power to スモールビジネス
power to スモールビジネス 新型コロナ感染拡大による雇用危機を救うために 雇用調整助成金の支援をテクノロジーで支援

終わりが見えないコロナ禍――。

今、中小企業の事業者、個人事業主は甚大な被害を受け続けています。

「Power To スモールビジネス」では、freeeの活用による中小企業個人事業主に向けた
新型コロナ対策支援の事例をご紹介します。

雇用を守るための助成金なのに……
なぜ受給が進んでいないのか?

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、多くの企業が資金繰りや雇用の維持に悩んでいます。経営的に苦境に立つ事業者は各種の支援策をフルに活用し、会社と従業員の雇用を守っていかなければなりません。その一つが、従業員の休業手当の費用が助成される「雇用調整助成金」です。雇用者を支援する制度として従来からあるものですが、コロナ特例によって各種条件が緩和され、受給を目指す中小企業が増えています。しかし、記載項目や添付書類が多く、膨大な転記作業が必要だったり、手続きが煩雑であったりなど、単独で申請しようとする事業者の前には、高いハードルがあります。

雇用を守るための助成金なのに……なぜ受給が進んでいないのか?

そこで登場したのが、会計freee・人事労務freeeと連動して雇用調整助成金の申請を支援するサービス『MIRAIのロボ』。クラウド会計に強みを持つ荒井会計事務所が、グループのPWTコンサルティング株式会社、MIRAIの社会保険労務士法人とチームを組んでリリースしたものです。PWTコンサルティング代表取締役・豊田啓彰氏は「テクノロジーによってスモールビジネスの生産性を向上したい」という理念を掲げ、開発を主導してきました。

「私たちは会計事務所という枠組みにとらわれることなく、グループ内に社会保険労務士法人、行政書士事務所、コンサルティング会社を展開し、多角的なサポートを進めてきました。現在、苦しむ中小企業のソリューションの一つとして、雇用調整助成金が注目されています。しかし、全国の中小事業者の多くが未だに活用できていません。この現状を打破すべく、ツール開発のプロジェクトを立ち上げたのです」(豊田氏)

プロジェクトマネージャーは反野凌輔氏。日々アップデートされる制度の概要に合わせ、スピード感を持った開発を進めています。

「コロナ禍はまさに未曾有の事態で、特例措置の内容も短期間で激変しています。チームが立ち上がったのは4月上旬ですが、その時点ではここまで改変があるとは想定していませんでした。3枚だった申請書が1枚になったり、受給要件の一つの売上高の計算も直近3か月平均から直近1か月に変更になったりと、厚生労働省からの要件変更が相次いだのです。

要件の簡素化は事業者にとって喜ばしいことですが、開発側としてはキャッチアップに必死です。後から申請する方が有利になる現状もありますが、中小事業の経営は待ったなし。切迫感を持つ事業者に、いかに速くサービスを届けるか――それが私たちの最優先事項になりました」(反野氏)

低コスト・高効率・遠隔対応が可能 
RPAの活用で煩雑な受給申請をサポート

MIRAIのロボ』は、事業者がフォームに入力した情報と、会計freee・人事労務freeeとの連携によって情報を取得。雇用調整助成金申請に必要な書類の作成を支援します。

MIRAIのロボ

「スピード感を持った申請が行なえないのはなぜか? 分析を進めたところ、膨大な『作業』の量が見えてきました。その作業とは何か? それは各種書類から情報、数字を抽出して申請書類に記載する『転記作業』だったのです。この作業をテクノロジーの力で省力化すべく、私たちがグループ内で開発していたRPAの活用を考えました」(豊田氏)

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、ロボット(ソフトウェア)の活用によって定型業務を自動化するものです。『MIRAIのロボ』は、会計freee・人事労務freeeに対応。Google Apps ScriptとRPAを組み合わせて申請書類や添付資料作成に必要な情報をクラウド上から取得し、自動で申請書類を作成します。最大76%もの工数が削減できたというデータが出ています。

「データ連携の開発にはAPIが開かれていなければなりませんが、会計ソフトの中でAPIを積極的に開放しているのはfreeeだけです。私たち荒井会計グループのエンジニアもfreee APIを以前から扱っており、API連携の経験も豊富。スピード感を持ったシステム開発には、freeeが最もマッチしていたのです」(反野氏)

申請を希望する事業者にとってスピーディーで効率的な書類作成を支援するだけではなく、低コストで専門家に依頼できる点も大きな魅力。助成金の申請に際して、社労士、弁護士などの専門家に依頼すると着手金+成功報酬(10%~20%程度)の報酬が必要になります。一方、『MIRAIのロボ』は記入が簡便なフォーム、API連携、RPAの活用による自動化で工数を削減し、申請書1通あたりの報酬で低コストを実現しています。

「申請書類の作成実務とサポートは、労務の専門家で豊富な実績を持つ当グループの社労士法人が担当します。全国どこからでもアクセスできるサービスですから、これまで社労士、労務に詳しい弁護士と接点のなかった事業者の方でも、専門家のリソースを利用できるというメリットがあります。スピードとコスト、効率だけではなく、会計税務、人事労務の観点で総合的にフォローできるのが私たちの強みです」(豊田氏)

スモールビジネスの力となるために
今後もシステムを開発・提供し続ける

2020年5月にリリースされ、制度の改定に応じてブラッシュアップを続ける『MIRAIのロボ』。荒井会計事務所グループのクライアントを中心にユーザーは増えており、プロジェクトチームは確かな手応えを感じています。

「ユーザーからは、『思っていたよりはるかに簡単に手続きが進められた』『コストメリットも大きい』『社労士と付き合いがなかったが、申請にこぎつけられてホッとしている』など、多くのポジティブな反応をいただけています。私たちのクライアントにはfreeeユーザーが多いため、クラウド会計へのリテラシーも高いですが、中小企業事業者の目線に立った、わかりやすいサービスを目指した改善サイクルを回していきたいですね」(豊田氏)

「フォームへの記入にどれだけ時間を要したのかなどをアンケートに取り、より迷わず直感的に記入いただけるよう、ユーザーインターフェースも改善を続けています。また、RPAによる自動化は人力作業を可視化し、今後のビジネス環境の改善することにもつながります。ロボットは作業をスピーディーかつ効率的に進められ、ヒューマンエラーも起こりません。単純作業はロボットに任せ、スタッフは自ら考え、手を動かすべきコア業務に注力する。そんな効率的で生産性の高い環境づくりもサポートしていければと考えています」(反野氏)

『MIRAIのロボ』によって社労士や弁護士など他の士業のサポートを進めつつ、雇用調整助成金に限らない中小企業の支援も視野に入れていきたい、と豊田氏は今後を展望します。freeeとセミナーを共催するなど、パートナーシップを強固にしながらサービスを拡充させていく方針です。

「冒頭に述べた通り、テクノロジーによってスモールビジネスの生産性を向上したいという思いは、freeeの『Power To スモールビジネス』とも通底するものです。RPA、ツールによって雇用調整助成金を受給するのが最適解になるケースであれば、大いに活用していただきたいと思います。

そして、コロナ禍の影響が長期化、深刻化するようであれば、その他のソリューションも検討していかなければなりません。たとえば、中小企業や個人事業主を支援する持続化給付金も、freee APIの活用で必要な情報をほぼすべて取得できます。汎用化のあるツールを提供し、今後もスモールビジネスの発展に寄与して参ります」(豊田氏)

(文:佐々木 正孝 編集:阿部 綾奈/ノオト)

※注記・雇用調整助成金の最新情報
厚生労働省
雇用調整助成金
(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

豊田啓彰
PWTコンサルティング代表取締役。ソーシャル エンタープライズ(社会的企業)を設立後、顧問先だった荒井会計事務所に経営企画職として入社。2019年にPWT コンサルティングを設立し、代表に就任。起業時からfreeeユーザーでもあり、freee会計スペシャリスト、freee経理コンサルタントの資格も保有している。
反野凌輔
PWT コンサルティング エンジニア。大学卒業後、新卒として荒井会計事務所グループに入社し、2020年4月からPWTコンサルティングに出向。エンジニアとして各種RPAを開発し、士業、中小企業の生産性を向上するサポートに取り組む。
荒井会計事務所
1988年4月設立。freee5つ星認定アドバイザー。群馬県前橋市から日本全国のスモールビジネスの経営サポート、バックオフィス(経理、会計、給与計算ほか)の課題解決を行なっている。早くからクラウド会計の導入サポートに取り組み、クラウド会計ソフトの効果的な導入からオフィス効率化の提案、電子申告代行まで一気通貫でフォローする体制が強み。遠隔でのサポートにも対応している。