経理に将来性はある?
キャリアプランや採用動向、研修の課題などを解説

経理は、企業のお金の流れを管理する重要な役割を担っています。一方で、近年テクノロジーの進化や社会の変化により、経理業務のあり方が大きく変わりつつあるなかで「経理には将来性がない」といった声が聞かれるのも事実です。

ここでは、経理部門のマネジメントに従事している人や、経営者としてバックオフィスの生産性向上を掲げている人に向けて、「これからの経理が創出するべき価値」を深掘りしてお伝えします。

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経理を取り巻く現状とキャリアの可能性

現在、経理がどのようなビジネス環境にさらされているのか、これからどんな役割が求められるのかを説明します。

経理の役割に変革をもたらす要因

テクノロジーの進化

近年のテクノロジーの進化は、従来の経理業務に劇的な変化をもたらしています。

RPAによる入力作業の自動化をはじめ、AIを活用した仕訳の提案や異常検知、クラウド会計ソフトによるデータ連携の効率化など、定型的な事務作業は今後ますます自動化・効率化が進むでしょう。経理担当者には、これまで多くの時間を費やしていたデータ入力や確認作業から解放される代わりに、より付加価値の高い業務にシフトすることが求められています。

新たな役割としては、自動化されたデータを分析し、経営層へレポーティングすることなどが挙げられます。単に数値を集計するだけでなく、その数値が持つ意味を読み解き、経営判断に資するインサイトを提供する役割が期待されるようになるでしょう。

また、新しいテクノロジーを導入・活用するための知識や、システムの管理・運用に関するスキルも欠かせません。テクノロジーは経理の仕事を奪うものではなく、経理担当者がより高度な業務に集中するためのツールとして捉える必要があります。

社会情勢の変化

社会情勢の変化もまた、経理の役割に影響を与える要因の一つです。グローバル化に伴い、国際会計基準(IFRS)への対応や連結決算業務の複雑化が進んでいます。また、たとえば消費税率の変更や新しい税制の導入といった法改正に迅速に対応するなど、常に最新の知識をアップデートする必要があります。

さらに、近年注目されているESG経営への対応として、非財務情報の開示やサステナビリティ報告に関する業務も経理部門の管掌範囲となりつつあります。

コンプライアンスの重要性が高まるなか、内部統制システムの構築・運用や、不正リスクの管理といった側面も経理の重要な役割です。単に法令を遵守するだけでなく、企業の倫理観やガバナンス体制を強化するための中核を担う存在として、経理部門への期待は高まっています。

このように、社会の変化とともに企業の健全な運営を支える上で、経理の役割はより広範かつ戦略的になっているのです。

経理の仕事はなくならないのか

前述の通り、テクノロジーによって定型業務は自動化されますが、経理の仕事が完全になくなるわけではありません。その理由は、経理の仕事にはテクノロジーでは代替できない、人間ならではの判断力や高度な分析力が不可欠だからです。

たとえば、複雑な取引における会計処理の判断、会計方針の決定、新しい税制に対する解釈と実務への適用、さらに経営層への財務状況に関する説明やアドバイスなどは、人間の経験や知識、高い倫理観に基づいた判断が必要となります。

また、予算策定や資金繰り計画といった将来予測に関わる業務や、M&Aにおける財務デューデリジェンスなども、人間による高度な分析と判断が求められる領域です。

さらに、経理は社内外のさまざまな部門や関係者とのコミュニケーションが欠かせません。他部署からの問い合わせへの対応、税理士や監査法人との連携、金融機関との折衝など、円滑な人間関係を築き、情報を正確に伝達・共有する能力は、経理の仕事において今後も重要視されます。

テクノロジーとの共存を前提に、より高度な専門性と人間的なスキルを兼ね備えることで、経理職は将来にわたって必要とされる仕事であり続けるでしょう。

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多様な経理のキャリアパス

経理の仕事は、単に日々の取引を記録・集計するだけでなく、企業の経営に関わる重要な情報を提供する役割も担います。

そのため、経理職にはさまざまなキャリアパスが存在し、それぞれのポジションで求められる役割やスキルが異なります。ここでは、キャリアパスごとに経理の役割を説明します。

企業内でのキャリアパス

多くの経理担当者は、まず企業内でキャリアを積んでいきます。企業規模や業種によって詳細は異なりますが、ここでは一般的なキャリアパスを紹介します。

スペシャリスト

特定の経理分野に深く専門性を高めていくキャリアパスです。たとえば、連結決算のプロフェッショナル、税務の専門家、あるいは管理会計のエキスパートなどが挙げられます。

IFRSなどの国際会計基準に特化したり、M&A会計に精通したりと、特定のニッチな分野でその専門性を活かすことができます。スペシャリストとしてパフォーマンスを最大化するため、コアな業務に注力できるようにITツールを駆使することも欠かせません。

マネ-ジャー

経理部門内でチームを率いたり、部門全体の責任者として組織を運営していくキャリアパスです。メンバーの育成や業務の効率化、他部署との連携強化、そして経営層へのレポーティングなど、幅広いスキルとリーダーシップが求められます。

マネージャー以上の役職になると、経理の専門知識に加えて、経営的な視点や部門運営能力がより重要になります。経理部長やCFO(最高財務責任者)を目指す道となります。

異動によるキャリアチェンジ

企業によっては、経理部門での経験を活かして、企画部門や経営企画部門、内部監査部門など、他部門へ異動するキャリアパスも考えられます。

経理で培った分析力や論理的思考力、そして組織全体の数字を把握している強みを活かし、より広範な業務に携わることができます。たとえば、経営企画部で予実管理や事業計画策定に関わったり、内部監査部で業務プロセスの評価や改善に携わったりするケースがあります。

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経理職に求めたい人材要件

組織の生産性向上に貢献する経理職の人材要件としては、以下のようなポイントが挙げられます。

十分な実務経験と知識がある

経理業務のあり方が変化しているとはいっても、基本的な簿記・会計知識と実務経験はどのような環境でも欠かせません。日々の仕訳入力から月次・年次決算まで、一通りの経理業務を滞りなく遂行できる能力が求められます。とくに中小企業では、経理担当者が幅広い業務を兼任することが多いため、さまざまな業務に対応できる柔軟性も重要です。

ITリテラシーが高い

従来の会計ソフトはもちろん、BIツールなどの多様なクラウドサービス、AIやOCRなどの最新技術を駆使したデータ集計や分析にも対応できるスキルは、今後ますます重要視されます。新しいテクノロジーやツールを積極的に取り入れ、業務効率化につなげられる意欲のある人材は、企業にとって非常に価値が高いでしょう。

データ分析能力がある

高度なデータ分析能力や経営的視点を持っている人材は、質の高い情報の提供によって企業の経営判断にまで貢献することができます。企業の競争力を高める上で、このような人材の確保を望んでいる企業は少なくありません。

コミュニケーション能力が高い

中小企業の場合、経営者や他部門とも距離が近く、部署を超えた関係性の構築が必要になります。関係各所との連携を取り、必要な情報を引き出したり、経理の視点からアドバイスを行ったりする能力は、日々の業務を円滑に進める上で欠かせません。企業によっては、英語でコミュニケーションできる人材もニーズがあります。

主体性がある

ルーチンワークをこなすだけでなく、「どうすればもっと効率化できるか」「この業務は本当に必要なのか」といった批判的な視点を持ち、率先して行動できる人材は、企業の成長に大きく貢献します。変化のスピードが速い現代において、最新の情報を自ら取得してアウトプットに結びつける意欲や行動力が重要です。

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経理は採用難?効果的な採用戦略とは

多くの企業にとって、経理部門は事業継続に不可欠な存在です。しかし、とくに中小企業においては、近年、経理職の採用が課題となっています。

ここでは、中小企業における経理職の採用の現状と、効果的な採用戦略について掘り下げます。

採用市場の動向

中小企業における経理職の採用市場では、人材の獲得競争が激化している傾向にあります。とくに経験豊富で即戦力となる人材は限られており、大手企業との獲得競争に直面することも少なくありません。少子高齢化による労働人口の減少も、この傾向に拍車をかけている状況です。

前述のとおり、テクノロジーの進化によって単にルーチンワークをこなせるだけでなく、ITツールを使いこなし、データ分析や経営支援といった付加価値の高い業務を担える人材が求められつつあります。しかし、こうしたスキルを持つ人材は多いとはいえないため、スキルと供給のミスマッチが生じているのです。

中小企業の場合、大企業に比べて知名度が低かったり、提示できる給与や待遇に限りがあったりするため、採用活動がより一層難航することがあります。採用の成功には、中小企業ならではの魅力や働きがいをアピールすることが不可欠でしょう。

経理の離職リスク

採用難の現状に加えて、経理職の離職リスクについても理解しておく必要があります。経理の仕事は繁忙期に業務負荷が高くなる傾向があり、離職につながる要因の一つといえます。

ワークライフバランスを重視する働き方が広がるなかで、経理部門の労働環境を改善し、魅力的な職場環境を提供することは、人材定着のために欠かせません。採用難を解消し、組織全体のレベルを向上させるにあたっては、従業員のスキルアップ支援や柔軟な働き方・キャリアパスの提示など、多角的な取り組みが求められています。

効果的な採用戦略

中小企業が経理職の人材を採用するにあたっては、いくつかの効果的な戦略があります。

ターゲット層に合わせた求人媒体の選定

経理職の人材がよく利用する求人サイトや転職エージェント、あるいは業界特化型の媒体など、ターゲット層に合わせた求人媒体を選定することが重要です。

また、自社のホームページやSNSを活用して情報発信するなど、多角的なチャネルでのアプローチも効果的です。潜在的な候補者に自社の魅力を伝えるための工夫が求められます。

柔軟な働き方や裁量権の大きさをアピール

中小企業ならではの魅力を積極的にアピールすることも重要です。たとえば、リモートワークやフレックスタイムなどの柔軟な働き方が可能な場合は、強く打ち出しましょう。

また、大企業に比べて個人の裁量権が大きいことや、新しい会計ソフトや業務効率化ツールなどの導入に積極的に取り組める機会があることなども、魅力的なポイントになります。経営層との距離が近く、自身の意見や提案が反映されやすい環境であることを伝えるのも良いでしょう。

未経験者への育成プログラムの整備

経験者採用が難しい場合は、ポテンシャルのある未経験者を採用し、育成する視点も重要です。社内研修制度やOJT体制を整備し、入社後にしっかりと経理スキルを身につけられる環境があることをアピールしましょう。

未経験者向けの丁寧な研修プログラムを整備することで、採用のハードルを下げて母数を確保しやすくなります。

魅力的なキャリアパスと成長機会の提供

入社後のキャリアパスやスキルアップ・成長の機会が明確であることを提示します。

たとえば、将来的には経理部門のリーダーを任せたい、特定の専門分野のスキルを磨ける環境がある、資格取得支援制度があるといった具体的な成長イメージを伝えることで、意欲の高い人材の応募につながります。

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経理のスキルアップを支援する研修プログラム

経理職のスキルアップは、企業の持続的な成長に影響します。ここでは、経理職を対象とした研修の重要性と、効果的な研修プログラムのポイントについて解説します。

経理職の研修はなぜ必要か

経理を取り巻く環境は常に変化しています。税法や会計基準の改正は頻繁に行われ、これらに適切に対応するためには継続的な学習が必要です。また、クラウド会計ソフトやBIツール、RPA、AIといった新しいテクノロジーが登場するなかで、業務の生産性向上、効率化を図るには関連スキルの習得も欠かせません。

しかし、とくに中小企業においては、こうした学びを支援するための研修制度が不十分であるケースがよく見られます。研修は従業員のスキルアップを促すだけでなく、従業員のモチベーションや成長意欲、会社への貢献意識を高め、定着率を向上させるうえでも効果的といえます。研修の実施に対して企業が積極的に投資を行うことは、優秀な人材の確保・育成につながるのです。

効果的な研修プログラムのポイント

研修の効果を高めるには、いくつかの重要なポイントがあります。

階層別・職種別の研修体系を整備する

経理部門には、一般職、主任(リーダー)、マネージャーといった階層があり、さらに日次・月次業務担当、決算担当、税務担当といった職務分担があるケースがあります。

階層や職種ごとに必要な知識やスキルは異なるため、それぞれに最適化された研修プログラムを整備する必要があります。たとえば、新任の一般職には基本的な簿記・会計研修、決算担当者には連結決算研修、マネージャーにはマネジメント研修といった具合です。

ITリテラシーを身につける研修を導入する

前述の通り、テクノロジーの導入は今後の経理業務において不可欠です。

単なる会計処理だけでなく、Excelを駆使した効率的なデータ処理や分析をはじめ、BIツールを活用した経営データの可視化、会計ソフトのより高度な応用機能といった研修も導入を検討すると良いでしょう。これらの研修は、データに基づいた意思決定を支援できる人材の育成にもつながります。

OJTと研修を組み合わせて実践的なスキル習得を目指す

座学形式の研修はもちろん、OJTも組み合わせることで、より実践的なスキルの習得が期待できます。

実際の業務を通じて先輩社員から指導を受けたり、具体的な課題に取り組んだりすることで、研修で学んだ知識を定着させ、応用力を養うことができるでしょう。メンター制度の導入も効果的です。

資格取得支援制度を導入する

簿記検定や税理士試験、公認会計士試験などの資格取得を支援する制度を設けることは、従業員の学習意欲を高め、組織全体の専門性の向上にもつながります。

資格取得にかかる費用の補助や研修時間の確保など、企業が従業員のキャリアアップを積極的に支援する姿勢を示すことが重要です。これによって優秀な人材が定着しやすくなります。

研修効果の測定と改善を行う

研修プログラムを実施したら、その効果を測定し、必要に応じて改善を行うことが重要です。

研修後の理解度テストを実施したり、実務におけるスキル向上の度合いなどを評価したりすることで、研修プログラムの有効性を検証し、より効果的な内容へと見直していくことができます。従業員からのフィードバックを収集・反映するのも良いでしょう。

従業員本人による自己啓発を促す

研修制度を用意するだけでなく、従業員本人による自己啓発を促すことも大切です。

法改正に関する書籍やセミナーでの学習、オンライン学習プラットフォームの活用、関連資格の勉強など、自らのキャリアを考え、主体的に学習に取り組む姿勢を評価しましょう。これらの行動を支援するための情報提供や、学習にかかる費用の補助なども有効です。

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経理代行サービス

freeeでは、経理業務の効率化を支援するためにさまざまなサービスを提供しています。その中でもとくに多くの企業様からご要望のある「請求書受取代行」の領域で、お客様の負担を大幅に軽減する「受取請求書アシスト」をご用意しています。

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「受取請求書アシスト」は、請求書の受け取りから確認、データ化、会計ソフトへの連携までをスムーズに対応するのが特徴です。月末月初に集中しがちな請求書処理業務をfreeeがサポートすることで、よりコアな業務に集中できる環境を実現できます。

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もちろん、メールで送られてくるPDFの請求書や、電子請求書サービス経由で発行される請求書もまとめて対応可能です。さまざまな形式で届く請求書を一元的に処理することで、お客様の請求書受取作業そのものを大幅に削減できます。

これにより、とくに業務が集中する月初の負担を軽減できます。電子帳簿保存法の要件を満たした形でのデータ保存にも対応しているため、法対応の観点からも安心です。

Point02OCRとスタッフの目視によるダブルチェック

受け取った請求書の情報は、高精度なAI-OCR(光学的文字認識)機能によって自動で読み取ってデータ化します。しかし、OCRだけでは読み取りの誤りや不鮮明な文字の誤認識が起こり得ることも事実です。

受取請求書アシストでは、OCRによる自動入力後に専門スタッフが目視で内容を確認し、必要に応じて修正を行います。このようなOCRと人の目によるダブルチェック体制により、データの正確性を高いレベルで担保できるのが特徴です。

お客様は、freeeから処理完了の通知を受け取ったら内容を確認するだけで済むため、請求書の1枚1枚に目を通して手入力する手間から解放されます。結果として、請求書処理にかける時間を大幅に削減できるのです。

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freeeの「受取請求書アシスト」について、さらに詳しい情報や導入事例、料金プランなどを知りたい方は、ぜひ以下のページをご覧ください。

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