経営管理の基礎知識

成長性分析とは? 目的や知っておくべき指標、分析方法などをわかりやすく解説

監修 安田 亮

成長性分析とは、企業がどれほど成長し、業績が伸びているのかを分析することです。本記事では、成長性分析の概要メリット指標などを解説します。

「どんどん利益を上げているあの会社、最近急成長していて羨ましい」周りからはそんな風に思われている企業も、実は本当に「成長している」とは限りません。

利益を上げている一方で、コストが発生していれば、見た目以上に経営難の可能性もあります。成長性分析を行い、しっかり判断することが重要です。

記事の後半では成長性分析の手法・実践例も解説するので、ぜひ参考にしてください。

目次

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成長性分析とは

「成長性分析」とは、企業がどれほど成長しているのか、業績が伸びているのかを財務指標などを用いて分析することです。

そもそも企業の「成長性」とは、一定期間の経営拡大の度合いや今後の可能性を指します。

成長性は、売上高の増減だけで測れるわけではありません。売上が増えても利益が減っていれば、設備や機械の導入、新たな人員の配置など何らかのコストが成長を妨げている可能性もあります。

また成長の度合いを測るには、市場を取り巻く環境に対する考慮も必要です。市場が前年比50%超と急成長しているなら、たとえ30%の成長率でも成長率が高いとは判断されないでしょう。

このように企業の成長性は多角的、総合的に判断しなければなりません。そこで企業の成長性分析に必要とされるのが、次の6つの要素です。

成長性分析に必要な6つの要素

  • 売上高
  • 経常利益
  • 営業利益
  • 総資産
  • 純資産
  • 従業員

これらの要素から分析に必要な指標を算出し、前年度と比較すれば、1年ごとの成長率を分析できます。

成長性分析の目的・メリット

将来への見通しを立てる指標となるのが「成長性分析」です。

成長性分析の目的は、単に企業の成長率、伸び率を知ることだけではありません。

企業の将来の安定性や拡大性など、成長の伸び幅の判断が大切です。過去数年間のデータと現在の売上高や利益などの数値を比較し、具体的にどのような対策を取ればより事業拡大に繋がるのか、継続的に利益を伸ばしていけるのかなどを考えます。

いくら売上高が伸びているからといって、それに伴ってコストが嵩んでしまっては最終的に利益として手元に残る資本は少なくなります。そうならないためにも、バランスよく経営を行うために、必要不可欠な分析方法です。

成長性分析に必要な「損益計算書」と「貸借対照表」

成長性分析を行うにあたり、6つの要素のうち、従業員を除く要素は「損益計算書」と「貸借対照表」から得られます。

それぞれ概要を説明します。

損益計算書

企業の1年、あるいは四半期などの一定期間の経営成績をまとめたものが「損益計算書」です。

利益の大きさや、その利益が発生した過程などを詳しく記したものです。具体的には「何に資本を使い、それによりどれほどの収益があり、結果どのくらいの利益が残ったのか」が記載されています。

一般的には、企業内の情報としてだけではなく、株主や債権者への情報開示の手段のひとつとして使用されます。

複式簿記に基づいて作成されるため、作成過程はある程度の専門知識が必要となる作業です。しかし表自体はわかりやすくまとめられているため、その構造を知れば誰でも簡単に活用できるでしょう。

貸借対照表

「貸借対照表」とは、企業内の資産のプラスマイナス、つまり「資産」と「負債」のバランスを一覧にした表のことです。一目見れば企業の財政状態がわかるようにまとめられており、「損益計算書」同様、複式簿記に基づいて作成されます。

「損益計算書」と同じく、株主や債権者に経営状態を提示する際に有用です。企業が株式会社の場合は、「損益計算書」とともに新聞・官報・インターネット上での決算公告が義務付けられている重要な書類です。

開業時・決算時・精算時あるいは月ごとに作成されるのが一般的で、随時それまでのデータと比較できるように管理しておく必要があります。

成長性分析で使用する10の指標

成長性分析で重要なことは、さまざまな側面から企業の成長性を見極めることです。そのためにも売上高だけではなく、以下にあげる10の指標を用いて総合的な判断を心がけましょう。

1.売上高増加率

売上高増加率=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100

「売上高増加率」は、成長性分析で代表的な指標であり、当期の売上高が前期の売上高に比べてどれほど伸びているのかを判断する基準です。

この値が前期よりもプラスとなれば「成長している」、マイナスとなれば「衰退している」ことを意味します。ただし1年分のデータで判断せず、数年単位で統括的に推移を把握することが大切です。

2.経常利益増加率

経常利益増加率=(当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益×100

「経常利益増加率」は、企業の本業以外の収益も含めた総利益である「経常利益」の伸び率を見る指標です。企業が経常的に稼ぐ利益を随時比較できます。

「売上高増加率」とあわせての参照が重要で、売上高と経常利益がともに上昇傾向にあると優良な経営状態だと判断されます。

一方、売上高が増加しているのに経常利益が減少している場合は、コストの見直しなどの対策が必要でしょう。

3.営業利益増加率

営業利益増加率=(当期営業利益-前期営業利益)÷前期営業利益×100

「営業利益」は、企業が本業の営業活動で生み出した利益で、その伸び率を表したものを「営業利益増加率」と呼びます。

営業利益増加率は、ほかの指標に比べると、企業による数値の差が出やすい指標です。

数値にマイナスが付くと、経営の悪化が懸念される状態です。たとえば「-100%」は前期の営業利益を失った状態、「-200%」は2年分の利益を失った状態となり、本業の売上げアップに向けたテコ入れが求められます。

4.総資本増加率

総資本増加率=(今期の総資本-前期の総資本)÷前期の総資本×100

「総資本増加率」は、総資本が前期と比べてどれだけ増えているのかを見るための指標です。そもそも「総資本」とは、純資産(自己資本)と負債(他人資本)の総額で、貸借対照表では貸方にあたります。

企業経営では総資本が増え続ける状態が望ましいとされ、値が大きいほど伸び率も高いと分析されます。

しかし総資本は純資産と負債を合わせたものであるため、借入金など負債の増加によって高い指標となる可能性もあります。

負債の返済年数が長くなれば経営への影響は大きく、今後企業の安定度を下げる原因にもなりかねません。

5.純資産増加率

純資産増加率=(当期末純資産残高-前期末純資産残高)÷前期末純資産残高×100

先ほどの総資本のうち、自己資本と基本的に同義である純資産のみに焦点を当てたのが、「純資産増加率」です。

「純資産増加率」は、総資本から負債を差し引いた値の増減を確認するための指標です。そのため、値が高ければ高いほど経営状態は良好と判断されます。

逆に前期よりも低い値になっている場合は、経営が不安定になっていることを示しています。

また、総資本から負債を差し引いた純資産は自己資本と基本的に同じ金額になるため、「自己資本増加率」とも呼ばれます。

6.従業員増加率

従業員増加率=(当期従業員数-前期従業員数)÷前期従業員数×100

「従業員増加率」とは、従業員数の増減で企業の成長性を測る指標です。従業員増加率は、従業員数の増加から事業の成長を測ります。

事業が成長すると、それに比例して現状より多くの従業員が必要です。一方で、設備投資に力を入れることで人員を削減する企業も増えています。その場合は、売上高が増加しても従業員数は減少する反比例の結果が出ます。

そのため、この指標だけでは企業の成長率を判断できない可能性もあり、ほかの指標を併用した総合的な分析が大切です。

7.一株あたり当期純利益(EPS)

一株あたり当期純利益=当期純利益÷普通株式の期中平均発行済株式数

「一株あたり当期純利益」は、企業の発行する株式一株あたりの利益額を示す指標です。一般的には株価指標のひとつとして用いられており、「当期純利益」と「普通株式の期中平均株式発行数」からその値が求められます。

「一株あたり当期純利益」は、経営状況や成長性を対外的に示すのに役立つ指標です。この値が高ければ、企業は高い評価を受けている状態と考えられます。

英語の「Earnings Per Share」の頭文字を取って「EPS」と表記されることも多いので、覚えておきましょう。

8.新規顧客増加率

新規顧客増加率=(当期新規顧客数-前期新規顧客数)÷前期新規顧客数×100

顧客の増加から企業の成長性を分析する指標が、新規顧客増加率です。前期に比べてどれだけ顧客数が増えたかで判断されます。

ただしリピート客が多い場合など、新規顧客増加率だけでは企業の成長性は判断できません。ほかの指標と同じく、さまざまな指標と組み合わせて分析しましょう。

9.顧客単価

顧客単価=当期総売上高÷総顧客数

「顧客単価」は、顧客1人あたりが1回で支払う平均購入金額を表す指標です。新規顧客増加率に変化がなくても顧客単価が増加していれば、売上高は上がり、業績アップも期待されるでしょう。

とくに顧客に直接商品やサービスを提供する小売業や飲食業などでは、顧客単価の判断は重要です。事業の安定化を図るためにも、定期的に分析や管理を実施しましょう。

10.労働生産性増加率

労働生産性増加率=(当期労働生産性-前期労働生産性)÷前期労働生産性×100

「労働生産性」とは、従業員1人あたりまたは1時間あたりに生み出される付加価値のことです。「労働生産性増加率」が高いほど、より少ない労力でより多くの成果を生み出したことを意味します。

労働環境の整備や従業員のスキルアップなどから、同じ労働力でも生産性が大きく上がる可能性があります。

少子高齢化が進み、働き手不足が課題となっている今、労働生産性増加率も今後の企業動向を占う大切な指標と言えるでしょう。

成長性分析の手法・実践例

成長性分析にはさまざまな指標が使われ、主に前期と当期の値を比較して分析します。また市場の動向を知るためにも、競合他社のデータも比較対象です。

以下では、実際にA社とB社を3つの指標から分析し、成長性を比較します。


A社B社
当期売上高70,000千円70,000千円
経常利益8,000千円8,000千円
総資本130,000千円100,000千円
前期売上高100,000千円50,000千円
経常利益10,000千円5,000千円
総資本150,000千円70,000千円

売上高増加率で分析

まず次の計算式で、2社の売上高の伸び率を分析します。

【売上高増加率 = (当期売上高 – 前期売上高)÷ 前期売上高 × 100】

A社 =(70,000,000 - 100,000,000)÷ 100,000,000 × 100 = -30%
B社 =(70,000,000 - 50,000,000)÷ 50,000,000 × 100 = 40%

2社ともに売上は同額ですが、売上高増加率はA社が-30%、B社が40%と大きな差が出ました。

これは、A社の売上が前期よりも伸び悩み、反対にB社の売上は順調に伸びているとわかります。

経常利益増加率で分析

次に、本業以外の損益を含めた全利益の伸び率を求めます。

【経常利益増加率 =(当期経常利益 - 前期経常利益)÷ 前期経常利益 × 100】

A社 =(8,000,000 - 10,000,000)÷ 10,000,000 × 100 = -20%
B社 =(8,000,000 - 5,000,000)÷ 5,000,000 × 100 = 60%

金額だけを見るとA社はB社と同額の経常利益を上げています。しかし前期からの伸び率を比べると、A社が-20%、B社が60%との結果が出ました。

売上高から本業にかかったコストを差し引いたものが「営業利益」であり、それに本業以外で生じた損益を加えたものが「経常利益」です。つまり、A社の売上には大きなコストがかかっており、B社は売上高に比例して経常利益も伸びている理想的な経営状態にあるとわかります。

総資本増加率で分析

最後に総資本増加率で、純資産と負債の増え方を分析します。

【総資本増加率 =(当期総資本 – 前期総資本)÷ 前期総資本 × 100】

A社 =(130,000,000 - 150,000,000)÷ 150,000,000 × 100 = -13%
B社 =(100,000,000 - 70,000,000)÷ 70,000,000 × 100 = 42%

売上と利益が増えれば、企業の総資本は自然と増えます。この例でも、売上高が伸び悩むA社は総資本も減少傾向にあり、B社は売上高や経常利益の増加に伴って総資本も大きく伸びています。

上記のようにそれぞれの指標を分析し、一目で理解できるようにまとめておくと、自社の経営状態の推移を簡単に把握が可能です。現状だけでなく成長度を見ると、今後の事業計画も立てやすくなるでしょう。

まとめ

成長性分析を行うには、売上高や利益などからさまざまな指標を使い、それぞれの結果を複合的に判断することが大切です。

当期のデータだけでは経営状態の正確な把握が難しいため、最低でも過去数年間の自社ならびに競合他社のデータから分析します。

細かなデータを収集し、複数の指標を計算してまとめるのには、手間や時間がかかります。必要に応じて会計ソフトを利用するとよいでしょう。

監修 安田 亮(やすだ りょう)
公認会計士・税理士・1級FP技能士

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮

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