三重県熊野市を拠点に、50年以上に渡って製材業を営む株式会社nojimoku。コロナ禍によるサプライチェーンの混乱や、世界情勢を背景とした原材料価格の高騰、さらに環境負荷への意識の高まりによって、石油由来の製品に代わる選択肢として、木材製品の価値が改めて見直されている現在、同社にも新たな需要が生まれています。本記事では、増え続ける業務量に対して、同じリソースで向き合うために進めたバックオフィス改革と、会計情報を共有することで生まれた自律した組織について、代表取締役の野地伸卓氏、経理担当の松田氏に伺いました。
「木」に立ち返る。
製材業界に訪れた追い風の中で、同じリソースでやり切る仕組みづくり。
nojimokuはノジシステム(独自システム)など、以前からデジタルを積極的に活用されていますが、その背景にはどのような想いがあるのでしょうか。
野地 伸卓 氏(以下、野地):うちは製材所なので、いわゆる建築業界の住宅市場の中の「木材」っていうパーツを作っている会社です。林業とか製材業って歴史は長いけども疲弊していっている産業で。それをどのようにして魅力的な仕事にしていくかは結構意識しています。
ものづくりって、人が磨き上げてきた技を使っていい製品を作るということなので、誰もが面白いと思えるものづくりができるような環境を作れば、全員が夢中でものづくりをし出すような環境にできるんじゃないかと思っています。
僕の仮説ですけど、デジタルを入れてみると、今まで見えなかった職人の経験値や暗黙知が数値化されたり、言語化されたりするので、いろんな人たちがものづくりの面白さに入っていけるのではないかと考えたっていうのが一つですね。
今その製材業が変化しているタイミングだと伺いました。freee導入のきっかけも含めて教えてください。
野地:コロナ禍の問題や、中東やウクライナの問題で、石油由来の製品ではなく、改めて「材木製品」に注目するという流れが生まれてきました。昨今ナフサっていう素材の安定供給が問題になってきた時に、建築の世界において石油由来の商材を使わずに家を作っていくっていうのはほぼ不可能な状況なんですね。断熱材しかりコーキングとか、合板に使うボンドも石油由来です。
でも50年、60年前までは家っていうのは木と土で作られていたわけですよね。持続性という意味では、この地元とか国内の素材だけで作れる建築や、「木」そのものの価値が見直されるタイミングだと捉えています。
実際にその流れで、5年ぐらい前からうちも、一気にお客さんが増えだしてきて。作る方、管理する方は当然、バックオフィスも業務量がどっと増えたんです。だからといって人はそう簡単に増やせない。そうなった時に、同じリソースでやりきるというところが問われてくる。その流れでバックオフィスのデジタル化に取り組んで辿り着いたのがfreeeです。
freeeにはどんな印象を持たれていますか?
野地:最初は色々なシステムを検討する中で、freeeはお金の管理だけじゃなくて、仕事全体をサポートしたいとか、中小企業の後押しをしたいみたいな思いが感じられたのが印象的でした。
なんで「e」が1個多いんやろうとかっていう、その辺の遊び心も興味を引いたんです。
これは結果的にですけど、freeeさんだったから会社の文化的に、僕らのやってることを一緒に面白がってくれる価値観を共有できてるのかなっていうのは、今そんなことを思ったりしますね。
同じ数字を見て、同じ熱量で語る。
データが繋いだ「経営」と「現場」の新しいカタチ
freeeについては、主に会計を使われていると思いますが、具体的にどのような点を評価されてますか?
野地:バックオフィス担当の業務が軽減される、ムダな手作業、FAX、郵送などが減るという部分ももちろん評価してますが、経営自体に変化が生まれるというか、社内に新しいマインドを共有出来るようになったところを評価しています。
社内にマインドを共有できるように、会計情報を公開する方針を取られているんですよね。
野地:はい、もともと、ぼくが社長になってから出来るだけ会計情報を公開していこうということで、課長レベルには経営の数字はオープンにして見せています。自分で数字を取ってきて、分析して、この数字はどうやったら良くなるのか、考えられるようになって欲しい。
やっぱり同じ数字を把握していないと、同じ解像度で会話ができないし、同じ危機感を共有できない。全員指示待ちになる状況を変えるために、会社のお金や情報を整理することは、感情的なぶつかり合いもあって大変でした。
そこを乗り越えて会計情報を共有しだすと、同じ熱量で会話ができるようになったので、僕はすごく経営が楽になりましたね。
実際に数字を元にした行動の変化は生まれているのでしょうか?
野地:専門的な話になりますが、木のなかには「節」というものがあって、欠点のある節とそうではない節がある。欠点のある節は、穴を開けて玉で埋めていくことで出荷できる製品になります。ただ、加工すると言っても原価がかかるので、加工と廃棄のバランスを見ないと赤字になるんです。
これまではそういうのが見えなかったので、ひたすら穴を埋めて加工をしていたのが、freee会計を入れると、赤字にならない加工と廃棄のバランスが見えてきたんですよ。freee上で、年間どれくらい節を埋める玉を使っているのかとか、その推移がどうなっているのかというのが見えてきた。
その結果、じゃあそれを目安にして、加工はここまでに抑えようという、加工と廃棄の適正値というか、生産目標が出来たんです。しかもそうした課題や新たな目標の設定というのが、経営者がひとりでデータを見て考えるとかじゃなくて、freeeを使っていると、現場担当者や各部門のマネージャークラスが自発的に気がつくようになる、これはとても良かったです。
※加工した木材に節があると、廃棄せざるを得ないケースもある。
属人化しない経理へ。
誰でも回せる仕組みが、会社の幹になる。
ここからは実際に経理担当をされている松田さんにお話を伺います。nojimokuに入社される前は別の経理ソフトを使われてたんですよね?
松田 氏(以下、松田):前職では商工会議所にいて、地域の中小企業や個人事業主の方に、帳簿のつけ方をお教えしたり、申告のご支援をしたりしていました。当時はオンプレミス型の会計ソフトを使うことが多かったんですが、簿記から入った人間にとっては、複式簿記を土台にしたソフトの方が理解しやすいかなと思ってはいました。
ただ、実際にfreeeを使ってみると、簿記の知識がなくても触りやすい。結果として作る書類は同じなんですけど、入口が違うんだなと思いました。
業務効率の面では、どのような変化がありますか?
松田:効率はかなり良くなっていると思います。前職では紙を使った作業も多くて、データを照合するにも紙を二枚並べてチェックするようなことがありました。今は請求書もPDFで届いたり、電子保存できたり、OCRで読み込めたりする。会計だけではなく労務とも連携しているので、手間はかなり省けています。
私は年末調整も担当していますが、以前は申告書を社員さんに書いて提出してもらっていました。今はfreee人事労務を使って、スマホから入力して提出してもらっています。AIも搭載されているので、社員さんの入力をサポートしてくれて、私の親世代の方とかもいる中で、結構みんな抵抗なく使ってらっしゃる印象があって問題なく浸透していますね。
経理担当として、会社から期待されていることは何だと感じますか?
松田:社長から特に言われているのは、属人化を防ぐことです。前任の経理担当の方が長くいらっしゃって、その方が辞められた後に困ったこともあったと聞いています。だから、私が業務を覚えるだけじゃなくて、それをマニュアル・フローとして整理して、それを誰でも回せるようにしていく。その土台を作ることが、今の大きな役割だと思っています。
その手段として、給与計算も経理もアウトソースできるものはしています。
ゆくゆくは内製化、戻したいという感じなんですね。
松田:いえ、実は完全に全ての業務を内製化することは考えてないとは言われてますね。担当が急にいなくなる、体調不良で働けなくなる可能性もあると思うので、そういう時に一旦アウトソース先に業務を委託するという体制も残しつつ、というようなことを今は考えてるんだと思います。
野地社長に、属人化しない仕組みづくりについての考えを伺ってもいいですか?
野地:誰がやっても同じアウトプットになる業務は、社外の人にやってもらうとか、デジタルに置き換える選択肢があると思ってます。やっぱりものづくりの現場にいる人間がやることでアウトプットが変わる仕事をできるだけやってほしいですね。
例えば経理や労務業務をアウトソースした方がコスト的な負担はかかる。だけど経理をやってた社員がお客さん対応できるようになる。そう考えると、今まではアウトソースはコストがかかるから内製化した方がいいと思ってやっていたけど、アウトソースしたことで、お客さんとのコミュニケーションが取れる人材が一人増える。
その方が、将来的な会社の成長にはいいんじゃないか、そういう考え方ですね。
データを活用して中小企業が強くなる。
AI時代でfreeeの思想が一気に加速している。
改めて野地社長に伺います。freeeを今後どう活用されていきたいか、お話を伺えますか?
野地:そもそもfreeeの思想として、データを活用して中小企業がどんどん強くなっていく、そういう世界を作ろうとしているんだろうな、というのは感じていましたが、ここに来て、それが一気に加速しだしてきている気がします。
AIや話題になっているfreee MCPの話もそう。単なる会計管理ソフトというより、僕らが本当に欲しい情報が簡単に手に入る仕組みになっているし、システム同士の横連携みたいなものも便利です。
会計情報だけじゃなくて、生産の情報や、人材のスキル情報なども掛け合わせて分析して、「打ち手はこうだ」と出せる世界観ができてきているというのは、freeeを使っていてよかったなと思います。
ぼくら業界は、世界的にもう一度「木の価値を再定義」していこうというフェーズにあります。その追い風を受けながら、小さな企業でも大きな成長ができるという勝負をしなきゃいけない。
今後のfreeeさんの展開にも大いに期待していますし、これから一緒に革命を起こしていきたいなと思います。



