ブランドプロデュースカンパニーを標榜し、領域の異なる複数の自社ブランドを展開するMUSCAT GROUP(マスカットグループ、東証グロース195A)。2025年7月に商号をライスカレーから変更し、経営体制の刷新やリブランディングを実施した。現在はM&Aの積極展開を通じたブランドポートフォリオの拡張にも取り組んでいる。急速なグループ拡大の裏側で、同社は組織の根幹となるバックオフィスの体制をどのように構築しているのか。
積極的なM&Aの理由
はじめにMUSCAT GROUPについて紹介いただけますか?
関口(MUSCAT GROUP): 当社は、SNSマーケティングやデータ活用のノウハウを用いてブランドを創出するブランドプロデュースカンパニーです。
MUSCAT GROUP 執行役員 経営管理本部 財務経理部長 関口雅己氏
関口(MUSCAT GROUP): オーラル美容ブランド「MiiS(ミーズ)」や、電動アシスト付き自転車ブランド「MOVE.eBike(ムーヴ イーバイク)」など、領域の異なる複数のブランドを運営する「ブランドプロデュース領域」と、顧客企業に一気通貫のマーケティングソリューションを提供する「ブランドパートナー領域」の二つで事業を展開しています。
2領域のうち、特に力を入れているのがブランドプロデュース領域です。この領域では、複数のニッチな領域でトップブランドを育成・獲得するニッチトップ戦略を採用し、主要な成長戦略に位置付けています。
MUSCAT GROUPのニッチトップ戦略
関口(MUSCAT GROUP): 現在、当社は積極的なM&Aによってブランドポートフォリオを拡張していますが、これもニッチトップ戦略の一環です。高い成長が期待できるメーカーや、既にニッチ領域で地位を確立しているブランドをグループに迎え、自社のマーケティングおよびDXのノウハウでさらなる成長に導きます。
2025年7月、当社は旧社名(株式会社ライスカレー)からMUSCAT GROUPに商号を変更しました。一つの房に数多くの実が成るマスカットのように、グループ内で多数のニッチトップブランドを育てたい思いが、新たな社名の由来の一つになっています。
PMIの効率性がボトルネックになり得る
今江(MUSCAT GROUP): ニッチトップ戦略を進めるにあたり、重要なのがPMIです。PMIとは「Post Merger Integration」の略で、M&A後の経営や業務の統合を指します。
MUSCAT GROUP 経営企画部 PMI Senior Director 今江吉宏氏
今江(MUSCAT GROUP): 私は前職を含めて経営企画部門でPMIに長らく従事してきましたが、MUSCAT GROUPでの実務は特徴的です。様々な業界や業種のブランドでM&Aを実施していることもあり、業務の流れや稼働しているシステム、デジタル化の進捗などがバラバラで、PMIのプロセスもそれぞれ異なります。
比較的、定型的なプロセスでシステム統合が進むブランドもあれば、業務やシステムを深く理解して統合計画を練らなければならないブランドもあります。そのため、まずは統合先の状況を正しく把握し、コミュニケーションを密に取りながらPMIのプロセスを進めるよう心がけています。
バックオフィス業務における課題を教えてください。
今江(MUSCAT GROUP): PMIにおける業務負担が課題でした。ニッチトップ戦略に基づくM&Aにおいては、PMIをいかにスムーズに行うかが成長の鍵を握ります。
現状、当社がM&Aを実施したブランドは数社ほどですが、今後グループが拡大していく上ではPMIの効率性がボトルネックになり得るでしょう。そのため、当社の戦略に適したバックオフィスの体制を築くことが、私たちのミッションの一つになっています。
創業当初からIPOを目指していた
現在MUSCAT GROUPでは「freee会計」を活用しているそうですね。会計システムはPMIにおいて要のシステムだと思いますが、どのような経緯から導入されたのでしょうか?
関口(MUSCAT GROUP): 当社は代表の大久保が2016年に設立したのですが、かなり早い段階からfreee会計を利用していたそうです。設立当時は従業員数が少なく、経理や会計を大久保自身が行っていました。その経験から、専門的な知識を有していなくても記帳や決算ができるfreee会計の機能性に惹かれたのだと推察します。
今江(MUSCAT GROUP): 大久保が設立当初からIPOを目指していたことも選定の決め手だったと思います。freee会計は、内部統制の保証報告書である「SOC1 Type1報告書」を2018年に、「SOC1 Type2報告書」を2019年に受領するなど、会計サービスとして高い信頼性を有しています。IPO準備企業や上場企業がクラウド会計サービスを利用するのであれば、先の報告書を取得していることが事実上必須となります。IPOを目指すという自社の目標を踏まえても、freee会計がフィットしていたのではないでしょうか。
木之下(フリー): 当社では「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションとして掲げています。組織がまだ小規模だった時期にIPOを見据えてfreee会計を導入していただいたのだとしたら、私たちの思いにも合致しているためうれしい限りです。
フリー SMB事業本部 第4事業部 広告・メディア・制作セグメントチーム 木之下隆人氏
会計・経理のプロから見たfreee製品の特長
関口さんと今江さんは、会計・経理に精通しているプロフェッショナルです。その目線で見たfreee会計の特徴をうかがえますか?
今江(MUSCAT GROUP): 実は正直に申し上げると、以前はfreee会計に今ほどポジティブな印象を持っていなかったです。というのも、複式簿記を基本にして経理を学んできた私からすると、貸方や借方ではなく「取引」の形式で記帳するfreee会計は、シンプルすぎて逆にわかりにくい印象でした。
しかし、当社に入社してfreee会計を利用するうち、次第にメリットのほうが大きいと感じるようになりました。たとえば、一括振込の機能です。当社のように個人事業主のクリエイターやインフルエンサーと数多く取引する企業の場合、振込先の件数が膨大なために、振込業務が煩雑になる傾向があります。その点、freee会計は一括振込ファイルを作成してインターネットバンキングに取り込めば、取引先への支払いを一気に実行可能です。
また、Amazonビジネスなど外部サービスとの連携により、請求書の受領や保存が自動化できるなど、freee会計には経理や会計の業務を効率化できる数々の機能が備わっています。加えてクラウドサービスということもあり、他拠点との情報連携が遠隔で容易なのもポイントです。PMIを多く手がける当社には打ってつけだと感じます。
関口(MUSCAT GROUP): freee会計は操作性やUIが優れていて、専門知識のない従業員でも容易に入力や記帳ができますよね。経理や会計を専門とする私たちが慣れるまで時間を要したということは、裏を返すとそのような従業員たちにとっては親切なUIだということかもしれません。
木之下(フリー): おっしゃるとおりだと思います。freee会計が他の会計システムと異なるのは、他のバックオフィス業務との連携を意識した製品づくりがなされている点です。バックオフィス業務の効率性を低下させる要因は、システム間のデータの転記や帳票のチェックなどにほかなりません。これらの壁を取り除くためには、経理や会計を単体の業務として捉えるのではなく、バックオフィス業務の一部として位置付け、入出金管理や人事労務などの前後のプロセスとシステム上で連携させる必要があります。
さらに、バックオフィス業務の効率性を高めるためには、経理や会計の基礎知識がないユーザーでも利用しやすいシステムでなくてはなりません。お二人のお話をうかがっていると、freeeのコンセプトを深く理解された上で利用いただいていることが伝わります。
月次決算が早く締まると高付加価値業務に臨める
MUSCAT GROUP ではfreee会計のほか「freee業務委託管理」も利用しているとうかがいました。どのように利用しているか、詳しく教えてください。
関口(MUSCAT GROUP): 業務委託契約を結んでいるフリーランス・個人事業主に対し、契約管理や受発注管理、請求管理などを行う際に用いています。freee業務委託管理は、主にフリーランサーとの受発注業務を管理するシステムなのですが、当社は業態上クリエイターやインフルエンサーに仕事を依頼する機会が多いため非常に有用です。
昨年から「フリーランス法」が施行されたため、フリーランサーと業務委託契約を結ぶ事業者には契約書や発注書のフォーマット整備など、法対応が求められます。freee業務委託管理を利用すると、フリーランサーとの受発注業務を包括的にデジタル化できるだけでなく、フリーランス法への対応も可能です。
さらに当社では、freee会計と連携して受発注業務から振込までを一気通貫につなげる仕組みも構築しています。バックオフィス業務のさらなる効率化実現が、freee業務委託管理を導入した目的です。
freee会計やfreee業務委託管理を利用して、どのような効果が生まれていますか。
今江(MUSCAT GROUP): 経理や会計の業務は大幅に圧縮されていると思います。というのも、以前PMIに携わった子会社でほぼ同様の業務を担当していたときと比べて、私の業務時間が明らかに減っているからです。
今江(MUSCAT GROUP): たとえば、その子会社では月次決算を翌月の5〜10営業日以内に締めるのが精一杯でしたが、freee会計には銀行口座やクレジットカードの情報を自動連携して記帳する「自動で経理」などの便利な機能が備わっていることもあり、当月末には月次決算がほとんど締められている状態です。そのため、月末にも比較的余裕を持って業務に臨むことができ、財務情報の分析やそれに基づいた戦略の提案など、付加価値の高い業務に費やすリソースも確保できています。
関口(MUSCAT GROUP): freee製品の導入効果は「生産性向上」の一言に尽きます。私たちの負担を減らしているだけでなく、経営にも大きな影響を与えています。
今後もM&Aの積極的な展開を見据えると、経理や会計の業務量はさらなる増加が見込まれます。そうした中、生産性が高く、持続的かつ安定的なバックオフィス体制を構築するためには、新たな人材採用による補強に加えて、ツールやテクノロジーの力を頼ることの必要性を日々実感しています。freee製品はそんな当社環境において、経営判断の短縮化やバックオフィスコストの最適化をもたらす中心的存在です。当社の成長戦略を持続可能にする上でも、freee製品が重要な役割を果たしてくれています。
サービスを強化し続けている点が魅力
最後に、両社の展望をお聞かせください。
関口(MUSCAT GROUP): 今後ニッチトップ戦略をさらに推進していくにあたり、バックオフィス業務の生産性向上が肝となります。いかに小さい労力で最大の成果を出す体制が築けるか──それをテーマに、freee製品の機能を最大限引き出すことによる業務のデジタル化を今以上に加速させるとともに、ツールを最適に使いこなせるリテラシーの高い人材が中心となるバックオフィス体制の強化にも取り組んでいきたいです。
今江(MUSCAT GROUP): freee製品の魅力は、バックオフィス業務に関する多種多様なシステムを展開しているだけでなく、常にサービスの領域を拡大し続けている点にあると思います。先日もフリーがクラウド連携会計システム「結/YUI」を提供するYUIを完全子会社化し、連結会計システムをfreee製品に組み込みました。
当社は連結会計を実施しており、以前から結/YUIを利用していたため、まさに渡りに船です。こうしたサービスの拡大や強化に今後も期待しながら、freee製品を最大限に活用し、PMIにおける業務負担の効率化を推進することで「M&Aを成功に導く」という本来の目的を達成していきたいと考えています。
木之下(フリー): サービスの拡大について付け加えると、2025年5月に当社は自社サービスにおけるAI搭載のコンセプトを発表し、現在はAIを搭載した各種サービスの提供を進めています。今後はAIエージェント「freee AI」の提供も本格化し、システム、データ、業務の多角的な観点でバックオフィス業務の効率化を支援していきます。
(BizZine 2025年11月 掲載記事より転載/抜粋)

