公開日:2020/02/18
最終更新日:2020/02/18
2018年に制定された働き方改革関連法、戦後の労働基準法制定以来70年ぶりの大改革と呼ばれています。働き方改革の目玉の1つである時間外労働の上限規制。なぜ残業が今注目されるようになったのでしょうか。
本記事では時間外労働の上限規制が必要になった背景を詳しく説明するとともに、時間外労働の上限規制の概要についてご紹介します。
また記事の内容は動画でもご紹介しております。文字ではなく音声で聞きたいという方は下記の動画をご覧ください。
目次
残業時間が青天井の時代は終わる
長時間労働は、健康維持が困難になったり、子育てなどに当てる時間の余裕を持てなくなったり、少子化や男性の家庭参加を阻むなど様々な悪影響をもたらします。
そこでワークライフバランスを改善できるよう、働き方改革の一環として労働基準法が改正され、時間外労働の上限が法律に規定されました。
時間外労働の上限規制とは
2019年4月から時間外労働の上限が罰則付きの規定が大企業から適用されはじめました。臨時的に特別な事情がある場合にも、超えられない上限が設けられたのです。
具体的には時間外労働の上限は複数月で80時間、年720時間の残業が規制の対象となりました。この残業時間を超えた場合は、事業者に対して6ヶ月以下の懲役、又は30万円以下の罰金が課せられます。
時間外労働の上限はこれまでもありましたが、一定の条件をクリアしていれば青天井で残業が可能でした。一定の条件とは36協定と特別条項のことです。
36協定と特別条項
働き方改革関連法が制定される前までは残業を防ぐために壁が2つありました。1つ目は労働基準法、2つ目は大臣告示です。
労働基準法とは休憩時間を除き、1日8時間1週間で40時間を超えて労働させてはならないという法律です。労働基準法を破ると6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。
しかし、労働基準法は以下の条件を満たす事で残業をさせることができました。
- 1日8時間、1週40時間を超える労働に対して割増賃金を支払うということ。
- 36協定を従業員との間に結ぶ事。
36協定とは、労働基準法36条で定められた協定で、正式名称は「時間外・休日労働に関する協定届」と言います。
労働組合または従業員過半数の代表者と合意のもと、どんな条件で残業させるかということを記載し、労働基準監督署に届け出ることで成立します。
しかし36協定を結んだとしても、無制限に残業させていいというわけではありません。2つ目の大臣告示という壁が現れます。
大臣告示は、労働時間を除いた残業時間の上限を月45時間、年360時間と定めたものです。ただし、大臣告示は法律で定められたものではなく、厚生労働大臣の告示により定められたもので、懲役刑や、罰金といった罰則はなく行政指導止まりとなっていました。
しかしこの大臣告示の上限も特別条項を結ぶことで残業をさせることができました。
特別条項とは36協定のなかに付け加える条項で、臨時的に特別な事情がある場合にこの大臣告示を超えて残業することができるという仕組みです。臨時的に特別な事情とは、決算業務や、ボーナス商戦だったり、急なトラブル対応などが挙げられます。この特別条項を結ぶ事により、1ヶ月1回、最高年6回も青天井の残業が可能でした。
残業させすぎた場合の厳しい罰則
2019年4月からは大企業で、2020年4月からは中小企業でも残業に対する規制が増えます。これまで大臣告示では月45時間年360時間を超えて残業をしても、行政指導で止まっていましたが、今回の改定で無制限の残業は新しく制定された労働基準法により禁止されます。
これは特別条項を結んだとしても、残業時間は複数月80時間、年720時間を超えた場合、6ヶ月以下の懲役又は、30万円以下の罰金という大きなペナルティがつく事になります。
残業規制が厳格化された背景
残業規制が厳格化された背景には、2018年に働き方改革関連法が成立した事が大きく関与してます。
関連法とあるように、働き方を促進する様々な法律が含まれていますが、その中の主要な規制として、時間外労働の上限規制が制定されました。
働き方改革関連法は、戦後の労働基準法制定以来70年ぶりの大改革と言われていますが、なぜ改定する事になったのでしょうか。そこには不景気による人員削減と少子化による生産年齢人口の減少が大きく影響しています。
バブル崩壊後に増えた長時間労働
働き方改革関連法が成立した2018年時点、実は日本の年間総労働時間は先進7カ国中3位で、1位はアメリカでした。
90年代までは日本が1位でしたが、バブル崩壊後の日本は不景気が続き、人件費抑制のためにパートタイムの労働者を増やしたことが原因だと言われています。

パートタイムの労働者が増えたため、総労働時間は減りましたが長時間労働は突出して増えてしまいました。抑制のしわ寄せが、正社員の長時間労働という形で、跳ね返ってきたのです。

生産年齢人口の激減と労災請求件数の増加
また、少子化により生産年齢人口の推移は2020年には7341万人、2040年には5787万人、2060年には4418万人と急激な右肩下がりとなりました。この生産年齢人口の減少を補うため、正社員に長時間労働が蔓延したと言われています。

長時間労働の蔓延と生産年齢人口の激減が影響となり、鬱などの精神障害に関する労災請求件数の増加にも繋がっていると考えられています。このような負の循環を是正するために、残業規制や働き方を変えようという動きが高まりました。

まとめ
繰り返しとなりますが、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月より、この時間外労働の上限規制が適用になります。残業規制を徹底し、従業員の働き方改革はもちろん、会社として罰則にならないためにも残業状況の事前チェックと事後チェックを徹底しましょう。
<事前チェック>
残業の許可を従業員自ら上長に申請するプロセスを設け残業の抑制と妥当性を判断するなど
<事後チェック>
勤怠管理システムを用い、各従業員の残業時間を常にチェックするなど
この長時間労働の規制が、新しい働き方や、各人にとってより良い人生を考えるいい機会になるかもしれません。
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