2016年6月に東証マザーズに上場、2018年6月には東証一部へ市場変更した同社。会社の規模拡大にともない、少数のバックオフィスでは労務管理が困難な状況に陥っていましたが、それを解決したのがfreeeでした。同社の掲げる「管理しない」管理部門は何を目指しているのか。株式会社アトラエにてバックオフィスを担当する、ADMチーム、会計担当 田宮圭一郎氏、人事労務担当 林亜衣子氏に、上場企業へのfreee導入後の変化と今後の展望について伺いました。
――設立の経緯や御社サービスへの想いを教えてください
People Tech事業を軸に、世界中の人々を魅了する

株式会社アトラエ
ADMチーム会計担当 公認会計士 田宮 圭一郎 氏
大企業の監査業務に携わった5年半の監査法人経験を経て、株式会社アトラエへ。会計士としての経験を生かして上場企業の経理、財務、IR、税務などを担当する
田宮 弊社は「世界中の人々を魅了する会社を創る」をビジョンとして掲げ、人の可能性を拡げるビジネス、People Tech事業を主軸に、「Green」「wevox」「yenta」、3つのサービスを展開しています。
主力サービスは成功報酬型の求人メディア「Green」。転職を考える人と採用を考える企業のマッチングプラットフォームとして、求職者のキャリア形成と企業のダイレクトリクルーティングを支援しています。
組織改善プラットフォーム「wevox」では、社員一人ひとりが組織に対して持っているエンゲージメント(自主的貢献意欲、と呼んでいます)を測るサーベイを提供しています。部署別、職種別、年齢別といった、様々な属性でエンゲージメントを測定することで、組織改善が必要なチームを特定します。組織改善策をサービス上でレコメンドすることで、企業が自ら組織作りをしていけるようなサービスを目指しています。
ビジネスパーソン向けマッチングアプリ「yenta」は“ビジネス版Tinder”と言えばイメージしやすいでしょうか。人工知能がレコメンドする人とマッチング。メッセージでのやりとりを経てランチタイム等での情報交換ができます。実際に「yenta」を通じて起業仲間が見つかった り、転職活動に成功するなど、サービスコンセプトである「ビジネスを加速させる出会い」が日々生まれています。
「管理部門」として社員や会社を管理するのではなく、会社全体を牽引する
田宮 アトラエの掲げる「大切な人に誇れる会社であり続ける」というPhilosophy(経営理念)の通り、会社は、関わる全ての人を幸せにするものでなければならないと考えています。まずは社員、そして顧客、ユーザーの皆さま、株主の方、アトラエに関わる全ての人々を大切にする。
個人的にも、時間や場所にとらわれない自由な働き方ができるという面から、社員一人一人の生活を大切にしている会社だと感じています。
バックオフィスを担当しているADMチームには8名の社員が在籍しており、経営企画・人事労務・採用・研修・総務・広報・経理・秘書などを担当しています。会計や人事労務など、純粋なバックオフィスに携わるのは4名。
ADMチームは「Accelerate Atrae -アトラエの持つ可能性を拡げ、加速させる-」というチームビジョンを掲げており、事業プロダクトのメンバーの意思決定をPeople(人)・Figure(数字)・Information(情報)の3側面から牽引しています。

株式会社アトラエ
ADMチーム人事労務担当 林 亜衣子 氏
ITコンサ ル、人事コンサル、部門人事と幅広く人事業務に従事。アトラエに入社したのは3年前。現在、人事労務、給与を担当し、入金管理などの会計業務もサポートしている
林 バックオフィスは、一般的には管理部門と呼ばれる部署。しかしADMチームは「管理部門」ではありません。社員や会社を管理することがチームの本質的課題ではないからです。管理するためのチームではなく、People Tech事業を通して、他のプロジェクトと同様に、事業と組織の両面を通して世界中の人々を魅了する。そのためにチームビジョンを掲げています。
それぞれのサービスを手がけている事業部と並列に並ぶ存在であり、事業部もADMチームと同じ「チーム」だからです。私たちも会社の一員としてプロダクトメンバーと一緒に事業を作っているという意識が強い。私たちのバックオフィスにとって「Accelerate Atrae」とは、私たちが会社全体を牽引していこう、という姿勢を表していると思います。アトラエの可能性を拡げたり加速させる仕組みやきっかけを作る。それがADMチームの価値基準です。
――freee導入のきっかけとご利用状況を教えてください
エクセルと会計ソフトが紐付いていない体制を刷新。一元管理のためのクラウドERPとしてfreeeを導入
林 アトラエでは、2017年7月にfreee人事労務を導入しました。きっかけは既にfreeeのサービスを知っていた田宮からのアドバイスでした。
東証マザーズに上場して1年が 経った頃の弊社は、当時の社員数は40名程度。この頃の労務管理は人力によるエクセル管理。しかし、バージョン管理が上手くいってなかったり、忙しいタイミングで更新漏れがあったり、社員数の増加によりいずれ限界が訪れることは感じていたのです。弊社の勤怠管理の考え方と相性が良かったことがfreee導入のメリットです。
社員が自ら勤怠入力漏れに気付けるので、「管理の必要性」がなくなりました。これにより、勤怠入力漏れの社員に対してリマインドする手間が省け、細切れに発生していた月間2時間の工数をゼロにすることができました。
田宮 freee人事労務の約1年後、会計の仕組みもfreeeに刷新しました。
もともと弊社の会計は、見積・請求・納品情報、発注情報、証憑、勤怠、給与計算などの元データをエクセルで管理し、それを基に会計システムに入力していたため、両者が直接的には紐付いていませんでした。非常に複雑な情報管理体制になってしまっており、情報を集約して一元管理したいと考えていたので、クラウドERPの思想で設計されたfreeeに魅力を感じました。
freee人事労務に加えfreee会計を導入した結果、今までバラバラだった情報が集約され、意識せずとも情報集約が可能になりました。
まず、振込時のオペレーション業務を大幅に削減できました。私が中途入社した時点で、CFO、林、経理担当者の3人で業務は回っていたのですが、エクセルをもとに振込業務を行うのと、freee上に証憑やエビデンスがあり情報が集約できているのでは、チェックにかかる時間が違います。
ほかにも、入出金データ の突合をしてくれる点も助かっています。これまでは会計ソフトに取り込むためにデータを転換し伝票を打っていましたが、圧倒的に手間が減りました。売掛金の消し込みがfreee上で処理できるようになりましたので、機械的なオペレーション業務がなくなりました。弊社は月間数百件に及ぶ債権の回収があり、従来のオペレーションですと担当者が毎月残業をしていましたが、現在は数百件もの債権消込を半日もかからず完了できるようになりました。大きな変化です。
また、wevoxに関しては、原則として請求書も紙で送らなくなりました。システムを統一し、freee上からメールで送るようにオペレーションを変更しましたので、毎月、請求書発行と発送業務に係る2〜3時間ほどの時間を削減できるようになったのです。
前職では監査法人の経験もあり、ある程度、上場企業における会計の理想像は見えていました。一般的に上場企業のオペレーションは大変複雑になりやすいもの。導入にあたっては他社のクラウドERPや一部作業のアウトソースも比較・検討しましたが、freeeを選んでよかったと思っています。
内部統制と業務効率化を両立。経営指標の見える化が早くなった
田宮 freeeのワークフロー・内部統制に関する機能は、上場企業が利用する上で十分な要件を満たしています。申請権限、承認権限が分かれていますし、監査法人のお墨付きをfreeeが得ている