紙台帳から脱却し、給与計算期間も2〜3日から半日へ 伊予興業が挑むリアルタイム経営

伊予興業株式会社

取締役 コーポレート部門 部長 徳永 大輝 氏、コーポレート部門 経理 高橋 有加 氏

紙台帳から脱却し、給与計算期間も2〜3日から半日へ
伊予興業が挑むリアルタイム経営

課題(導入前の悩み)

  • 膨大な手書き伝票や紙台帳による二重管理が多く、計算・転記ミスの不安や手作業の負担が大きかった。
  • 約40年近く超勤めたベテラン経理の退職が決まり、複雑でアナログな紙の運用を引き継ぐことが課題であった。
  • 決算処理を外部依存していたため数字確定に遅れが生じ、リアルタイムでの経営判断が難しい状況だった。

導入の決め手

  • 3代目社長の就任とベテラン担当者の退職時期が重なり、時代に合わせたシステムへ刷新する方針が定まったため。
  • 会計と人事労務を連携して同時導入でき、紙や手動中心のプロセスをまとめてデジタル化できる点。
  • 直感的に操作できる画面設計で、経理経験の浅い担当者でも仕訳や業務構造を理解しながら運用可能な点。

効果(導入後の成果)

  • 消込がワンクリックで完了するようになり、毎月の給与計算期間も2〜3日から半日へ大幅に縮小した。
  • 振込の一括処理や勤怠データ自動集計により、手入力による誤送信の不安と作業コストが激減した。
  • 部門別PLを自前でリアルタイム出力可能になり、過去の集計脱却と計画的な経営判断を実現した。

目次

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愛媛県新居浜市で創業し、地域の基幹産業である化学プラントの現場を足元から支え続けてきた伊予興業株式会社。60年を超える歴史と高い技術力で信頼を築いてきた同社だが、そのバックオフィスには長年にわたって継承されてきた手書き伝票や膨大な紙台帳の山が残されています。

転機は、3代目・太田善大氏の就任と、長年会社を支えたベテラン経理担当者の退職だった。「過去の数字を振り返るのではなく、リアルタイムに数値を把握してしっかりとした予算管理が実行できる経営へシフトしたい」。経営陣が想い抱いた理想を実現するため、慣れ親しんだ紙文化との別れを告げます。

後任となる新しい人材を迎え、freee会計・freee人事労務の導入へと舵を切った同社。手作業の負担を劇的に削ぎ落とした先に手入力の不安や遅れを解消し、自前でリアルタイムに数値を捉え、部門別PLやファイナンシャルレポートを作成して全社で計画に向かって挑むための強固な経営基盤を構築した。仕組みで組織を強固にし、未来を切り拓く伊予興業の今を伺いました。

第38回日経ニューオフィス賞「四国ニューオフィス奨励賞」を受賞したオフィス①

60年の歴史が生んだ「紙の山」と、ベテラン退職で訪れた大きな節目

伊予興業様の事業内容や、これまでの歩みについて教えていただけますか?

徳永 大輝様(以下、徳永):愛媛県新居浜市で創業し、今期で66期目を迎えます。新居浜市はかつて住友グループの別子銅山があった城下町であり、この地域の産業基盤を支える拠点都市として発展してきました。当社は、住友グループ関連の大手企業と取引があり、地域の産業と密接に結びついています。事業内容は、化学プラントの配管接合部に必要なパッキンやガスケットなどの産業用密封材の加工販売に加え、また、産業機械部品や化学工業用機械部品の製造、様々な大型タンクや容器の製造、配管工事、船舶の艤装工事など幅広く手掛けています。

まさに地域の基幹産業を長年支えてこられたわけですね。これまでのバックオフィスはどのような体制で運用されていたのでしょうか。

徳永:経理業務に関しては、約40年にわたり会社を支えてくれたベテランの女性担当者、当時の社長(現会長)、そして税理士の先生の3人が中心となって長年支えてくれていました。経営と現場の安心感を守るため、非常に強固な連携のもとで大切に運用されてきた歴史があります。

長年の歴史と信頼がある分、社内の運用には手作業や紙の書類も多く残っていたのですね。

徳永:そうですね。当時の事務所には紙の台帳がいくつも積み上げられているような状態でした。また、現金での仮払い精算作業も多く、出張や経費が必要になるたびに「今回の出張で〇〇円をお願いします」と経理担当者のもとへ足を運び、手渡しでやり取りをするのが日常の風景でした。

そうした中で、3代目となる新社長が就任されたことが大きな転機になったそうですね。

徳永:現社長は長年、東京の企業に勤務しておりました。2022年秋に戻られて、2023年4月に就任されました。長く外資系のメーカーで営業やマーケティングをされていたため、日本企業での勤務経験は初めてとなり、地方の工業系企業で残るアナログな業務プロセスや膨大な紙の山に触れ、非常に新鮮なギャップを感じられたのではないかと思います。

外資系企業から戻られ、日本企業も初めてだった社長の就任に伴い、システムの刷新へどのように動き出したのでしょうか。

徳永:ちょうど社長の就任時期と重なる形で、40年近く勤めてくれた経理担当者の退職が決まりました。この膨大な紙台帳の運用をそのまま次の担当者へ引き継ぐのは非常に困難です。『時代に合わせたシステムを入れよう』という方針が固まり、会計システムの導入調査がはじまり、最終的にfreee導入へ動き出すきっかけとなりました。

第38回日経ニューオフィス賞「四国ニューオフィス奨励賞」を受賞したオフィス②

手作業のくり返しから抜け出す。未経験者が挑んだ会計・労務の同時スタート

高橋様はまさにfreeeのテスト運用が始まった直後の2024年5月に入社されたとお聞きしました。

高橋 有加様(以下、高橋):はい。入社する前までは金融機関や組合での入出金や振込業務、給与計算等の勤務経験はありましたが、一般的な民間企業の経理実務はほぼ未経験の状態でした。また、入社した時期は、旧体制からの紙台帳での運用とfreeeへの移行に向けたテスト運用が重なるタイミングで、正直不安も大きかったです。

まさに過渡期のタイミングだったのですね。入社当時、現場ではどのような作業が行われていたのでしょうか。

高橋:当時は紙の振替伝票とfreeeを併用している状態でした。紙の伝票に手作業で起票しつつ、同じ数字をシステムにも入力する形で、一つの取引に対して二重・三重の手間がかかっていたんです。

手書き伝票とシステムの二重管理は、精神的にも相当な負担だったのではないでしょうか。

高橋:そうですね。1つの振込や入金が発生するたびに紙の伝票を作り、さらにそれを確認して打ち直すという作業のくり返しでした。手作業が増えれば計算ミスや転記ミスのリスクも上がりますし、「間違えられない」というプレッシャーを常に感じていました。

そうした並行運用の時期を経て本格稼働へ移行し、業務はどのように変わりましたか?

高橋:本格稼働後は、事前に入れておいた入金予定データと実際の入金データを画面上で照合できるようになりました。これまで紙で1枚ずつ手書きしていた伝票作成の時間は削減され、消込もワンクリックで完了。業務が大きく変わったと実感しています。

経理未経験でのご入社とのことですが、freeeの操作にはスムーズに慣れることができたのでしょうか。

高橋:freee会計は入力画面の下に仕訳プレビューがリアルタイムに表示されます。「こう入力すると、この仕訳になるんだ」と画面で直感的に確認できたので、経験が浅い私でも会計の構造を理解しながら業務を覚えていくことができました。

システムの直感的な分かりやすさが、早いキャッチアップにつながったのですね。

徳永:従来の紙や手書き中心の運用だったら、引き継ぐだけでも膨大な時間がかかったはずです。画面を見ながら視覚的に判断し作業できたことが、古い運用から新しいデジタル運用への切り替えを止めることなく進めることに繋がりました。もちろん、高橋の頑張りがあってからこそのスムーズな移行であったと思います。紙台帳との並行作業もあり、大変重たい作業を新人でありながら前向きに取り組み、対応してくれました。

第38回日経ニューオフィス賞「四国ニューオフィス奨励賞」を受賞したオフィス③

給料計算が「2〜3日」から「半日」へ。ワンクリックで消込が終わる心地よさ

会計だけでなく、freee人事労務も合わせて導入されたとお聞きしました。導入前はどのような労務・給与計算の運用だったのでしょうか。

高橋:以前は本社以外の拠点も含め、全員の打刻を紙のタイムカードで管理していました。各拠点の担当者が集計・チェックした紙のタイムカードを本社に集め、そこから給与ソフトへ手入力で数字を打ち込む流れでした。

紙のタイムカードを集めて手入力する作業は、確認作業も含めてかなり時間がかかりますよね。

高橋:はい。打刻漏れや残業の確認作業なども含めると、給与計算が終わるまでに毎月2〜3日はかかっていました。さらに給与支給日の前日までに、ネットバンキングを立ち上げ、約40名分の振込額を1人ずつ手入力で送金処理をしていたので、金額の転記ミスや誤送信の不安と常に隣り合わせでした。

約40名分の振込を1人ずつ手入力するのは緊張感がありますね。freee人事労務の導入で、その作業はどのように変わったのでしょうか。

高橋:freee人事労務になってからは、勤怠データがそのままシステム上で集計されるため、社員がPC上で打刻を実施してくれてデータが揃えば、給与計算自体はわずか半日で完了するようになりました。振込も連携データを使って一括で処理できるので、大幅な時間短縮と安心感につながり、負荷が劇的に減りました。

2〜3日かかっていた作業が半日に縮小されたのは劇的な変化ですね。現場の社員の方々はスマホやPCでの打刻・申請にすぐ慣れましたか?

高橋:導入初期は打刻操作を忘れることもありましたが、非常にシンプルな操作なので、一度使い方を説明すればみなさんすぐにスムーズに使えるようになりました。今では社内全体で当たり前の運用として定着しています。

バックオフィスの効率化がしっかりと達成されたわけですね。労務業務の負担軽減は、会社全体の動きにも影響を与えていますか?

徳永:非常に大きいですね。労務や給与計算にかかっていた膨大な手作業と確認コストが削られたことで、バックオフィスチームがより付加価値の高い業務や管理体制の強化に時間を割けるようになりました。

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遅れて届く「過去の数字」からリアルタイムな部門別PLへ

バックオフィスの基盤が整ったことで、経営数値の捉え方や活用方法にはどのような変化があったのでしょうか。

徳永:これまでは決算や月次処理を税理士の先生にお任せしていたため、数字確定までには一定の遅れが生じていました。常にタイムラグがある中で、経営判断をせざる得ない状況があったと思います。

一定の遅れがある数字では、タイムリーな状況把握や迅速な手立てを打つのが難しくなりますね。

徳永:そうですね。現社長は「まずは計画がないと何も始まらない」といったお考えを持った方です。過去の数字を振り返ることも大切だが、未来の計画をしっかり見える化し、リアルタイムに経営判断できる体制へとシフトしたい」という強い想いを持っていました。そこで管理会計と財務会計を切り分け、freee会計を活用した月次決算の内製化を進め、部門別PLをリアルタイムに組み立てて確認できる体制を整えました。

社内で部門別PLを自前で出せるようになったことで、具体的な分析や議論はどのように変わりましたか?

高橋:タグ機能を活用することで、部門ごとの利益や経費の動きをリアルタイムで追えるようになりました。毎月の定例会では、freee会計から抽出した数字をもとに経営メンバーへPLや資金繰り、予算進捗状況をスムーズに共有できています。

さらに今後は、独自のファイナンスレポート(経営レポート)の作成にも取り組まれているそうですね。

徳永:はい。高橋含めたファイナンスメンバーで、部門別PLを基に各部門の販売計画や注目科目の予算進捗、そのほか定量的な指標を組み込んだ「ファイナンスレポート」の構築を進めています。単なる会計数値にとどまらず、各部門においても有効な指標となり、多角的な視点から経営状況を可視化できることを目指しています。

freeeの導入が、まさに会社が次のステージへ進むための経営基盤になっているわけですね。

徳永:以前は、「計画や予算を細かく追う」という概念すら社内にはほとんどありませんでした。freeeで数字をリアルタイムに可視化できたことで、過去の慣習に甘んじることなく高い目標に向かって全社一丸で取り組む土台ができたのではないかと思います。これからも、時代に即したデジタル経営の実現に挑み続けていきます。

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