親会社と連携したシステム導入 スポーツビジネスを支える経理部門がバックオフィスの強化でクラブ運営にも寄与

シーホース三河株式会社 総合企画室兼アリーナ準備室 山田 航 さん
コーポレート管理グループ 経営管理チーム 宗長 夏未 さん

課題
経営の課題をリアルタイムに把握請求・支払の入力や管理をラクにミスなく

愛知県刈谷市をホームタウンとするプロバスケットボールチーム「シーホース三河」は、1947年にアイシン精機の男子バスケットボール部として創設されました。現在はBリーグに所属し、アイシングループの一員として、地元スポーツ振興に貢献しながら活動を続けています。


2023年には、アイシングループ全体で進める会計業務の統制化プロジェクトの一環として、freee会計を導入。業務の効率化と統制強化を目指した取り組みを指導しました。導入をリードしたコーポレート管理グループの山田 航さんと、現場で運用を進めた宗長 夏未さんに、導入システム選定のポイントやfreee会計を選んだ決め手、導入後の変化について伺いました。


統制面の強化、業務効率化と法対応のため、従来の会計ソフトからクラウド会計システムへシフト

――シーホース三河の概要について教えてください。

シーホーク三河
シーホース三河は、プロバスケットボールの興行を中心とした事業を展開しています。2016年のBリーグ発足時に参入し、現在はトップカテゴリのB1で活動中です。また、グッズ販売やファンクラブ運営、行政との連携による地域貢献活動など、幅広く事業を展開しています。


宗長さん(以下、宗長): 選手やコーチスタッフは約30人、フロントスタッフを含めると、全体で70人規模の組織です。経理業務を担当するのは3人で、会計業務全般に加え、チケット収入やグッズ販売など、スポーツビジネス特有の収支管理も担っています。


――freee会計導入前は、どのような点に課題を感じていましたか?

宗長: 以前は会計ソフトを使いながらも、紙をベースにした手作業が中心でした。各部署から紙の申請書が提出され、すべて経理が手入力で仕訳する形だったため、月初や決算期には膨大な時間が必要でした。この手作業の多さからミスや漏れも一定の割合で発生し、業務改善に取り組む余裕がない状況でした。


山田: 業務を効率化したいと考えると同時に、インボイス制度の開始や電子帳簿保存法の改正に柔軟に対応できる仕組みの必要性を感じていました。また、各部署が予算実績差異の把握に時間を要していたため、その業務工数を削減し、他の業務にリソースを割けるようにしたいと考えておりました。


そのほかにも、承認経路の明確化や統制を強化するチェック体制の整備を進めるため、デジタル活用への期待が高まっていました。


親会社アイシングループと歩調を合わせてfreee会計を導入へ

――課題を感じるなかで、どのような解決策を考えていたのでしょうか。

宗長: バックオフィスの業務改善は以前からの課題でしたが、コロナ禍の影響もあって、一時的にプロジェクトが中断していました。2023年、コロナが落ち着いたタイミングで、再びプロジェクトが動き出し、会計システムと人事労務システムを統合できるサービスを検討することになりました。


私たちが所属するBリーグでは、多くのクラブがデジタル化を推進しており、ホームゲームの会場で完全キャッシュレス化を実現したクラブもあります。このような業界全体の潮流にキャッチアップするためにも、会計システムを刷新し、バックオフィス全体の生産性向上とペーパーレス化を進めることにしました。


シーホーク三河

山田: 新たな会計システムの有力候補に挙がったのが、freee会計でした。ちょうどそのタイミングで、親会社であるアイシングループが、freeeの一括導入プロジェクトをスタートさせ、私たちもそのプロジェクトに参画することに。こうして、親会社と歩調を合わせつつ、システム導入を加速することになったのです。


――freee会計を導入することになった決め手をお聞かせください。

山田: 仕事の一気通貫を狙うと共に、業務効率化をし、日常的な発注書や支払依頼書の管理、決算業務がスムーズに行えるシステムを探していました。人事労務業務との連携も、大きなポイントになります。これらの条件をもとに他社製品とも比較した結果、freeeが最も優れていると判断しました。


freeeは直感的で現場でも使いやすく、他社と比較しても年間30~40万円のコスト削減が見込める点で、他の候補より優位性がありました。


――導入する際に、苦労したことはありましたか?

宗長: 紙がメインの運用から、マスター登録を明確にし、取引先や金額に加えて勘定科目を入力する新しい運用に変更したため、移行の初期段階では抵抗感を感じる従業員も少なくなかったです。使い慣れた申請書からまったく新しいシステムへの変更ですから、無理もありません。


この課題を解決するために、freeeのコピー機能やテンプレート機能を活用する方法を周知しました。その結果、導入の翌月からは「紙を印刷する手間が省けて作業が楽になった」というポジティブな反応が増え、システムの利便性を実感してもらえるようになりました。


また、導入時期は経理業務が一番の繁忙期でもあり、利益計画や年度決算を並行稼働しながらのシステム導入となりましたので、スケジュール進捗管理や業務の応援・受援体制等、連携を図ってやり切ることは非常に大変でした。


プロジェクトの対象範囲の確認


――そのように苦労を乗り越えつつ導入を進められたと思いますが、freeeの導入サポートはいかがでしょうか?

山田: 非常に助かりました。導入が決定した段階では、「どこから手をつければいいのか」「何を優先すべきか」が見えず、不安があったのも確かです。


既存業務の洗い出しや運用の方向性、試験運用をどのように進めるかなど、必要なタスクを整理し、タイムスケジュールや進め方を具体的に示していただけたことで、安心してプロジェクトを進められました。


作業中に生じた不明点にも、「このケースでは、この機能を活用しましょう」といった具体的なアクションで指示がありました。迅速な回答と的確なアドバイスがスムーズな導入につながりましたね。


プロジェクトの確認


「自動で経理」や「一括振込」機能の活用で、1営業日かかっていた作業が2時間に

――freee会計の導入で、従来と比べて、どのような効果を実感しましたか?

シーホーク三河

宗長: 支払依頼や請求書処理、各種申請といった経理業務を自動化できました。


以前は紙ベースの運用で、月末の支払処理に1営業日を費やしていましたが、freee会計の「自動で経理」機能を活用したことで、これらの作業が半日で完了するようになりました。丸1日を要していた振込業務も一貫処理が可能となり、確認作業も含めて2時間程度で終えられるようになりました。


さらに、親会社とのデータ連携も効率化されました。導入前はシーホース三河で集計したデータを、手入力で親会社専用の報告サイトに入力する必要がありましたが、現在はfreee会計で集計したデータを自動でインポートできるように。これにより、手作業が省略され、正確性も大幅に向上しています。


山田: freee会計の承認経路管理機能を活用することで、承認フローが明確化され、統制が強化できたことも。紙ベースで曖昧だった承認プロセスがシステム上で記録されるようになり、監査対応の信頼性が向上した点も大きな成果です。


経理業務以外でも、承認プロセスを活用し、様々なワークフローを構築しました。例えば、法務部門では「契約検討依頼書」をfreee上で作成し、契約内容の精査や相談の材料として活用しています。また、社内会議体の議事録を回付するワークフローを作成し、参加者の証跡を残せるようにしています。


さらに、より戦略的な活用も視野に入っています。freee会計の導入により、各試合の収支要因や課題も分析できるようになったんです。データを基にした具体的な改善策が立案しやすくなりましたので、今後うまく活用していきたいです。


統制強化と完全ペーパーレス化へ いま踏み出す勇気が未来の働き方を変える

――バックオフィスの今後の展望をお聞かせください。

山田: 2つの目標があります。1つ目は運用ルールを見直して統制を強化し、業務全体を安定化させること。2つ目は、紙を完全に撤廃し、リモートワークにも対応し、どこからでも経理処理が可能な体制を構築することです。この2点を達成することで、大幅な業務効率化が期待できます。


予算実績管理や管理会計の運用も高度化を目指しています。現在は表計算ソフトで運用している予算管理をfreee会計に統合させ、予算と実績をリアルタイムで管理・分析できる環境を整えたいと考えています。


シーホーク三河

――最後に、freee会計の導入を検討している企業へのアドバイスをお願いします。

宗長: 新たなシステムの導入は大きな決断が必要ですが、早めに取り組むことで、いち早く業務効率化の恩恵を受けられることが期待できるでしょう。私たちも導入当初は社内の浸透に苦労しましたが、効率性が向上したことで、より重要な業務に集中できるようになりました。


山田: 経営陣の承認を得るには、工数削減や費用対効果を具体的に示すことが重要です。データやシミュレーションを用意したり、専任の担当者が実務の現場と連携したりすることでスムーズに導入が進みます。


システムの導入には労力がかかりますが、その先には統制強化や業務効率化という大きな成果があります。「未来の働き方を変える」という意識を持ち、一歩踏み出す勇気を持っていただければと思います。


(執筆:佐々木正孝 撮影:平山陽子 編集:ノオト)

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