食品製造業の老舗企業がfreee会計で経理業務をグループ内で標準化 ペーパーレス化と生産性向上を実現

株式会社マスヤグループ本社 執行役員CIO 神山 大輔 様
IT管理チーム 伊藤 彰紀 様

課題
エクセル・紙管理からの脱却

「おにぎりせんべい」などの米菓でおなじみの株式会社マスヤ。持株会社である株式会社マスヤグループ本社の傘下に、約10社のグループ企業があり、食品製造業のほかにもさまざまな事業を展開しています。


バックオフィスは課題を抱えていました。グループ各社はそれぞれ別の会計ソフトを使用し、業務が属人化してしまっていたため、「いざというときに助け合えない状況をリスクに感じていた」と、執行役員CIOの神山大輔さんは語ります。


そうした課題を解決するために導入されたのがfreee会計でした。導入の背景や経緯、成果について、神山さんとIT管理チームの伊藤彰紀さんに伺いました。



無駄が多かった経理業務 手間やミスを減らすためにfreee会計導入へ

ーー貴社の事業内容と、お二方のプロフィールを教えてください。

神山大輔さん(以下、神山) 私たちマスヤグループは、ロングセラー製品である「おにぎりせんべい」に代表される米菓、伊勢の地酒などの製造・販売に加え、経済成長著しい中国やアジアでの事業活動、地域社会が直面するニーズに応える高齢者ケア事業、観光立国時代に求められる伊勢志摩地域におけるリゾート施設・カフェ・ブライダル施設の運営、旅のコンシェルジュとなる観光事業など、時代の流れに即した新しい事業にも積極的に取り組んでおります。


私たちは社員の仕事の充実や地域貢献が盛り込まれた「経営理念」「社是」「社訓」「行動指針」に基づいて、日々お客様や地域の方々、従業員の満足のために努力を重ねております。


私はマスヤグループ本社の執行役員で、グループ会社全体のシステムを統括するCIOを務めています。もともと三重県出身で、2019年にUターン転職してきました。


伊藤彰紀さん(以下、伊藤) 私はIT管理チームに所属しております。メインの業務は、株式会社マスヤのシステム担当ですが、グループ会社のサポートもしています。



ーーfreee会計導入前、バックオフィスにはどんな課題がありましたか?

神山 業務に無駄が多かったです。グループ各社が別々にオンプレミスの会計ソフトを使っていたり、経理業務をアウトソーシングしていたりして連携が取れていない分、無駄が生じてしまっていました。また、全体的に紙を印刷することが多い点も気になっていたんです。


伊藤 以前は、支払依頼や経費精算をエクセルに入力し、それらを紙で出力して、上長に押印してもらった後に、経理へ提出していました。マスヤの一社だけでも支払いに関する書類は、月に100枚以上印刷されてました。


また、現場記入者がExcel伝票に入力した後、経理担当者がその伝票をもとに経理システムへ入力をするのですが、内容としては同じものなので、1度の入力で済むようにしたいと考えていました。処理した書類の保管も含めて、物理的な作業の手間が多くあり、「なんとかしたい」と思っていましたね。


神山 バックオフィスの立場から会社に貢献できるのは、売上ではなく、生産性を高めて利益を高めること。そこで私が入社してからは、Slackの導入なども行い、DXを推進してきました。


例えば、オンプレミスの会計ソフトは、テレワークをしている社員が外部から操作することが難しいでしょう。それをクラウドに変えれば、多様な働き方に対応でき、生産性を高めて業務を行うことができます。


また、BCP(事業継続計画)の観点として、各社に経理担当者が1人ずついますが、もしも誰かが急に業務にあたれない状況になると、代わりにできる人がいない状態で、いざというときに助け合えないことをリスクに感じていたんです。


さらに、このような状況だと、従来の経理業務ではデータの保守を行う余裕が十分ではありませんでした。トラブルが起こった際に、重要なデータを復旧できない可能性があり、非常に不安です。各社とも同じ会計ソフトを使い連携していれば、保守まで手が回り、グループ内で助け合うことができます。



オンプレミス型の“カスタマイズ地獄”を避けるためのクラウド導入

ーーfreee会計を選んだ理由は何でしたか?

神山 システムの使いやすさが決め手でした。


実は、マスヤでの導入を決める前から、グループ会社の伊勢志摩ツーリズムが先行して導入していました。
もともと経理業務はアウトソーシングしていましたが、内製化を目指して導入したんです。
導入時には私もサポートとして関わっており、ITが得意でなくとも業務知識があれば、導入を進められることが確認できました。


また、freeeは“カスタマイズ地獄”にならないことも大きな魅力でした。オンプレミス型の会計ソフトやERPでは、何か欲しい機能があれば追加で発注して開発、法律が変わったらまた追加……というように、ことあるごとにカスタマイズが生じてしまいます。


伊藤 費用もかかって、最終的にはバージョンアップに対応できなくなってしまうことも。当グループ企業のようにそこまで大きくない規模の会社では“カスタマイズ地獄”はリスクなので、最初からカスタマイズをしない方向で考えていました。その点、freeeは設定変更で対応できる範囲が広く、私たちが求めるものに合致していました。



ーーどのような流れで導入を進めましたか?

神山 2020年の夏に伊勢志摩ツーリズムで導入した後、高齢者介護事業を展開する株式会社エムケイ・コーポレーションにて2021年10月に導入を開始しました。


2社目も問題なく本稼働が進んだ時点で、グループ全体で会計ソフトを統一するのであれば、freee会計にまとめたいと考えました。


株式会社マスヤは、グループ内では規模が大きく、新たなシステムの導入に対して最も不安に思っていたのですが、2022年3月から本稼働させることができました。



ーーマスヤでの導入に不安を感じていたとのことですが、実際に苦労された点はどのようなことでしょうか?

神山 食品製造業であるマスヤは、原材料の仕入れに関して支払いのフローが特殊で、業界でよく使われている「でんさい(※)」への対応に不安を抱えていました。


当初は、経理業務における要素をできる限りfreeeに連携させることを考えていたんです。しかし実際は、銀行振り込みとfreeeの記帳は連動できていますが、でんさいの要素だけはfreeeでも対応しきれず、調整に苦労しました。


でんさい……全国銀行協会のシステム「でんさいネット」でやりとりされている、手形などの電子債権のこと


伊藤 理想を言えば、でんさいネット上で手形を受け取ったら、自動で仕訳が行われるようにしたいところでした。ただ、でんさいに関しては検討当初からfreee会計が未対応であることは営業担当の方から事前に聞いておりましたので、freeeの外でマクロを組んで、半自動で取り込めるような仕組みを構築しました。



少人数の説明会やレクチャー動画によってスムーズに浸透

ーー社員の方々にはどのようにfreeeを浸透させていきましたか?

伊藤 システムが変わって、慣れない運用に戸惑う方もいたと記憶しています。そこで、直接説明しに行くことを心がけていました。私たちの手間はかかるのですが、理解してもらうことが一番大事だと。ヒアリングをしたり、みなさんが質問しやすいように少人数で説明会を開催したりしていました。


また、レクチャー用の動画も作りました。どうしても説明会に時間が合わない人には、動画を見てもらっていましたね。今だといろんなツールが無料で使えるようになっているので、別の者が機械音にしゃべらせたりしながら、見やすい動画を提供しました。


神山 大方針はトップダウンで決めさせてもらったのですが、中身は現場のメンバーにヒアリングをしながら詰めていきました。慣れない運用のなか、以前とは違ったポイントで気をつけてもらわないといけないこともあります。でも、現場のメンバーはがんばってくれていて、総じてスムーズに導入できたと感じています。


伊藤 私たちは、メリットをなるべく伝えていましたね。「導入した後には、こういう楽なことがある」「この無駄な作業をなくせる」と。メリットを少しでも出せるように運用を見直して、快適に作業できるように心がけていました。



ーーfreeeの導入で、どのような変化がありましたか?

伊藤 1番大きいのは、ペーパーレス化が進んだ点です。マスヤだけで月に100枚以上あった支払い関係の書類を、大幅に削減できました。支払依頼の伝票はすべてなくなりましたし、まだ全ては実現できていませんが将来的には請求書も全て電子化し、ペーパーレス化を進めていきたいです。


また、過去の請求書や伝票を探しやすくなりました。これまでは紙で保管していたので、探すときにはいちいちファイルを広げて探していましたが、今はfreee上で検索するだけで済みます。業務がとてもスムーズになりましたね。


また、資料作成の手間が減りました。これまでは財務会計とは別で、担当者が管理会計用にエクセルで資料を作成する手間がありました。freeeを導入してからは、支払いのエクスポート機能などを利用することで、別の資料を作らなくて済む運用に変えることができました。



業務やシステムの標準化を目指して

ーー今後、バックオフィスをより良くするために、どんなことをしていきたいですか?

神山 グループとして、業務やシステムを標準化していくことが大事だと考えています。


業務に合わせてシステムを作るのか、システムに合わせて業務を変えるのか、考え方が分かれるところですが、きちんとシステムの選定をした上で、システムに合わせて業務を標準化させていきたいですね。そのほうが、生産性が高まり、BCP上の懸念を払拭できるからです。


これからも、会計システムや他の情報共有ツールをグループ内で共通化し、業務を標準化していきたいですね。


伊藤 マスヤでのfreee本稼働の開始から間もないので、まずは先行していた2社と同様に安定稼働できるよう、調整していきたいです。また、会計に限らず、他の領域でもペーパーレス化を進められればと思います。



ーー最後に、freeeを検討している企業へメッセージをお願いします。

伊藤 私は経理の人間ではないので、簿記の知識はありませんでした。それでも導入を進めることができたのは、freeeが素人の私にもわかりやすい会計ソフトだったからだと思います。


実際、従業員もfreeeを使っていて、最初はもちろん戸惑いもありましたが、今では問題なく使っています。わかりやすいユーザーインターフェースになっているので、前向きに検討していただくといいと思います。


神山 システムを導入することだけが答えとは限らないときもあるので、どのように判断するかが重要だと思います。当社はIT予算が豊富にあるわけではないですが、freeeを導入したことによって、いざというときにグループ内で助け合える状況を整えられつつあるので、良かったと感じています。


また導入に関して、私自身も営業出身なので、営業担当の方を見るようにしています。ちゃんと当社のことを考えてくれている営業さんかどうか、そうした担当者がサポートしてくれる製品を取り入れたいですね。
当社の規模と業種に似た事例が見当たらなかったため、不安もありましたが、営業担当の方によく話を聞いてもらっていて、レスポンスはいつも早くて、「本当に大丈夫ですかね?」と尋ねたときにも笑顔で応えてくれたので、信頼して導入を進めることができました。



(取材・執筆:遠藤光太 編集:ノオト)

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