軽減税率はどこまで適用される? 
税理士軍団に「ありえない商品」の税率を聞いてみた

こんにちは、ライターのヤスミノです。

2019年10月1日から消費税が10%になり、それに伴い、

軽減税率

が始まります。めちゃくちゃ簡単に説明すると「基本的には10%だけど、物によっては8%になる制度」です。

すでに世間では「わかりにくい!」と不満の声があがっているようですが、よくわからないままでは損をするかもしれません。損だけはマジで絶対したくない。

そこで今回は、税の専門家であり、freee認定アドバイザーでもある税理士さん3名にお越しいただきました。

史上最強の税理士軍団

「軽減税率」について、ケーススタディー形式で教えていただきたいと思います。

※本企画における税理士の意見は私見であり、税務当局の公式見解ではありません。詳しくは税務署にお尋ねください。

史上最強の税理士軍団プロフィール

矢部税理士
税理士法人ゆびすい」京都支店・支店長。税理士登録して10年目。もともと法学部志望だったが、商学部入学をきっかけに税理士の道に進む。税理士をしていて一番うれしかったエピソードは「君に出会えてよかった、とクライアントから感謝されたこと」。好きな税金は「相続税」。
松田税理士
松田眞理公認会計士事務所」代表。税理士登録して10年目。健康経営アドバイザーとしても活動。税理士のいいところは「クライアントの財務状況を把握していると腹を割って話してくれる」。好きな税金は、江戸時代に存在した「うさぎ税」。
清水税理士
税理士法人あすなろ」代表。税理士登録して3年目。税理士のいいところは「お客さま側に立ち、無理に利益率の高い商品を勧めなくてよいので、非常に気持ちよく仕事ができる」。好きな税金は「法人税」と「消費税」。

全5問! 軽減税率について専門家に聞いてみよう

史上最強の税理士軍団

ヤスミノ
司会を務める、ヤスミノと申します。本日は「軽減税率」にまつわる質問を5つ用意しました。

フリップボード

ヤスミノ
史上最強の税理士軍団のみなさんには、お手元にある「8%になる」「10%になる」「どちらともいえない」の3種類のフリップボードで回答していただきます。
矢部税理士
なんですか? 史上最強の税理士軍団って。
松田税理士
こういうテレビ番組、ありませんでしたっけ?
清水税理士
これって「行列のできる法律相談所」を意識してるんじゃないですか?

ヤスミノ

ヤスミノ
言いがかりはやめてください。証拠があるんですか?
矢部税理士
パクってる人の反応じゃないですか。
ヤスミノ
それでは、さっそく本題に入りたいと思います。
ヤスミノ
まず最初の質問に関連する「軽減税率」のルールから確認していきましょう。

外食とテイクアウト

ヤスミノ
通常なら食品は軽減税率の対象、つまり8%になります。しかし、外食の場合は10%になります。これを踏まえた上で、こちらの質問から参りましょう。

質問1

あるサービスエリアで販売されている、全長数百メートルもの超ロングなコッペパン。フードコート内におさまりきらず、建物の外まではみ出ている。この商品の税率はどうなる?

数百メートルある超巨大コッペパン

最強の税理士軍団

矢部税理士
そんなことってあります?
ヤスミノ
「絶対にない」と言い切れますか?
矢部税理士
この件に関しては言い切れます。
松田税理士
ええと……パンは外のテーブルなどにのっているんですか?
ヤスミノ
いえ、浮いてます。外にはテーブルや椅子はないです。

清水税理士

清水税理士
これを購入した人は、どこで食べているんですか?
ヤスミノ
外にはみ出てる部分を食べるときは外にいます。ちゃんと全部食べるので、建物内にいることもあります。
清水税理士
う~ん……。
ヤスミノ
それではみなさん、回答をお願いします。Give me a truth!(真実を教えて!)

最強税理士軍団の見解

10%になる、10%になる、8%になる

ヤスミノ
おお、さっそく見解が分かれましたね。清水さんはなぜ「8%」だと思われたんですか?

8%になる

清水税理士
これは「持ち帰り」に当てはまると考えて、8%にしました。建物の外には、テーブルや椅子がしつらえてあるわけじゃない。そうなると、レストランで食べるような、外食というほどの「贅沢」はしていないと判断しました。
ヤスミノ
なるほど。贅沢をしているか、していないかが、分かれ目になると……?
清水税理士
そうですね。私の独自の解釈ですと、「外食」は「ぜいたく品」にあたるため、10%になると考えています。今回のケースは単純に「食事」という行為であり、外食ではないと判断されるかなと……。
ヤスミノ
松田さんと矢部さんはいかがでしょうか?

10%になる

松田税理士
サービスエリアで購入したということは、「車で持ち帰る」こともありますよね。しかし、数百メートルの商品を車で持ち帰るのは不可能だと思うんですよ。道路交通法的にも。
松田税理士
つまり、サービスエリア内で食べる前提になりますね。サービスエリアでは商品が売られていて、テーブルや椅子がある。したがって、飲食のサービスの提供や、飲食のための設備の要件を満たしている、ということになります。これは10%になるのではないでしょうか。
矢部税理士
私も松田さんとほぼ同意見ですね。正直、僕がこのパンを提供する立場だったら「好きにしてくれ」って思いますが。
ヤスミノ
なるほど。ちなみに、外に飛び出たコッペパンの隣に一軒家を建てて、半身だけ乗り出して食べた場合は、税率はどちらになりますか?

一軒家からコッペパンを食べる

清水税理士

清水税理士
ちょっと待ってください。サービスエリアの敷地内に、一軒家を建てるんですか?
ヤスミノ
はい。逆にお聞きしますが、サービスエリアに一軒家を建ててはいけないんですか?
清水税理士
普通にダメだと思います。
ヤスミノ
お二人は、いかがでしょうか?

矢部税理士

矢部税理士
まあ……そのケースなら8%になるんじゃないですかね。あくまでも、家がそこにあるとしたらですけど。
松田税理士
そうですね……。一応、家で食べているので、それなら8%でしょうか。

松田税理士

松田税理士
もしかして、これからこういう質問が続くんですか?
ヤスミノ
はい。その通りです。
矢部税理士
これ以上、ヒドくならないといいのですが……。
ヤスミノ
では、次の質問に参ります。
ヤスミノ
まずは、軽減税率のルールの1つに盛り込まれている「一体資産」についておさらいしましょう。食べ物と食べ物以外のものがセットで販売されている商品を、一体資産と呼びます。「食玩」がわかりやすい例ですね。

税抜1万円以下で、食品の割合が3分の2以上占めるものは8%

ヤスミノ
「税抜1万円以下」「食品の割合が価格の3分の2以上を占める」この2つの条件を満たすものであれば、食品部分も食品じゃない部分も軽減税率の対象になる、ということですね。
ヤスミノ
以上のルールを踏まえて、こちらの質問です。

質問2

耐火金庫を器として代用したタピオカドリンクがある。設定税抜価格は、金庫が2,800円、タピオカドリンクが7,000円。この商品をテイクアウトした場合、税率はどうなる?

耐火金庫入りタピオカドリンク

最強の税理士軍団

矢部税理士松田税理士清水税理士 ……。

ヤスミノ

ヤスミノ
もしかしてみなさん、「タピオカドリンク」を知らない……?
松田税理士
いえ、タピオカドリンクは知ってます。
矢部税理士
このお店はなぜ、金庫を器にしようとしたんでしょうか?
ヤスミノ
もしかして、その答えによって税率が変わってきますか?
矢部税理士
いえ、単純に疑問なので。
ヤスミノ
でも解明されていない謎って、この世にいっぱいありますよね。宇宙が誕生する前はどうなっていたのか、とか。
矢部税理士
そういう話ではない気がしますが。
ヤスミノ
それでは、回答をお願いします。Give me a truth!

最強税理士軍団の見解

どちらともいえない、どちらともいえない、10%になる

ヤスミノ
また回答が割れましたね。それでは清水さんの見解からお願いします。

10%になる

清水税理士
「耐火金庫」というところに着目しました。これを火にかけてタピオカが蒸発するほうが早いのか、金庫の耐火性が勝つのか。それを確かめるためのパーティーグッズなんだと思います。食品ではなく、そういう商品なので軽減税率対象外の10%になるのかなと。
清水税理士
それと、「構成する個々の商品の価格を内訳として提示している場合」は、一体資産とは認められない決まりです。質問文で「値段」が明かされていますよね。もし、お客さんにも個々の価格が提示されているならば、なおさら軽減税率の対象になりません。

どちらともいえない

矢部税理士
ちゃんと器として成り立つような耐火金庫だったらいいと思うんですけど、中身が漏れ出すようだったら器として成立していないので、そもそも前提である「一体資産」として認められないのではないでしょうか。
松田税理士
「耐火金庫が2,800円で買えるのか」という疑問があります。試しにネットで検索してみたのですが、タピオカドリンクが7,000円分も入るほどの大きな金庫は、2,800円では買えません。
松田税理士
ということは、この2,800円は妥当な金額ではない。タピオカドリンクも金庫も、合理的な金額であることが求められます。一体資産ではなく、それぞれ別のものとして扱う必要が出てくると思います。金庫にかかる税率が10%、タピオカドリンクは8%になるのではないでしょうか。
ヤスミノ
なるほど……みなさん……

ヤスミノ

ヤスミノ
すごく真面目ですね。
矢部税理士
嫌な言い方ですね。
ヤスミノ
では次の質問に参りましょう。まずはこちらをご覧ください。

魚と家畜

ヤスミノ
食用の動物に関するルールです。食用の魚は生きたままでも軽減税率が適用されます。しかし、食用の牛・豚・鳥などの生きた家畜は、軽減税率の対象になりません。
ヤスミノ
これを踏まえたうえで、質問はこちらです。

質問3

牛魚(ぎゅうぎょ)は、上半身が牛、下半身が魚の生き物。牛部分も魚部分も食用に適している。生きた牛魚を購入する場合の税率は?

牛魚

ヤスミノ

松田税理士

松田税理士
牛魚……?
ヤスミノ
はい、牛魚です。鵺(ぬえ)だって存在するので、全然おかしくはないですよね。
松田税理士
鵺は存在しません。
ヤスミノ
それでは参りましょう。Give me a truth!

最強税理士軍団の見解

10%になる、10%になる、10%になる

松田税理士
初めて回答がそろいましたね!
ヤスミノ
それでは、みなさんの見解をお聞かせください。

10%になる

清水税理士
めちゃくちゃ珍しい生き物なので、普通はこれ、食べないですよね。展示したほうがいいと思われます。経済的合理性から10%になると判断しました。
矢部税理士
魚の税率が8%で、牛が10%なのは、おそらく「そのままの状態で、持ち帰りが可能かどうか」で決めているのではないでしょうか。それを前提に考えると、おそらく牛魚は大きすぎて持ち帰れません。なので「食用」には分類されないのではないかと。
松田税理士
生きた牛・豚・鳥などは解体が必要で、その場で調理が困難です。そのため「食用」にみなされず10%になっているのだと思います。食用の魚は生きている場合でも、そこまで調理が困難ではないので、8%なのではないかと。牛魚をすぐ調理できるかと考えると、かなりハードルが高い。つまり牛・豚・鳥と同様に、10%になるのではないでしょうか。
ヤスミノ
なるほど、では次の場合はいかがでしょうか?

質問4

牛と魚と人の特性をあわせ持つ、牛魚人(ぎゅうぎょじん)。生きた牛魚人を購入する場合の税率は?

牛魚人

ヤスミノ

矢部税理士

矢部税理士
税理士を10年やってますけど、キメラ(合成獣)の税率を聞かれたのは初めてです。
松田税理士
だんだんわからなくなってきたんですが、これは我々の倫理感を問われているわけではないですよね?
ヤスミノ
はい。軽減税率の話をしています。
清水税理士
この生物は食べられるんですか?
ヤスミノ
もちろん食べられます。あと、どこにでもいて、ありふれた生き物です。
清水税理士
えっ!? ありふれてる? だとしたら、牛魚の場合とは回答が変わりますね。

清水税理士

清水税理士
「どちらともいえない」にします。
ヤスミノ
おお! キメラ税率が適応されるんですか?
清水税理士
いえ、そんな税率はありません。

どちらともいえない

清水税理士
一応、魚の側面も持ち合わせていますし、これを食用として販売するかどうかが判断の分かれ目になるのではないでしょうか。魚と判断されれば8%、魚ではなく「希少生物」と判断されれば10%。それぞれで税率が変わるかもしれません。

10%になる

矢部税理士
牛魚のときと同じ理由で、牛魚人も「持ち帰り」ができないので、10%です。
松田税理士
牛魚と同様、大きさからして、その場での調理はできないと思います。また、人の顔をしているので、調理における心理的なハードルも高くなります。食用とみなすのは難しいのではないでしょうか。

ヤスミノ

ヤスミノ
ちょっと脱線しますが、高級な観賞魚を「食用」として販売することで軽減税率を適用させる、というズルいやり方が成立しちゃうんじゃないですか?
松田税理士
それは、あり得る話だと思います。「生きた魚であっても食用でない熱帯魚などの観賞用の魚は、軽減税率の適用対象とならない」と定められているんですが、裏を返せば「食べられれば適用対象」ということになりますし。その合理的な判断って難しいと思うんですよね。
ヤスミノ
なるほど。急に変な質問をしてしまってすみません。
松田税理士
いえ、今の質問だけが唯一まともでした。
ヤスミノ
では、最後の質問に参りましょう。
ヤスミノ
1問目で「テイクアウトは8%、外食は10%」と説明しました。テイクアウトと同様に「宅配(出前)」も軽減税率の対象になります。

宅配(出前)と外食

ヤスミノ
これを踏まえてお考えください。質問はこちらです。

質問5

大みそか、そば屋さんに母親と子ども2人が入店した。父親は数年前に事故で亡くなった上、加害者側だったので、遺族である母子は慰謝料として大きな負債をかかえていた。母は毎日働き詰め、子ども2人も高校に通いながら、家計を助けるためにアルバイトをしている。

母と子ども2人

経済的に余裕はなかったが「せめて大みそかくらいは」という気持ちで、そばを食べに来たのだ。一杯のそばでも、親子3人で分けながら食べれば、気持ちも満たされるだろう。

母と子ども2人

そばの価格は税抜600円。税率8%なら648円、10%なら660円である。親子の所持金は648円しかない。この場合の税率は?

清水税理士

矢部税理士

松田税理士

松田税理士
この話ってあれですよね。一杯の……。
ヤスミノ
オリジナルです。
ヤスミノ
では、回答をお願いします。Give me a truth!

最強税理士軍団の見解

10%になる、8%になる、8%になる

矢部税理士

矢部税理士
え……?
ヤスミノ
矢部さんだけ10%ですか。理由をお聞かせください。

10%になる

矢部税理士
外食なので10%です。
ヤスミノ
非常に明快な回答ですね。では、松田さんと清水さんの見解も教えてください。

8%になる

松田税理士
これは8%ですね。税どうこうの前に、人としての心の問題でしょう。
清水税理士
誰しもミスはあります。レジの操作を誤って「店内飲食(10%)」ではなく「出前(8%)」として扱ってしまうこともあるでしょう。今回のケースでも例に漏れず、ちょっとしたミスが起こってしまうのではないでしょうか。
ヤスミノ
矢部さん、お二人の見解を聞いていかがでしょうか?

矢部税理士

矢部税理士
外食なので10%です。

松田税理士

清水税理士

ヤスミノ
質問は以上です。ありがとうございました。
矢部税理士
何か間違ってましたか?

******

2019年10月から導入される「軽減税率」。今はまだ実感がないかもしれませんが、我々の生活と密接に関わっていくことになるでしょう。

今回は、存在しない商品や強引なシチュエーションをもとに質問を作成しましたが、あらゆる可能性を想定することは、決して無意味ではありません。

みなさまもこれを機に、軽減税率について勉強してみてはいかがでしょうか。

参考資料:国税庁HP「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)
参考テレビ番組:日本テレビ「行列のできる法律相談所」

企画・編集:うないいちどう(ノオト)
イラスト:マキゾウ
撮影:栃久保誠

プロフィール

ヤスミノ
ヤスミノ
ライター。税金を払う傾向にある。
Twitter ID:@yasumino_boy