人事労務の基礎知識

平成30年度 年末調整の変更点をわかりやすく解説

平成30年度 年末調整の変更点

人事労務部門にとって一大イベントである年末調整。年末調整をスムーズにスタートさせるための第一歩は、昨年からの変更点の把握です。

本記事では、平成30年度(2018年度)の年末調整から増えた書類(マル保・マル配)や、「マル配」の対象者、書類の記載内容の変化など、平成29年度の年末調整からの変更点について解説します。

▼令和1年度(2019年度)に対応が必要な年末調整の変更点に関しては以下の記事をご参照ください。
【年末調整】2019年の変更点と2020年にむけて備えること

「マル保」:給与所得者の保険料控除申告書
「マル配」:給与所得者の配偶者控除等申告書

目次

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年末調整の変更点とそれを把握する必要性

年末調整の作業自体は、「1年間の所得に対する正確な所得税額を計算し、毎月の給与から仮で天引きしていた所得税の合計額との過不足を精算する」ということで本質的な考え方は変わりません。

(参考:年末調整のイメージ図)

しかしながら、年末調整は関連する法令等に改正が多く、毎年、計算方法や使用する書式に大小さまざまな変更点があります。昨年と同じだと思っていたら、今年はやり方が違っていて大失敗をしてしまう、ということもありますので、年末調整でつまずかないためには、変更点をしっかりと押さえておくことが重要です。

そこで、本稿では、平成29年(2017年)から平成30年(2018年)の年末調整の変更点を解説します。押さえておくべき変更点は次の3点です。

  1. 「マル保・配特」が「マル保」と「マル配」に分離
  2. 配収者控除対象の場合も、「マル配」の提出が必要に
  3. 「マル配」の記載内容が複雑になった
「マル保・配特」:給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
「マル保」:給与所得者の保険料控除申告書
「マル配」:給与所得者の配偶者控除等申告書

年末調整における「マル扶」「マル保」「マル配」とは?

本題に入る前に、ここで「マル扶」「マル保」「マル配」の年末調整における役割を確認をしておいたいと思います。

なお、補足説明になりますが、「マル保・配特」「マル保」「マル配」は、いずれも法定様式の右上に、「保・配特」「保」「配」といった漢字が丸囲みされて書かれていることに由来した略称です。なお、扶養控除等(異動)申告書は「マル扶」と呼ばれています。

書式の正式名称が長すぎるので、実務上は略称が用いられることも多いです。本稿でも、略称を用いて解説を進めることとします。

マル扶(給与所得者の扶養控除等(異動)申告書)

まず、「マル扶」ですが、これは本人の配偶者や子など、扶養親族の状況を記載するものです。詳細な説明は本稿では省略しますが、所得税の金額は扶養親族の数によって異なり、扶養家族が多いほど税額は軽減されます。その軽減を受けるために提出するのが「マル扶」です。

マル保(給与所得者の保険料控除申告書)

次に「マル保」です。本人が民間の生命保険や地震保険、あるいは途中入社で入社前に自分で国民年金や国保の保険料を支払っていた場合、その保険料額の一部または全部を所得から控除し、所得税の負担を下げることができますので、それらの申告をする書類が「マル保」ということになっています。

マル配(給与所得者の配偶者控除等申告書)

最後に「マル配」ですが、配偶者に関する所得税の控除ルールは複雑で、「マル扶」だけではすべてを把握することができません。そこで、「マル配」で配偶者の所得状況などを詳細に把握します。平成29年度までは「マル保・配特」という1枚の紙だったのですが、平成30年度からは、記載内容が増えたため「マル保」と「マル配」の2枚に分割されました。

それでは、ここまでの確認を踏まえ、平成30年度(2018年度)年末調整の3つの変更点についての具体的な解説に入っていきたいと思います。

変更点1. 「マル保・配特」が「マル保」と「マル配」に分離

年末調整に必要となる提出書類は、平成29年度までは①「マル扶」のみか、②「マル扶+マル保・配特」の2パターンでした。平成30年度からは①「マル扶」のみ、②「マル扶+マル保」、③「マル扶+マル配」、④「マル扶+マル保+マル配」の4パターンが生じます。

平成29年年度
平成29年分 給与所得者の扶養控除等(異動 )申告書(マル扶)
平成29年分 給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書(マル保・配特)

平成30年度
平成30年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(マル扶)
平成30年分 給与所得者の保険料控除申告書(マル保)
平成30年分 給与所得者の配偶者控除等申告書(マル配)

「マル扶」は独身等で被扶養者がいない人を含め、年末調整の対象となる全ての社員の提出が必要となる書類です。この点は、平成29年度も平成30年度も変更ありません。被扶養者がいない場合であっても、「いない」ことを確認するためにマル扶は独身者含め全社員が提出しなければならないこととされています。

マル扶の書式が、平成29年と平成30年でレイアウトにかなりの変化があります。しかし、レイアウトに変化があっただけで、記載内容や記載事項に変更はありませんでした。

一方で、平成29年度まで存在していた「マル保・配特」という書式は廃止となり、新たに「マル保」と「マル配」の2枚に分割されました。これは、主に平成30年度から「マル配」の記載内容のボリュームが増えためです。平成29年度までは「マル保・配特」が1枚の書式にまとまっていたのですが、平成30年度は、1枚にまとめるのを諦めたようです。

2枚に分かれたことで印刷や配布の手間は増えますが、記入欄などはスペースに余裕が出ましたので、記入がしやすくなったというメリットはあります。

変更点2. 配偶者控除対象の場合も年末調整で「マル配」の提出が必要に

まず、配偶者控除についてもう少し詳しく述べると、厳密には「配偶者控除」と「配偶者特別控除」の2種類に分かれます。配偶者控除は配偶者が年収103万円以下の配偶者に適用され、配偶者特別控除は年収103万円超201.6万円未満の配偶者に適用をされます。

※平成29年度は、配偶者控除は年収103万円以下で同じですが、配偶者特別控除は年収103万円超141万円未満の配偶者に適用でした。

平成29年度は、配偶者控除の対象者は「マル保・配特」の書式は提出不要か、あるいは保険料控除を受けたい場合は「マル保」の項目だけ記入して「配特」の項目は白紙(未記入)で、「マル保・配特」の書式を提出すれば問題ありませんでした。配偶者特別控除の対象者だけが「マル保・配特」の「配特」の部分を記入する必要があったということです。この点、法改正により、平成30年度の年末調整では、配偶者控除の対象者であれ、配偶者特別控除の対象者であれ、「マル配」の提出が必要とされることとなりました。

平成29年度平成30年度
配偶者控除不要必要
配偶者特別控除必要必要

実は「マル保・配特」が2枚に分割されたとき、「マル配特」ではなく「マル配」という名称になった理由もここにあります。配偶者特別控除の対象者だけでなく、配偶者控除の対象者も含めて書類を提出しなければならないこととなったため、新書式を作る際に「配特」の「特」の字がとれて「マル配」になりました。

したがいまして、実務上もここは要注意のポイントです。配偶者特別控除の対象者だけでなく、配偶者控除対象者にも「マル配」を配布することおよび回収することを忘れないようにしてください。

配布や回収を忘れてしまうと、後工程で年末調整の計算を行うときに、申告書の情報が無ければ計算ができず、右往左往してしまうことになります。なぜ計算でなくなるか、なのですが、平成29年度は配偶者控除の額は一律に決定されていました。しかし、平成30年度は本人の所得と配偶者の所得の両方を見ながら、複数のパターンの中から配偶者控除の額を決めなければなりませんので、「マル配」の記載内容がなければ、計算が進まなくってしまうのです。

変更点3. 「マル配」の記載内容が複雑になった

平成29年度までは、「マル保・配特」と、1枚の書式にまとまっていたが、平成30年度は「マル配」の記載内容が増えため2枚に分割されたという話は前述の通りです。ここでは、どのような記載内容が増えたのか、ということを詳しく説明したいと思います。

平成29年度は、配偶者控除の対象者は「マル扶」の簡単な記載だけで被扶養配偶者として認められていました。配偶者特別控除の対象者も、「マル保・配特」の「配特」の欄に自分の所得の額や内訳を記載することで、配偶者本人の所得に応じて、一律に配偶者当別控除の額が決定されていました。

これに対し、平成30年度は、「マル配」に、控除対象となる配偶者の所得だけでなく、社員(給与所得者)本人の所得も、所得の内訳も含めて詳細に記載しなければならなくなりました。本人の所得に応じて、所得控除の額が異なることになったためです。

「マル配」の書式にしたがって、本人の所得と配偶者の所得を記載し、最終的には、書式の下部に記載されているマトリクスに当てはめ、配偶者控除または配偶者特別控除の額がいくらになるのかを確定させるという流れです。

なお、実務上の注意点としまして、「マル配」には、本人の所得に関し、自社以外の給与所得や、自営業の事業所得なども記載しなければなりませんので、従業員が会社に隠れて副業を行っていたような場合は、平成30年度の「マル配」の書式がきっかけで発覚する可能性があります。とはいえ、仮に、副業を隠すために正確な所得を記載しなかった場合、現在はマイナンバーで個人の所得が補足しやすくなっていますので、副業の所得を正確に申告しないことは、対税務署との関係でもリスクになりますので避けるべきです。

まとめ

  1. 「マル保・配特」が「マル保」と「マル配」に分離
  2. 配収者控除対象の場合も、年末調整で「マル配」の提出が必要に
  3. 「マル配」の記載内容が複雑になった

以上が、平成30年度年末調整の主な変更点となります。今年度は書式の変更や、書式の枚数の増加など、大きな変化点がありますので、まずは年末調整の担当者の方がしっかりと変化点を理解しましょう。その上で、申告書類の回収を行う各部署の担当者にも変化点を落とし込んでいくことが、スムーズな年末調整の推進のためには必要なことです。また、複雑になった年末調整を効率的に乗り切るため、この機会にクラウド上のインターフェースで年末調整を行うシステムの導入を検討することも、人事労務部門の負担軽減につながると言えるでしょう。

執筆: 榊 裕葵(社会保険労務士)

こんにちは。ポライト社会保険労務士法人マネージング・パートナーの榊です。当社では「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念に掲げ、日々の業務に取り組んでおります。クラウドソフトやITツールを用いた労務管理の提案や運用支援にも強みを持っています。

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