IT資産管理とは?管理ツールの主な機能や選び方、注意点などを解説
最終更新日:2025年09月01日
IT資産管理とは、企業が保有するITに関連するあらゆる資産(パソコン、サーバー、ソフトウェアなど)を正確に把握し、その取得から導入、運用、更新、廃棄までのライフサイクル全体を通じて最適な状態を維持し、効率的に管理することです。
本記事では、IT資産管理の概要と必要性、IT資産管理ツールの主な機能、IT資産管理ツールの選び方と注意点を解説します。おすすめのIT資産管理ツール10選も紹介しますので、導入検討の際の参考にしてください。
目次
IT資産管理とは
IT資産管理とは、企業が保有するITに関連するあらゆる資産を正確に把握し、その取得から導入、運用、更新、廃棄までのライフサイクル全体を通じて最適な状態を維持し、効率的に管理することです。
ここでいう「IT資産」には、パソコンやサーバーといった物理的な機器だけではなく、OSやアプリケーションなどのソフトウェア、それらを利用するための権利であるソフトウェアライセンス、さらにはリース契約や保守契約に関する情報も含まれます。
多岐にわたるIT資産について、「いつ、誰が、どこで、何を、どのように利用しているか」という情報を一元管理し、可視化することがIT資産管理の基本です。
IT資産管理の必要性
企業の事業運営・継続において、ITシステムは不可欠な 基盤となっています。企業が保有するIT資産はテクノロジーの進化に伴って増加傾向にあり、その管理はますます複雑化しています。
このような状況下で、IT資産管理が重要視される理由を解説します。
コンプライアンスの強化
IT資産管理は、コンプライアンス強化の観点からも重要視されています。
企業が利用するソフトウェアには必ず使用許諾契約が存在しますが、IT資産管理が不十分な場合、ライセンス契約に違反してしまう可能性があります。さらに、違反に気づかないままソフトウェアを使用してしまうリスクも考えられます。
具体的には、購入したライセンス数を超えてソフトウェアをインストールしてしまったり、ライセンス契約で許可されていない形態で利用してしまったりするケースなどが想定されます。重大なライセンス違反が発覚した場合、ソフトウェアメーカーから損害賠償を請求される可能性があるほか、企業の信用失墜にもつながりかねません。
IT資産管理を適切に行うことで、保有しているライセンス数と実際に使用しているソフトウェアの数を正確に把握し、ライセンス違反を未然に防ぐことができます。
また、個人情報保護法やサイバーセキュリティ基本法などの各種法令、あるいは業界ごとのガイドラインといった遵守すべきルールに対応するためにも、自社のIT資産の状況を正確に把握しておくことは重要です。
セキュリティの向上
IT資産管理は、サイバー攻撃や内部不正による情報漏洩といったセキュリティリスクへの対策としても重要なものとされています。
管理が行き届いていないPCやソフトウェアは、セキュリティ上の脆弱性を放置することになり、マルウェア感染や不正アクセスの温床となり得ます。
具体的には、以下のような対策が必要です。
OSやソフトウェアのバージョン、適用されている修正パッチの状況を把握することで、脆弱性が存在する端末を特定し、迅速なアップデートに対応する
会社として利用が許可されていないソフトウェアや、ライセンスのない不正コピーソフトウェアの利用を検知して排除する
USBメモリなどの外部記憶媒体の使用状況を監視・制御したり、ファイル共有ソフトの利用を禁止したりすることで、内部からの情報持ち出しリスクを防ぐ
許可なく社内ネットワークに接続されたデバイス(私物PCなど)を検知し、排除することで、不正アクセスやマルウェア侵入のリスクを防ぐ
コストの最適化
IT資産管理は、IT関連コストの無駄の発見・削減にも有効です。たとえば、使用実態のないソフトウェアライセンスを把握したり、必要以上のライセンス購入を防いだりする効果があります。ソフトウェアライセンスは比較的高価なものが多く、適切な管理によって大きなコスト削減が期待できます。
部署移動や退職によって使われなくなったPCにインストールされたままのライセンスを把握し、他の必要な部署へ割り当て直す、あるいは不要なライセンス契約を解約するといった柔軟な対応が可能になります。
IT資産管理ツールの主な機能
従来は、ExcelやスプレッドシートなどでIT資産管理を行うケースが多くみられましたが、IT環境の複雑化に伴い、手作業での管理には限界があると考える企業は少なくありません。
手作業の管理では入力漏れや更新の遅れ、情報の不整合などが発生しやすくなります。正確な資産状況の把握が困難になるため、近年ではIT資産管理ツールを導入する企業が増えています。
ここでは、IT資産管理ツールの主な機能を説明します。
インベントリ情報の自動収集
IT資産管理ツールの主な機能に、インベントリ情報の自動収集があります。
これは、ネットワークに接続されているPCやサーバーから、ハードウェア情報(CPU、メモリ、HDD容量、MACアドレス、IPアドレスなど)や、ソフトウェア情報(OSの種類・バージョン、インストールされているアプリケーション名・バージョンなど)を自動的に収集し、データベースに登録する機能です。この機能により、常に最新のIT資産状況を把握できます。
インベントリ情報の収集には、エージェントと呼ばれる小型プログラムを各端末に導入する方式を採用するのが一般的です。
ソフトウェア資産管理
この機能は、収集したソフトウェアのインストール情報と、企業が保有しているソフトウェアライセンスの情報を突合し、ライセンスの過不足状況を可視化するものです。
どのソフトウェアがどの端末でいくつ利用されているか確認でき、保有ライセンスに対する過不足を把握できます。前述したライセンス違反などのリスク回避や、余剰ライセンスの把握によるコスト削減に直結する重要な機能といえるでしょう。
IT資産台帳管理
IT資産台帳管理は、収集したインベントリ情報やライセンス情 報、契約情報などを一元管理する台帳を自動生成・更新する機能です。
機器の使用者、設置場所、購入日、リース期間、保守契約情報などを紐づけて管理することで、資産の状況を正確に把握できます。必要な情報をすぐに検索・抽出できるため、手間と時間のかかる棚卸し作業の効率化にもつながります。
リース契約管理
ハードウェアのリース契約やソフトウェアの保守契約、サブスクリプション契約などの情報を登録し、契約期間や更新時期の管理も、IT資産管理ツールの主な機能です。契約満了前にアラート通知を行う機能などにより、契約更新漏れや不要な契約の自動更新を防ぐことができます。
セキュリティ管理
IT資産管理ツールには、セキュリティ強化に役立つ以下のような機能が含まれているケースも多くあります。
機能 | 詳細 |
---|---|
パッチ適用管理 | OSやソフトウェアのセキュリティパッチの適用状況を把握し、未適用の端末を特定する機能。ツールによってはパッチの自動配布・適用機能を持つものもある |
禁止ソフトウェア検出 | 業務に不要なソフトウェアや、セキュリティリスクの高いファイル共有ソ フトなどの利用を検出し、アラートを上げたり、起動を制御したりする機能 |
デバイス制御 | USBメモリやCD/DVDドライブなどの外部記憶媒体の使用を制御する機能。不正な情報の持ち出しやマルウェアの持ち込みを防げる |
操作ログ監視 | PCの操作ログを取得・監視する機能。不正操作の抑止やインシデント発生時の原因究明に役立つ |
IT資産管理ツールの選び方
IT資産管理ツール選定時にどういった点を見極めるとよいか、詳しく解説します。
管理対象と規模
導入にあたっては、管理対象と規模を明確にしましょう。
何を管理したいのか、管理対象はPCだけなのか、サーバーやスマートフォン、ネットワーク機器も含むのか、管理する台数は数十台なのか、数千台規模なのか、ソフトウェアライセンス管理はどこまで厳密に行いたいのかといったように、自社のニーズを詳しく把握します。
管理対象と規模によって必要なツールの機能や性能、価格帯が変わるため、ここをしっかり押さえておくことが重要です。
どの機能が必要か
自社の課題解決や管理目的達成のためにどの機能が必須なのか、どの機能があればより望ましいのか、リストアップしましょう。
たとえ ば、セキュリティ対策を重視するなら脆弱性管理やデバイス制御機能が必要といったように、優先度の高い機能を確認します。導入するIT資産管理ツールに多くの機能が揃っている必要はなく、自社に合った機能を過不足なく備えたツールかどうかを見極めることが大切です。
オンプレミスかクラウドか
IT資産管理ツールの導入形態には、自社内にサーバーを設置して運用する「オンプレミス型」と、インターネット経由でサービスを利用する「クラウド(SaaS)型」があります。
それぞれのメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
オンプレミス型 | ・初期導入コストが比較的高い ・自社でサーバーの運用管理を行う必要がある | ・自社のセキュリティポリシーに合わせて柔軟なカスタマイズが可能 |
クラウド型 | ・初期費用を抑えられる ・サーバーの運用管理が不要 ・機能アップデートが自動で行われる | ・月額または年額の利用料が発生する ・カスタマイズの自由度はオンプレミス型に比べて低い |
近年は、導入の手軽さからクラウド型を選択する企業が多い傾向にあります。
操作性はわかりやすいか
導入するツールの管理画面が、直感的でわかりやすいかどうか、担当者が容易に操作できるかどうかも、重要な選定ポイントです。多くの機能を備えたツールであっても、実際に使いづらくては業務改善の効果が得られません。
導入前に、無料トライアルやデモンストレーションを利用して実際の操作感を確かめるのがおすすめです。あわせて導入時の設定支援や、運用開始後の問い合わせに対するサポート体制が充実しているかも確認するとよいでしょう。
他システムとの連携は可能か
すでに自社が導入している他のシステムと連携できるかどうかを確認することも重要です。複数のシステム連携によって、より効率的で精度の高いIT資産管理を実現できる可能性があります。
コストがどれくらいかかるか
ツールの導入や運用にかかるコストについても、十分に検討しましょう。一般的には、初期費用(ライセンス購入費、構築費など)と運用費用(保守費用、クラウド利用料など)がかかります。
単純な価格比較だけでなく、必要な機能、サポート内容、将来的な拡張性など、トータルコストと得られる効果を勘案し、自社にとってコストパフォーマンスの 高いツールを選んでください。
IT資産管理ツールを選ぶ際の注意点
IT資産管理ツールを選ぶなかで、特に注意しておきたいポイントをまとめます。
導入目的を明確にする
そもそもなぜIT資産管理ツールを導入するのか、その目的を明確にしましょう。
「コンプライアンス違反のリスクを低減したい」「ソフトウェアライセンスコストを削減したい」「セキュリティインシデントを防ぎたい」「IT部門の管理工数を削減したい」など、具体的な目的を設定して、選定・導入してください。
目的が曖昧なままツールを選んでしまうと、導入したものの期待した効果が得られなかったり、不要な機能にコストをかけてしまったりする可能性があります。
機能の過不足に注意する
導入するIT資産管理ツールに、自社が必要とする機能が十分に備わっているか、使用しない機能がないか確認しましょう。
必要な機能が不足していると、導入目的を達成できない可能性が高くなります。一方、高機能なツールは魅力的ですが、自社にとって不要な機能が多く含まれている場合、操作が複雑になったり、コスト増で負担が生じたりする場合があります。
自社で洗い出した必須の機能と、あれば望ましい機能を基準に、過不足のないツールを選定するこ とが重要です。将来的な拡張性も考慮に入れつつ、現時点で必要な機能を確実に満たしているかを確認しましょう。
運用体制を整備する
高性能なツールを導入しても、それを適切に運用する担当者や体制がなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。誰が主体となってツールを運用するのか、収集された情報をどのように分析し、アクションにつなげていくのかといった運用ルールやプロセスを事前に決めておきましょう。
情報システム部門だけでなく、関連する総務や経理、法務などの部署との連携体制も構築しておくと、より効果的な運用が可能です。
スモールスタートを検討する
初めから全社的な導入をスタートさせるのが難しい場合や、導入効果をある程度見極めてから本格的に運用していきたい場合は、特定の部署や拠点、あるいは特定の機能から導入を開始するスモールスタートも有効な選択肢です。
小さな範囲で導入・運用し、効果を確認しながら段階的に対象範囲や利用機能を拡大していくことで、導入リスクを低減でき、社内での理解や協力も得やすくなります。
おすすめのIT資産管理ツール13選
ここでは、2025年時点で使用可能なIT資産管理ツールを13種類抜粋して紹介します。
ツールによって特徴が異なるため、IT資産管理に特化 したもの、内部統制機能があるもの、セキュリティ対策機能があるもの、SaaS管理機能があるものの4パターンに分けて紹介します。
IT資産管理に特化したツール
ソフト名称 | 提供会社 |
---|---|
PCアセットモニタリングサービス | Dynabook株式会社 |
Assetment Neo | 株式会社アセットメント |
内部統制機能があるIT資産管理ツール
ソフト名称 | 提供会社 |
---|---|
System Support best1 | 株式会社ディー・オー・エス |
Eye“247” Work Smart Cloud | 株式会社フーバーブレイン |
セキュリティ対策機能があるIT資産管理ツール
ソフト名称 | 提供会社 |
---|---|
LANSCOPE エンドポイントマネージャー | エムオーテックス株式会社 |
SKYSEA Client View | Sky株式会社 |
MCore | 住友電工情報システム株式会社 |
AssetView | 株式会社ハンモック |
SaaS管理機能があるIT資産管理ツール
ソフト名称 | 提供会社 |
---|---|
Bundle by freee | フリー株式会社 |
Adomina | 株式会社マネーフォワード |
Josys | ジョーシス 株式会社 |
ワスレナイ | 株式会社SHIFT |
デクセコ | 株式会社オロ |
まとめ
テクノロジーの進化に伴い、企業のIT環境が複雑化していくなかで、IT資産管理の重要性は年々高まっています。IT資産管理はコスト最適化やセキュリティ強化、コンプライアンス遵守といった観点から、企業にとって欠 かせない業務であるといえるでしょう。
ただし手作業では管理に限界があるため、自社に合ったIT資産管理ツールを活用し、効率化しながら最適な管理体制を構築してください。
よくある質問
IT資産管理とは?
IT資産管理とは、企業が保有するITに関連するあらゆる資産を正確に把握し、その取得から導入、運用、更新、廃棄までのライフサイクル全体を通じて最適な状態を維持し、効率的に管理することです。
詳しくは記事内「IT資産管理とは」をご覧ください。
IT資産管理ツールの機能は?
IT資産管理ツールの主な機能には次のようなものがあります。
インベントリ情報の自動収集
ソフトウェア資産管理
IT資産台帳管理
契約・リース管理
セキュリティ管理
詳しくは記事内「IT資産管理ツールの主な機能」をご覧ください。
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