離職率とは、特定の期間内に企業へ在籍していた従業員のうち、どの程度の割合が退職したかを示す指標です。企業の人材定着状況や職場環境の健全性を把握するうえで重要な経営指標の一つといえます。
本記事では、離職率の基本的な考え方や計算方法、日本における最新の動向、さらに離職率を改善するための具体的な対策までをわかりやすく解説します。
目次
- 離職率とは
- 753現象とは
- 定着率・退職率との違い
- 企業の離職率が注目される背景
- 人材確保の難化
- 働き方の多様化
- 企業ブランディングの重要性
- サステナブルな経営
- 日本における離職率の現状
- 離職率の計算方法
- 1.離職率を計算する期間を定める
- 2.期間開始時点の在籍者数を確認する
- 3.期間中の離職者数を集計する
- 離職率を計算する際の注意点
- 離職率が高い業界
- 宿泊業・飲食サービス業
- 生活関連サービス業・娯楽業
- サービス業(他に分類されないもの)
- 教育・学習支援業
- 医療・福祉
- 離職率が高い職場に見られる問題
- 人間関係の問題が多い
- 労働条件や待遇への不満が多い
- 仕事内容の不満が多い
- キャリアアップに不安がある
- 経営・組織文化への不満が多い
- 離職率を改善するための対策
- 採用段階でのミスマッチを防ぐ
- コミュニケーションを活性化させる
- 労働条件を改善する
- 福利厚生制度を充実させる
- 公正な評価とキャリア支援を行う
- 働きがい・エンゲージメントを向上させる
- 離職を防ぐための具体的なステップ
- 1.退職理由のヒアリングと分析
- 2.オンボーディングと教育体制の強化
- 3.メンター制度などのフォローアップ
- 4.マネジメント層の育成
- まとめ
- よくある質問
離職率とは
離職率とは、特定の期間内に企業へ在籍していた従業員のうち、どの程度の割合が退職したかを示す指標です。人材の流出状況や職場環境の健全性、従業員の定着度合いを数値で把握できるため、多くの企業が重要な経営指標のひとつとして活用しています。
離職率が高い場合、採用や教育にかかるコストが増加するだけでなく、ノウハウや技術の流出、既存社員への業務負担の増加、企業イメージの低下にもつながりかねません。一方で、離職率が低い場合は、従業員が安定して定着している状態と考えられ、働きやすい職場環境が整っている可能性が高いといえます。
ただし、離職率だけで企業の良し悪しを単純に判断することはできません。業界特性や企業の成長段階によって最適な水準は異なります。そのため、離職率を見る際には数値のみを見るのではなく、業種や職種の特性、自社の経営状況や人事施策の背景などを踏まえ、多角的に分析することが重要です。
753現象とは
離職率と合わせてよく見る「753現象」とは、新卒で就職した人のうち「高校卒業者の約7割」「短大・専門学校卒業者の約5割」「大学卒業者の約3割」が、就職後3年以内に離職する傾向を指す言葉です。数字の「7・5・3」に由来しており、離職率を考えるうえで、若年層の定着支援の必要性を示す指標の一つといえるでしょう。
この現象は、就職前に抱いていた仕事内容や職場環境とのギャップ、キャリアに対する不安、人間関係の悩みなど、さまざまな要因が複合的に絡み合って生じると考えられています。採用や育成にコストをかけた企業にとっては、人材が流出するリスクがあるため、入社後のフォロー体制や育成環境の整備が重要です。
定着率・退職率との違い
離職率と関連する指標に、定着率や退職率があります。いずれも従業員の動向を示す数値ですが、意味や着目点が異なります。
定着率は、一定期間後にどれだけの従業員が引き続き在籍しているかを示す指標で、離職率とは反対の概念です。たとえば「新卒3年定着率」が70%であれば、入社から3年後も新卒社員の70%が在籍していることを意味します。
一方、退職率は文脈によって離職率とほぼ同義で使われることもありますが、「自己都合退職率」「会社都合退職率」のように、退職理由に着目して区分する際に用いられるケースもあります。
これに対し離職率は、退職理由を問わず一定期間内の離職者全体を対象に算出するのが一般的です。そのため、人事戦略や職場改善を考えるうえで、より汎用性の高い指標として多くの企業で使われています。
企業の離職率が注目される背景
近年、企業の離職率に対する関心は一段と高まっています。これは、人材流出の抑制という観点にとどまらず、企業経営そのものに深く関わる複数の社会経済的な変化が背景にあるためです。
主な理由には、以下の要素が挙げられます。
企業の離職率が注目される背景
- 人材確保の難化
- 働き方の多様化
- 企業ブランディングの重要性
- サステナブルな経営
人材確保の難化
日本は少子高齢化の進行により、生産年齢人口(15~64歳)は減少傾向が続いています。深刻な人手不足に陥った社会では、企業は新たな人材を確保することがますます困難になっているといえるでしょう。
こうした状況下での離職は、労働力の損失以外にも影響を及ぼします。具体的には、欠員を補充するための採用広告費や選考コスト、教育投資など追加の負担が発生するうえに、新たな人材が戦力化するまでには時間もかかります。とくに即戦力人材の獲得競争は激しく、採用コストは高騰しやすい傾向にあるのが現状です。
そのため、企業にとってはいかに既存の優秀な人材を定着させるかが、重要な経営課題となっています。離職率の低下は採用コストの抑制と組織の安定化につながり、事業の継続と成長を支える基盤となります。
働き方の多様化
近年は、テレワークやフレックスタイム制、副業・兼業の解禁など、働き方の選択肢が広がっています。これにより、個人のキャリア観も変化しており、一社で長く勤めることよりも、スキル向上や市場価値の向上を重視して、積極的に転職を検討するケースは珍しくありません。
こうした環境下において、企業は待遇面だけでなく、働きがいや成長機会、企業文化、ワークライフバランスといった総合的な魅力が求められています。従業員が「この会社で働き続けたい」と感じられる環境を整備できなければ、転職という選択がより現実的になっているといえるでしょう。
そのため、離職率の高さは企業が時代や従業員のニーズに適応できているかを示す指標の一つとも捉えられます。
企業ブランディングの重要性
離職率は社内指標にとどまらず、企業ブランドにも影響を与えます。離職率が高い企業は「人が定着しない会社」という印象を持たれやすく、採用活動で不利になる恐れがあります。
一方、離職率が低い企業は、働きやすい環境を整えている企業として評価されやすくなります。従業員満足度やエンゲージメントが高ければ、社員自身が企業の魅力を発信する存在となり、ブランド価値の向上にも寄与するでしょう。その結果、優秀な人材の応募増加や企業競争力の強化といった効果も期待できます。
サステナブルな経営
近年は、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点から持続可能な経営が重視されています。企業は短期的な利益だけでなく、社会的責任や長期的な成長を見据えた経営を行うことが重要です。
従業員が定着すれば、知識や経験が組織内に蓄積され次世代へ継承されます。これは企業の知的資産を高め、長期的な競争力を支える重要な要素です。
反対に、離職が頻発するとノウハウが流出し、組織力の低下を招きかねません。従業員が安心して働き続けられる環境を整えることは、企業が社会から信頼を得て持続的に成長するための基盤となります。離職率の改善は、その実現に向けた重要な取り組みの一つです。
日本における離職率の現状
厚生労働省が公表している「令和6年 雇用動向調査」によると、令和6年(2024年)の常用労働者全体の年間離職率は14.2%でした。これは年間約7人に1人が離職している計算になります。
この離職率は業種や雇用形態によって大きく異なります。たとえば、サービス業の中でも「宿泊業・飲食サービス業(25.1%)」「サービス業 - 他に分類されないもの(20.3%)」は離職率が高い傾向にあります。また、雇用形態別では正社員などの一般労働者が11.5%であるのに対し、パートタイム労働者は21.4%と高い水準となっています。
ただし、離職率は景気の動向や社会環境の変化にも影響されるため、単年度の数値だけで評価するのではなく、業界平均や過去の推移と比較することが重要です。労働市場の流動化が進む今日、企業にとって人材の定着は採用コストの抑制や組織力の強化の観点からも一層重視されています。
離職率の計算方法
離職率は、一定期間における離職者数を基に算出します。一般的な計算式は以下のとおりです。
離職率(%)=(特定の期間における離職者数 ÷ 期間開始時点の在籍者数) × 100
自社の人材定着状況を客観的に把握するためには、算出条件を明確にしたうえで継続的に計測を行いましょう。
1.離職率を計算する期間を定める
まずは、どの期間の離職率を求めるかを決めます。年度単位(1年間)で算出するケースが一般的ですが、組織課題をより細かく把握したい場合は四半期や月次で算出するケースもあります。
たとえば、4月1日から翌年3月31日までを1年度とする企業であれば、その期間を対象に離職率を計算します。期間を統一することで、前年との比較やトレンド分析がしやすくなります。
2.期間開始時点の在籍者数を確認する
対象期間の開始時点に在籍していた従業員数を把握します。ここで重要なのは、どの雇用形態を含めるかを明確にすることです。正社員のみを対象とするのか、契約社員やパート・アルバイトも含めるのかによって、算出結果は大きく変わります。
3.期間中の離職者数を集計する
続いて、対象期間内に退職した従業員数を集計します。自己都合退職だけでなく、会社都合退職や定年退職なども含めるのが一般的です。
期間開始時点の在籍者数と期間中の離職者数が把握できたら、計算式に当てはめます。たとえば、期首の在籍者が200名で、1年間に20名が離職した場合、離職率の計算式は「(20 ÷ 200)× 100」で10%となります。
離職率を計算する際の注意点
離職率はシンプルな計算式で求められる指標ですが、継続的な比較を行うためには算出条件を統一することが欠かせません。また、算出した数値を実際の改善施策につなげるには、その背景にある退職理由まで踏み込んで把握する必要があります。
正確な現状分析のためにも、以下の2点を意識しておきましょう。
対象範囲を毎回変更しない
離職率を継続的に比較・分析するためには、算出対象となる従業員の範囲を統一することが重要です。正社員のみを対象とするのか、契約社員やパート・アルバイトを含めるのかといった基準が変わると、前年との単純比較ができなくなります。定義を明確にし、社内で共通認識を持っておくことが必要です。
退職理由の内訳もあわせて把握する
離職率はあくまで結果指標です。数値が高い・低いという事実だけで評価するのではなく、自己都合退職か会社都合退職か、定年退職かなどの内訳を把握することが重要です。たとえば、定年退職が多い場合と、若手の自己都合退職が増えている場合とでは、講じるべき対策は大きく異なります。数値だけでなく背景要因まで分析することで、より実効性のある施策につなげられるでしょう。
離職率が高い業界
離職率は業界によって大きく差があり、特に以下の業界では離職率が高い傾向がみられます。
離職率が高い業界
- 宿泊業・飲食サービス業
- 生活関連サービス業・娯楽業
- サービス業(他に分類されないもの)
- 教育・学習支援業
- 医療・福祉
ただし、同じ業界でも企業によって労働環境や待遇は大きく異なるため、個々の企業の状況を見ることが大切です。
宿泊業・飲食サービス業
宿泊業・飲食サービス業は、産業の中でも離職率が高い業界です。
離職率が高い理由としては、早朝・深夜勤務や土日祝日の出勤など、不規則なシフトが発生しやすく、ワークライフバランスを保ちにくい職場環境であることが挙げられます。賃金水準が比較的低いことも相まって、労力に見合った報酬が得られないと感じて離職してしまうケースが少なくありません。
また、パート・アルバイトが占める割合が高い業界でもあり、人材の流動性が高くなる傾向にあります。
生活関連サービス業・娯楽業
美容院や理髪店、クリーニング、フィットネスクラブ、映画館・テーマパークといった生活関連サービス業・娯楽業も離職率が高い業界の一つです。
離職率が高い背景には、接客業務が中心であることから、クレーム対応や対人ストレスが発生しやすく、精神的負担が離職につながる点が挙げられます。また、土日勤務や長時間労働になりやすい勤務体系から体力的な負担も大きく、心身の疲労が原因で離職につながるケースもあります。
サービス業(他に分類されないもの)
サービス業(他に分類されないもの)には、廃棄物処理業や自動車整備業、機械等修理業、職業紹介・労働者派遣業などが含まれます。
職種によってさまざまな要因がありますが、廃棄物処理や自動車整備などは、現場での作業負担が大きい職種です。事故やケガのリスクもあり、安全が十分に配慮されていない職場では、早期離職につながる要因となります。
派遣業においては非正規雇用が多く、雇用の継続性に不安を抱く人も少なくありません。また、派遣先とのミスマッチによる早期離職の原因となっています。
教育・学習支援業
教育・学習支援業は、小中高などの学校教育に限らず、学習塾の講師や予備校・英会話スクールのスタッフなども含まれます。
とくに、塾や予備校では夜間や週末の勤務が多く、生活リズムが不規則になりやすい傾向があります。また、非常勤講師など非正規雇用の割合が高い分野もあり、雇用の安定性が課題となるケースがあります。
医療・福祉
医療・福祉分野では介護職や看護職の離職率の高さが課題となっています。
夜勤やシフト勤務が多く、身体介助などの重労働を伴う場合もあります。人命や健康を預かる責任の重さから精神的負担も大きく、離職につながるケースが見られます。
社会的意義の高い仕事である一方、労働環境や処遇改善が継続的な課題となっており、定着支援の取り組みが重要視されています。
離職率が高い職場に見られる問題
離職率が高い企業や職場には、いくつかの共通した課題が見られます。それぞれの企業の事情は異なるものの、職場環境や制度設計、組織文化に起因する問題が積み重なり、離職という結果につながっているケースが少なくありません。
ここでは、離職率が高い職場に見られる代表的な課題を解説します。
人間関係の問題が多い
職場内の人間関係は、従業員の定着に大きく影響する要因です。上司や同僚との関係が悪化していたり、ハラスメントが放置されていたりすると、精神的な負担が蓄積し、離職につながる可能性が高まります。
また、チーム内で助け合いの精神が欠如していたり、責任の押しつけ合いがあると、個々の負担が大きくなり、疲弊して働く意欲を失ってしまうこともあります。
労働条件や待遇への不満が多い
長時間労働や低賃金といった待遇面の問題も、離職率を押し上げる要因です。従業員が自身の貢献に見合う報酬が得られないと感じれば、より条件の良い会社を求めて転職を考えるでしょう。
さらに、昇給や賞与の基準が不透明で将来の見通しが立たない場合、モチベーションの低下が避けられません。待遇への不満が慢性的に続く職場では、優秀な人材ほど流出しやすい傾向があります。
仕事内容の不満が多い
入社前に想定していた仕事内容と実際の業務との間に大きなギャップがある場合、早期離職につながりやすくなります。いわゆるミスマッチが解消されないまま放置されると、不満が蓄積していきます。
また、業務が単調で成長実感を得られない、自身のスキルや強みを活かせないといった状況も、離職の一因です。役割や目標が不明確な職場では達成感を得にくく、将来への不安やモチベーションの低下から転職を検討する従業員も増えるでしょう。
キャリアアップに不安がある
自社で働き続けても昇進・昇格などのキャリアアップの見通しが立たない、または年功序列が強く実力が正当に評価されない環境では、成長意欲の高い人材ほど不満を抱きやすくなります。
さらに、研修制度やスキル開発の機会が十分でない場合、「ここにいても成長できない」と感じて転職を選択する傾向も高まるでしょう。
経営・組織文化への不満が多い
経営方針や組織文化に対する不信感も、離職を招く要因です。現場の声が経営に反映されない、意思決定の過程が不透明であるといった状況では、従業員のエンゲージメントは低下します。
また、従業員の意見が無視されるワンマン経営や成果より年功を重視する古い風土では、居心地の悪さを感じて離職してしまうことも考えられます。
離職率を改善するための対策
離職率の高さに悩む企業でも、原因を特定し、自社の状況に応じた施策を講じることで改善は十分に可能です。
ここでは、採用から制度設計、組織風土づくりまで、離職率を下げるために取り組みたい主な対策を紹介します。
採用段階でのミスマッチを防ぐ
採用の段階でミスマッチを防ぐことは離職率を低下させる重要なポイントです。応募者に対して仕事内容や職場環境を率直に伝え、自社の求める人物像と合致する人材を採用する工夫をしましょう。
求人票や面接で仕事のやりがいや厳しさを率直に説明したり、社内の雰囲気が伝わるよう会社見学や在籍中の従業員との座談会を実施するなどが考えられます。また、適性検査やインターンシップを活用して人材と仕事のミスマッチを減らすことも有効です。
採用時にお互いのミスマッチを減らすことで、「入ってみたら想像と違った」という早期離職を防止できます。
コミュニケーションを活性化させる
職場のコミュニケーションを円滑にし、人間関係を良好に保つことも離職率防止には欠かせません。たとえば、定期的な1on1ミーティングで上司と部下がじっくり対話する場を設ければ、悩みや不満が早期に発見され、早期離職を防ぎやすくなります。
また、社内イベントや雑談スペースの活用、フリーアドレスやチャットツールなどの導入で、部署を超えた横のつながりを促進するのも効果的です。経営層が理念や会社の方向性を直接伝える社内報や、タウンホールミーティングなどの機会も、帰属意識を高めるうえで有効な施策となるでしょう。
労働条件を改善する
労働条件の改善は、従業員の離職率を低下させるもっとも有効な取り組みです。長時間労働の是正や休暇制度の創設、ノー残業デーの導入などの制度面と勤怠システムの見直しなどの運用面の両面で対策を講じましょう。
また、給与水準についても定期的に見直し、従業員の貢献度や市場相場に見合った形で反映させる必要があります。テレワークやフレックスタイム、時短勤務など柔軟な勤務制度を整えることで、ワークライフバランスの実現を後押しできます。
福利厚生制度を充実させる
福利厚生の充実も、従業員の満足度や定着率を高める有効な施策です。住宅手当や食事補助、育児・介護支援制度、資格取得補助など、多様なライフステージや価値観に対応した制度を整えることで、企業への安心感や帰属意識が高まります。
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公正な評価とキャリア支援を行う
公正で納得感のある人事評価制度を構築し、フィードバックも丁寧に行うことで評価に対する不信や不公平感を払拭できます。
また、将来のキャリアを提示し、具体的にどのような成長機会や役職が目指せるのかを明確にしましょう。社内研修や資格取得支援などを通じて、従業員のスキルアップを後押しする仕組みを作ることも重要な取り組みです。
働きがい・エンゲージメントを向上させる
従業員が「この会社で働き続けたい」と思えるようにするには、仕事へのやりがいや企業へのエンゲージメントを高める施策も欠かせません。
具体的には、定期的なエンゲージメントサーベイや従業員満足度調査(ES調査)を行い、現場の声を把握した改善施策の実施が重要です。成果を出した従業員を表彰する制度を設けたり、心理的安全性の高い職場づくりを進めたりすることも、働きがいの向上に寄与します。
離職を防ぐための具体的なステップ
従業員の離職を防ぐには、感覚的な対処ではなく、原因の特定から組織体制の見直しまでを段階的に進めることが重要です。
ここでは、現状把握から育成体制の強化など、従業員の離職を防ぐための具体的な4つのステップを解説します。
1.退職理由のヒアリングと分析
離職防止の第一歩は、なぜ従業員が辞めるのかを正確に把握することです。退職する従業員に対して、形式的なアンケートだけでなく、退職面談などで丁寧なヒアリングを行うことが重要です。
ヒアリングの際には、従業員が本音を話しやすいように信頼関係を築き、安心できる雰囲気をつくる必要があります。質問は給与や待遇だけでなく、人間関係や業務内容、企業文化など、多岐にわたる項目について深掘りしましょう。とくに具体的なエピソードに焦点を当てることで、表面的な理由の奥にある本質的な問題点が見えてくることがあります。
ヒアリングで得られた情報は、個別の事例として終わらせるのではなく、組織全体で集計し、分析しましょう。たとえば「上司との関係性」が離職理由の上位を占めるのであれば、マネジメント層の育成が課題として浮上します。
これらの分析結果をもとに、課題の優先順位をつけ、具体的な改善策を検討します。分析を通じて特定の部署や役職、入社時期に偏りがあるかなどの傾向を掴むことができれば、より効果的な施策を講じられるでしょう。
2.オンボーディングと教育体制の強化
新入社員の早期離職を防ぐうえでは、オンボーディング(新入社員の受け入れプロセス)の質が重要になります。単なる入社手続きやオリエンテーションで終わらせず、戦略的に設計されたオンボーディングプログラムを実施することで、新入社員のエンゲージメントを高め、組織への定着を促進します。
効果的なオンボーディングとしては、以下のような例が挙げられます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 企業理念やビジョンの浸透 | 企業が何を目指し、どのような価値観を大切にしているのかを明確に伝えることで、新入社員は自身の仕事が組織全体にどのように貢献するのかを理解し、帰属意識を高めることができる |
| 期待役割の明確化 | 新入社員が自身の業務内容や目標を具体的に理解し、何を期待されているのかを明確にすることで、不安を軽減し、早期に戦力化を促す |
| 人間関係構築のサポート | チームメンバーや部署内のキーパーソンとの交流機会を設けることで、新入社員が孤立することなく、スムーズに人間関係を築けるよう支援する。ランチミーティングや歓迎会なども有効 |
また、入社後の教育体制強化も欠かせません。従業員は、自身のスキルアップやキャリア成長の機会を求めています。OJTによる現場での実践的な指導をはじめ、研修や資格取得支援制度、将来的なキャリアパスの提示なども行いましょう。
3.メンター制度などのフォローアップ
とくに若手社員や中途入社の社員にとって、入社後の慣れない環境での孤独感や不安は、早期離職の大きな要因となります。これを防ぐためには、メンター制度などの定期的なフォローアップが有効です。
メンター制度は、新入社員や若手社員に対して、年齢や社歴の近い先輩社員を「メンター」としてつける制度です。メンターは業務上の質問だけでなく、会社生活における悩みや人間関係の相談など、部下が話しにくい内容についてもサポートします。
また、入社後の一定期間には、人事担当者や直属の上司が定期的にフォローアップ面談を実施することも大切です。業務の進捗状況だけでなく、職場への適応度や困っていること、不満などを聞き取るとよいでしょう。
フォローアップ面談の目的は、問題を早期に発見し、適切なサポートを提供することです。場合によっては、部署異動や業務内容の調整など、具体的な改善策を検討する必要があるかもしれません。従業員に「会社が自分に関心を持ってくれている」「困った時には助けてくれる」と感じてもらうことで、エンゲージメントの向上が期待できます。
4.マネジメント層の育成
従業員の離職理由として多く挙げられるのが、上司との関係をはじめとする人間関係です。そのため、マネジメント層の育成は離職防止において重要な要素といえます。
マネジメント層には、単に業務を管理するだけでなく、部下の成長を支援し、モチベーションを高め、チーム全体のエンゲージメントを向上させる役割が求められます。具体的なスキルとしては、コーチングスキルやフィードバックスキル、傾聴力、共感力、心理的安全性への配慮などが挙げられます。マネジメント層への研修を通じて、これらのスキルを体系的に習得させることが重要です。
また、マネジメント層自身のストレスケアやエンゲージメントも、部下のエンゲージメントに直結するため、マネジメント層へのサポートも忘れてはなりません。「この上司の下で働きたい」「このチームで成果を出したい」という感情を醸成できれば、結果として不必要な離職を防ぐことができるでしょう。
まとめ
離職率は、企業の職場環境や経営課題を客観的に示す大切な指標です。離職率が高い場合、その裏には人間関係や待遇、キャリア支援など、さまざまな課題が潜んでいる可能性があります。
大切なのは、離職率という数値をただ追うのではなく、その背後にある課題に真摯に向き合い、従業員にとって安心して働き続けられる環境を整えていくことです。
離職率防止の取り組みは、従業員の満足度や定着率を高めるだけでなく、企業全体の生産性向上やブランディング強化にもつながります。まずは、自社の現状を客観的に分析し、小さな改善から一歩ずつ始めてみましょう。
よくある質問
離職率とは?
離職率とは、特定の期間内にどれだけの従業員が企業を退職したかを割合で示す指標です。人材の流出度合いや職場環境の健全性、従業員の定着状況を数値として把握できるため、多くの企業が重要な指標として離職率を活用しています。
詳しくは、記事内の「離職率とは」をご覧ください。
一般的な離職率はどれくらい?
厚生労働省の調査によると、令和6年(2024年)の常用労働者全体の離職率は14.2%です。
業種別の分類では、宿泊業・飲食サービス業や生活関連サービス業などに高い傾向があります。ただし、同じ業界でも企業によって労働環境や待遇は大きく異なるため、個々の企業の状況を見ることが大切です。
詳しくは、記事内の「日本における離職率の現状」で解説しています。
離職率の計算方法は?
離職率は、一定期間に退職した従業員数を、期間開始時点の在籍者数で割って算出します。一般的に用いられる計算式は「離職率(%)=(特定の期間における離職者数 ÷ 期間開始時点の在籍者数)×100」です。
詳しくは、記事内「離職率の計算方法」にて解説しています。
