社員の賃貸物件を借上げ社宅へ コロナ禍が仕事環境の在り方を考え直すきっかけに

ラクスル株式会社 執行役員・経営管理部部長 西田 真之介 氏
経営管理部総務G 志村 直哉 氏

課題
福利厚生制度を簡単に導入したい

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止策として、リモートワークを取り入れる企業が増え、オフィスの在り方が問われています。一方で、社員側には自宅環境のリモートワークへの対応が迫られ、負担が増えているのも事実。


そんな中、freeeでは、福利厚生制度の導入に必要なバックオフィスの作業を効率化する「福利厚生freee」の提供を2020年8月から開始。社員の賃貸物件を企業が借上げ社宅として運営・管理する際に係る事務処理などの手間をfreee側が請け負うことで、企業は気軽に借上げ社宅制度を福利厚生として導入できるようになりました。


同サービスの導入をいち早く決めたのは、2009年の会社設立後、東証第一部の上場企業にまで急成長したラクスル。コロナ禍の影響がまだ続いている現在において、福利厚生freeeを導入した理由や社員と福利厚生の考え方について、執行役員・経営管理部部長の西田真之介氏と経営管理部総務Gの志村直哉氏に伺いました。


借上げ社宅制度の導入 一番のハードルは事務処理の手間

【画像】西田 真之介 氏
西田 真之介 氏


――社員の賃貸物件を借上げ社宅として管理するために、福利厚生freeeを導入されるとのことですが、きっかけは?

執行役員・経営管理部部長 西田 真之介氏(以下、西田) もともと借上げ社宅制度は、6年前から導入を考えていました。しかし、入居する社員とのやりとりや賃貸契約の手続き、給与計算への反映などのさまざまな事務処理が発生することを考え、導入に二の足を踏んでいたんです。


コロナ禍前は、会社から徒歩15分以内、あるいは会社のある駅から2駅以内の賃貸物件を借りた社員に家賃補助制度を導入していました。借上げ社宅による事務処理を考えると、社員同士のコミュニケーションが取りやすくなるよう、会社の近くに住んでもらって家賃補助をするほうが、作業効率が良かったのです。


しかし、新型コロナウイルス感染症が流行して、現在の出社比率は20~30%と、リモートワーク中心となりました。その結果、社員の何人かは、海の近くなど環境の整った場所に引っ越しました。


そういう状況下で、「福利厚生freee」を紹介していただいたんです。導入に向けて9月ごろから本格的に乗り出しました。


――福利厚生freeeの導入を決めたポイントは?

西田 ほかの会社のサービスと比較検討をしたうえで、事務処理に関する手間をすべてお任せできるところがすばらしいと、導入を決めました。


福利厚生freeeでできること

  • 賃貸契約進捗の自動管理
  • 賃貸契約書類の押印・送付代理
  • 家賃など振込に必要な送金データの自動生成
  • 従業員の給与から控除に必要なデータの自動生成

経済的メリット

  • 例えば、借上げ社宅制度を月額給与40万の人が30人利用すると年間で254万円の社会保険料の節税ができる
  • 従業員は年間16万円の手取りが増加する

【画像】通常の賃貸契約と借上げ社宅


※シミュレーションとして家賃額は給与の25%相当と仮定、会社負担額は50%とし(基本給を減額)、残りの50%は天引き。住宅手当と同額を社宅補助として支給する場合で比較。扶養等の控除は考慮しないことを前提とする。


西田 福利厚生freeeでは1IDごとに月額利用料がかかるのですが、弊社では借上げ社宅制度の対象にならない社員との公平さを保つため、制度を利用する社員に負担してもらうつもりです。


社員の手取りは月に1~3万弱増えるので、負担額は問題はないと思います。また、社会保険料の節税にもつながります。


――導入決定に向けて、社内で議論になったことは?

西田 「リモートワークを後押ししすぎるのは正しいか」という課題がどうしても残りました。


現在はコロナ禍の影響でリモートワークが推奨されていますが、会社としては、対面でのミーティングや社員同士の世間話を含めたコミュニケーションが、良い仕事につながるという思想を持っています。


今後、長い年月を経て新型コロナウイルス感染症が落ち着いてきた時に、会社から離れた場所に住むことを会社として後押しするのがいいのかを考えなければなりません。会社として連携をとってプロジェクトに挑もうとしている際に、コミュニケーション不足がハードルになるのであれば、会社の制度としては失敗です。


ただ、以前から検討していた通り、大前提として借上げ社宅はいい制度だと思っています。だからこそ、社員の雇用形態による適応範囲を定めるなどの細かいルール設定が大事。今は、それを協議しているところです。


社員が活躍しやすい環境を作るのが、福利厚生の大切さ

――福利厚生について、どのようなことを大切にしているのでしょうか?

西田 総務としての課題は「給与以外の部分で社員の満足度をどう高めていけるか」です。


企業理念に「仕組みを変えればもっと社会はよくなる」と定め、人種や性別、以前の勤め先に違いがある中で、さまざまな人が働いています。だから、それぞれにいろんな要望がある。全部に答えるのは難しいですが、多様なメンバーに対して、「家族を持ってもキャリアを諦めることなく、社員がやりたいことを実現させられる」ように対応していきたいと思っています。


――社員からのニーズを福利厚生に反映することもあるのですか?

経営管理部総務G 志村 直哉氏(以下、志村) そうですね。要望がある場合は聞いて、できる・できないを選択します。社員一人の声を採用することで、全体のメリットになるのか。コスト面を判断材料にすることも、もちろんあります。


弊社は、エンジニアがサービスを支えています。そのため、エンジニアに対しての技術書籍購入支援やスキルアップに関わる費用の支援などの教育補助はよく利用されていますし、作業に集中してもらうために、社内にオフィスコンビニを設置して、すぐにお菓子や飲み物が手に入るような環境を整えています。


――福利厚生の検討タイミングは?

志村 予算の作成などを行う際に費用観点で見直すこともありますが、総務としては、社員の満足度の向上に常にアンテナを張っています。


それ以外にも、今回のように身の回りが大きく変わる出来事や会社全体として大きな方針転換をするタイミングは、社員のために新しい制度をつくるチャンスだと考えています。


コロナ禍はそういう意味で、新しい環境へのチャレンジができた良いタイミングでした。環境が変わることで落ち込む一方、変化の波に乗って方向転換ができました。


――コロナ禍で福利厚生に対しての考え方に変化はありましたか?

志村 リモートワークの実施が増えたので、会社の環境だけでなく自宅への手当も対象としていきたいです。コロナ禍以降、自宅の椅子やデスクの購入補助を出したり、交通費を実費にして月に5,000円のリモート手当を出したりしたこともあります。


一方で、オフィスを今後どうするのかという課題はありますよね。会社にいるのと同じ効率で自宅作業ができるなら、オフィスは要らないのではという極論もあり得ます。


オフィスにはワークスペースとしてだけでなく、プラスアルファの価値を見出せないか考えています。例えば、会社に来たからこそ、ラクスルの企業理念や雰囲気を感じられるといったように。コミュニケーションや情報発信の場としてオフィスをデザインしていきたいですね。


新しいシステムの導入は、企業への期待感が決め手に

【画像】志村 直哉 氏
志村 直哉 氏


――新しいシステムを導入するときに大事にしていることは?

志村 福利厚生の視点でいうなら、会社の状況や社内のニーズがシステムの機能とマッチしているかを検討します。


西田 我々は成長企業なので、一緒に仕事をすることで、互いに高め合える企業と仕事をしていきたいですね。スタンダードを壊していこうとするベンチャー企業が作ったサービスも、伝統ある企業が製品を磨き上げてより良くなったサービスも、それぞれの場面に合わせて選んでいます。


――今後の展望は?

志村 社宅は企業が比較的安価で貸与する住宅のことを指すので、一般的には企業が所有している建物を貸し出すイメージが強いのではないでしょうか。福利厚生freeeの導入による借上げ社宅制度は、企業の所有する建物ではなくても、不動産会社などから賃貸物件を借り上げることができます。


現在の賃貸物件を契約の事務処理を行うだけで借上げ社宅として扱えるのは、社員にとって大きなメリットですよね。


コロナ禍はまだ始まったばかり。今後は、社員からの見えてこなかったニーズが出てくると思います。それをできるだけキャッチアップできる姿勢を整える一方、世間と合わなくなった制度は取捨選択するよう、見直したいです。そうすることで、社員にはリモートワーク中も福利厚生が及んでいることを実感してもらい、モチベーションの向上につなげることができたらと思っています。


(取材・執筆:ゆきどっぐ 編集:ノオト)