「東急グループの資産をハックし、より豊かな暮らしをつくる」をテーマにデジタル共通基盤やアプリ開発を推進するDX内製開発組織「URBAN HACKS」。100名を超える規模へと成長を続ける同組織において、採用増加に伴う入退社時のSaaSアカウント管理やデバイス運用の効率化、さらにはシャドーITの撲滅に向けた基盤構築が急務となっていました。今回は、URBAN HACKSの情報システム体制を牽引する長峰様に、freee IT管理の導入背景や業務改善の成果について詳しく伺いました。
1. 会社・業務内容について:東急の街づくりとデジタルを繋ぐ「URBAN HACKS」の挑戦と情シス体制
まずは、URBAN HACKSの組織概要と長峰様の役割について教えてください。
長峰さん(以下、長峰):URBAN HACKSは、「東急グループの資産をハックし、より豊かな暮らしをつくる」ことをテーマに掲げ、2021年7月に発足(2022年本格稼働)したDX内製開発組織です。「東急線アプリ」や「TOKYU POINT」の共通基盤構築など、お客様とのデジタル接点の拡充やデータ連携を通じたシームレスなサービス提供を目指しています。
東急本社には世の中で多く利用されている製品を中心とした一般的な情報システム部門が別途存在しますが、URBAN HACKSはそこから独立し、MacやGoogle Workspace、Slack、NotionなどのモダンなIT環境を運用しています。情シスチームは私を含めて計4名体制で、私が全体の方針策定やアカウント・シャドーIT管理の統括を担い、他のメンバーがデバイス調査やヘルプデスク等の実務を担当しています。
2. 導入の背景:組織拡大に伴う入退社オペレーションの増大と「台帳管理」からの脱却
SaaS管理ツールの導入を検討し始めた背景や当時の課題について教えてください。
長峰:以前は他社のIT資産管理サービスを導入していましたが、実態は「アカウント情報の記録台帳」としての用途にとどまっていました。各SaaSの管理画面でアカウント作成や削除を行った後に、手動で資産管理サービスを更新(あるいは確認)するという流れになっており、非常に非効率でした。
ありがたいことに組織の採用・増員が加速する中で、入退社オペレーションの頻度が急増しました。以前の運用では、入社者1名あたりのアカウント作成や調整に2時間半から3時間以上もかかっており、情シス業務が各管理画面での対応に忙殺されていました。SaaS元で一括して作成・削除が行えるオペレーションの自動化と効率化が必須であると感じたのが検討のきっかけです。
3. ツール選定の軸と決め手:前職での信頼感、拡張性の高さ、そして圧倒的な自動化への組みやすさ
freee IT管理を選んだ決め手は何だったのでしょうか?
長峰:最大の理由は、前職での利用経験があり「確実に使える」という確証があった点です。ジョインして2〜3ヶ月目で導入を推進するにあたり、最短で入退社オペレーションを確立させることが最優先課題だったため、迷うことなく選定しました。
また、自社の業務オペレーションに組み込みやすい点も大きな決め手です。新しいSaaSを追加導入する際、他社製品ではオートメーションを都度新しく作成する手間がありましたが、freee IT管理はオートメーションに組み込みやすく、SaaSの拡張に対して情シスが容易に追従できます。さらに、約400におよぶAPIが公開されており、自社で権限チェックや拡張機能を自由に組み上げられる点や、UIが洗練されていて情シス以外の部門でも扱いやすい点も非常に魅力的でした。
4. 導入後の効果①:入社オペレーションの時間が大幅短縮。「退職者アカウントゼロ」を担保する安心感の獲得
導入後、業務効率やセキュリティ面でどのような成果がありましたか?
長峰:定量的な効果として、1名あたり2時間半〜3時間以上かかっていた入社時のアカウント作成・調整作業が、30分から長くても2時間以内に収まるようになり、作業工数が大幅に削減されました。
定性面では、「退職者の残存アカウントは現状ゼロである」と明確に言い切れる安心感を得られたことが最大の成果です。以前は休職者や退職者のアカウントが残存してしまう懸念もありましたが、確実なフローを確立できたことでリスクを排除できました。さらに「freee IT管理の画面上で未紐付けアカウントがゼロになればOK」という形で他メンバーへ明確に作業依頼を出せるようになり、業務構築が非常にスムーズになりました。
5. 導入後の効果②:他部門との端末情報共有と、生成AI時代を見据えたアカウント最適化
アカウント管理以外の面や、コスト最適化に関する取り組みについてはいかがですか?
長峰:freee IT管理の閲覧・管理アカウントを情シス以外のチームにも発行し、貸出PCや業務委託者への貸与状況、検証用スマートフォンの管理状況を可視化・共有しています。他部門とのスムーズな情報連携において大変助かっています。
また、近年は従量課金の生成AIツール(Claude CodeやChatGPT等)の導入が増加しています。AI製品の活用を拡大するために、既存SaaSの契約や重複アカウントを徹底的に見直し、不要なアカウントの排除・削減を進めています。従業員のニーズに合わせて最適なAIツールをカスタマイズ提供できるコーポレートIT体制を目指しています。
6. 今後の展望:未運用の機能活用によるシャドーIT完全撲滅と、生成AIツールのコスト最適化
今後の展望や具体的な取り組みについてお聞かせください。
長峰:まずURBAN HACKS内では、まだ運用しきれていない「棚卸しアンケート」や「上限通知のアラート機能」、そして「検知アプリ」を活用し、把握できていないシャドーITやシャドーアカウントを完全になくす「100点の状態」を目指します。
また、Claude CodeやChatGPTなどの生成AIツールをはじめとする従量課金・アドオン系SaaSの利用拡大に伴い、AI利用コストの可視化や適切なコントロール機能の運用を強化していきます。不要アカウントの自動検知・整理を徹底しつつ、アカウント上限等の通知アラートや定期的な棚卸し運用プロセスを確立することで、コスト最適化とガバナンス向上を両立させていく予定です。
7. IT管理を検討している企業への提言:段階的な自動化ステップと「仕組み」によるガバナンス転換
最後に、これからIT管理ツールの導入やSaaSガバナンス強化を検討している企業に向けて、アドバイスや提言をお願いします。
長峰:導入時にいきなりすべてのSaaSや管理業務を一度に対象としようとすると、運用のハードルが高くなってしまいます。まずはコーポレートIDをはじめとする主要SaaSを連携させ、「入退社に伴うアカウント発行・削除オペレーションの自動化」から優先的に着手することをおすすめします。
この基本オペレーションが軌道に乗った段階で、次のステップとしてシャドーアカウントの精査や、アカウント・端末の棚卸しを実施し、現実と理想のギャップを埋めていくという段階的な導入ステップを踏むことが成功のポイントです。これだけ複雑化した環境において人力でコントロールするのは限界がありますので、ツールや仕組みを活用して自動化・効率化し、現場のビジネススピードを損なわずに安心して活動できる環境を提供することが極めて重要だと考えています。
