バックオフィスは数字をリアルタイムでどれだけ発信できるか。クリエイティブな経理とは経営のナビゲーター

株式会社ラバブルマーケティンググループ 取締役CFO 原本 誉久 氏/監査役 石川 友則 氏

課題
月次決算を早期化し事業の意思決定スピードを上げたい

理想的なバックオフィスとは一体どのようなものなのか。企業によって目指すところはさまざまですが、明確な答えを見つけられていない組織が多いのではないでしょうか。「最も愛されるマーケティンググループを創る」をミッションに掲げる株式会社エル・エム・ジー(以下、LMG)の管理部門を統括する同社取締役CFOの原本氏と監査役の石川氏は、理想的なクリエイティブな経理とは「経営のナビゲーター」であると断言します。


部署の立ち上げにおいてどのような背景があったのか、実現するためにどのような工夫が実践されているのか。お話を伺います。

――設立の経緯や御社サービスへの想いを教えてください

「愛されるマーケティング」を実現するスピード感のある会社


株式会社エル・エム・ジ一 取締役CFO 原本 誉久 氏、監査役 石川 友則 氏

原本 誉久 氏(写真手前)
株式会社エル・エム・ジ一 取締役CFO
和光証券株式会社(現、みずほ証券株式会社)入社後IPO業務に携わる。事業会社で働きたいという思いから一転、設立されて間もないベンチャーへ。中古品買取事業を手がけるベンチャーの管理部門の立ち上げからIPOまでを担当した。その後、ホテル運営会社に転職。ホテルの買収・経理を担当し株式会社エル・エム・ジー取締役CFOに就任。

石川 友則 氏
株式会社エル・エム・ジ一 監査役
青山学院大学経済学部を卒業後、東証マザーズ上場企業である食品商社・ゲーム会社の管理本部にて、主に税務・会計・法廷開示業務を担当。その後、株式会社ブリヂストングループの子会社で経営企画を8年担当。2015年7月に株式会社エル・エム・ジー常勤監査役に就任。

原本誉久氏(以下、原本) LMGはグループ全体で「最も愛されるマーケティンググループを創る」をミッションに掲げ、ソーシャルメディアマーケティング事業、インバウンドマーケティング事業、投資事業を展開しています。「愛されるマーケティング」とは、企業が伝えたい情報を一方的に押し付けるのではなく、消費者の情報消費行動に寄り添ったマーケティングの考え方です。


ソーシャルメディアマーケティング事業を行う株式会社コムニコでは、FacebookやTwitter、InstagramといったSNSを使ったマーケティング活動の支援を、戦略立案から運営代行、レポート、広告出稿など一貫して手がけ、またSNSアカウントの運用に役立つ支援ツールを開発・提供しています。


インバウンドマーケティング事業を行う株式会社24-7では、インバウンドマーケティングに基づいた戦略策定、ツール導入、Webサイトの企画・制作、分析などのサービスを提供しています。インバウンドマーケティングとは、2005年、HubSpot社が提唱したマーケティングの考え方です。一方的な営業電話やダイレクトメールなどで企業から顧客を追う「アウトバウンド」な活動に対して、見込み客が自ら情報を求めて自社のサイトへ訪問してもらい、製品やサービスの顧客及び推奨者になってもらうためのあらゆる活動を指しており、製品やサービスの顧客及び推奨者になってもらうためのあらゆる活動を支援しています。

石川友則氏(以下、石川) グループ会社全体の社員数は、2017年11月時点で約70名です。ベンチャーマインドを持ち、スピード感を大事にする弊社では、新卒や中途社員を積極的に採用し、育成しています。とくにソーシャルメディアマーケティング事業では、学生のころからFacebookやTwitter、InstagramなどのSNSに、日常的に触れてきた20代のデジタルネイティブ世代が大活躍しています。



株式会社エル・エム・ジ一 取締役CFO 原本 誉久 氏、監査役 石川 友則 氏


マーケティングの戦略立案から運営までを一手に手がける

原本 これまで私たちは、多くの企業・ブランドのマーケティングを手がけ、実績を残してきました。コムニコで支援させていただいたアカウントは、累計400を超えています。24-7は、インバウンドマーケティング&セールスソフトウェア「HubSpot」のパートナー(正規代理店)として、HubSpotの導入や運営などをサポートし、国内導入実績はNo.1を誇ります。

――freee導入のきっかけとご利用状況を教えて下さい

経費申請の承認がスピーディーに

原本 私はこれまで証券会社へ入社後、ベンチャー企業数社で創業時期の管理部門立ち上げと新規上場(以下、IPO)の支援を行ってきました。LMGでも、IPOを目標にした管理チームの構築を手がけています。


会計ソフトを切り替えたきっかけは、それまで導入していたスタンドアローン型会計ソフトがIPOに必要な業務に対応していなかったためです。freeeのコンセプトは、私たちのスピーディーな事業展開にとてもマッチしています。IPOへの対応を含めて、求める機能がそろっているうえに、業務の自動化を進めるfreeeのコンセプトが大変共感できるものだったからです。


freeeのさまざまなパッケージを導入しましたが、一番成果が上がったのは経理業務です。いままでの会計ソフトとの根本的な違いは、クラウドサービスであるという点。いままでは数台のパソコンに会計ソフトを入れて作業をしていましたが、クラウド会計ソフトのfreeeは、どのパソコンからでもどこにいてもアクセスできます。freeeでは、経費申請の上長承認機能を2017年8月にリリースされているのですが、クラウド化によって、申請から承認までのタイムラグが解消できると期待しています。


また、管理チームのメンバー全員で数値の共有もできるようになり、さらに、リアルタイムで会計事務所とも連携するなど、業務が大幅に効率化されました。


株式会社エル・エム・ジ一 取締役CFO 原本 誉久 氏、監査役 石川 友則 氏


freeeを導入して月次決算を3〜4営業日短縮

原本 私は会計ソフトに「リアルタイム性」と「クリエイティブ性」を求めています。それは過去の苦い経験があるからです。私が20年前に勤めていたベンチャー企業は、BtoC企業。私はアーリーステージから参画していました。会社の成長スピードが早く、スピード感のある顧客対応も求められていましたので、毎日が戦争のようでした。全国の営業所から送られてくる帳票類のFAXを紙ベースで整理していたため、机の上に載りきらず床にも並べている始末。仕訳は10万行を超えていました。


仕訳をOCR(光学文字認識)で読み取り、データとして整理しようにも、会社にある経理が使えるパソコン台数や処理速度は限られています。その当時、月次決算を締めるまでに100人の派遣社員で取りかかっても3ヶ月はかかるという絶望的な状況でした。こうなってくるともはや「月次決算」とは呼べませんよね。毎日のように泊まり込みで作業をしても、まったく終わりが見えない。あのときは、バックオフィスの本質的な役割をまったく果たせていなかったと反省しています。


経営陣からは月次決算のスピーディーな報告が求められます。もちろん、当時と比べると会計管理システムは進化していますが、freee導入以降は、月次決算を3〜4営業日短縮できている状況です。また、freeeがあることで、経理が報告資料を作成するまでもなく、各社役員が自分で日々の数字を確認できるようになりました。


石川 ベンチャー企業を経営する上で大事なのは、バックオフィスはコストセンターだという意識です。利益を出すのが企業の使命。バックオフィスといえども、事業にもコミットするとか、コストを抑えて業務を効率化させる視点を持たなければいけません。バックオフィスの役割を明確にして、本質的でない業務を効率化した結果、社員の要望をフットワーク良く行える、ということが管理部門の役割であり理想の姿だと考えています。


私たち管理チームのメンバーは、「みんなが働きやすく、クオリティーの高い環境をコストをかけずに提供したい」という思いを共有しています。freeeを導入することで、まずは管理チームの社員の時間が捻出できました。その結果、彼らが本質的な業務へ注力できるようにすることに成功したのです。

――今後の展望について教えて下さい

バックオフィスは経営陣にとってのナビゲーター


株式会社エル・エム・ジ一 取締役CFO 原本 誉久 氏、監査役 石川 友則 氏


石川 全社的にはまず、IPOを目指していくことが最優先の課題です。そのなかでバックオフィスは、よりクリエイティブなことに役割を担っていくべきだと考えています。たとえば事業戦略を立てることに頭を使ったり、業務効率化のための施策を考えたり、法令遵守の精度を高めたりといった仕事に重点を置きたいです。


原本 LMGの管理チームは経営企画の役割も担っています。投資事業でのM&Aに向けた買収スキーム・IPOを目指すための戦略を考えることが具体的な業務内容です。会社の資金繰り状況、今の売上状況、利益の状況、もしくは見込み客の状況を数字に落とし込んだ場合はどうなるのか、といった指標のタイムリーな報告にはまだ課題が残されています。



バックオフィスはコーポレートプランニングに会計的な視座を与える役目

原本 バックオフィスは本質的な業務に対してクリエイティブであるべきだと考えています。弊社ではコーポレートプランニングへのコミットが求められており、単に予算や実績、差異の要因をまとめたレポートを作って役員や代表に報告するだけでは不十分。投資事業においても、会計的な知見を踏まえて積極的に経営陣と議論をしています。こういった議論はすごく面白いです。バックオフィスも経営意識を持ち、コミットすることが大事だと思います。


このような取り組みを通して、弊社管理チームは、経理としての責務も果たし、かつ経営企画としての役割も担っています。管理チーム責任者として、経営者の視野を広げて経営の意思決定を正すことも重要なことだと考えています。


石川 freeeを導入してからはP/Lで計算書の数字を見て最善の提案ができるようになりました。これが自分自身の自信につながり、積極的な提案を生んでいます。


LMGにおけるバックオフィスはまだ完全に確立されたとは言えません。人事部門の仕組み化やさまざまなワークフローの構築など、課題はたくさん残されています。アウトプットの質を高め、経営陣にサジェストを与えられる、経営ナビゲーターの役目を果たすようになりたいと考えています。


今後もfreeeをはじめとする業務効率化につながるITツールを活用して、理想的なバックオフィスを目指していきたいです。


株式会社エル・エム・ジ一 取締役CFO 原本 誉久 氏、監査役 石川 友則 氏


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