会社設立の基礎知識

役員報酬の決め方まとめ〜役員報酬は自由に変更できない?~

最終更新日:2023/09/25

役員報酬の決め方は?5つのルール決定のポイントについて解説

役員報酬は、定款または株主総会の決議によって決められます。適切な金額に決めることで会社の法人税・個人の所得税の節税に寄与しますが、事業年度開始から3ヶ月以降は報酬額の変更はできないなど、注意が必要です。

本記事では、役員報酬の決め方として守るべき5つのルールや気をつけるべき注意点について解説します。2019年の会社法改正に伴う役員報酬との関連性についてもあわせて解説するため、参考にしてください。

目次

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役員報酬の決め方

役員報酬とは、取締役・監査役・執行役などの会社役員に対して支払われる報酬のことです。役員報酬は原則として全額損益計上でき、節税にとって大きく寄与します。

役員報酬は、定款または株主総会の決議によって定められ、会社法によって定められています。中小企業や小規模法人においては役員報酬について定款で定めていないことが多く、株主総会の決議による役員報酬の決定が一般的です。

役員報酬の金額は自由に決められますが、会社として支払う法人税と、個人として支払う所得税のバランスを上手く考えなければいけません。また、役員報酬を損金として経費算入するためには、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかで支払う必要があります。

【関連記事】
役員報酬とは? 会社設立前に知っておくべきルールや金額の決め方を解説


出典:e-Gov 法令検索

役員報酬の決定・変更時に守るべき5つのルール

役員報酬を決定・変更する際の流れや期間などについては、明確にルール化されています。守るべきルールは、主に以下の5つです。

役員報酬の決定・変更時に守るべき5つのルール

  • 役員報酬は会社設立後3ヶ月以内に決定する
  • 役員報酬の金額は毎月同額(定期同額)に
  • 役員報酬の変更可能な期間は事業年度開始から3ヶ月以内
  • 役員に賞与を支給する場合は届出が必要
  • 株主総会で決議を行う

それぞれのルールについては、以下の図にわかりやすくまとめました。


役員報酬は会社設立後3ヶ月以内に決定する

役員報酬は、会社設立後3ヶ月以内に決定しなければいけません。3ヶ月以内に決定した役員報酬は損益として計上できますが、万が一3ヶ月を越えてて決定した場合には、差額分が損金算入できなくなるため注意が必要です。

<例1>
会社設立から4ヶ月後に月額の役員報酬額を30万円から40万円に増額し、5〜12ヶ月分の役員報酬を支払った。

10万円(差額分)×8ヶ月(支払った月)=80万円
この増額分の80万円は経費計上できず、法人税が課税される。

<例2>
会社設立から4ヶ月後に月額の役員報酬がくを30万円から25万円に減額し、5〜12ヶ月分の役員報酬を支払った。

5万円(差額分)×8ヶ月(支払った月)=40万円

この減額分の40万円は経費計上できず、法人税が課税される。
※本来株主総会で決定していた総額分のうち40万円が課税対象

ただし、以下のように一部例外もあり、3ヶ月以降も役員報酬を増額・減額できる場合があります。


例外的に増額できる場合例外的に減額できる場合
職責変更によって役員の昇格があった
※増額により全体の役員報酬額が上限額を越える場合は、新たに株主総会の決議を行う必要がある。
・役員の降格があった
・役員が懲戒処分を受けた
・病気・怪我等で業務が行えなくなった
・会社の業績が悪化した

例外的な事象が発生した場合はやむを得ませんが、基本的には会社設立から3ヶ月以降に報酬額の変更がないよう、事業年度の損益を予測して適切な役員報酬額を決定しましょう。

役員報酬の金額は毎月同額(定期同額)に

役員報酬の金額は毎月同額(定期同額)であり、額面の金額と手取りの金額が同一でなければいけません。決定した毎月の役員報酬額によって、社会保険料・所得税・地方税等の税金が変わってくるため、いくらにするのか慎重に検討しましょう。

役員報酬の変更可能な期間は事業年度開始から3ヶ月以内

役員報酬は、事業年度開始または会社設立から3ヶ月以内のみ、報酬額の変更が認められています。また、変更できる回数は一度だけです。

役員報酬をいつでも変更可能としてしまうと、業績に応じて利益を操作できてしまうため、原則3ヶ月以内かつ一度しか変更が認められていません。

役員に賞与を支給する場合は届出が必要

役員にも賞与の支給をすることは認められていますが、その際は税務署にて事前確定届出給与に関する届出書の提出が必要です。届出には、以下のように期間が設けられています。

役員に賞与を支給する場合は届出が必要

  • 会社設立後2ヶ月以内
  • 事業年度開始または株主総会・取締役会決議から4ヶ月以内
  • 役員賞与について決議した株主総会から1ヶ月以内

役員賞与も当然役員報酬であるため、届出した金額より増減がある場合は差額分について損益不算入となり、経費計上させることはできません。また、万が一賞与を支払わなかった場合には、源泉徴収税が課せられる場合もあります。

これらのリスクも考慮した上で、役員賞与は確実に届出した金額を支払えるように準備しましょう。


出典:国税庁「事前確定届出給与に関する届出」

株主総会で決議を行う

役員報酬は、原則として株主総会の決議によって決められます。株主総会では役員報酬の総額のみ決定する場合が多く、それぞれの分配については取締役会や代表取締役により決定されることが一般的です。

ただし、2019年に改正された会社法にて、以下に当てはまる企業は個人別の報酬額を取締役会にて決定することが義務付けられています。

  • 監査役会設置会社(公開会社かつ大会社)であって、有価証券報告書の提出義務を負う会社
  • 監査等委員会設置会社

上記に当てはまる場合で決定の義務を守らなかった場合、その決定は無効になってしまうため注意しましょう。また。株主総会や取締役会の内容は税務調査によりチェックされる場合があるため、必ず議事録を作成し保存しておくようにしてください。

役員報酬を決めるポイントと注意点

役員報酬決定の際には、以下のポイント・注意点を留意することが重要です。

役員報酬を決めるポイントと注意点

  • 損益を予測する
  • 事業年度開始から3ヶ月以降は変更できない
  • 役員報酬の相場を理解する

役員報酬は、定額同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかに該当すれば、損金として経費算入できます。そのため、役員報酬額を上手く設定することで、節税効果を高められます。

ただし、役員報酬を多く設定すれば法人税は抑えられますが、役員個人の所得額が上がり、所得税や社会保険料を多く支払わなければいけません。適切な金額の役員報酬を支払うことが、節税するための重要なポイントです。

このように、法人に残すお金と役員報酬を適切に設定することで節税効果が期待できますので、双方の税額を考慮した上で自分に払う役員報酬を決めるようにしましょう。

【関連記事】
損金とは?費用・経費との違いから、算入・不算入の事例までわかりやすく解説

損益を予測する

役員報酬は、会社設立・事業開始年度から3ヶ月以内にその年の金額を決定しなければいけません。3ヶ月以内の変更であれば一度のみ認められていますが、よほどの理由がない限り、一度決めたものは変更しないことが得策です。

事前に会社の年間の損益について適切な予測を立て、節税効果の高い役員報酬の決定を行いましょう。事業計画の段階から利益率や経費計上できる科目の見通しを立てておくなど、早いうちからの対策がおすすめです。

事業年度開始から3ヶ月以降は変更できない

役員報酬額の変更は、事業開始年度(期首)から3ヶ月以降は変更できません。厳密には変更自体は可能ですが、それにより生まれた差額は経費計上不可となります。

役員の昇格・降格があった場合などは例外的に役員報酬額の変更ができますが、基本的には3ヶ月を越えたら金額の変更ができないものとして覚えてください。

また、役員報酬は毎月固定支払い(定期同額)と定められており、万が一高額に設定してしまい役員報酬を支払えない場合は、会社が個人に対して借金をする形になります。

その場合の払えなかった分は、支払い余力ができた時点で個人に支払われる仕組みです。

役員報酬の相場を理解する

はじめて役員報酬を取り扱う場合は、そもそもいくらの金額を決めれば良いのか一般的な相場がわからないことでしょう。同業他社と役員報酬額を比較して高すぎると税務署に判断された場合、税務署から認められないといったケースがあります。

以下は、国税庁による資本金別の平均役員報酬額の年間データです。こちらを参考にし、適正な役員報酬額を決められるようにしておきましょう。


資本金年間役員報酬額
2,000万円以下約614万5,000円
2,000万円以上約922万3,000円
5,000万円以上約826万円
1億円以上約1,043万円
10億円以上約1,603万4,000円


出典:国税庁「民間給与実態統計調査結果」

※この調査は令和3年中のものである

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2019年の会社法の法改正と役員報酬の関連

2019年の会社法改正により役員報酬額の決定について変更があり、以下に当てはまる企業は個人別の役員報酬額を取締役会にて決定する義務を負うこととなりました。

  • 監査役会設置会社(公開会社かつ大会社)であって、有価証券報告書の提出義務を負う会社
  • 監査等委員会設置会社

これらの会社が、取締役会にて個人別の役員報酬額の決定を行わなかった場合、その決定が無効になってしまうため注意が必要です。

また、役員報酬として役員に株式を発行して付与する「株式報酬制度」や「新株予約権(ストックオプション)」というものがあり、既に多くの企業が導入しています。2019年の会社法の改正により、以下のような株主総会決議事項が追加されました。

  • 当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限
  • 譲渡制限事由の概要
  • 無償取得事由の概要
  • その他募集株式の割当条件(又は、募集株式と引換えにする払込みに充てるための金銭を交付する条件(現物出資型の場合))の概要

出典:経済産業省「『攻めの経営』を促す役員報酬」

さらに、上場会社においては株式の発行を受ける取締役による払い込みが不要となり、無償発行が可能となりました。会社法に関する詳しい詳細については、以下の記事を参考にしてください。

【関連記事】
会社法とは?知っておきたい基本の条文をわかりやすく解説

まとめ

役員報酬は、バランス良く金額を決めることで、会社の法人税や個人の所得税への高い節税効果を発揮します。事前に会社の年間利益を正しく想定し、支払うべき税金や社会保険料を算出しておくと、より効果的に役員報酬額を決められるでしょう。

ただし、役員報酬は会社設立または事業開始年度より3ヶ月以内に決めなければいけなかったり、3ヶ月以降は一度も変更することができなかったりと、注意が必要なポイントがいくつかあります。

また、株主総会で決議を行った際の議事録を適切に作成・保存しておくことも、スムーズに役員報酬を決める際のポイントです。

会社運営をより円滑にするためにも、役員報酬についてしっかりと理解しておくようにしてください。

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よくある質問

役員報酬は誰が決めるのか?

役員報酬は、一般的に定款または株主総会の決議によって年間の役員報酬の総額が決定されます。個人別の役員報酬額については、取締役会や代表取締役の一任によって決まることが多いです。

ただし、2019年の会社法改正により以下に当てはまる企業は、取締役会にて個人別の役員報酬額を決めることが義務化されました。


  • 監査役会設置会社(公開会社かつ大会社)であって、有価証券報告書の提出義務を負う会社
  • 監査等委員会設置会社

上記に当てはまる会社がこれを守らない場合には、その決定が無効となります。

詳しくは記事内「役員報酬の決め方」をご覧ください。

役員報酬の妥当な金額は?

役員報酬の妥当な金額は主に業種や資本金額によって異なり、年間500万円程度の場合もあれば、2,000万円を超える場合もあります。また、従業員数やその年の売上によって異なるなど、役員報酬の金額設定に与える要因はさまざまです。

詳しくは記事内「役員報酬の相場を理解する」をご覧ください。

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