毎月4000件以上の手入力を自動化。現場目線のディライトが、事業拡大後もスリムな管理体制をいかに実現したか

ディライト株式会社 経営管理グループ ゼネラルマネージャー 松野 創 氏/経理担当 本出絵里奈 氏

課題
口座やカードの明細を自動同期

ブライダル・飲食・写真という3分野の事業を主軸に、コスメブランドやスイーツの商品開発など多角的な事業を展開するディライト株式会社。2019年からはホテル事業も始動し、事業拡大を加速させています。


順調な事業拡大に伴い、本社を構える奈良県のほかに大阪、東京、福岡と事業所を増設。活動拠点が広がった一方で、人員増加によって紙の稟議・経費申請、現金手渡しの精算が課題になっていました。また、取引件数が増えて経理処理の煩雑化にも頭を悩ませていたそう。freeeはそのソリューションとして導入いただき、バックオフィス業務の品質向上、経理・財務のスピードアップに寄与しています。ディライト株式会社でバックオフィス業務を担う経営管理グループ ゼネラルマネージャー 松野 創氏、経理担当 本出絵里奈氏に、freee導入がもたらした変革について伺いました。

顧客の価値観を変えるバリューを創出するために

――御社の事業とビジョンを教えてください。


“ディライト株式会社

ディライト株式会社 経営管理グループ ゼネラルマネージャー
松野 創 氏

松野 弊社は1950年に奈良県天理市で創業し、繊維業から事業をスタートしました。それから70年を経て社長も3代目になり、現在はブライダル事業、カフェ・レストランなどの飲食店事業、写真事業など、時代の変化に対応して事業を拡大しています。


カンパニーミッションとして「CHANGE VALUE(チェンジバリュー)」を掲げています。これは常に新しい要素を盛り込み、お客さまの価値観を変えるような新しい価値を創出していくということです。


そして、全社員が「CORE VALUE(コアバリュー)」という共通の価値観を共有しています。主体性・人間性・創造性・先見性・革新性――それら5つの価値観を持つことで、常に新たなものを取り入れ、お客さまに喜んでいただくことを目的にしているのです。


その思いはブライダルや飲食の現場に限らず、バックオフィスでも同じです。たとえ経理スタッフであっても固定概念にとらわれず、現在の仕事に常に疑問を持ち、革新を目指していかなければなりません。


ただ、これまでの経理業務では徹底しきれていなかったのも事実です。振り返れば奈良の本社オフィスで進めてきた時代の業務をそのまま踏襲していた部分もありました。しかし、事業拠点が拡大するなかで業務の品質、効率を上げていくためには、バックオフィス業務でも新たなシステムや仕組みを積極的に取り入れていかなければなりません。


現在、経理部門は5名で、ブライダルと飲食、写真スタジオ事業など事業ごとに担当を分けています。店舗数拡大によって作業が増えるなかでも、freeeの導入で経理作業も人員も大きくスリム化できました。以前は7名でしたが、現在は5名で業務をまかなえています。

バックオフィスに必要なのは「現場の目線」

――お二人はどのような業務を担当されていますか。


“ディライト株式会社

ディライト株式会社 経営管理グループ 経理担当
本出絵里奈氏

本出 私は本社経理と事業部の最終的なとりまとめを担当しています。現在はfreee導入環境の整備など運用管理が主ですね。私はウェディングプランナーとして入社しましたが、出産を機に一度退社しています。その後、育児が手離れして働きに出ようかと考えていたところ、古巣である弊社から声をかけられて経理スタッフとして復帰しました。


経理業務はまったくの未経験でしたが、社員のみんながサポートしてくれて、OJTでバックオフィス業務を学んできました。今では本社オフィスの経理グループで数字を見ながら企業としてのスケールアップを体感する毎日です。会社が新しい価値を創出するためには経理、人事労務の両面からもしっかりバックアップしなければ、という責任を強く感じています。


松野 私は経営管理部のゼネラルマネージャーと経営企画室の室長を務めてており、経理や財務、新規出店の計画など幅広い業務を管掌しています。


弊社は「働きがいのある会社ランキング」(Great Place to Work)に5年連続でランクインしており、社員のワークスタイルを考えるプロジェクトチームを立ち上げるなど、従業員満足度にも積極的にコミットしてきました。それはバックオフィス部門も同様で、何より「現場の目線」を大切にしています。本出はブライダルの現場出身ですし、私も飲食の現場から本社に移り、バックオフィス業務を管理しています。管理系の業務しか知らない人間ではなく、現場の業務を知る人間がバックオフィスを担当することで得られるものは大きいと感じています。それは、経営を支えるバックオフィスの仕組みや制度と現場視点のバランスを反映することができるためです。頭ごなしに上からやり方を押し付けるだけでは、従業員が気持ちよく働くことは難しいでしょう。


“ディライト株式会社


会社の急成長を少数精鋭の経理集団で支えるために

――freee会計、freee人事労務を導入した経緯、ご利用状況を教えてください。

松野 事業拡大がスピードアップするなか、タイムリーな経営判断をしていくためには経営数値の速やかな把握が必須でした。freee導入前は月次決算を見るのに1カ月から2カ月ほどの時間を要しており、とてもスムーズな分析ができていたとは言えません。また、事業拡大に伴う経理作業の増加も懸念事項でした。素早く数値を確認でき、経理に荷重負担を強いることなく既存の人員だけで業務が回る仕組みにできないだろうか。そのように考え、バックオフィスの業務改革とシステム刷新の検討に入りました。


さまざまなサービスを比較するなかで、会計と人事労務面を連携させ、一体として管理していく思想を持ったfreeeに着目。他社のサービスは、あくまで既存会計システムの延長線上にあるという印象でした。しかし、freeeならガラリと仕組みを変えて、少人数でバックオフィスを回すだけでなく、作業を早期化して分析に時間を割ける。業務変革後のイメージを描けたことで、2016年にfreee会計・freee人事労務の導入に踏み切りました。

ペーパーレス化とキャッシュレス化で経費精算がスムーズに。4000回もの手入力からの解放

――freee会計の導入によって変化を感じているのはどのような部分でしょうか?

本出 一番大きく変わったのは経費精算ですね。導入前は自社システムで出力した書類に上長2人が押印し、経理が受理して現金を手渡しするフローでした。これだと上長が出張などで不在なら処理が滞りますし、業務の性質上、飲食やブライダルの現場は土曜・日曜もフル稼働。週末が休日になる経理部門との間で経費精算が上手く回るのは週3日。スムーズな経費精算とは言えない状況にみんな辟易していました。


導入後は経費精算の申請はfreee上で完結できています。申請者は領収書をスマホで撮ってすぐに申請できますし、いま申請ルートのどこで止まっているかが手元で把握できます。上長も移動中に手間なく承認ができる。経理側は申請ルートを把握できますし、現金の手渡しではなく口座振込になったことで作業負担も軽減しました。


松野 現金の小口精算は飲食店や結婚式場の各店長にデビットカードを交付し、キャッシュレス化を実現しました。従来は小口の精算分を現金書留で送付していたので、大幅な効率アップです。デビットカードの利用明細をfreeeと紐づけることで、経費の明細も一括で登録できます。現場の負担は格段に減り、経理部門も金庫の現金管理から解放されました。


奈良を拠点に活動していた会社が全国に展開する上では、紙書類での申請承認・現金手渡しという仕組みから脱却する必要があったのです。freeeは現場の目線と会社の変化に絶妙にフィットしました。


“ディライト株式会社


また、経理スタッフが銀行に足を運ぶ作業を減らしたいという考えもありました。ブライダル、飲食事業を手がける私たちは店舗ごと、式場ごとに口座を持っているので、取引口座が多岐に渡ります。freee会計の導入前は銀行で口座ごとに記帳し、その記帳データを会計ソフトに手入力していました。以前7人いた経理担当が週1回、銀行に足を運んで往復1時間かかるとしても、毎週最低7時間は費やしていましたね。freeeは銀行口座やクレジットカード明細などのデータを自動で取得し仕訳登録を自動化してくれるので、今までなんて無駄な時間をかけていたんだと驚きました。

――経理の現場で感じられていることはありますか?

本出 私の実感としては、入出金データの突合がとにかく楽になりました。飲食店は仕入先の取引業者がとにかく多く、支払管理は月に1000件以上にのぼります。今までは1件につき4回入力を行っていました。まず、請求書データを支払管理用のExcelに入力し、ネットバンキングの処理に再入力。そしてその処理データを会計ソフトに打ち込み、最後に消込でもう一度入力。毎月4000回もデータを手入力していたんです。4度の入力ステップがあるということは、ミスの発生確率も4倍に。ミスがあった際は、どの工程で発生したかを探し出すだけでも一苦労でした。


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現在はfreee上で受発注システムからデータを取り込み、消込・仕訳まで一気通貫で完結、入力は0回か1回という体制になっています。手作業の煩わしさから解放されただけでなく、ヒューマンエラーのリスクも軽減できました。経理の現場では「同じ数字を2度打つな!」を合言葉にfreee導入を推し進め、画期的な効率化を実現しています。


松野 freee導入以前を振り返ると、そもそも既存の会計ソフトをフル活用できていたかも怪しいです。4度に渡る手入力に誰も疑問を持たずにこなすだけでしたから。freeeの導入は、現在の仕事に疑問を持ち、より新しいやり方を模索すること、コアバリューの「革新性」を会社としてあらためて深く考えることにつながりました。経理業務を棚卸しして、効率性と品質を深堀りする格好の機会になったのです。

300名に及ぶアルバイトスタッフの人事労務を刷新

freee人事労務を導入された効果はいかがでしょうか?

本出 freee人事労務の導入により従業員の情報管理効率の向上を実感しています。特にアルバイトスタッフにおいて大きく役立っています。弊社のスタッフは約500名ですが、そのうち約300名はアルバイトスタッフです。彼らがスマホから自分のデータにアクセスし、口座変更などの申請が簡単な操作で完結できるようになりました。これまで書類の郵送でやりとりしていたことを考えると、スタッフ・経理の双方に大きなメリットが感じられます。若い人にとってはスマホで完結できるのは大きな魅力なのではないでしょうか。


給与計算では、freeeによって個人の振込口座を3つまで登録できるのが好評です。給料を複数の口座に分割して振り込んでほしいというニーズは一定数あるからです。従来は複数回の振り込み処理で対応していましたが、freeeでは設定した按分で自動振込ができ、負担を軽減できています。


松野 freee人事労務の導入は現在、入退社などの従業員情報管理から着手し、freeeへのワンストップ移行、ペーパーレス化を進めているフェーズです。入社に関する誓約書類などの紙の書類がまだ残っており、freeeで完結してペーパーレスにするまでは業務プロセスの調整が必要です。給与明細や年末調整も一気通貫で行い、freee人事労務をフルに生かせるよう、引き続き体制を整えていければと考えています。

分析業務への注力と効率的なグループ経営管理体制の構築へ

――freeeの活用について、今後の展望をお聞かせください。

本出 freeeの活用で、今まで時間の大半を費やしていた入出金管理を効率化できたので、今後は分析業務へ時間を充て経営へフィードバックする役割を担っていきたいです。たとえば、飲食店は店舗ごとに売上や経費をまとめて収支を出していますが、その数字に給与データをかけあわせることで、さらに詳しい経営数値が出すこともfreeeでスムーズに行えるようになります。弊社ならではの仕組みをうまく調整しつつ、freeeのポテンシャルを生かしていければと思います。


そして、ディライトは私のように育児真っ最中の社員ものびのび、自分らしく働ける環境の整備に力を入れています。たとえば、オフィスにキッズスペースを設けるなど、子どもがいる親をサポートするための「ハッピーライフプロジェクト」はその一例です。freeeのおかげで煩雑な経理業務のストレスから解放され、より企業の力を高めるために時間を使えます。個人のワークライフバランスの充実にも大きく寄与するでしょう。今後、より働きやすい職場を考え、作っていく上でもfreeeが大きなアシストになるはずです。


松野 社長が求めていた月次決算の早期化については一定の評価をいただき、バックオフィス部門が少人数で回せていることも大きな成果です。業務効率化を進める様々な施策の一つとして、freeeの存在感が高まっています。


ホテル事業をはじめ、今後も事業の拡大に伴ってグループ会社も増えていきます。freeeの活用により、グループを含めて効率的に経営管理できる仕組みを整備していければと思います。各事業部やグループ会社がそれぞれのバリューを新たに創出し、伸びていく。カンパニーミッション「CHANGE VALUE」に即した体制はもう視野に入っています。


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(取材・執筆:佐々木正孝 編集:神田 匠 /ノオト)

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