OAuthとは?仕組みから認証と認可の違い、セキュリティ対策までわかりやすく解説


最終更新日:2025年09月01日

OAuthとは?仕組みから認証と認可の違い、セキュリティ対策までわかりやすく解説

OAuth(オーオース)は、外部サービスへ安全にアクセス権を委ねるための認可プロトコルです。サードパーティアプリに対して最小限のアクセス権を与える設計により、パスワード共有のリスクを回避しつつ、ユーザー体験を向上させる仕組みが実現します。今日のWebアプリやSaaSの開発において、欠かせない技術といえるでしょう。

しかし、OAuthには実装における注意点もあるため、正しく理解しておく必要があります。この記事では、OAuthの基本的な仕組みからセキュリティリスクへの対応策まで、実務に役立つ情報を整理してわかりやすく解説します。

目次

OAuthとは

OAuthは「オーオース」と読み、ユーザーが自分のIDやパスワードを提供せずに、外部のアプリケーションにアクセス権を与えるための仕組みを指します。

通常、Saasなどを利用する際には個別にユーザーIDとパスワードを入力し、認証をクリアしなければなりません。しかしOAuthがあれば、一つひとつIDやパスワードを入力することなくアプリやサービスを使うことが可能です。

アプリを立ち上げた際などに「Facebookでログインする」「LINEでサインイン」「このアプリにプロフィールへのアクセスを許可しますか?」といった表示が出る場合は、このOAuthが動作しています。

OAuthの身近な利用事例

OAuthを活用した身近な利用事例には、以下のようなものがあります。

  • 音楽ストリーミング配信サービスに対し、SNSアカウントへ投稿する許可を与える
  • デジタルフォトフレームアプリに、オンラインアルバムサービスから画像取得の許可を与える
  • Facebookのログイン情報を使用して、フードデリバリーサイトで注文する
  • Appleアカウントでログインし、フリマアプリで買い物をする
  • スマートロックと予約管理システムを連携させる
  • スマートスピーカーを連携させてIoTデバイスを使用する

音楽配信や写真共有、買い物、IoT機器の操作など、あらゆるサービスでOAuthが使われています。これらの事例は、OAuthが私たちの日常生活に深く浸透していることの表れといえるでしょう。OAuthによって個人情報を守りながら、複数のサービスを手軽に使えることが、ユーザー体験の向上につながります。

OAuthとSAMLの違い

OAuthに似た仕組みとして、「SAML(セキュリティアサーションマークアップ言語)」という技術があります。SAMLとOAuthの大きな違いは、認証と認可をそれぞれ行うSAMLに対し、OAuthは認可だけを担当し自身では認証をしない点にあります。OAuthの場合、認証には「OpenID Connect」という別の仕組みを使います。

また、両者はデータ交換形式(サービス間でのデータ共有に使用される言語)も異なります。SAMLは「XML」と呼ばれる難しい形式を使って情報をやりとりしますが、OAuthは「JSON」というテキストベースの形式を採用。「JSON」には人が読み書きしやすくコンピューターが解析しやすいという特徴があるため、最近のサービスではOAuthが多く使われています。

ほとんどのデータサービスがJSONで動作することから、OAuthはSAMLより統合が容易という側面もあります。

OAuthのメリットとデメリット

OAuthを利用することによってセキュリティや利便性の面で多くのメリットが得られますが、同時にデメリットも存在します。それぞれ確認しておきましょう。

OAuthを利用することのメリット

メリット詳細
セキュリティの向上パスワードを外部サービスに渡さずに済むため、情報漏洩のリスクを減らせる
限定的な権限付与写真やプロフィール閲覧など、アクセス範囲を細かく制御可能
ユーザーによる権限管理連携済みアプリの一覧表示や解除ができるため、管理がしやすい
利便性の向上ソーシャルログインによって、ID登録の手間を省ける
APIエコノミーの促進複数サービス間の安全な連携ができ、新たな価値創出につながる

OAuthを利用することのデメリット

デメリット詳細
プロトコルの複雑性正確な理解と実装には専門知識が不可欠
実装ミスによるセキュリティ上のリスクURIの検証不足やstateパラメータの不使用は脆弱性を生む要因になり得る
認可サーバーへの依存サーバーが停止した場合、アクセス制御全体に影響が及ぶ可能性がある
ユーザー体験への配慮過剰なアクセス要求は離脱を招くため、適切な設計が求められる
トークン管理の煩雑さ安全なストレージと適切なライフサイクル設計が必要

「認証」と「認可」の違い

Webサービス上で安全に情報をやりとりするには、「認証」と「認可」を正しく理解しておくことが求められます。認証は「あなたが誰か」を確認する行為、認可は「あなたに何が許されているか」を判断する行為です。この違いを理解すれば、OAuthの仕組みや役割もより明確にイメージできるようになるでしょう。

認証の意味

認証とは、利用者が本人であるかどうかを確認する手続きのことです。たとえば、あるアプリで「Facebookでログイン」を選び、Facebookアカウントでログインする行為が認証に該当します。認証が完了すれば、以降の操作に対して「この人にどこまで許可するか?」という判断が可能になります。

認可の意味

認可とは、認証されたユーザーに対して「どの操作まで実行できるか」を制限・許可する仕組みです。たとえば、あるアプリにカレンダー情報の読み取りだけを許可し、書き込みや編集はさせないようにするといった設定が認可にあたります。認可基準を正しく管理・運用することで、システムやデータへの不正アクセスなどのリスクを最小限に抑えられます。

OAuthの役割

OAuthは、「認可」を専門に取り扱うプロトコルです。ユーザーが誰であるかを確認する「認証」は、「OpenID Connect」という別の仕組みによって行われます。

OpenID Connectは、OAuthの仕組みをベースに「この人が本人である」と証明する役割を追加したプロトコルです。つまり、OpenID Connectが認証を、OAuthが認可を担当することで、安全かつ便利なサービス連携が実現します。

OAuthは「このユーザーにはこの範囲までアクセスを許可する」と判断し、必要なトークンを発行する役割を担います。そのためOAuth単体では本人確認は行わず、あくまでアクセス制御を担う存在と位置付けられます。

OAuthの仕組み

OAuth(オーオース)は、複数の関係者(クライアント・認可サーバー・リソースサーバーなど)が連携する仕組みで成り立っています。

以下では、Facebookを用いたフローを例にOAuthの仕組みを説明します。

OAuthの仕組みとは?フローや関係者を解説

ステップ1. Facebook連携をリクエスト

ユーザーがアプリを立ち上げると、Facebookアカウントとの接続を求められます。これを起点に、OAuth連携のプロセスが開始されます。

ステップ2. Facebookの認可画面に遷移

Facebookの認可画面に自動でリダイレクト(転送)され、連携を許可するかどうかを選択できる状態になります。

ステップ3. Facebookでユーザー認証を実施

ユーザーがFacebookにログインすることで、本人確認が完了します。これにより正規のアカウントであることが確認されます。

ステップ4. 提供情報の確認と連携の承諾

連携するアプリに提供される情報(名前やプロフィール画像など)を確認し、ユーザーはこれに同意します。

ステップ5. Facebookが認可コードを発行

Facebookはユーザーの同意後、一時的な認可コードをアプリに返します。このコードが次の処理に利用されます。

ステップ6. アプリが認可コードを取得

ブラウザを通じてアプリが認可コードを取得し、アクセストークン(通行証・証明書)の発行に向けて次の通信を準備します。

ステップ7. Facebookへ認可コードを送信

アプリは受け取った認可コードをFacebookに送信し、アクセストークンの発行を依頼します。

ステップ8. Facebookがアクセストークンを発行

Facebookがアクセストークンを発行し、アプリに返送します。これにより、制限されたデータへのアクセスが可能になります。

ステップ9. アプリがFacebookのデータへアクセス

取得したアクセストークンを使用し、アプリはFacebook上の許可されたユーザーデータにアクセスできるようになります。

OAuthを安全に活用するために押さえておきたいポイント

OAuthを活用する際には、いくつかのリスクとセキュリティ対策について押さえておく必要があります。それぞれのリスクと行うべきセキュリティ対策について解説します。

OAuthに関連する代表的な脅威とリスク

OAuthを活用するうえで、代表的となる脅威やリスクを以下にまとめました。

認可コード横取り攻撃

ユーザーがアクセスを許可した後、通信の途中で認可コードを第三者に盗まれてしまう恐れがあります。このコードを使えば、悪意ある第三者が本人になりすましてデータにアクセスできてしまいます。

不正なリダイレクト

認証後の戻り先(リダイレクトURI)の確認を怠ると、攻撃者のサイトに誘導され、個人情報を抜き取られるリスクがあります。信頼できるURLかどうかの検証が欠かせません。

CSRF攻撃

ユーザーが知らないうちに外部からの操作を実行させられる攻撃です。たとえばログイン状態で悪質なリンクを踏むと、勝手に情報送信などが行われてしまう可能性があります。

トークンの漏洩と不正利用

アクセストークンが漏れると、第三者がそのトークンを使ってユーザーになりすまし、アカウント内の情報にアクセスする危険があります。特に長期間有効なトークンの扱いには注意が必要です。

開発者が実施すべき主なセキュリティ対策

OAuthを安全に運用するためには、設計段階から適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。

対策内容
PKCEの利用認可コードの盗用を防ぐため、特にモバイルアプリやシングルページアプリケーションで推奨される追加の検証手法
stateパラメータによるCSRF対策CSRF攻撃を防ぐため、リクエストごとに一意の値を付与して照合する
リダイレクトURLの完全一致検証認可後のリダイレクト先URLが正規のものであるかをチェックすることで、不正なサイトへの誘導を防ぐ
スコープ(権限範囲)の最小化アクセス権限は必要最低限に設定し、不必要なデータや機能へのアクセスを避ける
HTTPS通信の徹底トークンや認証情報を含む通信を暗号化し、第三者による盗聴や改ざんを防止
トークンの機密性の確保トークンはセキュアなストレージに保存し、外部からのアクセスを制限

アクセストークンとリフレッシュトークンの適切な管理方法

トークンは、OAuthでのアクセスを制御する存在です。なかでもアクセストークンとリフレッシュトークンには異なる役割と性質があり、それぞれに適した管理が求められます。

それぞれの特徴や管理方法について以下で詳しく解説します。

アクセストークン

アクセストークンは、ユーザーが許可した外部サービスに一時的にアクセスするための鍵のようなものです。安全のため、有効期限は通常「数分」から「数時間」程度と短く設定されます。

保管場所としては、HTTPOnly CookieのようにJavaScriptから読み取れない場所が望ましいです。ブラウザーストレージに保存すると、不正に取得されるリスクがあります。 そのため、アクセストークンは常に安全な方法で管理する必要があります。

リフレッシュトークン

リフレッシュトークンは、アクセストークンの期限が切れたとき、新しいトークンを再発行するために使われます。

有効期限が長く設定されているため、そのぶん取り扱いにはより厳重な注意が必要です。もし漏洩すると、長期間にわたって第三者に悪用される危険性があります。そのため、安全なストレージでの管理に加え、万が一流出した際はすぐに使えなくする(失効処理)体制も整えておくことが重要です。

まとめ

OAuth(オーオース)は、パスワードを入力しなくても別のWebサービスやアプリケーションと安全に連携できる便利な仕組みです。SNSログインやアプリ連携など、私たちの日常の多くの場面で使われています。快適なユーザー体験において、OAuthの貢献は大きいといえるでしょう。

しかしその一方で、認可コードの盗用やトークンの漏洩など、仕組みの理解不足や実装ミスが重大なセキュリティリスクを生む恐れもあります。そのため、OAuthの構造や役割をしっかりと理解したうえで、適切なセキュリティ対策を施すことが不可欠です。安全性と利便性の両立を目指し、正しく活用していきましょう。

よくある質問

OAuthのメリット・デメリットは?

OAuthは、ユーザーのパスワードを共有せずに外部サービスと連携できる便利な仕組みです。ただし、導入や運用には一定の専門知識が必要で、設計ミスがセキュリティ上のリスクにつながることもあります。

詳細は「OAuthのメリットとデメリット」をご覧ください。

OAuthの仕組みを教えて?

OAuthは、ユーザーの許可を受けたアプリが認可サーバーからトークンを取得し、それを使って他のサービスの情報にアクセスする仕組みです。この一連の流れによって、IDやパスワードを直接入力せずとも安全な連携が実現します。

詳細は「OAuthの仕組み」をご覧ください。

OAuthの活用で押さえておきたいポイントは?

OAuthを安全に使うためには、stateパラメータの活用やスコープの制限、トークンの安全な管理などが重要です。こうした対策を正しく実施することで、悪意ある攻撃からサービスを守れます。

詳細は「OAuthを安全に活用するために押さえておきたいポイント」をご覧ください。

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