グループ会社の経理システムをfreeeに統一することで、人材配置や業務分担の自由度を高める

池嶋 真吾 氏 freee株式会社 経理部

課題
経理の一元化でグループ企業を管理複数人・複数拠点で経理データを共有

freeeは、フリーファイナンスラボ、フリービズといった子会社を新規事業の展開に伴って新設し、M&Aによってサイトビジットを子会社化するなど、グループ企業としての広がりが出てきています。


グループ会社の経理業務では、自社サービスの「freee会計」を全社で活用しており、企業グループ内でワークフローを統一化することによって、人材配置や親会社・子会社の業務分担の自由度が高まっています。


freee経理部で実務を担う池嶋 真吾氏に、グループ管理の取り組みについて、話を聞きました。

新設した完全子会社と、M&Aしたグループ会社の経理フローを分ける

――freeeグループ内の経理業務の全体像を教えてください。


freee 池嶋 真吾 氏

freee株式会社 経理部 池嶋 真吾 氏

freee・池嶋 真吾氏(以下、池嶋):freeeが新設した完全子会社に、freee finance lab(フリーファイナンスラボ)と、freee biz(フリービズ)があります。また、2021年4月1日付でサイトビジット社の株式を70%取得するM&Aを行い、子会社化しました。


フリーファイナンスラボとフリービズの経理業務は、各社からの申請を受けて、親会社が承認を行い、仕訳を起こしています。一方、サイトビジットにはもともと経理部門があったので、今後も子会社側で経理を担っていく予定です。ただ、現在はM&A直後のため、親会社の経理が入り、PMI(Post Merger Integration:M&A後の統合)を進めているところです。


一般的に、上場会社が未上場会社を買収する場合、ほとんどのケースではすぐに試算表をつなげるだけで連結決算が完了する状態にはなっていません。子会社側が上場会社の経理基準に達していないことがあるため、「期ずれになっていないか」「間接費の定義は合っているか」「売上原価の範囲はどこまでか」「勘定科目をどれにするか」「どの期間で按分するか」といったさまざまなことを統合していきます。


サイトビジットについては、最終的には親会社は経理には入らず、新しい基準で自走してもらうかたちを目指しています。



――フリーファイナンスラボ、フリービズでは親会社で経理業務を担い、サイトビジットでは将来的に引き渡していく見込みにしているのは、どのような区別なのでしょうか?

池嶋:規模が大きく異なります。フリーファイナンスラボ、フリービズは、同じ拠点で部門を分割するような形で新設した小規模の会社ですが、サイトビジットは60名ほどの会社で、拠点も分かれています。


拠点が違うという点は、freeeのワークフローを使って解決できますが、規模に関しては難しいところがあります。ある程度の規模になってくると、部門でも会社でも、現場のことをわかっている人が経理の取りまとめをする必要があります。


特に、もともと別だった会社をM&Aした場合、経理を担当する既存の組織があるのなら、その組織をわざわざ壊してまで、親会社に移すニーズはないことが多いんですよね。およそ20人以上の規模になると、現場に近い経理担当者はいないと厳しく、親会社に寄せないほうが効率的だと考えています。


freee社の経理部門 担当業務

人材配置や、親会社・子会社での業務分担の自由さを

――freee会計を使うことで、グループ全体にどのようなメリットが生じますか?

池嶋:自由な選択ができることです。freeeを使うと、人材配置の自由さ、親会社・子会社での業務分担の自由さが高まります。


私の前職でもそうだったのですが、紙ベースで経理を行っている場合、紙が保管されている場所に行かないと経理処理ができないので、親会社が代わりにやる選択肢すら生まれません。各拠点に経理の担当者を配置し、紙を見ることしかできません。


決して、「子会社に人を置かないほうがいい」という話ではありません。事業の規模や複雑性、タイミングに応じて、選べることが重要だと考えています。


レポーティングの段階でも、違いは表れてきます。子会社には、親会社の経営者に向けて実績を報告する機会があります。その際、子会社が作成したエクセルの資料しか見ることができない状況だと「紙が会議の場にしかない」「子会社のソフトウェアかエクセル上にしかデータがない」という事態になります。


資料だけを見て分析をする作業には限界があるので、わからないことは毎回子会社の人に電話をして聞くコミュニケーションのコストが発生しますし、子会社の側に分析を理解していて説明できる人が常にいなければなりません。


したがって、経理処理の序盤でインプットをするときと、終盤で分析をするときの2つのフェーズで、紙を見て作業をする人が必要になり、人材配置の自由さ、親会社・子会社での業務分担の自由さが下がってしまうんです。



――M&Aの場合は、どのようなことがメリットになるのでしょうか。

池嶋:現在、私たちが行っているPMIでは、かなり頻繁に証憑を見る必要があります。例えば、「前払費用の計上のタイミングはこれで合っているか」と迷ったときに、元の請求書や契約書を見ないと、何もわからないからです。ちょうど昨日、証憑を500件ぐらい見たのですが(笑)。


他にも、ひとつの勘定科目で計上されているものでも、「本当はこの勘定科目の中でも3パターンに分けて会計処理を変える必要がある」といったケースもあります。勘定科目だけではわからないので、全て証憑を見て分類していく必要があり、freeeでは証憑が必ず紐づいている分、無駄な時間のコストを割かずに作業を進められます。



紙を「探す」「待つ」のコストを削減

――紙を探すコストは、多くの企業で課題になっているのではないでしょうか。

freee 池嶋 真吾 氏2

池嶋:紙に依存したオペレーションで、ワークフローに証憑が紐づいていない状況だと、紙を探す・待つという時間が発生してしまいます。例えば、親会社と子会社の拠点が別々にある場合、紙で資料を送ってもらって経理データをインプットしたいときに「紙が今どこにあるか」が本当にわからないんですよね。つづられる前の紙探しもありますし、つづられたあとに探すプロセスもあり、本当に大変です。


freeeを使ってペーパーレスで申請してもらえれば、そもそも申請されているのか、申請されているとしたら誰で止まっているのかが一覧化されるので、経理として無駄な待ち時間が発生しにくいです。


また、経理の人だけでなく、申請する人や承認する人も場所にとらわれずに業務を行うことができるようになります。紙ベースで承認するしかない状況だと、例えば非常に営業力の高い営業部長がいた場合に、月初の2〜3日は自分のデスクに座って、ハンコを押して経費精算の承認をしないといけない事態になりかねません。つまり、その人がその拠点にいることが求められることで、営業の機会損失になっているわけです。


ペーパーレスになっていれば、お客様訪問の間の1時間、出先の喫茶店で承認作業をする、という選択肢が可能になってきます。売上を生み出せる人がデスクに座っていた時間を、お客様に提供できることが大きなメリットでしょう。



ホールディングス企業に生かせるfreee会計

――グループ内で会計システムをfreeeに統一するとき、グループの体制として適したタイプはどんなものでしょうか。

池嶋:管理部門を分割するシェアードセンタータイプや、同業種・異業種に応じて経理フローを変えるタイプなどfreeeを生かせるタイプはさまざまだと思いますが、特に親会社が複数の子会社を傘下に持つホールディングスタイプでは、効果を発揮すると思います。親会社で導入したシステムを子会社にも導入しやすく、スピーディで正確な経理業務を実現できます。野村ホールディングス様にも導入していただいています。


例えば、freeeには「自動で経理」という機能があって、クレジットカードや銀行の明細の情報をもとに、自動で仕訳を起こすことができます。親会社が最初のルールづくりを手伝えば、反復のところは子会社の人の入れ替わりに関係なく、毎月自動的に仕訳を起こすことができるので、経理の品質を一定化することができます。


また、freeeでは品目、メモタグ、部門といったように、数字を串刺しにしてチェックできる集計キーがいっぱいあります。そのマスターは簡単にインポート・エクスポートができるので、親会社で設定している集計キーを活用した分析もできます。親子で共通の取引先がある場合などは、最初は親会社の取引先マスタをインポートして使うこともできるでしょうね。



――グループの経理業務が目指すところはどんなところでしょうか。

池嶋:経理業務のゴールとして、開示や税務申告があります。その大前提としてそれぞれのグループ会社で正しく決算書を作ることが必要で、freeeをグループ会社で統一して使えば、「自動で経理」などを活用してスピードと品質を保つことができます。


また、証憑が紐づいているので、子会社でも見られて、親会社でも違和感があればドリルダウンしてチェックすることができます。結果として、前段階の業務を圧縮しながら精度の高い試算表ができるので、それが土台になって開示や税務申告というゴールに結びついていきます。


スピーディで正確な経理業務を行うために、グループ会社の経理をfreeeで統一するメリットは大きいと思います。



(取材・執筆:遠藤光太 編集:ノオト)

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