給与計算アウトソーシングとは?
メリットや種類、サービスの選び方を解説

企業経営において、従業員の給与計算は正確かつ迅速に行わなければならない重要な業務です。しかし、その作業は毎月の勤怠集計や各種手当・控除の計算など、非常に煩雑で専門的な知識が必要になります。

このような背景から、給与計算業務を外部の専門業者に委託する「給与計算代行(アウトソーシング)」が注目を集めています。給与計算代行は、単に作業負担を軽減するだけでなく、従業員がより付加価値の高いコア業務へ集中できる環境づくりを可能にする、戦略的な選択肢です。

ここでは、給与計算代行の基本知識や、具体的なメリット、サービスの種類、そして自社に最適なサービスを選ぶためのポイントを詳しく解説します。

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給与計算代行(アウトソーシング)とは

給与計算代行(アウトソーシング)とは、毎月の給与計算や年末調整などのバックオフィス業務を外部の専門業者に委託するサービスです。
給与計算業務は、基本給や残業代、各種手当の計算、社会保険料や税金の控除、年末調整など、多岐にわたります。これらの業務は、法改正や制度変更に迅速に対応する必要があり、専門的な知識と経験が求められるのが特徴です。
給与計算代行は単に計算業務を代行するだけでなく、従業員からの給与に関する個別の問い合わせ対応や、業務工数を削減する手順書作成支援、さらに業務プロセスの改善に関するコンサルティングといった、より広範な業務効率化を支援するサービスもあります。

これらのサービス内容から給与計算代行は単なる作業委託を超え、企業のバックオフィス業務の質向上に貢献する戦略的パートナーとしての側面も持ち始めています。専門業者が持つノウハウを活用することで、企業は給与計算業務の精度向上だけでなく、関連業務全体の最適化も実現できるでしょう。

給与計算代行が注目される背景

給与計算代行は、もともと外部の専門家に業務をアウトソースする風土が根付いているアメリカで発展したサービスです。日本では、1990年代のバブル経済崩壊以降に、業務効率化の手段のひとつとして注目されるようになりました。

とくに近年では、労働力人口の減少や働き方の多様化が進み、企業には一層の業務効率化が求められています。また、企業の給与計算業務は、業務そのものの煩雑さや法改正への対応、業務の属人化など、さまざまな課題を抱えています。

給与計算業務が抱える課題

専門人材確保の課題

法改正への対応

業務の属人化

手作業によるミス

セキュリティ体制の確保

これらの課題を解決して業務効率化を図るためにも、給与計算業務のアウトソーシングの必要性が高まっているのです。

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給与計算代行を利用する3つのメリット

給与計算代行を活用することで、企業は多岐にわたるメリットを享受できます。主なメリットを3点解説します。

01業務効率化とコスト削減

給与計算業務を外部に委託することで、人事部門の担当者は煩雑な定型業務から解放され、業務の効率化が図れます。
また、アウトソーシングの活用により給与計算担当者の人件費や専門知識習得のための教育費、給与計算システムの導入・運用維持にかかるコストなどを抑制できる可能性があります 。とくに、法改正のたびに発生するソフトウェアの更新費用や、それに伴う業務フロー変更にかかるコストを抑えられるのは大きなメリットでしょう。

年末調整や賞与計算などの季節的な業務量の増加も外部委託であれば柔軟に対応でき、一時的な人員増強の必要がなくなるため人件費の最適化にもつながります。

02法令改正対応とコンプライアンス強化

給与計算代行サービスを提供する事業者は、給与計算に関連する税法や社会保険制度、労働法規など最新の法令情報を収集・分析し、適切に対応する体制を整えています。
アウトソーシングを活用することで、企業は自社で法改正への対応に追われる状況がなくなり、常に最新の法令に準拠した給与計算を継続できます。これにより、計算ミスや法令違反のリスクを大幅に軽減し、コンプライアンス体制を強化することが可能です。

03コア業務への集中と生産性向上

給与計算業務は企業にとって不可欠ですが、直接的に利益を生み出す業務ではありません。こうした定型業務をアウトソースすることで、人事労務の担当者をはじめとする従業員は、自社のコア業務により多くのリソースを割くことができます。
たとえば、従業員の能力開発プログラムの策定、エンゲージメント向上施策の実施など、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。
これにより、従業員が効率よく業務を遂行できるようになり、企業全体の生産性向上が期待できます。

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給与計算代行サービスの種類

給与計算代行サービスは、委託できる業務範囲やサービス提供元の専門性によって、いくつかの種類に分類できます。自社のニーズや状況に合わせて最適なサービスを選択しましょう。

対象の業務範囲別

給与計算代行サービスは、委託する業務の範囲によって大きく異なります。

01 給与計算のみの代行 毎月の給与計算など基本的な給与計算業務の代行サービス 02 給与関連業務の代行 年末調整、社会保険料の計算など給与関連業務を幅広く委託できるサービス 03 人事労務定型業務の包括代行 入退社・異動手続きなど人事労務に関わる業務を包括的に委託できるサービス 04 従業員対応を含む代行 従業員からの給与に関する問い合わせを委託できるサービス

01給与計算のみの代行

月々の給与計算や給与明細の発行など、基本的な給与計算業務を委託するサービスです。給与明細の作成・配布、振込手続きなどは自社で行い、計算の複雑な部分だけを委託先に任せたい場合に適しています。
既に社内に一定の管理体制があり、計算の正確性や専門性をピンポイントで補強したい企業に向いている形式です。

02給与関連業務の代行

給与計算だけでなく、給与明細の作成・封入・発送(またはWeb明細の発行)、給与振込用データの作成、源泉所得税や住民税の納付手続き代行など、給与計算に関連する一連の事務作業を委託する形態です。
計算業務に加えて周辺業務からも解放されるため、社内担当者の負担をより広範囲に軽減できます。

03人事労務定型業務の包括代行

月次の給与計算・関連業務に加え、入退社手続きや、身上異動手続き、各種申請代行など、年間を通じて発生する人事労務関連の定型業務を包括的にカバーするサービスです。
「フルサポート型」とも呼ばれ、人事労務部門のノンコア業務の大部分を外部に委託したい場合に適しています。バックオフィス業務全体を効率化し、社内リソースを戦略的な人事業務に大きくシフトさせることが可能になります。

04従業員対応を含む代行

給与明細の発行などの代行に加え、従業員からの給与や控除に関する問い合わせ対応までを委託する形態です。専門知識を持つスタッフが直接窓口対応をするため、人事担当者が個別の問い合わせに時間を取られることがなくなり、業務の中断を防ぐことができます。また、従業員にとっても専門家から迅速かつ的確な回答を得られるメリットがあります。

とくに重要なのは、従業員対応が含まれるかどうかによって、現場の工数負荷が大きく変わるという点です。入退社が多い時期や、入園・入学のための在職証明書の発行といった書類対応が一時的に集中するタイミングでは、担当者が急な業務に追われるケースが少なくありません。こうした突発的な対応による負荷を避けるためにも、従業員対応まで含めた代行サービスを選ぶことが、安定した業務運用の鍵となります。

委託先の種類別

給与計算代行のサービス事業者には、それぞれ専門分野や特徴が異なるいくつかのタイプがあります。それぞれの特徴やメリットを理解し、自社に適したサービス提供元を選ぶことが重要です。

SaaS型給与計算代行サービス

クラウドベースの給与計算ソフトウェア(SaaS)を活用する形態のサービスです。Web給与明細の発行や、勤怠管理システムとの連携など、ITを活用した効率化を図りたい企業に適しています。

依頼企業自身がSaaSを導入・運用するケースと、サービス事業者がそのシステムを使って給与計算業務を代行するケースがあり、比較的低コストで導入・運用できる点がメリットです。また、給与振込まで一括して依頼できるケースが多く、振込業務の手間を削減できる点にも強みを持ちます。

社会保険労務士事務所

社会保険労務士は、労働関連法規や社会保険制度の専門家です。

社会保険労務士事務所へのアウトソーシングでは、給与計算業務に加え、社会保険・労働保険の手続き代行や労務相談など、人事労務全般に関する専門的なサポートが期待できます。とくに、複雑な労働条件や法改正への厳密な対応が求められる企業や、コンプライアンス遵守を重視する企業に適しています。

ただし、年末調整業務は税理士の対応業務となるため、社会保険労務士事務所に依頼する場合は、年末調整については別途税理士に依頼するか、提携している税理士を紹介してもらう形になる可能性があります。

税理士事務所

税務の専門家である税理士や会計事務所も、顧問契約の一環として給与計算代行を提供しているケースがあります。

税理士事務所へのアウトソーシングにおいては、年末調整や源泉徴収票の作成などの税務関連業務まで一括して依頼できる点が強みです。日頃から税務顧問を依頼している税理士であれば、コミュニケーションもスムーズで、安心して任せられるでしょう。

ただし、社会保険労務士と比較すると、労働法規全般に関する専門知識や労務相談への対応力は限定的である可能性があります。

アウトソーシング専門会社

給与計算代行を専門に手がける企業や、人事・経理などのバックオフィス業務全般を請け負うBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)企業です。幅広い業務範囲に対応しており、一般的に企業の規模やニーズに応じた多様なサービスプランやオプションを展開しています。

大量のデータ処理能力や、最新のITシステムを活用した効率的なサービス提供が期待できる一方、提供されるサービスの質や専門性、セキュリティ体制については、委託先ごとに慎重な確認が必要です。

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自社に最適な給与計算代行サービスの選び方

給与計算代行サービスを導入する際には、いくつかの重要なポイントを比較検討し、自社の状況やニーズに最も合致したサービスを選択する必要があります。

委託したい業務範囲を明確にする

まずは、自社がどの業務をどこまで委託したいのか、その範囲を明確に定義することが不可欠です。「毎月の給与計算のみ委託」「年末調整や社会保険手続きも含む委託」など業務範囲によって、選ぶべきサービスや委託先は大きく変わります。

また、特殊な手当の計算、変形労働時間制への対応、海外勤務者の給与計算といった、自社特有の要件がある場合は、それらに対応可能かどうかも事前に確認しましょう。

料金体系とサービス内容のバランスを見極める

料金体系はサービス事業者によって異なります。基本料金だけでなく、従業員一人あたりの単価や、オプションサービスの費用、初期費用などを詳細に確認し、自社の予算と照らし合わせることが重要です。

提供されるサービスの質、業務範囲の広さ、サポート体制などを総合的に比較して優れたサービスを見極めることが、長期的なコストパフォーマンスを高める鍵となります。

データ移行の容易性と給与検算機能の有無を確認する

アウトソーシングを導入する際には、「既存システムからのデータ移行作業がスムーズに行えるか」「移行作業のサポート体制があるか」を確認しましょう。サービス事業者のサポート体制に加えて、そのプロセスや費用、期間について確認することで業務の透明性が確保され、トラブルを未然に回避できます。

また、給与計算を確定する前に結果を確認・検証できる仕組み(給与検算機能)が整っているかどうかも重要なポイントです。サービス事業者や提供されるシステムに給与検算機能があれば、給与計算のミスや抜け漏れを早期に発見でき、より正確な給与支払いを実現できます。

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freeeが提供する
給与計算代行サービス

freee人事労務アウトソース

freeeが提供する「freee人事労務アウトソース」は、当社で開発・提供するクラウド型ソフトウェア「freee人事労務」を活用した代行サービスです。
委託可能な業務範囲は広く、月次の給与計算や賞与計算をはじめ、社会保険関連の手続き、従業員の入退社手続き、身上変更(住所変更など)、年末調整業務、さらに従業員からの給与に関する問い合わせ対応までを包括的にサポートします。

また、ユーザーアカウント数に応じて課金されるID課金体系を採用しているため、定型業務を最大限に削減しながらコストも抑えられ、長期的に安定した人事労務体制の構築を実現できます。

サービス概要を見る

サービスの強み

※1 TRUSTe認証:個人情報の保護を目的とした、第三者機関による認証制度
※2 プライバシーマーク:個人情報保護マネジメントシステム(PMS)が日本産業規格(JIS Q 15001)に基づいていると承認された場合に付与されるマーク
※3 ISO/IEC27001:情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格

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