IDaaSとは?基本的な機能と仕組み、SSOとの関係、メリット・デメリット、自社に合ったサービスを選ぶポイントを解説
最終更新日:2025年09月01日
IDaaS(アイダース)とは、複数のクラウドサービスにおけるID管理や認証作業を一元化できる仕組みのことです。SaaS(クラウド型アプリケーション)を複数導入している企業では、ID・パスワードの煩雑な管理や、社員の入退社にともなう確認・削除などの対応が大きな負担になっています。このような課題を解決する手段として注目されているのがIDaaSです。
この記事では、IDaaSの基本的な仕組みや機能、導入メリットや選定のポイントまでわかりやすく解説します。IDaaS導入を検討している情報システム担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- IDaaSとは
- IDaaSの代表的な機能
- 押さえておきたいIDaaSの仕組み
- IDaaSを導入する5つのメリット
- IDaaS導入のデメリットと押さえておきたい注意点
- 自社に合ったIDaaSを選ぶためのポイント
- まとめ
- よくある質問
IDaaSとは
IDaaS(Identity as a Service)とはクラウド経由でID管理や認証機能を提供するサービスのことで、「アイダース」と読みます。
従来のID管理は、企業が自社でシステムを構築・運用するオンプレミス型が主流でした。しかし、SaaSの普及やリモートワークの一般化などにより、場所や端末に依存しない柔軟な認証管理が求められるようになっています。サイバー攻撃の手口が巧妙化するなかで、従来のパスワード運用では不正アクセスを防ぎきれないケースも増加傾向にあるといえるでしょう。
このような背景から、IDaaSのようなクラウドベースの認証サービスが注目されるよう になりました。IDaaSを導入すれば、ユーザーアカウントの作成・変更・削除を一元的に管理でき、セキュリティを強化しながら業務の効率化も実現できます。
ゼロトラストセキュリティとの関係
「ゼロトラストセキュリティ」とは、社内外を問わずすべてのアクセスを「信用せず常に検証する」という考え方に基づいたセキュリティモデルです。
リモートワークという働き方が定着し、自宅などで複数のクラウドサービスを利用するケースが当たり前となった今日、従来のように社内ネットワークを信頼する前提では高度なセキュリティを維持できなくなりました。
ゼロトラストセキュリティでは、常にユーザーや端末の正当性を確認し、アクセスのたびに検証を行うことで、より強固なセキュリティ体制を実現します。このゼロトラストセキュリティを支える中核的な仕組みが、認証・アクセス制御・ログの管理を一元的に行うIDaaSです。
IDaaSの代表的な機能
IDaaSは単にIDやパスワードを管理するだけでなく、多様なセキュリティ機能を提供しています。IDaaSが備える代表的な6つの機能について、確認しておきましょう。
シングルサイ ンオン(SSO)
多要素認証(MFA)
IDライフサイクル管理
アクセスコントロール
ID連携(フェデレーション)
監査ログ・レポート
シングルサインオン(SSO)
シングルサインオン(SSO)とは、1回のログイン操作で複数のクラウドサービスにアクセスできる仕組みのことです。IDaaSはこのSSOを実現するための代表的な仕組みで、ユーザーは複数のIDやパスワードをいちいち覚える必要がなくなります。
SSOについては以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
多要素認証(MFA)
多要素認証(MFA)とは、パスワードに加えて指紋認証や顔認証など、複数の認証要素を組み合わせて本人確認を行う仕組みを指します。
これにより、不正ログインのリスクを大幅に低減することが可能。IDaaSではMFAを簡単に設定・管理できるため、セキュリティ強化に貢献します。
IDライフサイクル管理
社員の入社から退職までの間に発生するアカウントの作成、権限の変更、削除などの管理業務を自動化する機能が、IDライフサイクル管理です。
プロビジョニング(IT インフラ設備の準備)やデプロビジョニング(IT インフラ設備の停止・削除)と呼ばれる一連の作業を効率化することで、IT部門の負担が大きく軽減されます。
アクセスコントロール
アクセスコントロールは、ユーザーやグループごとにアクセス可能なサービスや情報を細かく制御する機能のことです。
重要情報へのアクセスを最小限に抑えれば、内部不正のリスクを低減できます。IDaaSではこの制御を柔軟に設定でき、ガバナンス強化にもつながります。
ID連携(フェデレーション)
ID連携(フェデレーション)とは、企業内外の異なるシステムやドメイン間でID情報を共有し、認証を連携させる仕組みを指す言葉です。
たとえば、社外の取引先が利用するサービスと自社のIDaaSを連携すれば、従業員が複数のシステムにまたがっても同じIDでスムーズにアクセスできる環境を構築できます。ID管理の煩雑さを減らしつつ、利便性とセキュリティを両立できる点がメリットです。
監査ログ・レポート
監査ログ機能では、誰が・いつ・どのサービスにアクセスしたかを記録および分析することができます。これにより、不審なアクセスの早期発見や、インシデント発生時の原因追跡が可能になります。
なお、IDaaSではレポート機能も搭載されており、可視化によって組織全体のセキュリティ意識を高められます。
押さえておきたいIDaaSの仕組み
まずIDaaS製品を契約すると、API(異なるアプリケーション同士をつなぐインターフェース)やポータルページが提供され、サービスを利用できるようになります。
Webサービスへのログイン時、IDサービスプロバイダへの認証リクエストがAPIを通じてIDaaSに送られ、そこで本人確認が行われます。IDaaSはあらかじめ設定された認証ポリシーに基づき、該当ユーザーがアクセスできるかどうか、どの範囲の情報へアクセスできるのかを判定します。
こうしたフローにより、全社的に統一された基準でアクセス制御が行われるため、業務効率と情報セキュリティを両立できるのです。
代表的なIDaaSには、「Okta」「Azure Active Directory(旧Azure AD)」「OneLogin」などがあります。
IDaaSを導入する5つのメリット
IDaaSは、企業全体のセキュリティ強化や業務効率化を支える重要なITインフラとなります。ここでは、IDaaSを導入することで得られる主な5つのメリットについて解説します。
セキュリティレベルの大幅向上
IDaaSでは多要素認証(MFA)の導入や、ポリシーに基づいたアクセス制御が可能です。そのため、不正アクセスのリスクを大幅に下げるとともに、ログ管理によってアクセス状況を可視化できます。退職者のアカウントも即時に無効化できるため、情報漏洩のリスク低減が実現します。
従業員の利便性と生産性向上
シングルサインオン(SSO)機能によって、従業員は複数のIDやパスワードを覚える必要 がなくなります。業務に必要なSaaSへのアクセスもスムーズになり、認証のたびにログイン操作を繰り返すストレスから解放されるでしょう。結果として、日々の業務効率を向上させることが可能です。
IT管理部門の運用負荷軽減
IDaaSはアカウントの作成・変更・削除といった一連のライフサイクル管理業務を自動化・効率化できます。パスワード忘れによるリセット依頼が減るため、ヘルプデスクの対応件数も抑えることが可能。その結果、IT管理部門のリソースを別の業務(コア業務)に振り分けられるようになります。
コスト削減
オンプレミス型のID管理システムと比べて、クラウド型であるIDaaSは構築・保守コストを抑えられます。また、セキュリティインシデント対応による費用発生の予防や、ライセンスの適正管理によるコスト最適化も実現可能。無駄な支出を減らすことにつながり、運用全体のコスト効率が高まります。
クラウドサービス活用の促進とガバナンス強化
IDaaSを導入すれば、従業員が安心して多様なSaaSを利用できる環境を整えられます。同時に未承認のSaaS利用(シャドーIT)を防ぎ、IT統制の強化にも対応。柔軟な働き方を推進するうえでも効果的な仕組みといえるでしょう。
IDaaS導入のデメリットと押さえて おきたい注意点
IDaaSは多くのメリットを提供する一方で、導入前に理解しておくべきデメリットや注意点も存在します。それぞれのデメリットや注意点について、以下で解説します。
導入コスト・運用コストの発生
クラウドサービスのIDaaSは、初期費用のほかに月額や年額の利用料金がかかります。利用ユーザー数や機能の範囲によって料金体系は異なるため、事前に自社の運用規模や目的に応じてコストを適切に見積もる必要があります。
長期的なコストパフォーマンスを考慮し、ROI(投資対効果)を見極めたうえで導入を検討しましょう。
既存システムとの連携の課題
古い基幹システムやオンプレミス型のActive Directoryとの連携には、技術的な課題が発生する場合があります。
Active DirectoryはWindows環境におけるユーザーアカウントやアクセス権限などを一元管理する仕組みで、長年にわたり多くの企業で利用されてきました。しかしクラウド化が進むなか、既存のActive DirectoryとIDaaSとの接続には事前調査や設定の複雑さが伴うこともあり、導入前に十分な検証が不可欠です。
適切な製品選定と運用体制構築
IDaaSの導入を成功させるには、自社に適した製品の選定と運用体制の整備が欠かせません。企業のセキュリティポリシーや業務 フロー、連携したいSaaSサービスとの相性を踏まえたうえで、慎重に比較検討する必要があります。
また、導入後は社内に対する運用ルールの周知や教育も求められるため、継続的な体制構築が欠かせません。
インターネット環境や特定ベンダーへの依存
IDaaS利用時には、常に安定したインターネット接続が求められます。通信環境が不安定な場合はログインや認証プロセスに支障が出る恐れがあるため、法人向けの光回線サービスなどの安定したインフラ整備が必要です。
さらに、特定のベンダーに依存することで将来的なサービス移行が難しくなる「ベンダーロックイン」のリスクもあります。対策として、IDaaS導入時にはベンダー独自開発の規格や仕様などが使われていないかチェックするようにしましょう。
自社に合ったIDaaSを選ぶためのポイント
IDaaSを導入する際には、自社の業務内容や利用環境に適したものを見極めることが重要です。導入後の運用効率やセキュリティ水準、従業員の使いやすさに大きく影響するため、複数の観点から慎重に選定を進めましょう。
以下では、導入前に確認しておきたい3つのポイントを解説します。
情報セキュリティレベルと使い勝手のバランスを考える
IDaaSを選定するうえで最初に検討すべきは、情報セキュリティの信頼性です。なかでも、SOC(Service Organization Control)認定の有無は重要な判断材料になります。SOC認定はクラウドサービスの信頼性をあらわす国際基準のことで、SOC認定を受けていれば外部監査を通して「セキュリティが強固である」と証明されます。
もちろん、セキュリティが強固であるほど安心といえますが、多要素認証の導入などでログイン操作が煩雑になる可能性もデメリットとしてあります。 そのため、導入候補となるIDaaSの認証方法が自社の求める水準を満たしつつ、実務に支障のない操作性を確保しているかを見極める必要があるでしょう。
連携範囲に注意する
IDaaSの利用価値は、複数のクラウドサービスを一元管理できる点にあります。しかし、すべてのIDaaSが、あらゆるSaaSと連携できるわけではありません。
とくに海外ベンダーが提供するサービスの場合、日本国内でよく使われるSaaSには未対応のケースも存在します。自社で利用中のシステムと連携できないSaaSが一つでもあると、「使用しているサービスを一元管理できる」というIDaaS最大の強みを活かせません。
そのため、現在自社で利用中のSaaSがすべて対応しているかを確認する必要があります。さらに、将来的に連携したいSaaSが追加される可能性も踏まえ、連携可能なサービス数に制限がないかもチェックしておきましょう。
サポートが充実しているかどうかを確認する
IDaaSは企業の基幹インフラに直結するシステムのため、トラブル発生時に迅速なサポートが受けられるかどうかは極めて重要です。社内に専門知識を持った人材(インフラエンジニアなど)がいない企業では、ベンダーからの手厚いサポートの有無が導入後の安定した運用の鍵を握るといえるでしょう。
確認すべきサポート内容の例は以下のとおりです。
サポート手段:電話、メール、チャットなど複数あるか
サポートの対応時間:自社の稼働時間中に日本時間で連絡できるか
担当者のサポート言語:日本語での案内が可能かどうか
担当者の属性:日本人または日本語ネイティブ担当者がいるか
対応スピード:問い合わせ後、どれくらいで返答が来るか
これらを確認したうえで、自社の運用体制に最適なIDaaSを選びましょう。
まとめ
IDaaSは、SaaSの増加に伴うID管理の課題を根本から解決できる有効な手段です。「セキュリティの強化」と「業務効率の向上」を両立させたい企業にとって、導入を検討する価値があるサービスといえるでしょう。
今日では、IDaaS・SSO・パスワード管理といった認証まわりのセキュリティ対策だけでなく、SaaSそのものの利用状況を可視化・管理する必要性が高まってきています。SaaSをまとめて管理したい場合は、freeeが提供している「Bundle by freee」も検討してみてください。
「Bundle by freee」は、200以上のアプリと連携可能なSaaS管理システムです。「Bundle by freee」の導入によって、情報システム部門のコスト削減や情報統制によるセキュリティリスクの発生を防止できる可能性が高まります。
よくある質問
IDaaSとは?
IDaaSとは、クラウド上でID管理や認証機能を提供する仕組みおよびサービスのことです。SaaSの 普及やテレワーク・リモートワークの一般化にともなって、多くの企業から注目されています。
詳細は「IDaaSとは」をご覧ください。
IDaaSの代表的な機能は?
IDaaSには、SSOや多要素認証、IDライフサイクル管理など、認証・認可に関連する多くの機能が備わっています。導入すればセキュリティ対策だけでなく、業務効率化や従業員の利便性向上にも直結します。
詳細は「IDaaSの代表的な機能」をご覧ください。
IDaaSを導入するメリットは?
IDaaSを導入すれば、セキュリティ強化や運用負荷の軽減、従業員の利便性向上など、複数のメリットが期待できます。また、SaaSの活用促進やガバナンスの強化にもつながります。
詳細は「IDaaSを導入する5つのメリット」をご覧ください。
SaaS管理の成功事例集
増え続けるSaaS管理の参考に !Bundle by freeeを導入いただいた企業様の成功事例をご紹介。