されていきます。


事前にそうした説明をfreeeの営業の方から受けていたので、両方をほぼ同時期に導入しました。また、2022年2月にはfreeeカードも導入し、経費精算などに活用しています。


機能としては、freee会計の「自動で経理」が特に魅力的でした。銀行とAPI連携させれば、自動で仕訳を切ってくれます。また、会計情報をリアルタイムで縦横無尽にソートできる操作性や見やすさも魅力で、導入の決め手のひとつになりました。


湘南シニアサービス株式会社


――freeeの導入でどのようなメリットがありましたか?

山上: 最も大きいメリットは、データを入力する手間が大幅に減ったことですね。例えば、銀行口座の動きはAPI連携で全てfreee会計に反映されるので、データ入力のために手を動かすことはほとんどありません。


経費精算は、職員がfreee会計に直接入力すれば、その後は自動的に連携されていきます。これが従来のやり方だと、職員が作成した経費精算書をもとに、再度会計担当者が会計ソフトへデータを入力しなければなりませんでした。同じ内容を転記入力すれば、手間がかかり、ミスが生じてしまいます。Freee会計の経費精算機能とfreeeカードの利用によって、経費精算の課題は大幅に改善されました。


freeeであれば、バックオフィスでの業務が入力業務中心から確認業務中心に変わります。これによって、バックオフィスの業務品質が改善され、業務効率も大きく向上することになりました。


現在は会計/給与計算専任の職員が1人いますが、週1日しか出社していません。あとは必要に応じて在宅で仕事をしています。クラウドシステムなので会計、人事労務に関わる処理、申請、承認の手続きは場所や時を選ばず可能なため、それらの作業は以前に比べると大幅に効率化できています。


freeeの導入前は、システム的な会計処理は税理士に任せていましたが、今は税務申告書の作成を中心に業務を依頼しています。freeeの会計処理済データを税理士のシステムへインポートして税務申告書を作成できるので、月次会計処理から決算、税務申告までの一連の作業は、税理士との連携も含めてその効果は大きいです。


社労士には現在、月次業務の依頼はしていません。システムの初期設定を確実に行うことで、あとはfreee人事労務が計算した結果をチェックするだけのプロセスとなったためです。入退社等に際する申請書や届出書類もシステムが必要な情報を出してくれるので、自前で手続きが可能となっています。また、期日直前の修正でも、クラウドシステムには常にアクセスできますので、速やかに必要な修正が可能です。従来のように翌月回しにして、結果処理をより複雑化してしまうことも避けられます。


――複数のfreee製品や他のツールを連携させて利用するメリットを教えてください。

山上: 経費精算を例に挙げると、立替精算ではなくfreeeカードを使用することで、職員の負担が減り、部門別の経費集計も容易にできるようになりました。


また、連携されたシステムが手元で操作できる状態だと、会計や人事労務情報がいつでも好きなようにデータとして確認でき、マネジメントの意思決定に生かせます。税理士や社労士に依頼していたときには「こういうデータが欲しいんだ」と伝えて、「こんなものなら出ますがどうでしょう?」「いや、ここはこういう風にしてほしい」といったやり取りに時間がかかっていたので、これはfreeeを導入した大きなメリットです。


「介護・福祉業界こそDXして、現場に人員を割くべき」

――バックオフィス業務についての、今後の展望を教えてください。

山上: デジタル化をさらに進めていきたいです。最近では、紙の請求書を原則的に廃止して、Web請求書形式に変更しました。目的は利用者やご家族のこれからの利便性と請求書発行までの効率性です。


高齢者世帯にどれぐらい受け入れてもらえるか不安もあったのですが、いざやってみると、特別な不満もなく受け入れて頂けました。もちろん引き続き「紙でほしい」とおっしゃる方もいましたが、目的を丁寧に説明させて頂き、結果として大方のご利用者にWeb請求書形式を受け入れて頂けました。


今後は、契約を電子化して、他のfreee製品と連携できると良いと思います。デジタルデバイスを持っていないご利用者もいらっしゃるので、デバイスを持って直接お伺いするケースも当面はあるかもしれませんが、結局はデジタル化したほうが効率的です。雇用契約も今後、他の製品とうまく連携していけると良いと思っています。


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――freeeの導入を検討している介護・福祉業界の方々に向けてメッセージをお願いします。

山上: 経済産業省が管轄しているIT補助金のほかに、厚生労働省が管轄している介護事業者向けのIT系の補助金もあります。人手不足が続く介護業界においてはこれらを上手く利用して積極的にDXを進めるべきと私は考えています。


バックオフィスよりも現場により多くの人を配置したいです。また、バックオフィス業務が非効率であることによって、現場の職員に負荷をかけてしまうこともあります。それでは本当に重要な業務が回らなくなってしまうため、避けなければなりません。


その点、freeeを導入することで、業務プロセス自体の見直しと業務効率化を同時に進めるきっかけともなります。そうすることで、事務処理にかかる職員の余分な苦労を減らし、より価値の高い本業に時間を使えるようにすることができるかと思います。特に会計面では、2024年度から全ての介護施設・事業所に対し、詳細な財務状況(損益計算書など)を自治体へ会計年度ごとに報告することを新たに義務付ける方向で制度改正が審議されていることを考えると、部門別会計をより効率的に実施する必要性が更に高まっている状況と言えそうです。


(執筆:遠藤光太 撮影:小野奈那子 編集:ノオト)

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