監修 北田 悠策 公認会計士・税理士
屋号は必須ではありませんが、屋号を使ったほうが事業を運営する上でメリットがあります。
たとえば、屋号を持つと名前を憶えてもらいやすくなる、業種や職種が伝わりやすくなるなど、取引先や顧客などに認知してもらいやすいでしょう。
ただし、事業を続けていると取り扱っている商品・サービスなどの増加や変化などで、屋号を変更したいと思うケースも少なくありません。開業時に届け出た屋号を変更する際には、どのような手続きが必要なのでしょうか。
本記事では、個人事業主の屋号の変更方法や届出の仕方、屋号を変更したことを証明するための手続きなどについて解説します。
目次
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屋号とは?
屋号とは、個人事業主やフリーランスが事業で用いる名称で、法人でいうところの会社名にあたります。
屋号は、個人事業主の場合は必須ではないため、屋号を持たずに個人名で活動している人も少なくありません。
また、事業の成長や変化に伴い、「屋号を変えたい」という個人事業主は多くいます。一度決めた屋号は途中から変更可能で、変更回数の制限も特にありません。
屋号を変更するために必要な手続き
屋号を変更したら、取引先への連絡のほか、状況によって金融機関や商号・商標の再登録などを行いましょう。屋号を変更するために必要な手続きを以下で解説します。
1.税務署への手続き
屋号を変更する場合、税務署への手続きは必要ありません。
屋号を変更した場合は、確定申告時に提出する申告書や決算書に変更後の屋号を記載するだけで手続きできます。
どうしても変更した証拠を残したい、または申告書や決算書に記載するだけでは不安な場合は、開業届を提出し直すことも可能です。開業届の「その他参考事項」に屋号変更したことを記載しましょう。
2.ほかの外部関係者への手続き
屋号を変更したら、銀行口座や契約先など、変更した旨を伝えるなどの手続きが必要です。以下細かい外部関係者への手続き内容をご紹介します。
① 金融機関
屋号付き口座を開設している場合は、金融機関で名義変更を行いましょう。
名義変更が必ず必要ではありませんが、取引先や顧客からすれば屋号と振込先名義が異なることで不安を覚える場合も考えられます。
たとえば、ネットショップなど、不特定多数の顧客からの振込がある場合は店名と振込先の名前が違うと、顧客が不安になる可能性があります。屋号付き口座を利用している場合は名義変更をしたほうが取引先も安心といえます。
また、金融機関から融資などを受けている場合は、念のため担当者に屋号を変更したことを伝えておきましょう。
② 法務局
屋号を法務局に商号登記している場合は、商号変更登記をする必要があります。
基本の必要書類は、商号登記申請書と登記料3万円です。また、印鑑の届出を変更前の屋号印にしている場合は変更後の屋号印の登録が必要です。そのため、再度印鑑届出書の提出も必要です。
③ 小規模企業共済
小規模共済に加入している場合は、中小機構に届出事項変更申出書を提出して屋号の変更を知らせる必要があります。
④ 得意先や取引先へのお知らせ
得意先や取引先には、請求書や領収書などのあて先を変更してもらう必要があるため、変更したら早めに報告してください。また、メールや文書の署名も忘れずに変更しましょう。
⑤ 飲食店などで営業許可を受けている場合
飲食店などで市区町村から営業許可を受けている場合も、屋号を変更した場合は届け出をする必要があります。
許可を得た市区町村に営業許可申請事項変更届などを提出します。他に書類が必要であったり、提出期限が決められていたりするので、あらかじめ許可を得た市区町村に確認しましょう。
屋号は何回まで変更できる?
屋号は自由に変更可能です。回数を制限するような法律や規則もありませんが、何回も変更することはおすすめできません。
頻繁に屋号を変更すると、金融機関からの信用を落としてしまうリスクがあります。また、得意先や顧客からの評判を損なう可能性もあるため、屋号を変更する場合は、慎重に行うことが大切です。
屋号だけでなく住所も変わる場合の手続き
屋号と一緒に住所も変わる場合は、税務署に「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」を提出する必要があります。
届出には、異動前と異動後の住所や、屋号欄に変更後の屋号を記載し、「その他参考事項」に屋号の変更があった旨を記載します。
届出の提出期限は決まっていませんが、納税地の異動があった後は遅滞なく提出しましょう。
屋号を変更したことを証明する2つの方法
屋号を変更したい場合は、基本的には毎年の確定申告の際に、確定申告書や収支内訳書または青色申告決算書に変更後の屋号を記載して提出するだけです。
ただし、書類提出という形で、屋号変更の証拠を残しておきたいという場合もあります。以下で、屋号を変更したことの証明になる2つの方法を解説します。
開業届の再提出
開業届は、事業を開始するときに税務署に提出する書類です。屋号を変更するときには必ずしも提出する必要はありませんが、屋号変更時に改めて提出しても拒否されることはありません。
提出した際にコピーに受領印を押してもらうことで、屋号の変更を税務署に対して申告したことの証明になります。
「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」の提出
「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」は、その名の通り納税地が変わった際に提出する書類です。屋号変更時に提出の義務がある書類ではありませんが、提出することで屋号を変更したことを証明できます。
開業届を提出する場合と同じく、コピーに受領印をもらっておきましょう。
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まとめ
事業を展開していく中で、取扱商品やサービス、事業拡大などに伴って「屋号を変えたい」と考えるケースは少なくありません。
屋号を変更した際は、毎年の確定申告の際に確定申告書や収支内訳書などに変更後の屋号を記載して提出するだけで変更できます。
また、屋号変更後は、状況によって金融機関や商号・商標の再登録などを行い、取引先へは早めに連絡しましょう。
よくある質問
屋号変更の注意点は?
屋号変更自体は、何度でも行うことが可能です。ただし、屋号を変更するたびに金融機関の登録を変更したり、得意先や取引先に連絡したりしなければなりません。
何度も行うのは手間がかかりますし、取引先に不審に思われて信用を失う可能性があるので注意しましょう。
詳しくは記事内「屋号は何回まで変更できる?」をご覧ください。
屋号変更時に提出が必要な書類は?
屋号変更時には、何か特別な書類の提出は不要です。毎年の確定申告で提出する確定申告書や決算書に、変更した屋号を記載するだけで変更完了です。
屋号を変更したことを証拠として残しておきたい場合は、開業届の提出や「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申出書」を提出しましょう。
詳しくは記事内「屋号を変更したことを証明する2つの方法」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。