徹底した見える化・平準化・標準化で、残業時間50%削減

荒井会計事務所 経営企画室 室長 クラウド・イニシャルチーム リード 豊田啓彰氏

課題
バックオフィスの体制構築・効率化

中・大規模の会計事務所では「残業や休日出勤が多い」「業務の引き継ぎがうまくいかない」といった悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。こうした悩みが生まれる原因のひとつに、業務の属人化が考えられます。
群馬県前橋市の荒井会計事務所では、業務の属人化を極力なくすためにfreeeを導入。業務の見える化・平準化・標準化を徹底した結果、2年間で残業時間50%減。さらに3年間で売上高150%を達成するまでに成長しました。一連の施策を推進した経営企画室室長の豊田啓彰さんに、結果を出す秘訣を伺いました。

事業について

「時代は変わるのに会計業界は従来のまま」との課題意識が一致

私は現在、経営企画室室長としてバックオフィスの業務効率化コンサルティングやクラウド活用推進、事務所の戦略策定、他士業法人設立などを担当しています。


入職前には、一般企業で新店立ち上げや既存店立て直しに携わったり、自ら事業会社を立ち上げて全国を駆け巡ったりしました。改めてキャリアを振り返ると、一貫して仕組みをつくる現場にいますね。私自身、この領域にやりがいを感じているのだと思います。つくった仕組みを実際に運用する人の育成も重要であることも、当時の経験から学びました。


会計業界にキャリアチェンジした理由は2つあります。一つ目は結婚。結婚を機に、全国を駆け巡る働き方から地元に根ざした働き方に変えようと考えていました。もう一つは、仕事を通して未来を作りたいという思いです。この思いを実現するには、積み重ねた経験を生かして地元経済を支える企業の発展に寄与できる場所に移る必要がありました。


入職の決め手は、所長との会話です。「時代は変化しているのに会計業界はなかなか変わらない」との課題認識を互いに持っていました。そして、それぞれの強みを生かし合えばこの課題を改善できると意見が合ったのです。

課題

属人化している業務をいかにしてクラウドで効率化するか

実際に事務所の業務を見てみると、課題がより具体的に見えてきます。ツールは確かにそろばんや電卓からクラウドに変わっているのですが、業務フローは従来通りなので、根本的な課題は残ったままでした。


特に顕著だった課題は、業務の属人化です。詳しく調べると、特定のスタッフにしかできない暗黙知かつローテクノロジーな業務が想像以上に多く見つかりました。スタッフ一人当たりの業務の狭さや偏り、業務量のばらつき、時間外労働の発生といった課題も、業務の属人化が起因していました。


私は、属人化した業務を見える化・標準化・平準化する必要があると考えました。そのためのツールとして、すでに事務所で導入していたのに使いこなせていなかったfreeeの本格活用が欠かせないと思ったのです。実は私自身が事業会社でノマドワーカーをしていた頃にfreeeを使っていたので、操作などについても慣れていました。


ただ、仕組みが整っていない当時の環境で、入所間もない私がいきなり積極的に活用推進するわけにもいきません。まずは既存スタッフとの人間関係構築から始めて、徐々にクラウドを活用した新しい仕組みや価値観を波及するように努めました。このプロセスを通して、今に合わない固定概念や形骸化した無駄な業務を見つけて、取捨選択していったのです。


freeeを本格活用して間もない頃の現場では、慣れずに戸惑いを感じる場面も多くあったかもしれません。でも最近は、freeeの概念を理解して活用できるスタッフを育成してクラウド専門チームをつくれるまでに、クラウド特化型のスタッフが揃ってきています。


荒井会計事務所 豊田啓彰氏

効果

3年で売上高150%達成。freeeユーザーの増加も後押しに

freeeを本格導入してから3年弱で、売上高150%を達成しました。主な要因は「客数増加」「客単価アップ」「価格標準化・適正化」にあると考えています。


まず、ここ数年でfreeeのユーザー層が広がっています。この環境変化は、当社にとっては絶対母数が増えて追い風になっていると捉えています。


客単価アップは、従来の価格競争型ビジネスモデルから付加価値提供型ビジネスモデルにシフトチェンジすることで実現できます。後者になれば、こちらは価格に見合った工数を提示できますし、顧客も必要なサービスを必要な分だけ選べるという納得感を持っていただきやすいのではないでしょうか。


価格標準化・適正化も効果的でした。業務責任範囲を明確にするために、顧問料ビジネスを解体して、顧客が自分に合うオプションを選ぶ料金体系にしています。


脱属人化できたおかげで、長時間労働の課題も改善できています。時間外労働時間は2年で50%削減しましたし、直近では年間休日数を129日にできました。


一般的にこの業界では繁閑の差が大きく、人的生産性が十分発揮できないとされています。当事務所では、繁忙期の業務を他の時期にずらしたり、業務マネージャーを中心としたチーム体制をつくったりして、人的生産性の向上に努めています。こうした取り組みを推進するツールとして、freeeは非常に有効だと思います。

今後の展望

付加価値提供型の会計事務所をつくるため、スタッフ教育に注力

会計事務所では、価格競争型ビジネスモデルか付加価値提供型ビジネスモデルかの二極化になっていると思います。当事務所ではfreeeを活用した業務改革を進めたので、他の会計事務所にはない付加価値で差別化できるようになりました。


具体的な施策として、業務の仕組みづくりに踏み込んだ提案ができる専門チームを立ち上げました。顧客との世間話から会計領域にとらわれない新たなチャンスを見つけて、ビジネスを展開しています。チームスタッフそれぞれの視点から、顧客を多角的に分析してアプローチする仕組みを整えています。


付加価値提供型の組織をつくるために、スタッフ教育にも力を注いでます。
目指す方向性を考えるキャリア教育を分析的に行ったうえで、一般知識と専門的な知識を学ぶ体系をつくり、挑戦している最中です。


クラウド化によって会計ソフトの概念が変化しているので、人材に求める要素も変わりますよね。会計知識がなくても異なる強みを掛け合わせて価値を出せる人を採用し、適切な機会に適切な教育を提供する方が、今の時代には合うのではないでしょうか。スタッフの成長や発展の先に、組織全体の成長や発展があると思います。


異業種出身の私の目からは、会計業界には従弟制度的な教育がまだ多く残っているように見えました。昔と違ってキャリアチェンジが普通になっている時代ですから、異なる経験や価値観があって当たり前と考えられる組織文化ができるといいですね。


freeeは当事務所において、会計事務所の新しい価値創造を推進するうえで重要な役割を担っています。見える化・標準化・平準化を飛躍的に前進させてバックオフィスの属人化を排除し、会計業務以外の価値を付与することにもつながったと思います。



Company Profile

荒井会計事務所
群馬県前橋市天川原町1−2−18 クレストビル1F
027-221-9876


事業概要

1988年4月設立。群馬県前橋市から日本全国のスモールビジネスの経営サポート、バックオフィス(経理、会計、給与計算ほか)の課題解決を行う。早くからクラウド会計の導入サポートに取り組んでおり、クラウド会計ソフトの効果的な導入からオフィス効率化提案、電子申告代行など一貫したサポート体制が強み。遠隔サポートにも対応可能。


荒井会計事務所 豊田啓彰氏

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