
フリーランスで課税事業者となっている場合は、消費税の納税義務が生じます。課税事業者には、インボイス制度への対応のために今年から適格請求書発行事業者となったフリーランスも該当します。
また、消費税納税のための確定申告は所得税の確定申告とは別で、課税方式にあわせて正しく消費税額を計算して必要な書類を用意しなければなりません。
本記事では、フリーランスで消費税の納税が義務となる対象者やインボイスによる影響などについて詳しく解説します。
目次
- 消費税とは
- フリーランスでも取引先に消費税の請求はできる
- フリーランスは消費税の納税が必要か
- 消費税の納税が必要なフリーランス(個人事業主)
- 消費税の納税が免除されるフリーランス(個人事業主)
- フリーランスが納税する消費税の計算方法
- 原則課税方式
- 簡易課税方式
- インボイスの軽減措置である2割特例を活用する場合
- 消費税の申告方法と必要書類
- 原則課税方式を利用している場合の申告書類
- 簡易課税方式を利用している場合の申告書類
- 2割特例を利用している場合の申告書類
- 消費税の納税期限
- フリーランスの消費税納税における注意点
- 所得税の確定申告と消費税の申告は異なる
- 取引金額が内税なのか外税なのか把握しておく
- 納税期限を過ぎてしまうとペナルティが発生する場合がある
- インボイス制度導入によるフリーランスへの影響
- まとめ
- よくある質問
消費税とは
消費税とは、広く公平に負担する義務が生じているもので、消費者が負担して事業者が納税する間接税です。フリーランスが売上として受け取る金額にも、消費税が含まれていることが一般的で、事業者として納付する必要があります。
ただし、消費税の納付が義務付けられるのは課税事業者のみで、全フリーランスに納税義務が生じているわけではありません。なお、現在は複数税率として10%と軽減税率の8%の消費税率が設けられており、消費税額はそれぞれ分けて計算しましょう。
出典:国税庁「No.6102 消費税の軽減税率制度」
消費税の対象となる取引とそうでない取引については、別記事「消費税申告のやり方とは?計算方法や申告方法について解説」をあわせてご確認ください。
フリーランスでも取引先に消費税の請求はできる
フリーランスが取引先に送付する請求書には、消費税を含めて請求できます。請求書作成の際は、消費税額がわかるように、小計と消費税額を分けて記載しましょう。
ただし、消費税の記載方法として内税・外税の2種類があります。どちらで記載するかによって請求金額と消費税額は異なるので、注意しておきましょう。消費税の内税・外税については後述する「所得金額が内税なのか外税なのか把握しておく」をご覧ください。
フリーランスは消費税の納税が必要か
上述のように、消費税の納税が必要なのは、すべてフリーランスではありません。納税が義務付けられるのは課税事業者となっている場合で、免税事業者であるフリーランスは消費税の納税が免除されます。
以下では、フリーランスで納税が必要なケースと免除されるケースについて詳しく解説します。
消費税の納税が必要なフリーランス(個人事業主)
消費税の納税が必要なフリーランスは、以下に該当する場合です。
消費税の納税が必要なフリーランス
- 基準期間における課税売上高が1,000万円を超える者
- 適格請求書発行事業者に登録している者
- 特定期間における課税売上高が1,000万円を超える者
もし消費税の納税義務が該当するか不明な場合は、以下を参考にしてください。
また、2023年10月1日から開始したインボイス制度に対応するために適格請求書発行事業者に登録したフリーランスは、売上高にかかわらず消費税の納税義務が生じます。この場合、経過措置として消費税の納税負担を軽減できる特例を適用できるため、負担を減らすためにも後述する2割特例の解説を必ず確認しましょう。
消費税の納税が免除されるフリーランス(個人事業主)
一方で、消費税の納税が免除されるのは免税事業者であるフリーランスです。免税事業者に該当するのは、以下に当てはまる場合です。
タイ消費税の納税が免除されるフリーランス
- 基準期間における課税売上高が1,000万円以下の者
- 適格請求書発行事業者に登録していない者
- 特定期間における課税売上高が1,000万円以下の者
なお、消費税納税の基準となる基準期間の売上高は2年前となるため、開業してから2年以内の場合は売上高が1,000万円を超えても2年経つまでは消費税納税の義務はありません。
フリーランスが納税する消費税の計算方法
納税する消費税を計算するには、まずどの課税方式を利用するのか決める必要があります。選択できる課税方式は、以下3種類です。
- 原則課税方式
- 簡易課税方式
- 2割特例
それぞれの計算方法によって納税する消費税額も異なるため、自身の売上高や仕入状況などにあわせて選択しましょう。各計算方法別の具体的な計算例については、別記事「個人事業主 消費税」をあわせてご覧ください。
原則課税方式
原則課税方式とは、預かった消費税額から支払った消費税額を差し引いて納税する消費税額を計算する方法です。計算式は以下のようになります。
原則課税方式
納税する消費税額=預かった消費税額-支払った消費税額
このように、原則課税方式は売上高と経費を正確に計算できる方法であるため、消費税還付を受けられる唯一の計算方法ともされています。
簡易課税方式
簡易課税方式とは、預かった消費税額とみなし仕入れ率を用いて納付する消費税額を計算する方法です。計算式は以下のようになります。
簡易課税方式
納税する消費税額=預かった消費税額-(預かった消費税額×みなし仕入率)
なお、みなし仕入率は業種によって90%〜40%と異なります。簡易課税方式を用いる場合は、自身の業種がどのみなし仕入率に当てはまるか必ず確認しましょう。
出典:国税庁「No.6509 簡易課税制度の事業区分」
インボイスの軽減措置である2割特例を活用する場合
インボイス制度に対応するために2023年10月1日から課税事業者になったフリーランスは、軽減措置である2割特例が適用されます。2割特例では、預かった消費税分から8割分の控除が受けられ、以下の式で消費税の納税額を計算します。
消費税の納税額の計算方法
納税する消費税額=預かった消費税額-(預かった消費税額×80%)
ただし、軽減措置の2割特例は2026年9月30日までの売上高分までの適用となり、それ以降2029年9月30日までが5割、それ以降軽減措置は終了します。
出典:国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」
消費税の申告方法と必要書類
消費税の納税義務が生じたら、納税する年の3月31日までに必要書類を揃えて税務署にて確定申告し、確定消費税額を納付します。
ただし、提出する必要書類は選択した課税方式によって異なり、それぞれ正しく用意する必要があります。具体的な消費税の確定申告の手続きや書類の書き方については、別記事「消費税 申告」をご覧ください。
また、消費税の納付方法は振替納付やダイレクト納付、クレジットカード納付などがあります。
出典:国税庁「【税金の納付】」
原則課税方式を利用している場合の申告書類
原則課税方式を利用している場合の申告書類は、以下の3種類です。
出典:国税庁「令和4年3月31日までに終了する課税期間分の消費税及び地方消費税の申告書・添付書類等」
それぞれの書類が用意できたら、管轄の税務署にて申告期限内に提出しましょう。注意点として、書類は個人事業主用と法人用とで異なるため、フリーランスの場合は個人事業主用を用いてください。
簡易課税方式を利用している場合の申告書類
簡易課税方式を利用している場合の申告書類は、以下の3種類です。
- 消費税の申告書(簡易用)
- 付表4-3 税率別消費税額計算表兼地方消費税の課税標準となる消費税額計算表
- 付表5-3 控除対象仕入税額等の計算表
出典:国税庁「令和4年3月31日までに終了する課税期間分の消費税及び地方消費税の申告書・添付書類等」
消費税の申告書は一般用と簡易用に分かれているので、必ず簡易用を選んでください。また、簡易課税用の申告書も個人事業主用と法人用に分かれているため、フリーランスの場合は個人事業主用を選びましょう。
2割特例を利用している場合の申告書類
2割特例を利用している場合の申告書類は、以下の2種類です。
出典:国税庁「2割特例用 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き」
2割特例の場合の申告書は、一般用でも簡易用でもどちらでも構いません。ただし、2割特例を適用している旨を記載する必要があるため、忘れずに記載してください。
消費税の納税期限
フリーランスが消費税を納税する際の期限は、申告・納付ともにその年の3月31日までです。万が一申告が遅れたり忘れたりしてしまうと、附帯税が課せられる恐れがあるためご注意ください。
なお、期限に遅れた場合のペナルティについては、後述する「納税期限を過ぎてしまうとペナルティが発生する恐れがある」をご覧ください。
フリーランスの消費税納税における注意点
フリーランスが消費税を納税する際は、以下3つの注意点に気をつけましょう。
- 所得税の確定申告と消費税の申告は異なる
- 取引金額が内税なのか外税なのか把握しておく
- 納税期限を過ぎてしまうとペナルティが発生する場合がある
インボイス制度導入により、これまで消費税の影響が少なかったフリーランスにも影響が出るようになりました。消費税で損をしないためにも、しっかりと確認しておいてください。
所得税の確定申告と消費税の申告は異なる
フリーランスの確定申告というと、所得税の確定申告が一般に知られています。それは、フリーランスの多くは免税事業者であり、消費税納税の義務がなかったからです。
しかし、インボイス制度開始に伴って課税事業者となったフリーランスも多く、所得税の確定申告に加え消費税の確定申告も必要になりました。所得税の確定申告期限は3月15日、消費税の確定申告期限は3月31日と必要書類も申告期限も異なるのでご注意ください。
出典::国税庁「主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日」
取引金額が内税なのか外税なのか把握しておく
フリーランスで取引をしていると、消費税を内税とする金額と外税とする金額の2パターンに分かれる可能性があります。
消費税の計算をする際は、売上高にかかる消費税も仕入にかかる消費税も
内税と外税を見間違えてしまうと納付する消費税額にも差が出てしまうため、注意深く丁寧に確認しましょう。
納税期限を過ぎてしまうとペナルティが発生する場合がある
消費税の申告・納付期限を過ぎてしまうと、ペナルティとして附帯税が課せられる恐れがあります。申告遅れや忘れにより発生し得る主な附帯税は、以下のとおりです。
附帯税 | 詳細 |
---|---|
延滞税 | 期限から遅れた日数分課せられ、期限翌日から2ヶ月を基準に税率が異なる 出典:国税庁「延滞税の割合」 |
無申告加算税 | 納税すべきであった税額に対し、50万円までは15%、それ以上は20%が課せられる 出典:国税庁「確定申告を忘れたとき」 |
過少申告加算税 | 納めた納税額よりも少ない額を納めており、修正申告よりも前に税務署から調査・更正の連絡があった場合に課せられる 出典:国税庁「確定申告を間違えたとき」 |
重加算税 | 特に悪質だと判断された場合に課せられる 期限内申告できれば納付すべき税額の35%、期限後申告となると40%となる |
これらが課税されるとフリーランスにとって非常に痛い出費ができてしまうため、消費税の申告は必ず期限内に行うようにしてください。
インボイス制度導入によるフリーランスへの影響
インボイス制度導入により、仕入税額控除を受けるには適格請求書または適格簡易請求書が必要になりました。そのため、取引先から適格請求書発行事業者の登録番号を求められることがあります。
ただし、適格請求書発行事業者に登録していないフリーランスは、仕入税額控除に充てられる適格請求書を発行できません。結果、取引先から控除できない分の報酬を減額されてしまう可能性があります。
取引先によっては適格請求書発行事業者ではないフリーランスとは取引しない場合もあるため、必ず取引先に確認しておきましょう。
インボイス制度について詳しく知りたい方は、別記事「インボイス制度がフリーランスに与える影響とは? 対策や1000万円以下の免税事業者が検討すべきことを解説」と「消費税の仕入税額控除とは?基礎知識とインボイス制度での変更点をわかりやすく解説」をご覧ください。
まとめ
フリーランスは、基準期間または特定期間の売上高が1,000万円を超えると課税事業者となり、消費税納税の義務が生じます。また、インボイスへの対応のため今年から課税事業者になったフリーランスも、翌年から消費税の申告・納付をしなければなりません。
2023年10月1日から新しく課税事業者になったフリーランスは、軽減措置の2割特例を適用できるため納税負担が抑えられます。
フリーランスにとって消費税は取引先との関係にも影響するものなので、正しい理解を深めて事業に活かしていきましょう。
よくある質問
フリーランスの消費税の税率は?
フリーランスであるかどうかにかかわらず、消費税の税率は10%または軽減税率の8%です。ただ、フリーランスの取引における消費税率は、基本的に10%の場合が多いです。詳しくは記事内「消費税とは」をご覧ください。
フリーランスの1年目は消費税の対象ですか?
消費税の納税義務は2年前の基準期間の売上高をもとに決まるため、フリーランス1年目は消費税納税の対象ではありません。ただし、2023年10月1日より課税事業者になったフリーランスは、翌年の消費税納付が必要です。詳しくは記事内「フリーランスは消費税の納税が必要か」をご覧ください。