人事労務の基礎知識

節税効果を発揮する福利厚生費とは?認められる要件や相場について解説

節税効果を発揮する福利厚生費とは?認められる要件や相場について解説

福利厚生を用意するためにかかる費用は「福利厚生費」と呼ばれ、経費に計上が可能です。そのため、企業にとっては高い節税効果が期待できます。

しかし、福利厚生費として認められるためには、一定の要件を守る必要があります。

本記事では、福利厚生費として認められる要件や相場、上限などについて解説します。

目次

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福利厚生とは

福利厚生とは、法人が従業員やその家族のために支払う給与や賞与以外のサービス・制度のことです。福利厚生は、従業員の生活やモチベーションを向上させたり、より働きやすい環境を整えたりすることを目的としています。

福利厚生には、社会保険等の法律で定められた「法定福利」と、会社が独自に設定できる「法定外福利」があり、どちらも税法上では経費として扱われ、原則として非課税です。これを福利厚生費といいます。

ただし、法定外福利に関しては後述する要件に該当しなければ福利厚生費と認められないので注意しましょう。

交際費・消耗品費との違い

福利厚生費と似た経費に交際費と消耗品費があります。これらの費用と福利厚生費の違いは「利用する人物」と「業務への関わり方」です。

福利厚生費が従業員向けに使われるのに対し、交際費は法人外向けに使われます。たとえば、従業員の食事代を支払った場合は福利厚生費となりますが、クライアントの食事代を支払った場合には交際費となります。

また、福利厚生費は社宅の家賃や食事補助などで、業務に直接関わることはありません。一方、消耗品費はボールペンやファイルなど、直接的に業務に必要になるものを指します。なお、消耗品費は使用期間が1年程度で10万円未満のものが基本です。

福利厚生費として計上可能なもの

福利厚生費として費用に計上するには、以下4つの要件を満たしている必要があります。

福利厚生費として計上する要件

  1. 給与ではないこと
  2. 現金もしくは、換金性の高いものではないこと
  3. 全従業員が利用できること
  4. 社会通念上、金額が妥当であること

まず福利厚生費は給与や現金、もしくは換金性の高いものではないことが条件です。たとえば、勤続年数などの表彰で渡す現金や商品券は、福利厚生費とは認められません。現金や商品券を支給する場合は「給与」として扱います。

同様に、一見すると福利厚生費のように思える住宅手当も福利厚生費に該当しません。こちらは給与にプラスして支払われるため、給与として計上します。

また福利厚生費として計上するには、全従業員が平等に利用でき、かつ社会通念上妥当とされる金額である必要があります。一部の従業員しか参加できない飲み会や、高額な海外旅行の費用は福利厚生費として計上することはできません。

ここからは、多くの法人で採用されている代表的な福利厚生の上限や福利厚生費として計上するための要件を紹介します。

通勤手当

通勤にかかる費用を補助する通勤手当には上限が設定されており、上限を超える分は課税の対象となります。

電車やバスなどの公共交通機関を利用している場合、1ヶ月あたり15万円までは非課税です。マイカーで通勤している場合は、走行距離で上限が異なります。片道の通勤距離が2km未満までは全額非課税となりますが、2km以上になると上限金額が発生します。

マイカー通勤の上限金額

片道の通勤距離1ヶ月あたりの上限額
2km未満全額非課税
2km以上10km未満4,200円
10km以上15km未満7,100円
15km以上25km未満12,900円
25km以上35km未満18,700円
35km以上45km未満24,400円
45km以上55km未満28,000円
55km以上31,600円

なお、福利厚生費の要件として「現金もしくは、換金性の高いものではない」とありますが、通勤手当は例外的に現金での支給が認められています。

社宅

給与にプラスして支払う住宅手当は福利厚生費に計上できませんが、法人が所有もしくは契約を結んだ賃貸物件に従業員を住まわせる場合は、家賃を福利厚生費として計上できます。

税法上、上限は定められていません。ただし、福利厚生費として計上するのであれば、一般的な範囲に収めた方が無難です。

2020年12月に日本経済団体連合会が発表した「第64回福利厚生費調査結果報告」によると、従業員1人1ヶ月あたりの住宅関連法定外福利費は11,169円となっています。構成としては法定外福利内の48.2%です。

また、家賃を福利厚生費として非課税にするには「賃貸料相当額の50%以上」を、従業員から家賃として受け取っている必要があります。

賃貸料相当額の計算方法は、以下のとおりです。

賃貸料相当額の計算方法

① (その年度の建物の固定資産税課税標準額)× 0.2%
② 12円 ×(その建物の総床面積(平方メートル)/ 3.3(平方メートル))
③ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22%
① + ② + ③ = 賃貸料相当額

出典:国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき

注意したいのは「賃貸料相当額=家賃」ではないということです。賃貸料相当額を導き出すには固定資産税の課税標準額を調べ、その上で複雑な計算をする必要があります。

【関連記事】
借り上げ社宅の家賃は経費にできる?借り上げ住宅で家賃を設定するべき理由と賃貸料相当額の計算方法について解説

健康診断

一般的な健康診断の費用も福利厚生費として計上できます。地域によって違いますが、一人あたり7,500円~12,000円が一般的です。特に上限はありませんが、PET検診や高額なオプションなど、あまりにも費用が高いものは経費として認められません。20,000円程度までなら、問題なく計上できるでしょう。

福利厚生費として計上するためには、従業員全員が受診できることが必須です。ただし「人間ドックなどの詳細な検査は35歳以上」など、常識の範囲内で年齢による制限を設けることは可能です。

なお、支払いは必ず法人名義で行いましょう。健康診断にかかった費用を従業員に支払ってもらい、その分を給与に上乗せして支給すると給与と見なされ、福利厚生費にできません。

食事補助

社食で食事を提供したり、お弁当を頼んだりする食事補助は、福利厚生費の上限が1人あたり月3,500円以下と定められています。食事補助を福利厚生費と認めてもらう要件は、以下の2つです。

食事補助が福利厚生費として認められる要件

  1. 従業員が食事の半分の価格を負担していること
  2. 現物で支給していること

たとえば、月に5,000円の食事をして、そのうちの2,500円を従業員が負担していれば、その差額は福利厚生費として計上可能です。仮に従業員が2,000円しか負担していなかった場合は、差額の3,000円は給与となり課税の対象となります。

先述した「第64回福利厚生費調査結果報告」では、食事に関連する法定福利費は、1人1ヶ月あたり1,729円です。基本的に上限を超えなければ問題はありませんが、飲酒が含まれている場合には業務内の食事と認められず、福利厚生費に計上できない場合があるので注意しましょう。

なお、深夜勤務者向けに現物での支給が難しい場合に限り、現金での支給が認められています。この場合は税抜300円までの支給が可能です。

社員旅行

社員旅行の費用も、以下の要件を満たせば福利厚生費として計上可能です。

社員旅行が福利厚生費として認められる要件

  1. 従業員全員が参加可能で、50%以上が参加している
  2. 4泊5日以内(海外の場合は現地での滞在日数)の旅行
  3. 不参加の従業員に対して金銭を支給しない

旅行費用に関しては、特に上限も設けられていません。

ただし、あまり高額な費用の計上は難しいため、1人あたり10万円程度の計上に留め、残りは自己負担してもらうのがよいでしょう。

慶弔見舞金

従業員本人や親族の結婚見舞金、災害見舞金といった慶弔費は、例外的に現金での支給が認められている福利厚生費です。

特に上限はありませんが、結婚見舞金や出産祝いなどの慶事は、1万円~3万円程度が一般的です。死亡慶弔金や災害見舞金などは相手の状況によって変動しますが、大体1万円~10万円と考えておくとよいでしょう。

福利厚生費は節税対策につながる

福利厚生費は、法人の節税対策に有効な手段です。福利厚生費は経費として計上することで「損金」となり、収入から差し引かれて利益が減少します。その分、支払うべき税金も少なくなります。

また先述したように、福利厚生費は原則として非課税であるため、従業員にとってもメリットがあります。

たとえば、住宅手当のように「給与」として支給されると、給与が増えた分、社会保険料や所得税の金額が上がります。しかし、福利厚生として家賃を給与から差し引かれた場合、差し引かれた分は課税の対象となりません。そのため、所得税や社会保険料などの負担額が少なくなります。

ただし、その分手元に残る給与や受け取れる社会保障額も減少します。福利厚生費の要件を守ると同時に、社員の負担にならないようなバランスも考えなければなりません。

なお、要件に該当しないものを福利厚生費として計上すると、あとから所得税として課税され、追徴金を支払うことになるため、事前に税理士や税務署に相談するなど、慎重な扱いが必要です。

節税効果の高い福利厚生

節税効果の高い福利厚生として「社宅制度」「法人保険」があります。

社宅制度

社宅制度は、福利厚生の中でも特に節税効果の高い福利厚生です。先述したように、住宅関連費用は法定外福利厚生費用の約半分を占めており、社宅制度を導入することで、福利厚生費に計上できる金額が大きく増えます。

社宅制度には、自社の所有する物件を従業員に貸し出す「所有社宅」と、自社で契約した賃貸物件を貸し出す「借り上げ社宅」の2つがあります。

所有社宅は従業員との賃貸契約が容易ですが、管理や修繕といったランニングコストがかかります。一方、借り上げ社宅はランニングコストが必要ありませんが、賃貸契約が煩雑であることがデメリットです。どちらも一長一短なため、自社に合った方を選びましょう。

【関連記事】
法人も従業員もお得な借り上げ社宅とは?メリットやデメリット、経費にするための要件まで徹底解説

法人保険

法人保険は保険料を福利厚生費として計上できるため、節税につながります。解約返戻金がある定期型の法人保険では、解約時に返戻金ももらえるため、一石二鳥の節税効果があります。

ただし、保険料の全額を福利厚生費に計上できるのは、最高解約返戻率(ピーク時の返戻金)が50%までの場合です。もし50%を超える場合には、一定の期間、保険料の一部を資産として計上しなければなりません。

たとえば、最高解約返礼率が50%超70%以下の場合、保険期間の開始日から保険期間の4割が経過するまで、支払っている保険料の4割を資産に計上します。ただ、上記の期間を過ぎれば全額損金が認められるため、解約までの期間や解約返戻金の割合によって、大きな節税効果を見込めるでしょう。


出典:国税庁「第3節 保険料等」

まとめ

福利厚生費をうまく利用することで、法人にも従業員にも大きなメリットとなります。有効的に利用するには、認められる要件を守り、計上できる範囲を理解しておくことが重要です。

もし福利厚生費に計上できるか迷った場合には、税理士や税務署に問い合わせましょう。

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